合成フルオロフロゴパイトは、INCI名 Synthetic Fluorphlogopite、CAS番号12003-38-2の合成鉱物で、原料業界では「合成マイカ」とも呼ばれる(出典: Cosmetic-Info.jp)。天然の金雲母(フロゴパイト)と同じ層状構造の結晶を、高純度の原料を溶かして工場で作ったもので、天然の結晶と比べて鉄をほとんど含まず、水酸基(OH)の位置がフッ素(F)に置き換わっている(出典: CIR 2012)。化粧品での配合目的は増量剤と親水性増粘剤で、主な舞台はファンデーションやフェイスパウダーなどのメイクアップにあたる。
この記事の要点は3つある。第一に、天然にあるマイカをわざわざ作り直す理由(くすみの原因になる鉄を含まない・フッ素置換で熱に強い)。第二に、名前の変遷(化粧品では旧名「合成金雲母」から現在の名前へ改められたが、医薬部外品では今も「合成金雲母」と書く)。第三に、フッ素を含む成分としての扱い。同じ粉体クラスタのタルク・マイカが地中から掘り出す鉱物であるのに対し、本成分ははっきり「工場で作る粉体」の側に立つ(同クラスタのヒドロキシアパタイトは天然由来と合成の両方がある)。成分表の名前の頭に「合成」と付くかどうかで由来が見分けられる。
1. 合成フルオロフロゴパイトの基本
1.1 何の成分か
CIRの報告書は、合成フルオロフロゴパイトを「ケイ酸アルミニウムマグネシウムの層がカリウムで弱く結びついた、雲母型のフッ素置換鉱物を合成で模したもの」と定義している(出典: CIR 2012)。お手本になった天然鉱物は金雲母(フロゴパイト)で、化学式は KMg3Si3AlO10(F,OH)2、硬度は2〜3、層に沿って完全にはがれる性質(へき開)を持つ(出典: Handbook of Mineralogy)。層と層の間をつなぐカリウムの結びつきが弱いため、薄い板状に割れる。この板状の粒子が、化粧品の粉体としての感触やのびを決める。
合成品のモース硬度も2〜3と報告されている(出典: CIR 2012)。日本の医薬部外品原料規格2021は同じ物質を「合成金雲母(別名 合成フッ素金雲母)」として収載し、「無水ケイ酸」「酸化アルミニウム」「酸化マグネシウム」及びケイフッ化カリウムを混合(または炭酸カリウムも加えて混合)し、溶融後に結晶を晶出させたもの、と定義している。性状は白色〜淡灰色の粉末でにおいはない(出典: 医薬部外品原料規格2021)。原料にケイフッ化カリウムが入る点が、結晶にフッ素が組み込まれる理由にあたる。
製法について、CIRの報告書は工業規模の例として、酸化物とフッ化物の混合物を最高1450℃で液状になるまで溶かし、ゆっくり冷やして結晶を育てる方法を挙げる。さらに、遊離したフッ化物を取り除くために、できた塊を粉砕したあと600〜1350℃で熱処理し、酸またはキレート剤の水溶液で洗う工程も記している(出典: CIR 2012)。つまり本成分は、溶かす・冷やす・砕く・焼く・洗う、を経た工業製品で、掘り出した石を砕いて精製する天然マイカとは作り方の出発点が違う。
規制上の位置づけは、日本では化粧品にも医薬部外品にも使われる添加成分にあたる。医薬部外品の有効成分としての承認効能はなく、配合目的は増量剤・親水性増粘剤にとどまる(出典: Cosmetic-Info.jp)。EUの化粧品成分データベース CosIng でも機能は BULKING, VISCOSITY CONTROLLING で、化粧品規則の附属書による制限は付いていない(出典: CosIng)。
1.2 名前の変遷: 合成金雲母から合成フルオロフロゴパイトへ
この成分は、同じ物質なのに場面によって名前が違う。整理すると次のようになる。
| 場面 | 名前 | 補足 |
|---|---|---|
| 化粧品の全成分表示(現在) | 合成フルオロフロゴパイト | 化粧品の成分表示名称リストNo.26(2013年4月2日発行)で収載 |
| 化粧品の全成分表示(改正前) | 合成金雲母 | 改正前の表示名称。新製品上市などの機会に改正名へ切り替えることが推奨されている |
| 医薬部外品の成分表示 | 合成金雲母 | 部外品の成分表示名称リスト 連番795 |
| 医薬部外品原料規格2021 | 合成金雲母(別名 合成フッ素金雲母) | 英名は Synthetic Golden Mica |
| INCI(国際名) | Synthetic Fluorphlogopite | CIR・CosIng もこの名前 |
(出典: Cosmetic-Info.jp / 医薬部外品原料規格2021 / 日本化粧品工業会 医薬部外品の成分表示名称リスト)
Cosmetic-Info.jp によれば、日本化粧品表示名称事典は第2版まで旧名「合成金雲母」に INCI の Synthetic Fluorphlogopite を当てていたが、表示名称の改正に伴って第3版で旧名側の INCI を削除した。旧名と新名は同じ INCI を持っていた、つまり同じ物質の呼び名の付け替えにあたる(出典: Cosmetic-Info.jp)。
実用上のポイントは2つある。1つは、同じ原料でも、化粧品の成分表では「合成フルオロフロゴパイト」、薬用(医薬部外品)の成分表では「合成金雲母」と書かれうること。もう1つは、似た名前の別成分と混同しないことで、化粧品表示名称には構成に酸化鉄を含む無機物として定義される「合成金雲母鉄」が別に登録されているほか、天然の「金雲母」は化粧品では改正名が「マイカ」になっている(出典: Cosmetic-Info.jp)。「フッ素金雲母」とだけ書かれた場合は、天然に産するフッ素金雲母と区別がつかない。成分表で本成分を探すときは「合成」の2文字まで含めて照合するのが確実になる。
1.3 どんな製品に配合されるか
合成マイカのメーカーであるトピー工業は、化粧品用の合成マイカが「特に、ファンデーション、アイメイク、フェイスカラー、口紅などの商品に処方されています」と説明している(出典: トピー工業)。CIRの報告書が参照する米国の使用実態(VCRP 2011年データ)でも、届出675件のうち666件がリーブオン(洗い流さない)製品、洗い流す製品は9件にとどまる(出典: CIR 2012)。報告された最大使用濃度はフェイスパウダーの67%で、口紅20%・アイメイク15%、洗い流す製品では石けん・ボディ洗浄料の30%が最大だった。メイクアップの粉体で処方の主要構成成分になりうる成分、というのが基本の姿にあたる。
DappNotes の商品マスター(2026年9月時点・スキンケア54製品/ヘアケア78製品)では、配合はスクラブ洗顔料の P127 ONE BY KOSE ポアクリア スクラブ ウォッシュの1製品だけで、全34成分中29番目に置かれている(出典: DappNotes 商品マスター集計)。ヘアケアには1件も入らない。同じ粉体クラスタのタルク・マイカ・ヒドロキシアパタイトを含めても、配合6製品のうち5製品が洗顔料だった。本サイトの商品マスターはメイクアップを扱っていないため、メイク中心の成分が洗顔料の脇役として1回だけ現れる、という分布になる。
29番目という位置からは、配合量が多くない側だとまでは読める。ただし全成分表示は1%以下の成分を順不同で書けるため、順位から正確な配合量や効き目の大小は推定できない。また、スクラブ洗顔料に入っているからといって本成分がスクラブ粒子だとは限らない。本成分の登録上の配合目的は増量剤・親水性増粘剤で、「研磨・スクラブ剤」は含まれていない(出典: Cosmetic-Info.jp)。
同クラスタのマイカ・ヒドロキシアパタイト・酸化亜鉛の3つは、自社マスターでは同じ3商品にだけそろって現れる。原料メーカーからは、合成マイカ(合成フルオロフロゴパイト)・酸化亜鉛・ヒドロキシアパタイトを組み合わせ、製造元が皮脂の吸着をうたう複合粉体が出ている(天然マイカ版は確認できていない)。三好化成は自社の MiyoSTAY SM について、表示名称を「合成フルオロフロゴパイト、酸化亜鉛、ヒドロキシアパタイト」とし、「皮脂・特に遊離脂肪酸の選択的吸着性が高く」と説明している(出典: 三好化成)。ただし各商品がどの原料を使っているかは成分表示からは分からない。3商品の表示は「マイカ」で本成分の名前とは一致せず、本成分を配合する P127 には酸化亜鉛もヒドロキシアパタイトも入っていない。
1.4 メンズ視点での見方
洗顔料で本成分を見かけたとき、読み取れることは多くない。役割は増量・感触調整・粘度調整の脇役で、皮脂や毛穴汚れに向き合う主役は洗浄成分と、クレイ・炭などの吸着系成分の側にある。P127 でも、カオリン・タナクラクレイ・ベントナイト・炭が同じ成分表に並んでいる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。皮脂やテカりが気になる人が洗顔料を比べるなら、合成マイカの有無ではなく、洗浄成分の系統と吸着系成分の組み立てを見るほうが判断を誤りにくい。
一方、メイクアップやBBクリーム、ルースパウダーを使う人にとっては、本成分は主要構成成分になりうる。この場合に効いてくるのが、次章で扱う「鉄をほとんど含まないので色がくすみにくい」という性質になる。
2. 期待される働き・効果
2.1 天然マイカを作り直した理由
マイカは天然に大量に産する鉱物なのに、なぜわざわざ合成するのか。一次資料から読める理由は2つある。
1つめは鉄を含まないこと。CIRの報告書は「合成フルオロフロゴパイトは、天然のフルオロフロゴパイトと違い、鉄をほとんど含まない(virtually iron free)」と記している(出典: CIR 2012)。報告書が引く不純物データの例でも鉄は0.008%だった。トピー工業は合成マイカの特長として「天然のものに比べて色にくすみがない」と説明し、化粧品用の合成マイカについて「不純物由来の結晶のくすみはなく透明」だとしている(出典: トピー工業)。肌の上で色を見せるファンデーションやアイカラーでは、土台の粉体が無色に近いほど色材の発色を邪魔しにくい。なおCIRは、紫外線をより効率よく吸収させるために意図的に鉄を入れて作る場合もあると付記しており(出典: CIR 2012)、化粧品表示名称にも鉄を含む別名称(合成金雲母鉄)がある。「合成=必ず鉄なし」ではなく、鉄の有無を設計で選べる、と読むのが正確になる。
2つめは熱への強さ。CIRは、雲母ではフッ素が水酸基の代わりに入ることがあり、フッ素の存在が三八面体型の雲母構造の熱安定性を高めると説明する(出典: CIR 2012)。トピー工業も「水酸基(OH)をフッ素(F)で置き換えているために、より高温での使用が可能」と記している(出典: トピー工業)。この性質は化粧品より工業用途で効いていて、米国地質調査所(USGS)の2026年版鉱物資源概要は、フッ素に富む雲母である粉砕合成フルオロフロゴパイトが、耐熱性・電気的性質を要する用途で天然の粉砕マイカを置き換えうると書いている(出典: USGS 2026)。
トピー工業は1972年に合成雲母の応用開発を始め、1987年に化粧品原料の合成マイカを実用化したと説明している(出典: トピー工業)。化粧品では天然のマイカもそのまま広く使われており、合成品が天然品を置き換えたわけではない。Cosmetic-Info.jp の市販化粧品データでも、「マイカ」の登録は46,239件、「合成フルオロフロゴパイト」は11,630件(旧名「合成金雲母」は別に9,769件)となっている(出典: Cosmetic-Info.jp)。両者は成分表で別の名前として並存している。
2.2 一般的な効能範囲
本成分に登録されている配合目的は、増量剤と親水性増粘剤の2つだけにあたる(出典: Cosmetic-Info.jp)。
増量剤(体質顔料)としての働きは、色材や機能性成分をかさ増しして粉体を扱いやすくし、のび・すべり・肌への付着といった感触を整えること。板状の粒子は肌の上で重なって広がりやすく、パウダー製品の使用感を支える。親水性増粘剤としての働きは、水系の処方で粘度を調整すること。CIRは、本成分が粘度を高める働きによって製剤中で凝集し、より大きな粒子になるとも述べている(出典: CIR 2012)。
いずれも処方の内側で完結する仕事で、肌そのものに何かを「効かせる」成分ではない。日本では医薬部外品の有効成分ではなく、承認された効能もない。
2.3 限界・誤解されやすい点
誤解されやすい点は3つある。
1つめは「合成=人工だから危険、天然だから安心」という見方。粉体では、天然にも合成にもそれぞれの管理の論点がある。天然の鉱物は掘った場所の地質に由来する混入物を管理する必要があり、合成品は製造時に原料として入れるフッ素がどれだけ溶け出すかを管理する必要がある。どちらも規格で管理されており、由来だけで優劣は決まらない。
2つめは「マイカが入っている=ラメ・パール感」という見方。パール感を出す原料には、マイカ類の表面を酸化チタンなどで覆った被覆品がある(医薬部外品原料規格2021にも「雲母チタン」や「黒酸化鉄被覆合成金雲母」などの被覆品が別に収載されている)。化粧品の表示名称には被覆品を1語で表す名前がほぼなく、「合成フルオロフロゴパイト」と「酸化チタン」のように構成成分を並べて書く運用になっている(出典: 医薬部外品原料規格2021 / Cosmetic-Info.jp)。本成分だけで光沢の強さは読み取れない。
3つめは「スクラブ洗顔料に入っている=スクラブ粒子」という見方で、これは1.3で見たとおり登録上の配合目的からは支持されない。
3. 安全性・注意点
3.1 CIRの評価
米国の化粧品成分安全性評価機関 CIR(Cosmetic Ingredient Review)は、2012年6月12日付の最終報告書で「合成フルオロフロゴパイトは、この評価に記載した現行の使用実態と使用濃度において、化粧品に安全」と結論した(出典: CIR 2012)。論文版は2015年に International Journal of Toxicology に掲載されている。
報告書が検討した本成分自体のデータは次のとおり(出典: CIR 2012)。
- 急性毒性: 経口LD50はマウス・ラットで9000mg/kg超、4時間の吸入試験でラットのLC50は5.1mg/L超
- 遺伝毒性: 染色体異常試験・細菌の復帰突然変異試験・小核試験・哺乳類細胞の遺伝子突然変異試験のいずれも陰性
- 皮膚刺激: ウサギ・モルモットで55%ペーストに刺激なし。ヒトの48時間パッチテスト(42名)でも刺激なし
- 感作: モルモット・マウスで感作なし。13.824%配合の圧縮パウダーのHRIPT(ヒト反復パッチテスト・107名)で刺激・感作なし
- 光毒性・光感作: モルモットで陰性
- 眼刺激: 代替法2種(HET-CAM・BCOP)で刺激性なし。ウサギの試験でも眼刺激物ではないとされたが、投与1時間後に全例で目やにと結膜の赤みが見られている
一方で、本成分自体の発がん性試験と生殖発生毒性試験は見つからなかったと報告書は明記している。その部分は、構造の近いケイ酸アルミニウムマグネシウム系クレイの既存評価を読み替える(read-across)形で補われた。Panelは、粒子が大きく水に溶けないため皮膚に浸透しにくいこと、製造時の粒子の大きさと製剤中での凝集により吸入されうる大きさの粒子になりにくいことも判断材料に挙げている(出典: CIR 2012)。
「データがない項目がある」ことと「危ない」ことは別にあたる。ここで読むべきは、欠けている試験を近縁物質のデータで補ったうえで安全と結論した、という評価の組み立てそのものになる。
3.2 フッ素を含むことの扱い
本成分は結晶の中にフッ素を含む。気になりやすい点なので、一次資料で書けることと、書けないことを分けて整理する。
一次資料で書けること(規格と評価)
医薬部外品原料規格2021の「合成金雲母」には、純度試験として次の上限が定められている(出典: 医薬部外品原料規格2021)。
| 項目 | 規格 |
|---|---|
| pH | 5.5〜7.5 |
| 酸可溶物 | 2.0%以下 |
| 鉛 | 20ppm以下 |
| ヒ素 | 5ppm以下 |
| フッ素溶出量 | 20ppm以下(試料を水と1時間加熱還流したときに溶け出すフッ素量) |
CIRの報告書もこの日本の規格を紹介し、規格を満たす合成フルオロフロゴパイトは純度99%超と報告されている、と記す。報告書の不純物データの例では、溶け出しうるフッ素は11ppmだった(出典: CIR 2012)。CIRは一方で、フッ素イオンが粒子やれんがから溶け出すという報告があることにも触れたうえで、Panelの結論として「製造工程の高温処理により、これらのイオンが製剤中に溶け出す可能性は低い」としている(出典: CIR 2012)。1.1で見た、粉砕後の熱処理と酸・キレート剤での洗浄は、遊離したフッ化物を除くための工程にあたる。
解説として紹介できること(化粧品基準との関係)
日本の化粧品基準は、別表第1に掲げる物を化粧品に配合してはならないと定め、その別表第1には「フッ素化合物のうち無機化合物」が挙がっている(出典: 化粧品基準)。この一文と本成分の関係について、厚生労働省が本成分を名指しした明文には、本記事の調査では到達できていない。
この点について Cosmetic-Info.jp は、本成分は別表第1の「フッ素化合物のうち無機化合物」に該当する可能性が高いとしつつ、化粧品基準の制定に先立つ意見募集への厚生省(当時)の回答(平成12年9月20日)に、旧「粧配規」収載の「合成金雲母」「合成金雲母(2)」の使用が差し支えないことを明確化する旨があることを根拠に、旧名の合成金雲母、ひいては改正名の本成分も例外として配合できると解釈してよい、と解説している。同サイトは、その後に例外を明確化した文書は見つけられなかったとも記している(出典: Cosmetic-Info.jp)。
つまり、「フッ素溶出量20ppm以下」という原料規格は一次資料で確かめられる事実であり、「別表第1の例外として配合できる」という整理は、Cosmetic-Info.jp が行政の回答を根拠に示している解釈にあたる。実務上は国内の市販化粧品に広く配合されている成分だが、本記事では後者を行政の明文としては扱わない。
3.3 公的評価の出方を4成分で比べる
同じ粉体クラスタの4成分は、公的評価の出方がばらばらになっている。
| 成分 | 由来 | CIR | EU化粧品規則 | 日本の原料規格 |
|---|---|---|---|---|
| タルク | 天然(掘る) | 2013年最終報告書で安全(石綿を含まないタルクが対象) | 3歳未満用パウダーに表示義務 | 外原規2021収載。原料タルクの石綿含有を管理する2006年の通知あり |
| マイカ | 天然(掘る) | CIRの評価一覧(2022年版)にこの名前では載っていない | 制限なし | 外原規2021収載 |
| 合成フルオロフロゴパイト(本成分) | 合成(作る) | 2012年最終報告書で安全 | 制限なし | 外原規2021「合成金雲母」。フッ素溶出量20ppm以下などの規格 |
| ヒドロキシアパタイト | 天然由来と合成の両方 | CIRの評価一覧(2022年版)にこの名前では載っていない | ナノ形態のみ口腔用品で制限 | 外原規2021収載 |
(出典: CIR 2012 / CosIng / 医薬部外品原料規格2021。他3成分の詳細は各記事を参照)
本成分は、4つのうちCIRの最終報告書があり、EUの制限もない側に入る。ただし、CIRの一覧に載っていないことは「安全性が確認されていない」「危ない」という意味ではなく、評価の対象に選ばれていないというだけにあたる。表の各欄は、それぞれの機関がどの論点を拾ったかの違いを映したもので、成分どうしの安全性の順位表ではない。
4. 相性の良い・悪い成分
4.1 併用される成分
本成分は化学的に不活性で水に溶けない粉体で(出典: CIR 2012)、特定の成分と組み合わせて働きが強まる・弱まるという関係は、一次資料からは読み取れない。組み合わせの実態として書けるのは、原料の段階でほかの粉体と複合化される例があることにとどまる。
1.3で触れた三好化成の MiyoSTAY SM は、合成マイカを基材に酸化亜鉛とヒドロキシアパタイトを組み合わせた複合粉体で、表示名称は「合成フルオロフロゴパイト、酸化亜鉛、ヒドロキシアパタイト」と3つ並ぶ(出典: 三好化成)。トピー工業も、合成マイカに粉砕・表面処理・有機物との複合化を行って製品化していると説明している(出典: トピー工業)。ただし全成分表示は原料単位ではなく成分単位で書かれるため、成分表のどれとどれが同じ原料かは確定できない。
4.2 併用注意
成分どうしの相性として避けるべき組み合わせは、一次資料では報告されていない。注意点は組み合わせよりも剤型の側にある。
- パウダー製品: 本成分が主要構成成分になりやすい剤型。CIRは製品中の粒子が吸入されうる大きさになりにくいと判断しているが、粉体全般の扱いとして、パフで強くはたいて舞い上げない、顔に直接吹き付けるタイプは息を止めて使う、といった配慮は当てはまる。
- スクラブ洗顔料: 本成分自体は研磨目的の成分ではないが、同じ製品に研磨目的の粒子が入っている場合、肌への負担を決めるのは成分より擦る力と頻度になる。赤みやヒリつきが出るなら頻度を落とす。
- 傷・炎症のある肌: 成分を問わず、洗顔料やメイクアップを傷口にのせない。
4.3 類似成分
いちばん近いのは天然のマイカになる。ただし化粧品の「マイカ」は、Cosmetic-Info.jp の定義で「種々の化学組成のケイ酸系鉱物」とされ、鉱種を特定しない総称にあたる。医薬部外品原料規格2021では、「マイカ」は天然に産する含水ケイ酸アルミニウムカリウム(白雲母型の組成)、「金雲母」は天然に産する含水ケイ酸マグネシウムカリウムとして別々に収載され、本成分の「合成金雲母」は後者の合成版という位置になる(出典: 医薬部外品原料規格2021 / Cosmetic-Info.jp)。化粧品の成分表では天然の金雲母も「マイカ」に束ねられるため、「マイカ」と書かれていれば天然、「合成フルオロフロゴパイト」と書かれていれば合成、という見分け方ができる。
タルクも板状にはがれる層状ケイ酸塩で、すべりのよさで使われる点は近い。違いは由来と論点で、タルクは天然鉱物ゆえに同じ鉱床の石綿の混入をどう管理するかが論点の中心にあるのに対し、本成分は原料を選んで溶かして作るため、論点は製造時に入れるフッ素の側にある。
ヒドロキシアパタイトは同じ「作る粉体」側にも入りうるが、組成はリン酸カルシウムでケイ酸塩ではない。洗顔料・化粧水の成分表で、マイカ・酸化亜鉛と一緒に現れる例が自社マスターにある(出典: DappNotes 商品マスター集計)。
粉体の役割で比べるなら、同じ P127 に並ぶカオリン・ベントナイト・タナクラクレイ・炭は吸着を担う側、シリカは感触調整を担う側、本成分は増量と粘度調整を担う側、と整理できる。
| 成分 | 由来 | 組成の系統 | 化粧品での主な役割 |
|---|---|---|---|
| 合成フルオロフロゴパイト(本成分) | 合成 | 金雲母型の層状ケイ酸塩(OHをFに置換) | 増量・親水性増粘 |
| マイカ | 天然 | 鉱種を特定しないケイ酸系鉱物 | 抗ケーキング・増量・着色・不透明化・すべり |
| タルク | 天然 | 含水ケイ酸マグネシウム | すべり・吸着・増量など |
| ヒドロキシアパタイト | 天然由来と合成 | リン酸カルシウム | 研磨・増量・口腔ケア |
(出典: Cosmetic-Info.jp / CIR 2012)
5. よくある質問
Q1. 合成フルオロフロゴパイトとマイカは同じものですか
同じ系統の鉱物ですが、別の成分です。どちらも薄くはがれる層状のケイ酸塩で、化粧品の粉体としての使われ方は重なります。違いは由来で、「マイカ」は天然に産する雲母類をまとめた名前、「合成フルオロフロゴパイト」は天然の金雲母と同じ構造の結晶を、高純度の原料を溶かして作った合成品です(出典: Cosmetic-Info.jp / CIR 2012)。合成品は鉄をほとんど含まず、水酸基の位置がフッ素に置き換わっています。原料業界で「合成マイカ」と呼ばれるのはこちらです。
Q2. 成分表に「合成金雲母」と書いてありました。別の成分ですか
同じ物質です。「合成金雲母」は化粧品での改正前の表示名称で、現在の表示名称が「合成フルオロフロゴパイト」です(出典: Cosmetic-Info.jp)。医薬部外品(薬用化粧品など)の成分表では、今も「合成金雲母」と書かれます。一方、「合成金雲母鉄」は構成に酸化鉄を含む別の表示名称なので、同じものとして扱わないでください。
Q3. フッ素が入っていると聞きました。肌に大丈夫ですか
フッ素は結晶の構造の一部として入っていて、溶け出す量には規格があります。日本の医薬部外品原料規格2021は、フッ素溶出量を20ppm以下と定めています(出典: 医薬部外品原料規格2021)。米国のCIRも、製造時の高温処理によりフッ化物イオンが製剤中に溶け出す可能性は低いと結論し、現行の使用実態と濃度で化粧品に安全と評価しています(出典: CIR 2012)。なお、化粧品基準の配合禁止リストにある「フッ素化合物のうち無機化合物」との関係は、Cosmetic-Info.jp が行政の過去の回答を根拠に「例外として配合できると解釈してよい」と解説しているもので、本記事では行政の明文としては扱っていません。
Q4. 天然のマイカと合成のもの、どちらを選ぶべきですか
由来だけで優劣は決まりません。天然のマイカは採掘に由来する混入物の管理、合成品は製造時に入れるフッ素の管理がそれぞれの論点で、どちらも原料規格で管理されています。メイクアップで色のくすみの少なさを重視するなら合成品の特長が生きる、という使い分けはありますが、洗顔料では両者とも脇役の少量成分で、製品選びの決め手にはなりにくい成分です。
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本記事に関する注記
- 本記事は特定商品の効果を保証するものではありません。成分の働きには個人差があり、体質・肌質により合わない場合があります。
- 肌に赤み・かゆみ・刺激等の異常が出た場合は使用を中止し、症状が続く・悪化する場合は皮膚科等の医療機関にご相談ください。傷・炎症のある肌への使用は避けてください。
- 化粧品基準別表第1「フッ素化合物のうち無機化合物」と本成分の関係は、Cosmetic-Info.jp の解説を紹介したもので、行政の明文に基づく記述ではありません。
- 本記事が参照するCIRの報告書は2012年6月12日付の最終報告書(Final Report)です。使用件数・使用濃度は同報告書の表(VCRP 2011年データ)に基づきます。
- 本記事に含まれる製品数の集計は DappNotes 商品マスター(2026年9月時点・スキンケア54製品/ヘアケア78製品)に基づく自社集計であり、市場全体の分布を示すものではありません。
- 原料メーカー(トピー工業・三好化成)の記述は、各社が自社の原料について説明している内容の紹介であり、個別の市販品がその原料を使っていることを示すものではありません。
- 本記事は成分の一般的な解説であり、化粧品・医薬部外品の効能効果は配合製品の承認・表示の範囲に従います。
- 外部の安全性指標(CIR等)は出典明記の参考値であり、絶対的な安全性を保証するものではありません。
- 本記事はAIによる下書きを編集部がレビュー・再構成して作成しています。
- 編集部レビュー済み・AI下書き活用