タナクラクレイは、福島県東白川郡棚倉町の棚倉破砕帯から採掘される鉱物粉体で、洗顔料・パック・石けんに皮脂や汚れを吸着する粉体として配合される化粧品成分にあたる(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報 / 国内の化粧品成分データベース各種)。日本の地名をそのまま名乗る、めずらしいタイプの成分名になる。
この記事の中心は、クレイの成分表示名をめぐって当メディアが4本の記事で立ててきた3本の軸に、この成分が5本目としてどう接続するかにある。カオリン・ベントナイトは鉱物名で書かれ、海シルト・モロッコ溶岩クレイは産地・由来名で書かれる。鉱物系統の分かれ方はこれと一致せず、CIRの評価対象かどうかでまた別の線が引かれる。タナクラクレイは、産地名で名乗る側・CIRの評価対象外の側にあたる。
ところが一次資料を当たると、この成分だけの事情が2つ出てくる。1つは、同じ原料に産地名と組成名の2つの表示名が用意されていること。化粧品表示名称には「タナクラクレイ」と「含硫ケイ酸Al」が並び、医薬部外品の成分表示名称リストには組成名側の「含硫ケイ酸アルミニウム」が収載されている(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報 / 医薬部外品の成分表示名称リスト)。他の4成分は表示名を1つしか持たない。もう1つは、鉱物としての系統が一次で特定できないこと。他の4成分ではカオリナイト・モンモリロナイト・ステベンサイトと鉱物種まで報告があるのに対し、本成分については採掘事業者も原料メーカーも自治体も制度側のリストも、鉱物種を名指ししていない。
本記事ではこの2点を軸に、一次で確認できたことと確認できなかったことを分けて整理する。
1. タナクラクレイの基本
1.1 何の成分か
タナクラクレイは、福島県東白川郡棚倉町の棚倉破砕帯から採掘される鉱物を原料とする無機の粉体成分にあたる。棚倉町の公式ホームページは、数千万年前の古代海泥が地殻変動によって隆起した地層から採れるものと紹介し、軟質多孔性古代海洋腐植質という呼び方を添えている(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報 / 福島県棚倉町 公式ホームページ)。
呼び名が4層に分かれる成分にあたるので、まずここを分けて整理する。
| 呼び名 | 何を指すか | 誰が決めた名前か |
|---|---|---|
| タナクラクレイ | 化粧品の成分表示名称(産地名で書かれた側) | 日本化粧品工業会の化粧品の成分表示名称リスト |
| 含硫ケイ酸Al | 化粧品の成分表示名称(組成名で書かれた側) | 同上 |
| 含硫ケイ酸アルミニウム | 医薬部外品の成分表示名称(連番623・成分コード523077) | 日本化粧品工業連合会の医薬部外品の成分表示名称リスト |
| ミロネクトン® | 原料メーカーが付けた原料商品名・登録商標 | 原料メーカー(岩瀬コスファ) |
(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報 / 医薬部外品の成分表示名称リスト)
原料メーカーは自社原料ミロネクトン®について、化粧品表示名称を「タナクラクレイ または 含硫ケイ酸Al」、医薬部外品表示名称を「含硫ケイ酸アルミニウム」と案内している(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報)。つまり 同じ原料に対して、産地名で書く選択肢と組成名で書く選択肢の両方が用意されている ことになる。カオリン・ベントナイトは鉱物名だけ、海シルト・モロッコ溶岩クレイは産地・由来名だけで、表示名は1つずつしか持たない。「クレイの成分表示名は鉱物名で書かれるものと産地名で書かれるものに分かれる」という整理は4成分までは成り立つが、本成分を入れると、その分かれ方は 成分の属性ではなく、同じ原料に対する2通りの書き方 でもありうる、という話に変わる。
この二重性は制度側の刻まれ方にもそのまま出る。医薬部外品の成分表示名称リスト(平成20年3月25日版)を全文検索すると、「タナクラクレイ」「ミロネクトン」はいずれも0件にあたる。一方で連番623・成分コード523077に、成分名「含硫ケイ酸アルミニウム」・簡略名「含硫ケイ酸Al」の行が実在し、その本質欄は次のように書く(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト)。
本品は,主としてイオウを含んだ含水ケイ酸アルミニウムからなる.
同じリストでカオリンの本質は「本品は,天然に産する含水ケイ酸アルミニウムである.」(連番497)にあたる。並べると、カオリンの含水ケイ酸アルミニウムに イオウが加わる のが組成上の特徴だと読める。国内の化粧品成分データベースがタナクラクレイの性状として同じ文言を共通して引くのも、この本質欄が元になる(出典: 国内の化粧品成分データベース各種)。
つまり、「タナクラクレイは医薬部外品表示名称リストに載っていない」は名前の単位では正しいが、「制度から漏れている」という意味ではない。産地名の側に部外品での名前が用意されていないだけで、同じ原料は組成名の側で収載されている。由来菌別に分割されるプロテアーゼ、グレード・製法別に分割されるセルロースと同じ「名前の刻み方が違う」型にあたり、単独名で1行だけ載るパパインや、同じ成分名が3行に分かれて載る炭酸水素Naとは、また別の刻まれ方になる。
⚠️ ただし組成名の側は範囲が広い。定義しているのは組成までで産地を特定していないため、成分表で含硫ケイ酸Alを見つけても、それが棚倉産だと確定することはできない。逆にタナクラクレイという表示から産地は読めるが、鉱物としての中身までは読めない。次にその点を見る。
鉱物としての中身は、一次では特定できなかった
本記事でいちばん正直に書いておくべきなのがここにあたる。タナクラクレイが層状ケイ酸塩のどの系統に属するのか、膨潤するのかしないのかを、一次資料で特定することはできなかった。
他の4成分では、この点が埋まっている。カオリンはカオリナイト系の1:1型で膨潤せず、ベントナイトはモンモリロナイトを主成分とするスメクタイト系の2:1型で膨潤する(出典: CIR 2023)。海シルトは雲母・スメクタイト・カオリナイト等の混合物、モロッコ溶岩クレイはステベンサイトが主体と報告されている。タナクラクレイはそこが空白にあたる。当たった範囲は次のとおりで、鉱物種を名指しした資料は1つもなかった。
- 採掘事業者(八幡礦業)は、ケイ酸を主成分にアルミニウム・カルシウム・鉄など59種類のミネラルを確認したとし、軟質の砂状岩石で無数の細孔を持つと説明する。分析機関名の記載もない(出典: 八幡礦業 公開情報)。
- 原料メーカー(岩瀬コスファ)は、酸化物換算の組成として二酸化ケイ素60.0%・酸化アルミニウム13.0%・酸化鉄4.2%・酸化カルシウム4.1%・リン1.7%・酸化マグネシウム1.5%・硫黄1.1%などを挙げ、平均細孔半径500Åの多孔質物質と説明する(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報)。
- 自治体・制度側 は、軟質多孔性古代海洋腐植質という呼称、および組成による本質欄の記述で止まる(出典: 福島県棚倉町 公式ホームページ / 医薬部外品の成分表示名称リスト)。
- 学術側 では、棚倉断層周辺の新第三系を扱った地質学雑誌の論文が層序と堆積環境を詳細に記載しているが、スメクタイト・モンモリロナイト・沸石・珪藻に関する記載はなく、粘土鉱物の同定結果は示されていない(出典: 天野ほか 2011)。
したがって本記事は、タナクラクレイの鉱物系統について断定しない。「スメクタイト系だから吸着が強い」とも「カオリナイト系だから穏やか」とも書けない。組成として言えるのは、イオウを含む含水ケイ酸アルミニウムであること、多孔質であることまでになる。
産地と年代は、説明の粒度と幅に差がある
産地の位置は公的な地質記載で裏が取れる。産業技術総合研究所が2026年1月26日に刊行した5万分の1地質図幅「大子」のプレスリリースは、棚倉断層帯を 茨城県常陸太田市から福島県東白川郡棚倉町へと北北西から南南東方向にのびる 断層帯と説明している(出典: 産総研 プレスリリース 2026)。棚倉構造線・棚倉破砕帯という呼び方の揺れは、同じ対象を指す別称にあたる。
一方、年代の説明は情報源によって時代の枠が違う。原料メーカーは数千万年前(新第三系、中新統)の海洋動植物の埋没堆積とする一方、採掘事業者は恐竜が生きた中生代の海や湖沼から生まれたチャート相地向斜堆積層と説明する(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報 / 八幡礦業 公開情報)。このうち「新第三系、中新統」という但し書きは学術側の記載と系統が一致し、地質学雑誌の論文も、棚倉断層周辺の中新統が約1700万年前ころの左横ずれ運動に伴って生じた横ずれ堆積盆を埋めたもので、堆積環境が湖沼から河川・浅海・深海へと変化したと記載する(出典: 天野ほか 2011)。中新世は新生代にあたるため、年数では 2000万年前前後 の桁になる。
これに対し「恐竜が生きた中生代」は別の時代を指す。産総研の説明によればこの地域には足尾帯のジュラ系(約2億〜1億5千万年前の付加体)と阿武隈帯の白亜系も分布しており(出典: 産総研 プレスリリース 2026)、中生代の岩体が同じ地域にあること自体は事実だが、中新統の堆積盆を埋めた地層とは別の単位にあたる。同じ原料の説明の中で2つの時代枠が混在している ことは押さえておいてよい。
規制上の位置づけは、医薬部外品の有効成分ではなく添加成分にあたる。化粧品の成分表示名称に収載され、医薬部外品側にも組成名で表示名称が用意されているが、いずれも有効成分としての承認ではない(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト)。したがって本成分に紐づく承認効能はなく、役割は吸着・洗浄補助・剤形づくりを担う基剤にとどまる。国際的な化粧品成分データベースでも Tanakura Clay の名で収載され、機能は吸着剤(absorbent)・結合剤(binding)・充填剤(bulking)と整理される(出典: 国内の化粧品成分データベース各種)。
1.2 どんな製品に配合されるか
原料メーカーが挙げる用途は、パック基剤・洗顔剤・石けん・クリーム・シャンプー・トリートメントにあたる(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報)。洗い流す剤形が中心になる。
実際の配合はどうか。DappNotes の商品マスター(スキンケア54製品・ヘアケア78製品)を機械集計すると、タナクラクレイを配合するのは次の2製品で、どちらも洗顔料だった(出典: DappNotes 商品マスター集計)。
| 製品 | タナクラクレイの順位 | 全成分数 | 位置(先頭からの割合) | 剤形 |
|---|---|---|---|---|
| P127 ONE BY KOSE ポアクリア スクラブ ウォッシュ | 23位 | 34 | 68% | スクラブ洗顔 |
| P085 NILE 濃密泡洗顔 クリーム洗顔せっけん | 43位 | 62 | 69% | クリーム洗顔(石けん系) |
(出典: DappNotes 商品マスター集計・2026年9月時点)
2製品しかないうえ、位置も68%と69%でほぼ揃っている。モロッコ溶岩クレイが5位/21成分から47位/62成分まで開いていたのとは対照的で、タナクラクレイは 成分表の後半3分の1に置かれる粉体 という一点に収束する。範囲を広げても方向は変わらず、クレイ系成分のいずれかを含むスキンケアは54製品中11製品で、そのすべてが洗顔料にあたる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。
⚠️ 全成分表示は原則として配合量の多い順に並ぶが、1%以下の成分は順不同で記載してよい ため、記載位置から配合量を逆算することはできない。順位が低い=効果がない、とも読めない。言えるのは、洗浄の主役ではなく基剤の後ろに足される層にある、というところまでになる。
P085:6行のうち鉱物が5行、その間に酵素が1行挟まっている
2製品のうち、処方として読みどころが多いのが P085 NILE 濃密泡洗顔になる。全62成分のうち、後半に鉱物系と酵素が次のように並ぶ(出典: DappNotes 商品マスター集計)。
| 順位 | 成分 | 系統 |
|---|---|---|
| 34 | 海シルト | クレイ(産地・由来名) |
| 42 | カオリン | クレイ(鉱物名) |
| 43 | タナクラクレイ(本成分) | クレイ(産地名) |
| 44 | プロテアーゼ | 酵素(タンパク分解) |
| 45 | イライト | クレイ(鉱物名) |
| 46 | 流紋岩末 | 鉱物末 |
| 47 | モロッコ溶岩クレイ | クレイ(産地・由来名) |
| 50 | ベントナイト | クレイ(鉱物名) |
(出典: DappNotes 商品マスター集計)
読みどころは3つある。
1つ目は、吸着と酵素分解が隣り合わせで積まれている点にあたる。43位のタナクラクレイの直後、44位にプロテアーゼが来る。クレイが粒子の表面と細孔に皮脂・汚れを取り込む物理吸着なのに対し、プロテアーゼは角質・角栓のタンパク質を酵素反応で切る化学分解で、原理がそもそも違う。同じ製品の中で別系統の手段を重ねる設計になっている、と読める配置になる。
2つ目は、表示名の性格がばらばらの鉱物が並んでいる点にあたる。42位から47位の6行(酵素1行を除く5行)には、鉱物名で書かれるもの(カオリン・イライト)、産地名で書かれるもの(タナクラクレイ・モロッコ溶岩クレイ)、岩石名で書かれるもの(流紋岩末)が混在する。これらが同じ泥・鉱物の粉体だと成分表から読み取れる読者は多くない。
3つ目は、公的評価の射程がこの並びを横切っている点にあたる。42位のカオリン・45位のイライト・50位のベントナイトはCIRの2023年最終改訂報告書の評価対象8成分に含まれ、43位のタナクラクレイ・34位の海シルト・46位の流紋岩末・47位のモロッコ溶岩クレイは対象外になる(出典: CIR 2023)。同じ並びの中で、名指しの評価が届く成分と届かない成分が交互に現れる(詳しくは §3.1)。
もう1つの P127 ONE BY KOSE ポアクリア スクラブ ウォッシュは、スクラブを掲げる洗顔料にあたる。鉱物・吸着系の並びは、20位カオリン・21位シリカ・23位タナクラクレイ・25位ベントナイト・30位炭で、クレイ3種に非粘土系の吸着材が加わる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。P085 との違いは剤形で、こちらはスクラブ粒子による摩擦が加わる。クレイの種類より、この剤形の差のほうが洗い上がりへの影響は大きいことが多い。
「海泥」を掲げる商品と、成分表の組成名
§1.1 で触れた表示名の二重性は、商品名の読み方にも効いてくる。自社集計には P125 ロゼット 洗顔パスタ 海泥スムースという、商品名に海泥を掲げる洗顔料がある。この製品の成分表にタナクラクレイの記載はなく、海シルトも入っていない。代わりに 7位/15成分に含硫ケイ酸Alが入っている(出典: DappNotes 商品マスター集計)。タルク(10位)・カオリン(11位)より前にあたる。
ここは慎重に読む必要がある。原料メーカーはタナクラクレイと含硫ケイ酸Alを同じ原料の2つの表示名として案内しているが(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報)、含硫ケイ酸Alは組成による一般名で、その表記だけから原料が棚倉産だと確定することはできない。言えるのは、成分表に海シルトの表示はなく、クレイ系は7位の含硫ケイ酸Al・10位のタルク・11位のカオリンで、商品名の海泥に当たる原料がどの表示名かは成分表からは特定できない、というところまでになる。産地名で書かれていれば産地は読めるが鉱物系統は読めず、組成名で書かれていれば組成は読めるが産地も由来も読めない。どちらの書き方でも、読み取れない情報が必ず残る。
1.3 メンズ視点での見方
男性は皮脂分泌量が女性の約2倍とされるオイリー寄りの肌で、テカり・毛穴の黒ずみ・角栓が悩みの上位に来やすい(出典: メンズスキンケア専門メディア各種)。毛穴を訴求する洗顔料にクレイが入るのは、この需要に対して理にかなった設計にあたる。一方で、皮脂は多くても肌内部の水分量は女性の約半分とされインナードライに傾きやすく、毎日の髭剃りでバリア機能も低下しやすい。皮脂を吸着する粉体は、この状態の肌では乾燥側に振れる要因にもなる。
ここでタナクラクレイに特有の事情が効いてくる。他のクレイであれば、鉱物系統から吸着の性格を推し量ることができる(出典: CIR 2023)。ところが §1.1 のとおり、本成分ではその手がかりが取れない。成分名から吸着の強さを見積もる、という読み方自体が成立しない ことになる。
では何を見るか。1つ目は 剤形 で、同じタナクラクレイ配合でも P085 は石けん系のクリーム洗顔、P127 はスクラブ洗顔にあたり、後者には摩擦が加わる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。2つ目は 併用されている系統 になる。毛穴に働きかける手段は、クレイの物理吸着だけではない。
| 系統 | 毛穴に対する働きの原理 | 代表成分 |
|---|---|---|
| クレイ吸着 | 粒子表面・細孔に皮脂と汚れを取り込む物理吸着 | タナクラクレイ(本成分) |
| 酵素(タンパク分解) | 角質・角栓のタンパク質を酵素反応で切る化学分解 | プロテアーゼ / パパイン |
| 粉体研磨 | 硬さと粒子径で角栓・角質を物理的に削り取る | セルロース |
| 炭酸塩(アルカリ剤) | 水に溶けて弱アルカリ性を示し、皮脂・角質タンパクを軟化させる | 炭酸水素Na |
P085 が43位のタナクラクレイと44位のプロテアーゼを隣り合わせで配合しているように、実際の製品は1系統で完結していない(出典: DappNotes 商品マスター集計)。系統が重なるほど角質・皮脂への負荷は積み上がる。
3つ目は 洗浄基剤 にあたる。クレイは単独では汚れを乳化しないため、洗顔料では必ず界面活性剤系の洗浄成分と組み合わせて使われる。脂肪酸石けん系ならさっぱり側、アミノ酸系なら穏やか側に振れ、クレイの種類よりこの組み合わせのほうが洗い上がりへの影響は大きいことが多い(関連: 髭剃り後の肌ケアガイド)。なおタナクラクレイ・カオリン・シリカ・炭はいずれも、すでに出た皮脂を粉体で吸い取る側の成分で、皮脂の量そのものを変えるものではない。
2. 期待される働き・効果
2.1 メカニズム
タナクラクレイの働きは、化学反応ではなく粉体の物理的な性質で説明される。水に溶けない無機の粉体で、粒子の表面と細孔に皮脂や汚れを取り込み、水と一緒に洗い流される、という筋道にあたる(出典: 国内の化粧品成分データベース各種)。担い手として説明されているのは2つになる。
担い手A:粒子表面での吸着。粉体の吸着は単位重量あたりの表面積に支えられ、粒子が細かいほど使える面が増える。原料メーカーは微粉砕・分級したグレードの平均粒子径を10μm以下と示すが(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報)、これは特定グレードの値で、成分表にタナクラクレイと書かれた原料すべてが同じ粒度とは限らない。
担い手B:細孔への取り込み。この成分の説明で共通して出てくるのが多孔質という性質にあたる。原料メーカーおよび国内の化粧品成分データベースは、平均細孔半径500Å(=50nm)の多孔質物質と記述する(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報 / 国内の化粧品成分データベース各種)。粒子の外表面だけでなく孔の壁面も吸着に使える構造という説明で、細孔内部で吸着する炭と機能の説明が近い。⚠️ ただし細孔径の数値は資料によって食い違い、採掘事業者の公開情報は平均直径を50mmと表記する(出典: 八幡礦業 公開情報)。単位の表記に揺れがある と見るのが妥当で、本記事では細孔径を根拠にした比較は行わない。「備長炭の数十倍の多孔質」といった比較表現も、測定法や比較対象を示した一次資料は確認できなかった。
担い手C(本成分では確認できない):層間への取り込み。スメクタイト系であれば、2:1型の層と層のあいだに水や有機分子が入り込んで膨潤し、そこも吸着に使える(出典: CIR 2023)。ベントナイト・モロッコ溶岩クレイの記事で扱った担い手にあたる。本成分については鉱物系統が特定できないため、この担い手があるのかないのかを本記事は判定しない。
組成面でもう1つ触れておくべきなのがイオウにあたる。制度側の本質欄は「主としてイオウを含んだ含水ケイ酸アルミニウム」と記述し、原料メーカーの組成値でも硫黄1.1%が挙がる(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト / 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報)。国内の一部の成分解説には、この硫黄や酸化鉄から消炎作用が期待できるとする記述も見られるが、裏づける試験データや一次文献は確認できなかった。組成に含まれることと、肌でその作用が起きることは別の話 になるため、本記事は組成の事実までにとどめる。
§1.3 の4系統の表で言えば、クレイの吸着は汚れを化学的に分解するのではなく、粉体にくっつけて物理的に持ち去る経路にあたる。また界面活性剤がミセルをつくって皮脂を水に分散させるのに対し、クレイは単独では汚れを乳化しない。洗顔料でクレイが必ず洗浄基剤と組み合わせて配合されるのは、この分担による。
2.2 一般的な効能範囲
タナクラクレイは医薬部外品の有効成分ではなく、添加成分にあたる。化粧品の成分表示名称に収載され、医薬部外品側にも組成名の「含硫ケイ酸アルミニウム」として表示名称が用意されているが、いずれも有効成分としての承認ではない(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト)。したがって本成分に紐づく承認効能は存在せず、配合製品が標榜できるのは化粧品の効能の範囲、ないしは併配合された医薬部外品有効成分の承認効能の範囲にとどまる。同じ原料が、名前の選び方だけで部外品リストへの収載の有無が入れ替わる 以上、収載の有無を効く/効かないの指標として読むこともできない。
洗顔料の文脈で成立するのは処方事実の説明にあたる。「皮脂や汚れを吸着して洗い流す」「粉体として洗い上がりの感触を整えている」「皮膚を清浄にする」といった範囲であれば、化粧品の効能の枠内で説明できる。
一方で明確に踏み越えになるのが次の類の表現になる。「毛穴の黒ずみを除去して毛穴を消す」「毛穴を引き締める」「ニキビを治す」「皮脂分泌を抑制する」「肌をデトックスする」といった表現は、化粧品の効能の範囲を超えるか、そもそも本成分の作用として確認されていない。とくにデトックスはクレイ系の訴求で見かけやすいが、肌表面の汚れを吸着することと体内の何かを排出することはまったく別の話にあたる。皮膚は体内の物質を排出する器官ではなく、粘土が経皮的に何かを引き出すという機序も確認されていない。
本成分に特有の注意点として、ミネラルの種類数を訴求に転用する読み方 がある。採掘事業者は59種類のミネラルを確認したとし、一般向けの紹介では66種類とする資料もあって、数字そのものが一致しない(出典: 八幡礦業 公開情報 / 国内の化粧品成分データベース各種)。加えて、鉱物としてミネラルを含むことと、そのミネラルが肌に吸収されて働くことは別にあたる。由来のストーリーも同じで、由来の古さは洗顔したときにどれだけ皮脂が落ちるかとは無関係 になる。なお採掘事業者の資料には波長8〜14μmの遠赤外線の放射を確認したという記述もあるが、これを肌への効能として説明することは化粧品の効能の範囲を超えるため、本記事では扱わない(出典: 八幡礦業 公開情報)。
2.3 限界・誤解されやすい点
タナクラクレイは、表示名と中身のあいだに段差が複数ある成分で、そのぶん誤解も生まれやすい。代表的なものを3点整理する。
1点目は、産地名で書かれているから中身が分かる、という読み違え にあたる。日本の地名を名乗る成分名は情報量が多く見えるが、表示名から読めるのは産地までで、鉱物としての系統は読み取れない。逆に組成名の「含硫ケイ酸Al」の側は、組成が読める代わりに産地も由来も読めない。どちらの書き方でも、読み取れない情報が必ず残る。
2点目は、他のクレイと同じスメクタイト系だろう、という推測を事実として書いてしまうこと にあたる。海シルトやモロッコ溶岩クレイがスメクタイトを含むからといって、同じ産地名型の本成分も同じ系統だとは言えない。成因の説明からして違い、ガスールの産地では湖成堆積物中のドロマイトが続成変質したと報告されるのに対し、棚倉のそれは断層帯沿いの堆積盆を埋めた地層という説明になる(出典: 天野ほか 2011)。産地名型かどうかは、鉱物系統について何も教えてくれない。
3点目は、国産・天然だから安全、という読み違え になる。天然の堆積物である以上、産地・採掘層・精製工程によって組成にばらつきが出うるのは原理的な性質で、実際の安全性は原料としての精製と品質管理に依存する。逆に「天然だから危険」でもない。天然由来原料全般に共通する構造で、成分名の善悪の話ではない。
3. 安全性・注意点
3.1 既知の刺激性・アレルギー報告
最初に確認しておくべき事実が2つある。
1つ目は、タナクラクレイを名指しで評価した公的な安全性評価文書は確認できない という点にあたる。CIR(Cosmetic Ingredient Review)が2023年3月31日に公表した最終改訂報告書(Final Amended Report)『Amended Safety Assessment of Naturally-Sourced Clays as Used in Cosmetics』の評価対象は Attapulgite・Bentonite・Clay・Fuller’s Earth・Hectorite・Illite・Kaolin・Montmorillonite の8成分で、本成分はこの8成分に含まれない(出典: CIR 2023)。海シルト・モロッコ溶岩クレイと同じ扱いで、「クレイはCIRで安全とされている」を本成分に当てはめることはできない。
2つ目は、同系統への類推という逃げ道も使えない という点になる。海シルト・モロッコ溶岩クレイの記事では、鉱物系統がスメクタイト系だと分かっているため同系統への評価を参照できた。本成分では鉱物系統そのものが特定できないため、参照先を同系統に求める根拠がない。
参考として、その8成分への結論は非対称にあたる。カオリンのみ但し書きなしで安全(safe)と結論される一方、ベントナイト・イライトを含む残り7成分には「偶発的に吸入されうる製品において安全と判断するにはデータが不十分」という例外が付く(出典: CIR 2023)。これはパウダー・スプレー等の剤型についてのデータ充足度の指摘で、危険だという評価ではない。洗い流す洗顔料は吸入を想定する使い方ではなく、自社集計でクレイ系を配合するスキンケア11製品はすべて洗顔料だった。§1.2 の P085 の並びのように、同じ製品で 1行違いに公的評価の射程の内と外が並ぶ のは、CIRがINCI名の単位で評価対象を選ぶことと日本の化粧品成分表示名称の体系が別に成り立っていることの帰結で、安全性の差ではない(出典: DappNotes 商品マスター集計)。
本成分固有の試験データについては、原料メーカー・採掘事業者が公開する皮膚刺激性試験・感作性試験・眼刺激性試験のデータを確認できなかった。海シルトの原料メーカーが In vitro の判定を公開していたのとは対照的にあたる。国内の化粧品成分データベースは刺激性の低い部類と整理するが、根拠となる試験データまでは示されていない(出典: 国内の化粧品成分データベース各種)。
実用上の判断材料として言えるのはここまでになる。水に溶けない無機粉体で肌に浸透しないこと、配合が洗い流す洗顔料に限られていること、そして刺激の話題になりやすいのが 粒子による物理刺激(こすりすぎ)と、吸着による脱脂(洗いすぎ) の2経路にあたること。とくに P127 はスクラブ剤形のため前者が加わる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。なお製品には洗浄成分・香料・防腐剤等が併配合されるため、個別のアレルギー反応の可能性は他の化粧品と同様にゼロではない。
3.2 推奨配合量と過剰配合時のリスク
タナクラクレイは「何%配合すると効く」という性質の成分ではない。目的とする吸着量・泥としての使用感・粉体としてのかさに合わせて必要量が決まるタイプで、配合量そのものより剤形と使い方のほうが体感を左右する。
数値については、正直に言えば 参照できる公開データがほとんどない。日本の化粧品基準に配合上限規定はなく(配合可能成分)、原料メーカーが公開する推奨配合量の記載も確認できなかった。海外の使用実態データも当てにできず、CIRの天然由来クレイ評価が参照する米FDAのVCRP届出件数・最大使用濃度で扱われるのは評価対象8成分で、Tanakura Clay の数字はない(出典: CIR 2023)。海シルトの記事で参照できた中国の使用実績情報のような剤型別の実績値も確認できなかった。
したがって参照できるのは自社集計の配合位置だけになる。2製品ともに成分表の後半3分の1 で、どちらの処方でも洗浄の主役ではなく基剤の後ろに足される粉体として置かれている、というところまでは言える(出典: DappNotes 商品マスター集計)。⚠️ 1%以下は順不同で記載してよいため、位置から配合量を逆算することはできない。
「過剰配合時のリスク」という観点で実態に即しているのは、成分の毒性ではなく接触の条件にあたる。粘土の吸着は皮脂を選り好みしないため、こする力が強いほど・使う頻度が高いほど・洗浄時間が長いほど、脱脂は進む。P127 のようにスクラブ剤形であれば、そこに摩擦が加わる。皮脂が多いメンズほど「もっと落とす」方向に振れやすいが、洗浄後の乾燥はバリア機能を下げる側に働く(出典: メンズスキンケア専門メディア各種)。処方側では粉体を増やせばざらつきと乾燥感も増えるため、そのバランスで量が決まる。市販製品で配合量が過剰であることが問題になる場面は通常想定されず、実際に起こりやすいのは使い方の側のリスクにあたる。見るべきは、剤形・併配合されている系統・洗浄基剤の種類・自分の肌の状態、の4点になる。
3.3 「危険性」と言われる根拠と実態の整理
タナクラクレイは「危険性」で検索されることが比較的少ない成分にあたる。流通量が限られ、配合が洗い流す洗顔料に集中しているためと考えられる。そのぶん、語られるとすれば論点は次の4系統に整理できる。
最も重いのが 公的評価が無いのは危ないのではないか という系統にあたる。§3.1 のとおりCIRの名指し評価は確認できず、原料側の刺激性試験データも公開が確認できない。「評価済みで安全」と書けない状態にあることは、擁護せずそのまま認めるべき事実になる。ただし裏返しの「評価されていないから危険」も成り立たない。日本の化粧品成分表示名称と、CIRが評価するINCI名の枠組みが別だというのが主たる理由で、実際、同じ製品の1行違いに並ぶイライトは評価対象になる(出典: CIR 2023 / DappNotes 商品マスター集計)。線引きは成分の性質ではなく評価の枠組みの都合による。
残る3系統と合わせて並べると、次のような整理になる。
| 観点 | 語られる根拠 | 実態の整理 |
|---|---|---|
| 公的評価 | CIRの評価対象8成分に含まれない | 評価済みとも危険とも言えない。日本の成分表示名称とINCI名の枠組みが別なだけで、同じ製品の隣の行のイライトは対象に入る |
| 鉱物系統 | 採掘事業者・原料メーカー・自治体・制度側リストのいずれも鉱物種を名指ししない | 事実。ただし実用の判断材料は剤形・併用系統・洗浄基剤・頻度の側にあり、そこは成分表から読める |
| 不純物 | 天然に産する鉱物である | 原料メーカーが粉砕・分級等の処理を経て供給する。ばらつきの管理は原料の品質管理の課題で、成分名の是非ではない |
| 吸着による負担 | 皮脂を選ばず吸着する粉体である | 乾燥・つっぱりは実際に起こりうる。ただし決めるのは力加減・頻度・剤形で、配合2製品の片方はスクラブ剤形にあたる |
(出典: CIR 2023 / 医薬部外品の成分表示名称リスト / 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報 / 八幡礦業 公開情報 / DappNotes 商品マスター集計 / メンズスキンケア専門メディア各種)
実用的な結論はこうなる。この成分については「表示名から鉱物系統が読み取れない」ことと「公的評価が本成分名義では存在しない」ことを、そのまま前提として扱うのが正確 にあたる。判断材料を成分名の外側 ── 剤形・併用系統・洗浄基剤・自分の肌の状態 ── に求めるのが、現実的な付き合い方になる。
4. 相性の良い・悪い成分
4.1 併用推奨
タナクラクレイは処方の中で単独では完結しない粉体で、何と組み合わさっているかで製品の性格が決まる。自社集計の2製品から読める組み合わせは3つある。
1つ目が、別系統の毛穴アプローチとの併用 にあたる。P085 NILE 濃密泡洗顔では、43位のタナクラクレイの直後、44位にプロテアーゼが置かれている(出典: DappNotes 商品マスター集計)。物理吸着と酵素によるタンパク分解が成分表で1行違いに並ぶ構成で、経路が違うため両者は競合ではなく補完の関係にあたる。同じ組み合わせ方は、酵素のパパインと炭酸水素Naを隣り合わせで置く洗顔料にも見られ、毛穴を訴求する洗顔料は単一系統で完結しないのが実態 と読める。ただし系統が重なるほど角質・皮脂への負荷が積み上がる点は §4.2 で扱う。
2つ目が、他のクレイおよび非粘土系の吸着成分とのブレンド になる。P085 は本成分を含めて6種の鉱物系成分を42〜50位に連ね、P127 は20位カオリン・21位シリカ・23位タナクラクレイ・25位ベントナイト・30位炭という構成にあたる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。膨潤しないカオリナイト系と膨潤するスメクタイト系、細孔で吸着する炭では担い手が違うため、組み合わせて吸着量と感触を設計する意図が読める。もっとも本成分は鉱物系統が特定できないため、ブレンドの中でどの持ち分を担うのかまでは読み取れない。
3つ目が、洗浄基剤および粉体を支える処方成分との組み合わせ になる。配合2製品はどちらも脂肪酸を鹸化した石けん系の洗浄骨格を持つ。粉体は放置すると沈降・分離するため、P085 ではヒドロキシプロピルメチルセルロースが48位、鉱物が連なる42〜47位の直後に置かれる。加えて吸着系の洗浄は洗い上がりが乾燥側に振れやすいため、グリセリン等のヒューメクタントを前方に置く設計が一般的で、2製品ともグリセリンは成分表の3位にあたる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。
4.2 併用注意
タナクラクレイは処方設計者が管理する粉体で、消費者が「この成分と一緒に使ってはいけない」と気にする類の成分ではない。ただし使用上の留意点はいくつかある。
1点目が、毛穴アプローチの系統を重ねる運用 にあたる。§4.1 のとおり、実際の製品ではクレイの吸着と酵素のタンパク分解が同じ処方に同居している。そこへ、使う側がさらにスクラブや酵素洗顔、炭酸水素Na配合の重曹系洗顔を同じ日に重ねると、別々の原理で角質・皮脂に働く手段が積み上がる。どれか1つに絞るか、日を分けるのが安全側になる。
2点目が、吸着系どうしの重ねがけ になる。クレイ・シリカ・炭は、単独でも皮脂を選ばずに持っていく。クレイ洗顔のあとにクレイパックを重ねる、皮脂吸着系の下地やパウダーをさらに重ねるといった運用は脱脂が進みやすい。皮脂が多い人でも髭剃り後や乾燥期にはつっぱりやすくなるため、同じ日に重ねるかどうかは肌の状態で判断したい(出典: メンズスキンケア専門メディア各種)。
3点目が、スクラブ剤形での力加減と、髭剃り直後の扱い にあたる。配合2製品のうち P127 はスクラブを掲げる洗顔料で、粒子による摩擦が加わる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。粒子径のある粉体で強くこすれば物理刺激になるため、力を入れず泡や水の層を挟んで洗うのが基本になる。研磨の強さは成分名ではなく使う側の力と頻度で決まる部分が大きい(セルロースの記事で扱う研磨の論点と共通する)。とくに髭剃り直後の肌はバリア機能が落ち、洗浄後のpH回復も遅れやすいため、吸着とスクラブが重なる洗顔は時間を空けるのが安全側にあたる(関連: 髭剃り後の肌ケアガイド)。なお本成分に固有の感作性の報告は確認できなかったが、製品には香料・防腐剤・界面活性剤等が併配合されるため、敏感肌の人はパッチテストを挟むのが確実になる。
4.3 類似成分
タナクラクレイに近い成分は、「同じクレイ」と「同じ吸着系」の2方向に分かれる。
まずクレイ側。当メディアが扱うクレイ5成分を、表示名の付き方・鉱物系統・CIRの名指し評価の3軸で並べると次のようになる。
| 成分 | 表示名の付き方 | 鉱物系統 | 膨潤 | CIRの名指し評価 |
|---|---|---|---|---|
| カオリン | 鉱物名 | カオリナイト系(1:1型) | しない | あり・但し書きなしで安全 |
| ベントナイト | 鉱物名 | スメクタイト系(2:1型) | する | あり・吸入しうる製品には但し書き付き |
| 海シルト | 産地・由来名 | スメクタイトを含む混合物 | する | なし |
| モロッコ溶岩クレイ | 産地・由来名 | スメクタイト系(ステベンサイト主体との報告) | する | なし |
| タナクラクレイ(本成分) | 産地名と組成名の2つが並立 | 一次で特定できず | 不明 | なし |
(出典: CIR 2023 / 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報 / 医薬部外品の成分表示名称リスト / 各成分の鉱物学的報告)
読みどころは、表示名の軸そのものが本成分で壊れる 点と、鉱物系統の軸だけが埋まらない 点にあたる。3軸がどれか1つから他を導けない別々の切り口だという構図は、本成分でも変わらない。
本成分から見て最も近いのは海シルトにあたる。どちらも国内で採れる海底堆積物由来のクレイで、産地・由来を示す表示名を持ち、CIRの評価対象外で、原料メーカーの登録商標(マリンシルト®とミロネクトン®)でも流通する。違いは表示名の粒度で、海シルトの定義が「本品は、海の沈積物である。」と産地を特定しないのに対し、タナクラクレイは表示名そのものが産地を名指しする。同じ産地名型でも、読み取れる情報量は同じではない。
吸着系の側では、炭が細孔の内部表面で吸着し、多孔質という説明の仕方が本成分と最も近い。シリカは粘土鉱物ではないが機能は重なり、P127 ではこの3つが同じ成分表に並ぶ(出典: DappNotes 商品マスター集計)。さらに視野を広げれば、酵素のプロテアーゼ・パパイン、研磨のセルロース、アルカリ剤の炭酸水素Naも比較対象に入る。同じ「毛穴」という言葉でくくられていても、成分が実際にしていることは4通りに分かれる。
5. よくある質問
Q1. タナクラクレイはどこで採れる、何の成分ですか
福島県東白川郡棚倉町の棚倉破砕帯から採掘される鉱物を原料とする、無機の粉体成分です(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報 / 福島県棚倉町 公式ホームページ)。産業技術総合研究所が2026年1月に刊行した5万分の1地質図幅「大子」のプレスリリースでも、棚倉断層帯は茨城県常陸太田市から福島県東白川郡棚倉町へとのびる断層帯と説明されており、産地の位置は公的な地質記載で確認できます(出典: 産総研 プレスリリース 2026)。組成については、医薬部外品の成分表示名称リストに収載された「含硫ケイ酸アルミニウム」の本質欄が、本品は主としてイオウを含んだ含水ケイ酸アルミニウムからなる、と記述しています。ただし 鉱物としての系統(どの粘土鉱物なのか、膨潤するのかしないのか)は、本記事の調査範囲では特定できませんでした。採掘事業者・原料メーカー・自治体・制度側のリストのいずれも、鉱物種を名指ししていません。
Q2. 成分表にある「含硫ケイ酸Al」はタナクラクレイと同じものですか
同じ原料に対する2つの表示名として案内されていますが、成分表の表記だけから同一だと確定することはできません。原料メーカーは自社原料の化粧品表示名称を「タナクラクレイ または 含硫ケイ酸Al」と案内しており、同じ原料を産地名でも組成名でも書けます(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報)。ただし含硫ケイ酸Alが定義しているのは組成までで、産地を特定していません(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト)。したがって成分表で含硫ケイ酸Alを見つけても、それが棚倉産だとは読み取れません。逆にタナクラクレイという表示からは産地は読めますが、鉱物系統までは読めません。どちらの書き方でも、読み取れない情報が必ず残ります。
Q3. 医薬部外品の表示名称リストに載っていないと聞きました。品質に問題があるのですか
名前の単位では「載っていない」で合っていますが、制度から漏れているという意味ではありません。医薬部外品の成分表示名称リスト(平成20年3月25日版)を全文検索すると「タナクラクレイ」は0件ですが、同じ原料は組成名の「含硫ケイ酸アルミニウム」として連番623・成分コード523077に収載されています(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト)。産地名の側に部外品での名前が用意されていないだけ、という状態です。似た構図は他にもあり、プロテアーゼは由来菌別に、セルロースはグレード・製法別に名前が分割され、総称そのものは単独で収載されていません。加えて収載の有無が意味しているのは、2008年時点でその名前が部外品の表示名称として登録されていたかどうかまでで、品質や有効性を示すものではありません。
Q4. タナクラクレイは他のクレイより吸着力が強いのですか
比較できる根拠がない、というのが正確な回答になります。他のクレイであれば鉱物系統から吸着の担い手を推し量れますが(カオリンは1:1型、ベントナイトなどスメクタイト系は2:1型で層間にも水や有機分子を取り込める)(出典: CIR 2023)、タナクラクレイは鉱物系統が特定できないため、この比較の土俵に乗りません。確認できるのは平均細孔半径500Åの多孔質物質であるという記述までです(出典: 岩瀬コスファ ミロネクトン原料情報)。「備長炭の数十倍の多孔質」といった比較表現も流通していますが、測定法や比較対象を示した一次資料は確認できませんでした。実用的には、吸着の強弱を成分名で見積もるより、剤形・併配合されている系統・洗浄基剤・使用頻度を見るほうが判断の精度は高くなります。
Q5. タナクラクレイに毛穴を消したり、ミネラルを補給したりする効果はありますか
いずれも、この成分の働きとして説明できる範囲を超えます。タナクラクレイは医薬部外品の有効成分ではなく、承認された効能もありません(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト)。説明できるのは「皮脂や汚れを吸着して洗い流す」「粉体としてかさや感触を整える」という範囲までで、毛穴の構造を変える、皮脂分泌そのものを抑えるといった作用は確認されていません。ミネラルについても切り分けが必要です。採掘事業者は59種類のミネラルを確認したとし、一般向けの紹介では66種類とする資料もあって、数字自体が一致していません(出典: 八幡礦業 公開情報 / 国内の化粧品成分データベース各種)。さらに、鉱物としてミネラルを含むことと、それが肌に吸収されて働くことはまったく別の話です。組成や由来の事実と肌への効能は、それぞれ別に確認されるべき事柄になります。
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本記事に関する注記
- 本記事は特定商品の効果を保証するものではありません。成分の働きには個人差があり、体質・肌質により合わない場合があります。
- 肌に赤み・かゆみ・刺激等の異常が出た場合は使用を中止し、症状が続く・悪化する場合は皮膚科等の医療機関にご相談ください。傷・炎症のある肌への使用は避けてください。
- タナクラクレイは日本の化粧品成分表示名称であり、特定の鉱床・グレードを指定する名称ではありません。産地・組成に関する記述は、採掘事業者・原料メーカー・自治体が公開する情報および公的な地質記載に基づく範囲にとどめ、鉱物種の同定については一次で確認できなかった旨を明記しています。
- 医薬部外品の成分表示名称「含硫ケイ酸アルミニウム」は組成による名称であり、当該名称で収載された成分がすべて棚倉産であることを意味するものではありません。原料商品名・登録商標に関する記述も、化粧品成分表示名称との対応関係を整理する目的で記載しており、特定の原料・製品を推奨するものではありません。
- 本記事が参照するCIRの報告書は2023年3月31日公開の最終改訂報告書(Final Amended Report)です。同報告書の評価対象8成分にタナクラクレイは含まれず、記事中の言及は天然由来クレイ全般に対する評価の枠組みの参照にとどまります。外部の安全性指標は出典明記の参考値であり、絶対的な安全性を保証するものではありません。
- 本記事に含まれる製品数・配合位置の集計は DappNotes 商品マスター(2026年9月時点・スキンケア54製品/ヘアケア78製品)に基づく自社集計であり、市場全体の分布を示すものではありません。全成分表示は配合量1%以下の成分を順不同で記載できるため、記載位置から配合量を逆算することはできません。
- 本記事は成分の一般的な解説であり、化粧品・医薬部外品の効能効果は配合製品の承認・表示の範囲に従います。
- 本記事はAIによる下書きを編集部がレビュー・再構成して作成しています。
- 編集部レビュー済み・AI下書き活用