ベントナイトは、INCI名 Bentonite、医薬部外品表示名称も同じ「ベントナイト」、CAS番号1302-78-9の天然の粘土鉱物で、モンモリロナイトを主成分とする含水ケイ酸アルミニウムにあたる(出典: 化粧品成分オンライン / 日本化粧品工業会 化粧品の成分表示名称リスト)。洗顔料やパックの成分表で見かける「クレイ」の中身を鉱物名で書いたものが、この成分になる。化粧品での持ち分は2つあり、皮脂を吸着する吸着剤としての働きと、水中で自身の体積の数十倍まで膨らんでゲルをつくる増粘剤としての働きが同居している(出典: 化粧品成分オンライン)。本記事の軸はここから先にある。成分表示上、クレイは鉱物名で書かれるもの(ベントナイト・カオリン)と産地ブランド名で書かれるもの(海シルト・モロッコ溶岩クレイ)に分かれるが、その表示上の分かれ方と、実際の鉱物系統の分かれ方は一致しない。ベントナイト・海シルト・モロッコ溶岩クレイはいずれも膨潤するスメクタイト系で、カオリンだけが膨潤しないカオリナイト系にあたる(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。さらに公的な安全性評価の結論も、同じクレイの中で分かれている。本記事では、ベントナイトを基準点に置いて「クレイ配合」という言葉の中身を鉱物名で読み解き、CIRの但し書きが何に向けられたものかを中立に整理する。

1. ベントナイトの基本

1.1 何の成分か

ベントナイトは、天然に産するコロイド状の含水ケイ酸アルミニウムで、粘土鉱物の分類ではスメクタイトに属する。主成分はモンモリロナイトで、ほかに石英やクリストバライトといった鉱物を含む(出典: 化粧品成分オンライン)。外観は白色の粉末またはフレーク状で、水にもエタノールにも溶けない。溶けない代わりに、水中で自身の体積の数十倍まで水を吸収して結晶が膨らみ、ゲルを形成するという性質を持つ(出典: 化粧品成分オンライン)。

この膨潤という現象は、鉱物としての構造から説明できる。国内のベントナイトメーカーであるクニミネ工業の解説によれば、モンモリロナイトの単位結晶は厚さ約1nm・幅100〜1,000nmの薄い板状で、1枚の八面体シートが2枚の四面体シートに挟まれたサンドウィッチ構造をとる(出典: クニミネ工業)。CIRの報告書はこれを2:1型と呼ぶ(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。この八面体シートの中では、3価のアルミニウムが部分的に2価のマグネシウムに置き換わる同形置換が起きており、その結果として単位層は負の電荷を帯びる。負電荷を打ち消すために層と層の間に取り込まれるのが層間陽イオンで、これが水分子と水和すると層の間隔が広がる。これが膨潤の正体にあたる(出典: クニミネ工業)。層間陽イオンは他の陽イオンと簡単に交換できるため、ベントナイトは陽イオン交換能を持つ粘土としても知られる。

この膨潤は可逆的で、層間の極性分子を取り除くと構造は完全に収縮する。またCIRの報告書は、鉱石が grit(粗い粒)と非膨潤成分を取り除く処理を経て化粧品原料になると記載している(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。膨らまない部分を落として膨らむ部分だけを残す、という作られ方をしており、膨潤性は偶然の性質ではなく製品価値そのものにあたる。

なお、層間陽イオンにナトリウムを多く含むものをNa型、カルシウムを多く含むものをCa型と呼び、Na型は膨潤性・増粘性・懸濁安定性に優れ、Ca型は吸水性に優れるとされる(出典: クニミネ工業)。「ベントナイト」という一つの表示名の内側にもグレードの幅があり、その幅は成分表からは読み取れない。産地は世界各地に広がり、CIRはカナダ・中国・フランス・ドイツ・英国・ギリシャ・イタリア・日本・メキシコ・米国等を挙げている(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。国内でも山形・宮城・新潟・群馬・島根・岡山等で採掘されている(出典: クニミネ工業)。

規制上の位置づけは、医薬部外品の添加成分にあたる。ベントナイトは化粧品の成分表示名称としても医薬部外品の表示名称としても収載されており、いずれも表示名は「ベントナイト」で共通する(出典: 日本化粧品工業会 化粧品の成分表示名称リスト / Cosmetic-Info.jp)。日本薬局方と医薬部外品原料規格2021にも収載されている(出典: 化粧品成分オンライン)。ただし医薬部外品での役割は有効成分ではなく、粘度調整や吸着を担う「その他成分」にとどまる。ベントナイトそのものに承認された効能はない。

1.2 どんな製品に配合されるか

一般的な用途は幅広い。化粧品成分オンラインは、皮脂を吸着して化粧崩れを防ぐ目的でメイクアップ製品・化粧下地に汎用されるほか、洗顔料・洗顔石鹸・クレンジング・パック・シャンプーといった洗浄製品にも広く使われると整理している(出典: 化粧品成分オンライン)。CIRが参照する米FDAのVCRP(2022年)でも、ベントナイトの届出使用件数は262件と評価対象クレイ8成分のうちカオリンの1,046件に次ぐ2番目で、そのうち半分強はリーブオン(洗い流さない)製品と報告されている(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。海外の使用実態としては、洗い流す製品専用の成分ではない。

ところが日本のメンズスキンケアに絞ると、分布はかなり違って見える。DappNotes 商品マスターのスキンケア54商品を機械集計すると、クレイ系成分(カオリン/ベントナイト/海シルト/モロッコ溶岩クレイ/タルク/タナクラクレイ)を1つ以上含むのは11商品で、そのすべてが洗顔料だった(出典: DappNotes 商品マスター集計)。化粧水・乳液・美容液・日焼け止めには1件も入らない。ベントナイトに限れば配合は5商品で、こちらも例外なく洗顔料にあたる。

同じ成分名でも、処方の中での位置づけは商品ごとに大きく違う。ベントナイト配合5商品の記載位置を並べると次のようになる。

商品ベントナイトの記載位置全成分数相対位置
P121 バルクオム THE FACE WASH14位3540%
P087 ギャツビー フェイシャルウォッシュ パーフェクトスクラブ16位1889%
P127 ONE BY KOSE ポアクリア スクラブ ウォッシュ25位3474%
P111 チャップアップ フェイスウォッシュ42位5971%
P085 NILE 濃密泡洗顔 クリーム洗顔せっけん50位6281%

(出典: DappNotes 商品マスター集計)

ここで重要なのは読み方の作法にあたる。全成分表示は原則として配合量の多い順に並ぶが、1%以下の成分は順不同で記載してよいことになっている。したがって上の表から読み取れるのは「同じベントナイトでも製品ごとに位置づけが違う」ところまでで、記載位置が下だから効いていない、とは言えない。少量で機能する成分もあり、クレイの場合は吸着と増粘のどちらを狙うかで必要量も変わる。

もう一点、この集計から見えるのが組み合わせの実態にあたる。P085 NILE 濃密泡洗顔は、本記事のクラスタ4成分(カオリン・ベントナイト・海シルト・モロッコ溶岩クレイ)にタナクラクレイを加えた5種すべてを配合するが、5種とも成分表の後半(55〜81%)に集まっている(出典: DappNotes 商品マスター集計)。クレイの種類数と、1種あたりの配合量は別の話になる。

1.3 メンズ視点での見方

男性は皮脂分泌量が女性の約2倍とされるオイリー寄りの肌質で、テカリ・毛穴の黒ずみ・べたつきの悩みが多く、洗浄力の高い洗顔やスクラブ、クレイ系の製品が選ばれやすい(出典: メンズスキンケア専門メディア各種)。この文脈でベントナイトは理にかなった成分にあたる。化粧品成分オンラインは、ベントナイトを皮膚に塗布すると角質細胞間脂質であるコレステロール類はほとんど除去することなく、皮脂腺由来の脂質(皮脂)だけを特異的に吸着することが明らかにされていると整理している(出典: 化粧品成分オンライン)。落としたいのは皮脂で、残したいのは角質細胞間脂質、という優先順位に噛み合う性質になる。

ただしメンズ側の事情はもう一段複雑にあたる。皮脂が多い一方で肌内部の水分量は女性の約半分とされ、インナードライに陥りやすい。加えて毎日の髭剃りで角質と皮脂膜が削られ、バリア機能が低下しやすい(出典: メンズスキンケア専門メディア各種)。吸着力の強い洗顔を高頻度で重ねると、皮脂を取りすぎてかえって乾燥し、乾燥を補うために皮脂分泌が続く、という循環に入りやすい。ベントナイトの実用上の要点は、成分の有無ではなく使用頻度と放置時間の管理にある。

もう一つ、メンズ向け製品の売り文句で混同されやすいのが吸着系成分どうしの違いにあたる。炭(チャコール)は多孔質の炭素、シリカは非晶質の二酸化ケイ素で、ベントナイトは粘土鉱物。同じ「吸着」という言葉でも素材も仕組みも別物で、水で膨潤して粘度を出すのはベントナイトだけにあたる。皮脂対策という括りで見れば、吸着型(クレイ・炭・シリカ)のほかに、ライスパワーNo.6のように皮脂分泌そのものへ働きかける医薬部外品有効成分や、ピロクトンオラミンのような頭皮側のアプローチ、亜鉛PCAのような別系統も存在する。ベントナイトが担うのは、あくまですでに出た皮脂を物理的に吸い取る役割にとどまる。

2. 期待される働き・効果

2.1 メカニズム

ベントナイトの働きは、層構造という一つの特徴から二方向に派生する。

吸着。モンモリロナイトの単位層は同形置換によって負電荷を帯び、その電荷を層間陽イオンが打ち消している。層間陽イオンは他の陽イオンと簡単に交換できるため、粘土全体として陽イオン交換能を持つ(出典: クニミネ工業)。加えて薄い板状結晶が積み重なった構造そのものが大きな表面積を提供する。化粧品での吸着はこの表面と層間で起きるもので、化粧品成分オンラインは、皮膚に塗布したときに角質細胞間脂質のコレステロール類はほとんど除去せず皮脂腺由来脂質だけを特異的に吸着することが明らかにされていると整理している(出典: 化粧品成分オンライン)。皮脂を吸って化粧崩れを防ぐ用途と、洗顔・パックで皮脂汚れを取る用途は、どちらも同じ性質の言い換えにあたる。

膨潤と増粘。層間陽イオンが水分子と水和すると層の間隔が広がり、結晶が膨らむ(出典: クニミネ工業)。ベントナイトは膨潤性を持つスメクタイトの中でも、水中で自身の体積の数十倍まで水を吸収してゲルを形成するという性質を持ち、この性質を使って製剤の粘度や乳化安定性を調整する目的で配合される(出典: 化粧品成分オンライン)。CIRの報告書によれば、この膨潤は可逆的で、層間の極性分子を取り除けば構造は完全に収縮する(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。

ここが、本クラスタの他のクレイとベントナイトを分ける実務上の差にあたる。DappNotes 商品マスターでも、ベントナイトの役割は「吸着・増粘(クレイ)」として記録されており、他のクレイ系成分の「吸着・洗浄補助」とは別枠に置かれている(出典: DappNotes 商品マスター集計)。洗顔料にベントナイトが入っているとき、それは皮脂を吸うためだけでなく、洗顔料そのもののとろみ・こしを作るためでもある可能性がある。どちらが主目的かは成分表からは断定できないが、吸着だけを担う成分ではないという点は押さえておく価値がある。

なお、名前が似ていて働く相手が逆になるのがクオタニウム-18ベントナイト等の有機変性ベントナイトにあたる。これはベントナイトをクオタニウム-18のような四級アンモニウム塩と反応させ、結晶層の表面を親水性から疎水性に変えた別成分で、水ではなく油性成分の中で膨潤し、メイクアップ製品・化粧下地・日焼け止めの非水系増粘に使われる(出典: 化粧品成分オンライン クオタニウム-18ベントナイト)。成分表では別物として読む必要がある。

2.2 一般的な効能範囲

ベントナイトは医薬部外品では有効成分ではなく、粘度調整・吸着を担う「その他成分」として配合される。したがってベントナイトそのものに紐づく承認効能はなく、配合製品が標榜できるのは化粧品の効能の範囲、あるいは併配合された医薬部外品有効成分の承認効能の範囲にとどまる(出典: 厚生労働省『化粧品の効能の範囲』)。洗顔料であれば「皮膚を清浄にする」といった洗浄系の範囲、パックであれば「肌を整える」といった範囲が上限にあたる。

明確に範囲外なのは、クレイ系の製品でよく見かける訴求のいくつかにあたる。「毛穴の汚れを根こそぎ取る」「毛穴を引き締める」「皮脂分泌を抑える」「デトックス」といった表現は、洗浄・吸着を担う粉体の効能ではない。皮脂分泌そのものへの働きかけは医薬部外品有効成分の枠組みで、化粧品の吸着成分がカバーする領域ではない。一方で「皮脂や汚れを吸着する」「製剤に粘度を与える」といった処方事実の説明は、成分の働きの記述として成立する。

「皮脂だけを特異的に吸着する」という化粧品成分オンラインの整理についても、扱いには注意が要る。これは成分の物性として報告されている内容であって、特定製品の使用結果を保証するものではない。実際の洗顔・パックでは接触時間も他成分との組み合わせも製品ごとに違い、そのまま体感の差になるとは限らない。

2.3 限界・誤解されやすい点

ベントナイトをめぐる誤解は、その多くが「クレイ」という総称の粗さから生まれる。代表的なものを3点整理する。

1点目は、クレイ配合と書かれていれば中身は同じ、という読み違えにあたる。クレイは鉱物学的に複数の系統に分かれ、化粧品の成分表示名称もその分かれ方をそのまま反映していない。この点は本記事の中心なので §4.3 で表にして整理する。

2点目は、吸着力が強いほど良い製品、という読み違えにあたる。吸着は選択的とはいえ物理的な作用で、接触時間が長く頻度が高ければ必要な皮脂まで取られて乾燥に振れうる。とくに皮脂が多いメンズは「もっと落とす」方向に傾きやすいが、皮脂を取りすぎると乾燥を補うための皮脂分泌が続く循環に入りやすい(出典: メンズスキンケア専門メディア各種)。

3点目は、商品名の訴求語と成分表示名は一致する、という前提にあたる。集計の中には、商品名に海泥を掲げながら成分表には海シルトがなくカオリンとタルクが並ぶ製品も存在した(出典: DappNotes 商品マスター集計)。商品名の由来は各社の説明によるものであり、成分表示名称のリストとは別の体系で付けられている。訴求語から鉱物系統を推定することはできない。

3. 安全性・注意点

3.1 既知の刺激性・アレルギー報告

ベントナイトの皮膚に対する評価は、ヒト試験のデータが複数あり、いずれも穏やかな結果に落ち着いている。化粧品成分オンラインが紹介する試験は次のとおりにあたる(出典: 化粧品成分オンライン)。

対象試験配合濃度・製品形態結果
健常皮膚 102名閉塞パッチHRIPT(皮膚刺激性・皮膚感作性試験)3.5%配合フットマスクいずれの被験者にも有害な皮膚反応の報告なし
健常皮膚 52名閉塞パッチHRIPT7.5%配合フェイスクリーム試験製剤は皮膚刺激剤でも皮膚感作剤でもなかった
健常皮膚 25名14日間累積皮膚刺激性試験(閉塞パッチ)1.75%配合製剤いずれの被験者にも有害な皮膚反応の報告なし
過敏な皮膚 27名半閉塞パッチHRIPT3.8%配合クレイマスク試験製剤は皮膚刺激剤でも皮膚感作剤でもなかった

(出典: 化粧品成分オンライン)

過敏な皮膚を対象にした試験でも刺激剤・感作剤とは判定されておらず、皮膚刺激性・皮膚感作性はいずれもほとんどないと整理されている。化粧品での使用実績は20年以上で、日本薬局方および医薬部外品原料規格2021にも収載されている(出典: 化粧品成分オンライン)。

一方、データが揃っていない領域も明示されている。眼刺激性については試験結果や安全性データがみあたらず、現時点ではデータ不足で詳細不明とされる(出典: 化粧品成分オンライン)。粉末やパック剤が目に入らないようにし、入った場合は速やかに水で洗い流す、という一般的な注意が実用上の対応にあたる。

もう一つ、CIRが2022年に公表した暫定改訂版報告書は、ベントナイトを含む7成分について「偶発的に吸入されうる製品において安全と判断するにはデータが不十分」という但し書きを付けている(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。これは皮膚に塗ったときの評価ではなく、吸入という別の曝露経路に関する指摘にあたる。詳細は §3.3 で整理する。

なお、製品にはベントナイト以外に洗浄成分・香料・防腐剤等が併配合される。ベントナイト自体の感作性は報告されていなくても、それら他成分への個別のアレルギー反応の可能性は他の化粧品と同様にゼロではない。敏感肌・アトピー素因のある人は、初回使用前にパッチテストで相性を確認するのが無難にあたる。

3.2 推奨配合量と過剰配合時のリスク

ベントナイトには「何%配合すると効く」という閾値がない。狙う吸着量・粘度・使用感に合わせて必要量が決まる粉体で、日本の化粧品基準に配合上限の規定も置かれていない。

参照できる実勢値としては、CIRが挙げる使用実態がある。米FDAのVCRP(2022年)へのベントナイトの届出使用件数は262件で、評価対象クレイ8成分のうちカオリンの1,046件に次ぐ2番目。リーブオン製品での最大使用濃度は8%(スキンケア製剤)と報告されている(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。前掲のヒト試験も1.75%から7.5%の範囲で実施されており、実勢の配合濃度帯はおおむね数%以下から10%弱の範囲に収まると読める。

「過剰配合時のリスク」という問いに対しては、注意の向け先が二つに分かれる。処方側では、増粘剤としての性質があるため入れすぎれば粘度が上がりすぎて使用感が損なわれるが、これは製剤設計の問題で、消費者が手にする製品では品質規格として管理される範囲にあたる。消費者側で実際に起きうるのは、配合量というより使い方の過剰になる。吸着は接触時間と頻度で積み上がる作用で、クレイマスクを長く置きすぎる、毎日クレイ洗顔を重ねる、といった使い方をすると必要な皮脂まで取り去って乾燥やつっぱりにつながりうる。クレイマスクが乾いていく過程では肌側の水分も引き込むため、完全に乾ききる前に洗い流す運用が推奨されることが多い。

したがって、成分表でベントナイトの記載位置を気にする実益は乏しい。見るべきは製品が示す使用頻度と放置時間の目安、そして洗った後に何で保湿するかにあたる。

3.3 「危険性」と言われる根拠と実態の整理

ベントナイトに「危険」というラベルが貼られるとき、根拠として引かれるのはたいていCIRの結論にあたる。まずその中身を正確に押さえる。

CIRが2022年10月18日に公開した『Amended Safety Assessment of Naturally-Sourced Clays as Used in Cosmetics』は、天然由来クレイ8成分(アタパルジャイト/ベントナイト/クレイ/フラーズアース/ヘクトライト/イライト/カオリン/モンモリロナイト)を評価した報告書で、公開コメント用の暫定改訂版(Tentative Amended Report)にあたる(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。その結論は成分によって分かれている。

カオリンベントナイトを含む残り7成分
結論現行の使用実態・使用濃度において安全(safe)現行の使用実態・使用濃度において安全(safe)
但し書きなし偶発的に吸入されうる製品において安全と判断するにはデータが不十分

(出典: CIR 2022年暫定改訂版)

事実として正しいのは、ベントナイトの側に但し書きが付いているという点にあたる。ここは擁護せずに認めるべきで、同じクレイでもカオリンとは公的評価の結論が分かれている。

問題は、この但し書きが何に向けられたものかにある。原文は「偶発的に吸入されうる製品(products that may be incidentally inhaled)」を条件に置いており、対象になるのはパウダー・スプレーのように粒子が空気中に舞いうる剤型にあたる。皮膚に塗ったときの安全性を否定したものではなく、また洗い流す液状・クリーム状の製品を危険と評価したものでもない。前掲のとおり、皮膚に対するヒト試験では過敏な皮膚を対象にしたものを含めて刺激剤・感作剤とは判定されていない(出典: 化粧品成分オンライン)。

ここで自社集計と接続すると、日本のメンズが実際に手にする製品での意味がはっきりする。DappNotes 商品マスターのスキンケア54商品のうち、ベントナイトを配合するのは5商品で、そのすべてが洗顔料だった(出典: DappNotes 商品マスター集計)。粉末を舞わせて使う剤型ではなく、水で溶いて塗り、洗い流す使い方にあたる。つまりCIRの但し書きが直接当たる場面は、これらの製品ではほとんど想定されない。

一方で、「だから何も気にしなくてよい」と言い切るのも行きすぎにあたる。粉末原料そのものを扱う場面――手作りコスメでベントナイトの粉を計量する、パウダー状のクレイマスクを開封して水に溶く――では、粉塵を吸い込まない配慮が実務的な意味を持つ。CIRの但し書きはこの場面に近い。また眼刺激性はデータ不足で詳細不明とされており(出典: 化粧品成分オンライン)、目に入らないようにする、入ったら洗い流すという一般的な注意は有効にあたる。吸着力の強さが乾燥側に振れうる点も、安全性というより肌の状態と製品のミスマッチとして残る。

実用的な結論はこうなる。「ベントナイトが入っているから避ける」ではなく、「どの剤型で、どれくらいの頻度と時間、自分の肌に使うか」で判断する。危険と断じるのでも安全と断じるのでもなく、但し書きが向けられた場面と自分の使い方が重なるかどうかを見るのが、この成分との正確な付き合い方にあたる。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用推奨

ベントナイトは処方の中で他成分と組み合わせて働く粉体で、「この成分と一緒に使うと効く」というより「どういう役割の成分と組まれるか」で読むのが実態に即している。

1つ目は、他のクレイとの併用にあたる。集計では、P085 NILE 濃密泡洗顔がクラスタ4成分にタナクラクレイを加えた5種を配合し、P111 チャップアップ フェイスウォッシュがベントナイト・海シルトモロッコ溶岩クレイの3種を配合していた(出典: DappNotes 商品マスター集計)。粒子径や膨潤性の異なるクレイをブレンドすることで、吸着と使用感の両方を作る設計と読める。ただし種類数の多さと1種あたりの配合量は別の話にあたる。

2つ目は、洗浄成分との組み合わせにあたる。クレイは界面活性剤ではないため、それ単体で洗浄が完結するわけではない。ベントナイト配合5商品はいずれも洗顔料で、洗浄の主役は脂肪酸石けん系やアミノ酸系の洗浄成分が担い、クレイは吸着と使用感の側を受け持つ形になる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。コカミドプロピルベタインのような両性界面活性剤が泡質の補助に併配合される処方も一般的にあたる。

3つ目は、洗った後の保湿成分との組み合わせにあたる。吸着系の洗顔は皮脂を減らす方向に働くため、洗顔後にグリセリンで水分を、スクワランで油分を補う設計と組むと、つっぱりを扱いやすくなる。ベントナイトそのものより、この後工程の有無のほうが体感を左右しやすい。

4つ目は、処方内での機能的な兼務にあたる。ベントナイトは膨潤して増粘・懸濁安定の役割も担うため、粉体を含む洗顔料やパックで粉の沈降を防ぎ、製剤にとろみを与える側としても働く(出典: 化粧品成分オンライン)。増粘剤として別成分を足す代わりにクレイ自身がその役目を兼ねる、という設計が成り立つ。

4.2 併用注意

ベントナイトは処方設計者が管理する粉体で、消費者が「この成分と一緒に使ってはいけない」と身構える類のものではない。ただし使用上の留意点はいくつかある。

1点目は、角質ケア系との重ねがけにあたる。サリチル酸配合の洗顔やピーリング系のアイテムとクレイ洗顔を同じ日に重ねると、角質と皮脂の両方に働きかける工程が積み上がり、乾燥や刺激感につながりやすい。成分どうしが化学的に反応するという話ではなく、肌への負荷が足し算になるという意味にあたる。

2点目は、スクラブとの同居にあたる。ベントナイト配合5商品のうちP087とP127はスクラブ製品で、物理的な摩擦を伴う(出典: DappNotes 商品マスター集計)。吸着と摩擦が重なる分、こすりすぎると負荷が大きくなる。泡やペーストを転がすように使い、時間をかけないのが基本になる。

3点目は、髭剃り直後の使用にあたる。毎日の髭剃りで角質と皮脂膜が削られた直後の肌はバリア機能が低下しやすい(出典: メンズスキンケア専門メディア各種)。そこへ吸着力の強い洗顔やクレイマスクを重ねる運用は避けるか、頻度と時間を控えめにするのが安全側になる。なお眼刺激性のデータが揃っていない以上(出典: 化粧品成分オンライン)、洗顔・パック時は目に入らないよう注意する。

4点目は、粉末原料を自分で扱う場合にあたる。手作りコスメ等でベントナイトの粉末を計量・調製する場面では、CIRが吸入についてデータ不十分としている点をふまえ、粉塵を舞わせない・吸い込まない配慮が実務的な意味を持つ(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。

4.3 類似成分

ここが本記事の中心にあたる。化粧品の成分表示名称でクレイと呼ばれるものは複数あり、その並び方には3つの段が重なっている。DappNotes 商品マスターで洗顔料に頻出する4成分を、その3段で整理すると次のようになる。

成分第1段:表示名の付け方第2段:鉱物系統第3段:CIRの評価
ベントナイト(本成分)鉱物名スメクタイト系(2:1型・膨潤する)安全。ただし吸入しうる製品では但し書きあり
カオリン鉱物名カオリナイト系(1:1型・膨潤しない)安全。但し書きなし
海シルト産地ブランド名スメクタイト系(スメクタイト・モンモリロナイトを含む)名指しの評価なし
モロッコ溶岩クレイ産地ブランド名スメクタイト系(ガスール鉱床の学術報告ではステベンサイトが主体)名指しの評価なし

(出典: CIR 2022年暫定改訂版 / 日本化粧品工業会 化粧品の成分表示名称リスト)

読み取れることは3つにあたる。

第1に、表示名の分かれ方と、鉱物系統の分かれ方が一致しない。表示名で見ればベントナイトとカオリンが同じ「鉱物名」の側に並ぶが、鉱物系統で見ればベントナイトは海シルト・モロッコ溶岩クレイと同じスメクタイト系で、カオリンだけが別の系統にあたる。産地名で売られている2つは、中身を鉱物名で書けばベントナイトの側に来る。ベントナイトはこの意味で、産地名クレイの中身を鉱物名で表した基準点にあたる。

第2に、鉱物系統の差は構造の差として説明できる。スメクタイトは2:1型で、シリカ四面体シート2枚の間にアルミナ八面体シート1枚が挟まる。層どうしの結合が非常に弱く、水や有機分子が層間に入り込んでc軸方向に膨潤する。対してカオリンは1:1型で、四面体シートと八面体シートが1枚ずつ組み合わさった構造をとり、格子内の置換もほとんどない(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。膨潤するかしないかという決定的な差はここから来る。

第3に、公的評価も同じ線では分かれない。CIRの評価対象8成分に含まれるのはベントナイトとカオリンで、海シルト・モロッコ溶岩クレイは日本の化粧品成分表示名称であり評価対象に入っていない(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。したがってこの2成分については「同系統のスメクタイト系クレイに対する評価はあるが、本成分そのものを名指しで評価した文書はない」というのが正確な書き方にあたる。そして但し書きの有無で見ると、カオリンだけが無条件のsafeで、ベントナイトは残り6成分と同じ側になる。

ここで大事なのは、この3段のどれも優劣の話ではないという点にあたる。表示名が産地ブランド名なのは各社が中身をごまかしているからではなく、成分表示名称リストの収載区分に従っているだけで、読み取れる情報量が違うというだけの差になる。鉱物名で書かれていれば成分表を見た時点で系統が分かり、産地名で書かれていれば別途調べる必要がある、という違いにとどまる。

粒子径についても、断定を避けるべき論点がある。CIRの報告書はある原料供給者の報告としてベントナイトのD50を61.1µm、カオリンを3.1µmと記載する一方、同じ報告書の中で別のベントナイト粒度分析では50%が5µm未満、もう1件では50%が6.5µm未満と示されている(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。同一文書の中で数値が大きく食い違う以上、「ベントナイトのほうが粒子が粗い」と一般化することはできない。グレードや分析によって幅がある、というのが正確な理解にあたる。

クレイの外側では、吸着という機能でシリカ・炭(チャコール)が近い位置にある。どちらも膨潤して増粘するという性質は持たず、そこがベントナイトとの違いにあたる。皮脂対策という文脈で並べれば、吸着型(クレイ・炭・シリカ)に対して、ライスパワーNo.6のように皮脂分泌そのものへ働きかける医薬部外品有効成分や、亜鉛PCA・ピリドキシンHClのような別系統のアプローチが存在する。ベントナイトはあくまで吸着型に属し、分泌そのものに働きかける成分ではない。

5. よくある質問

Q1. ベントナイトは危険だと聞きました。CIRがデータ不十分と言っているのは本当ですか

但し書きが付いているのは事実です。CIRが2022年10月18日に公開した暫定改訂版報告書では、ベントナイトを含む7成分について、現行の使用実態・使用濃度では安全としつつ「偶発的に吸入されうる製品において安全と判断するにはデータが不十分」という例外が付いています。一方、同じ報告書でカオリンだけは但し書きなしで安全と結論されています(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。ただしこの但し書きは吸入という曝露経路に向けられたもので、パウダーやスプレーのように粒子が空気中に舞いうる剤型が想定されています。皮膚に塗ったときの評価はこれとは別で、健常皮膚102名・52名・25名、過敏な皮膚27名を対象としたヒト試験ではいずれも皮膚刺激剤・皮膚感作剤とは判定されていません(出典: 化粧品成分オンライン)。DappNotes 商品マスターの集計でも、ベントナイトを配合する5商品はすべて洗顔料で、水で溶いて塗り洗い流す使い方でした(出典: DappNotes 商品マスター集計)。この剤型でCIRの但し書きが直接当たる場面はほとんど想定されません。ただし、手作りコスメ等で粉末原料そのものを計量・調製する場面は話が別で、粉塵を吸い込まない配慮に意味があります。

Q2. カオリンとベントナイトはどう違いますか

いちばん大きな違いは、膨潤するかしないかです。ベントナイトはスメクタイト系の2:1型で、シリカ四面体シート2枚の間にアルミナ八面体シート1枚が挟まる構造をとり、層どうしの結合が弱いため水が層間に入り込んで膨らみます。水中では自身の体積の数十倍まで水を吸収してゲルを形成します(出典: CIR 2022年暫定改訂版 / 化粧品成分オンライン)。対してカオリンはカオリナイト系の1:1型で、格子内の置換もほとんどなく、膨潤しません(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。この差は使われ方にも表れ、ベントナイトは吸着に加えて増粘・懸濁安定も担うのに対し、カオリンは吸着と感触の側が中心になります。もう一つの違いは公的評価で、CIRの2022年暫定改訂版でカオリンのみ但し書きなしのsafe、ベントナイトには吸入に関する但し書きが付きます。使用実態でもカオリンの届出件数1,046件に対しベントナイトは262件と差があり、カオリンはリーブオン製品での使用が多い成分です(出典: CIR 2022年暫定改訂版)。DappNotes 商品マスターでも、クレイ系4成分のうちヘアケア製品にまで登場するのはカオリンだけでした(出典: DappNotes 商品マスター集計)。

Q3. 海泥・ガスールと書かれた商品も同じクレイですか

鉱物系統としては近い側にあります。海シルト(沖縄の海底に堆積した泥。現地名クチャ、海泥・マリンシルトとも呼ばれます)とモロッコ溶岩クレイ(ガスールの名で知られます)は、いずれも化粧品の成分表示名称としては産地に由来する名前ですが、組成としてはスメクタイト系にあたります。ただし系統の中で主体となる鉱物種は同じではなく、海シルトは雲母・スメクタイト・モンモリロナイト・カオリナイトを含む混合物と説明され、モロッコ溶岩クレイはガスール鉱床の学術報告ではマグネシウムに富むステベンサイトが主体とされます(出典: 日本化粧品工業会 化粧品の成分表示名称リスト / アンコール・アン マリンシルト原料技術情報 / Benhammou ほか Clays and Clay Minerals 2009)。つまり中身を鉱物名で書けば、ベントナイトと同じ系統に入ります。逆に言えば、表示名が産地ブランド名になっている分、成分表を見ただけでは鉱物系統が分からないという違いがあります。これは各社が中身をごまかしているという話ではなく、成分表示名称リストの収載区分に従っているだけで、読み取れる情報量が違うという差にとどまります。なお注意が必要なのは、商品名の訴求語と成分表示名は別体系だという点です。DappNotes 商品マスターの集計には、商品名に海泥を掲げながら成分表には海シルトがなくカオリンとタルクが並ぶ製品もありました(出典: DappNotes 商品マスター集計)。商品名の由来は各社の説明によるもので、そこから鉱物系統を推定することはできません。

Q4. クレイ洗顔は毎日使っていいですか

肌質と製品の設計によります。ベントナイトの吸着は、角質細胞間脂質のコレステロール類はほとんど除去せず皮脂腺由来の脂質だけを特異的に吸着するとされており(出典: 化粧品成分オンライン)、皮脂分泌量が女性の約2倍とされるメンズのオイリー肌には噛み合う性質です。ただし吸着は接触時間と頻度で積み上がる作用なので、毎日重ねれば必要な皮脂まで取られて乾燥に振れることがあります。男性は皮脂が多い一方で肌内部の水分量は女性の約半分とされ、毎日の髭剃りで角質と皮脂膜が削られてバリア機能が低下しやすいという事情もあります(出典: メンズスキンケア専門メディア各種)。実用的な運用は、製品が示す使用頻度の目安に従うこと、クレイマスクは完全に乾ききる前に洗い流すこと、洗浄後にグリセリン・スクワラン等で水分と油分を補うことの3点です。テカリが気になるからと洗浄回数を増やすと、乾燥を補うための皮脂分泌が続く循環に入りやすいので、頻度を上げる方向より後工程の保湿を足す方向が現実的です。

Q5. 成分表の後ろの方に書かれていたら意味がないですか

そう読むのは早計です。全成分表示は原則として配合量の多い順に並びますが、1%以下の成分は順不同で記載してよいことになっています。DappNotes 商品マスターの集計でも、ベントナイトの記載位置は14位/35成分から50位/62成分まで散らばっていました(出典: DappNotes 商品マスター集計)。この幅から読み取れるのは「製品ごとに処方内の位置づけが違う」ところまでで、効果の有無ではありません。とくにベントナイトは吸着と増粘という二方向の役割を持つため、どちらを狙うかで必要量も変わります。判断材料として実用的なのは記載位置より、その製品がクレイを主役に据えた設計か(商品名やパッケージでクレイを訴求しているか)、洗浄の主役はどの成分か、そして自分の肌がその洗浄力に合うかという点です。

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本記事に関する注記

  • 本記事は特定商品の効果を保証するものではありません。成分の働きには個人差があり、体質・肌質により合わない場合があります。
  • 肌に赤み・かゆみ・刺激等の異常が出た場合は使用を中止し、症状が続く・悪化する場合は皮膚科等の医療機関にご相談ください。傷・炎症のある肌への使用は避けてください。
  • 本記事で扱うベントナイトは、化粧品・医薬部外品の処方中に配合された状態を前提としています。粉末原料そのものの取り扱いや、工業用途のベントナイトは本記事の対象外です。
  • 本記事に含まれる製品数の集計は DappNotes 商品マスター(2026年9月時点・メンズスキンケア54商品)に基づく自社集計であり、市場全体の分布を示すものではありません。
  • 本記事は成分の一般的な解説であり、化粧品・医薬部外品の効能効果は配合製品の承認・表示の範囲に従います。
  • 外部の安全性指標(CIR等)は出典明記の参考値であり、絶対的な安全性を保証するものではありません。引用したCIRの報告書は公開コメント用の暫定改訂版(Tentative Amended Report・2022年10月18日公開)です。
  • 本記事はAIによる下書きを編集部がレビュー・再構成して作成しています。
  • 編集部レビュー済み・AI下書き活用