マイカは、INCI名 Mica、医薬部外品表示名称も「マイカ」、CAS番号12001-26-2の天然鉱物の粉体で、日本語では雲母(うんも)と呼ばれる鉱物のグループにあたる(出典: Cosmetic-Info.jp / 医薬部外品の成分表示名称リスト)。薄くはがれる板状の結晶が、すべり・光沢・不透明感をつくり、粉体どうしの固まりを防ぐ。ファンデーションやおしろいでは主役級の粉体で、洗顔料や化粧水には感触と見た目を整える少量成分として入る。この記事の見どころは2つある。1つ目は名前の割れ方で、化粧品の成分表では「マイカ」1語に複数の鉱種が束ねられる一方、医薬部外品の表示名称では「マイカ」「金雲母」「セリサイト」が別々の品目として並ぶ。2つ目は公的評価の出方で、マイカには米国の化粧品成分評価機関CIRの評価がない。ただしそれは「危ない」や「未検証」という意味ではない。本記事では兄弟成分のタルク・合成フルオロフロゴパイト・ヒドロキシアパタイトと並べ、「地中から掘り出す粉体か、工場で作る粉体か」という軸で成分表の「マイカ」を読み解く。

1. マイカの基本

1.1 何の成分か

化粧品表示名称「マイカ」の定義は、「本品は、種々の化学組成のケイ酸系鉱物であり、結晶形が薄い片となる開面を有する。」とされている(出典: Cosmetic-Info.jp jcln)。EUの化粧品成分データベースCosIngの説明も同じ方向で、「化学組成はさまざまだが物理的性質の似たケイ酸塩鉱物のシリーズ」で、明瞭なへき開をもち非常に薄い板に割れうる、と書く(出典: CosIng)。つまり化粧品の「マイカ」は、特定の1鉱物ではなく、薄くはがれるという性質を共有する鉱物グループを指す名前にあたる。

一方、医薬部外品原料規格2021(外原規)の「マイカ」はもう少し狭く、「天然に産する含水ケイ酸アルミニウムカリウム」と定義され、性状は淡灰色の粉末とされる(出典: 医薬部外品原料規格2021)。これは鉱物学の資料が示す白雲母(muscovite)の組成 KAl2(Si3Al)O10(OH,F)2 と一致する(出典: Handbook of Mineralogy)。外原規では、マグネシウムを主体とする金雲母(phlogopite)は「金雲母」という別の品目で、「天然に産する含水ケイ酸マグネシウムカリウム」と定義されている。ここから言えるのは「外原規のマイカは白雲母型の組成」までで、市販の化粧品に使われるマイカのうち白雲母がどれだけを占めるかという流通実態は、本記事の調査範囲では一次資料で確認できていない。

硬さは、白雲母で2.5〜4(結晶の向きで異なる)、金雲母で2〜3とされる(出典: Handbook of Mineralogy)。モース硬度1のタルクよりは硬いが、鉱物としては軟らかい側に入り、どちらも同じ結晶面にそって完全にはがれる性質(へき開)をもつ。

名前の対応を整理すると、化粧品と医薬部外品で束ね方が違う。

呼び名化粧品表示名称(jcln)医薬部外品表示名称・外原規
マイカ「マイカ」=種々の化学組成のケイ酸系鉱物(鉱種を特定しない)「マイカ」=天然の含水ケイ酸アルミニウムカリウム(白雲母型)
金雲母旧表示名称。改正表示名称は「マイカ」「金雲母」=天然の含水ケイ酸マグネシウムカリウム(別品目)
セリサイト(絹雲母)単独の表示名称はない(焼成セリサイトのみ)「セリサイト」=天然の微結晶含水ケイ酸アルミニウム・カリウム(別品目)
合成マイカ「合成フルオロフロゴパイト」(別成分)「合成金雲母」(別品目)

(出典: Cosmetic-Info.jp jcln / 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版 / 医薬部外品原料規格2021)

化粧品側の「金雲母」は、改正表示名称が「マイカ」に設定されており、日本化粧品表示名称事典でも第2版まではINCI名に「Mica」が当てられていた(第3版で削除)(出典: Cosmetic-Info.jp jcln)。つまり化粧品の成分表では、金雲母は「マイカ」と書く側に寄せられている。セリサイトも化粧品では独立した表示名称がなく、被覆品の表示名称「パーフルオロアルキルシリル化マイカ」の定義が「パーフルオロアルキルシランを被覆したセリサイト」となっていることから、セリサイトが「マイカ」の名で呼ばれる運用が読み取れる。医薬部外品では逆に、マイカ・金雲母・セリサイト・焼成セリサイト・雲母チタン・合成金雲母がそれぞれ別の表示名称として並ぶ(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版)。同じ「金雲母」という文字列でも、化粧品では「マイカ」の旧名、部外品では独立した1品目を指す点に注意が要る。

1.2 どんな製品に配合されるか

マイカの配合目的は、表示名称の側で「抗ケーキング剤、増量剤、着色剤、不透明化剤、滑沢剤」の5つが挙げられている(出典: Cosmetic-Info.jp jcln)。CosIngも固結防止・増量・着色・不透明化の4つを挙げる(出典: CosIng)。板状で肌の上をよく滑り、光を反射して見た目に働く粉体なので、ファンデーション・おしろい・アイシャドウのような粉体主体のメイクアップでは処方の骨格を担いうる。酸化チタンなどで表面を被覆したパール顔料の芯としても使われ、医薬部外品の表示名称「雲母チタン」の定義は「「マイカ」に「酸化チタン」の薄膜を被覆処理したもの」とされている(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版)。化粧品の表示名称には「酸化チタン被覆マイカ」のような単独の名前はなく、被覆品は構成成分を並べて書く運用になる(出典: Cosmetic-Info.jp jcln)。成分表に「マイカ」と「酸化チタン」が並んでいたら、パール顔料のような被覆品の構成成分である可能性もある、という読み方ができる。

なお、鉱物資源としてのマイカの用途は化粧品が中心ではない。米国地質調査所(USGS)の2026年版鉱物資源概要によると、米国で生産される粉砕マイカの主な用途は目地材・油井掘削用の添加剤・塗料・屋根材・ゴム製品とされる(出典: USGS Mineral Commodity Summaries 2026)。化粧品用のマイカは、この大きな工業原料の流れの一部を精製・粉砕した粉体にあたる。

ここで本記事の中核データにあたるのが、DappNotes の自社商品マスターの集計になる。スキンケア54製品を機械集計すると、マイカを含むのは3製品で、内訳は洗顔料2製品と化粧水1製品だった(出典: DappNotes 商品マスター集計)。ヘアケア78製品には1件もない。

製品タイプマイカの順位全成分数位置(全体に占める割合)
洗顔料A(石けん系)14位2654%
化粧水(洗い流さない)32位4473%
洗顔料B(石けん系)27位3577%

(出典: DappNotes 商品マスター集計)

読み取れることは2つある。1つ目は、3製品とも成分表の後半に置かれていること。全成分表示は原則として配合量の多い順に並ぶが、1%以下の成分は順不同で書いてよいため、位置から言えるのは「配合量は多くない側」までにあたる。2つ目は、洗い流す洗顔料だけでなく、洗い流さない化粧水にも入っていること。本クラスタ4成分(タルク・マイカ・ヒドロキシアパタイト・合成フルオロフロゴパイト)のうち、洗い流さない製品に入るのはマイカとヒドロキシアパタイトの2つで、どちらもこの化粧水1製品に限られる。もう1つ目立つのは、この3製品すべてにヒドロキシアパタイトと酸化亜鉛が同時に入っている点で、これは §4.1 で扱う。

⚠️ 化粧品の表示名称「マイカ」は鉱種を特定しないため、成分表の「マイカ」から白雲母か金雲母か、セリサイトかを読み分けることはできない。また、天然のマイカと工場で作る合成マイカは表示名称が別(合成は「合成フルオロフロゴパイト」)なので、成分表に「マイカ」とあれば天然の鉱物由来、と読める。

1.3 メンズ視点での見方

メンズスキンケアでマイカに出会うのは、メイクアップよりも洗顔料や化粧水の成分表の後半になる。自社集計でマイカを含む3製品も、メンズ向けの洗顔料2製品と化粧水1製品で、化粧水は商品名に「オイルコントロール」を冠していた(出典: DappNotes 商品マスター集計)。そのため「皮脂を吸うためにマイカが入っている」と読みたくなるが、マイカの配合目的に吸着剤は入っていない(出典: Cosmetic-Info.jp jcln)。表示名称の側から言えるマイカの仕事は、すべり・かさ・色味・不透明感を整えることにとどまる。

男性は皮脂分泌量が女性の約2倍とされ、皮脂・汗をすっきり落としたい需要が強い(出典: メンズスキンケア専門メディア各種)。皮脂対策を期待して製品を選ぶなら、成分表で見るべきはマイカではなく、洗浄成分の種類や、配合目的に吸着が挙がる成分(カオリンなど)のほうになる。マイカは使用感と見た目の脇役、と割り切って読むのが正確な読み方にあたる。

もう1つの実用的な見方は、成分表の「マイカ」と「合成フルオロフロゴパイト」の読み分けにある。どちらも雲母型の板状粉体だが、前者は地中から掘り出す天然鉱物、後者は工場で溶融・結晶化させて作る合成品で、名前の頭に「合成」が付くかどうかで由来が分かる(出典: Cosmetic-Info.jp jcln / CIR 2012)。どちらが優れているという話ではなく、成分表から由来を読み取れるという事実として押さえておけば足りる。

2. 期待される働き・効果

2.1 メカニズム

マイカの働きは、薄くはがれるという結晶の性質から説明できる。CIRの合成フルオロフロゴパイトの報告書は、金雲母を含む雲母類について、ケイ酸塩のシートがカリウムイオンの層で弱く結びついた層状構造をもち、このカリウムイオンの層が完全なへき開を生む、と説明している(出典: CIR 2012)。シートの中は強く結合し、シートとシートの間だけが弱いので、粉砕すると薄い板状の粒子になりやすい。

この板状粒子が、化粧品での3つの仕事につながる。

  1. すべり(滑沢): 薄い板が肌の上で重なり合って滑るため、粉体製品ののびや、クリーム・洗顔料の感触を軽くする。
  2. 光の反射と不透明感(着色・不透明化): 平らな面が光を反射・散乱させ、つや感やふんわりした見た目をつくる。酸化チタン等の薄膜を被覆するとパール顔料の芯にもなる(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版)。
  3. かさと扱いやすさ(増量・抗ケーキング): 他の粉体を薄めて扱いやすくし、粉どうしが湿気などで固まるのを防ぐ。

同じ層状ケイ酸塩でも、カオリンのような粘土鉱物が吸着を配合目的の1つに持つのに対し、マイカの配合目的に吸着剤はない(出典: Cosmetic-Info.jp jcln)。マイカの価値は吸う力ではなく、板の形そのものにある。

2.2 一般的な効能範囲

マイカは日本では医薬部外品の有効成分ではなく、承認された効能はない。化粧品における仕事は、表示名称の配合目的どおり「抗ケーキング剤、増量剤、着色剤、不透明化剤、滑沢剤」の範囲にとどまる(出典: Cosmetic-Info.jp jcln)。医薬部外品に配合される場合も、表示名称「マイカ」で入る添加成分(その他の成分)の扱いになる(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版)。

言い換えると、マイカが製品にもたらすのは「使い心地」と「見た目」で、肌そのものを変える働きではない。粉体製品での伸びや密着感、洗顔料の泡や感触の調整、化粧水のわずかなつや感など、処方の内側で完結する役割にあたる。

2.3 限界・誤解されやすい点

誤解されやすい点は3つある。

1つ目は「マイカ=皮脂を吸う粉」という読み方。先に触れたとおり、マイカの配合目的に吸着剤は入っていない。皮脂の吸着を製造元がうたう複合粉体の中には、マイカ系の粉体を芯に使う設計もあるが(出典: 三好化成 / US 6,730,309 B2)、それは複合粉体としての設計の話で、成分表の「マイカ」単体の性質ではない。

2つ目は「成分表のマイカは全部同じもの」という読み方。表示名称「マイカ」は鉱種を特定しない名前で、白雲母型・金雲母型・セリサイトのどれに当たるかは成分表からは分からない(出典: Cosmetic-Info.jp jcln)。粒子の大きさや形も成分表には現れず、同じ「マイカ」でも原料によって使用感や光り方は違いうる。

3つ目は「マイカ=ラメ(キラキラ)」という連想。マイカの配合目的には着色・不透明化と並んで増量・滑沢・抗ケーキングがあり(出典: Cosmetic-Info.jp jcln)、光り方を狙う使い方と、感触や粉の扱いやすさを狙う使い方が同じ名前で表示される。洗顔料や化粧水の後半に入るマイカを、見た目のきらめきを狙った配合と決めつけることはできない。どの目的で入っているかは、成分表からは判別できない。

3. 安全性・注意点

3.1 既知の刺激性・アレルギー報告

最初に、本記事が一次で確認できた範囲を明示しておく。マイカの皮膚刺激性・感作性について、CIRのような公的評価機関がまとめた評価文書は、本記事の調査範囲では見つかっていない(出典: CIR Quick Reference Table 2022)。そのため、刺激性試験の件数や陽性率のような数値は本記事では示さない。これは「刺激がある」「データがない」という意味ではなく、「本記事が引用できる形の公的評価文書がない」という意味にあたる。

そのうえで、確認できる事実は3つある。1つ目は、医薬部外品原料規格2021がマイカに純度規格を設けていること。酸可溶物2%以下・鉛30ppm以下・ヒ素5ppm以下と定められ、pHは7.0〜10.0とされる(出典: 医薬部外品原料規格2021)。天然鉱物であるぶん不純物の管理が品質規格に組み込まれている、と読める。2つ目は、EUの化粧品規則でマイカに制限がないこと(CosIngで規制欄が空)(出典: CosIng)。3つ目は、日本の化粧品基準でも配合禁止・配合制限の対象に名前がないこと(出典: 化粧品基準)。

合わない可能性がゼロの成分はないので、使用後に赤み・かゆみなどが出た場合は使用をやめる、という一般原則はマイカにも当てはまる。ただ、洗顔料や化粧水の後半に入る少量の無機粉体が、刺激の主な原因として名指しされる根拠は本記事の調査範囲では見当たらない。

3.2 推奨配合量と過剰配合時のリスク

日本の化粧品基準にマイカの配合上限はなく、EUでも化粧品規則上の濃度制限はない(出典: 化粧品基準 / CosIng)。マイカは「何%で効く」成分ではなく、処方のなかで粉体としてどれだけ使うかで役割が変わる成分にあたる。粉体主体のメイクアップでは主要構成成分になりうる一方、自社集計の洗顔料・化粧水では3製品とも成分表の後半(全体の54〜77%の位置)にあった(出典: DappNotes 商品マスター集計)。

「過剰配合時のリスク」として実際に意味があるのは、成分の毒性より剤型の側になる。ルースパウダーのように舞い上がりやすい粉体製品では、粉じんを吸い込まないという粉体製品全般に共通する注意が当てはまる。洗い流す洗顔料や液状の化粧水に入る少量のマイカでは、この論点はほぼ関係しない。

3.3 「危険性」と言われる根拠と実態の整理

マイカが不安視されるときの根拠は、おおむね3つの読み違いに整理できる。

① 「CIRの評価がない=安全性が確かめられていない」という読み方

CIRは、米国の業界団体が1976年に設立し資金を拠出しつつ、評価の手続きは業界から独立して運営される化粧品成分の安全性評価機関で、専門家パネルが成分ごとに報告書をまとめる(出典: CIR About)。そのCIRが公開する評価一覧(Quick Reference Table、2022年9月版)には、MicaもHydroxyapatiteも行がない。2022〜2026年の優先審議リストにもmicaの語は出てこない(出典: CIR Quick Reference Table 2022 / CIR Priority List 2022〜2026)。

ここで言えるのは「CIRの評価一覧にこの名前では載っていない」までにあたる。CIRは優先順位を付けて成分を選んで評価しており、評価がないことは、その成分に問題が見つかったことも、データが乏しいことも意味しない。安全性を語るときは、CIRの有無だけで判断せず、各国の規制(EU・日本とも制限なし)や原料規格(外原規の純度規格)と合わせて見るのが正確な扱いになる。

本クラスタ4成分の公的評価の出方を並べると、ばらつきがよく分かる。

成分CIRIARCEU化粧品規則日本
タルク2013年最終報告で安全(石綿を含まないタルクが対象)2024年にGroup 2A3歳未満用パウダーに表示義務2006年通知で原料の石綿管理・外原規収載
マイカ(本成分)評価一覧に載っていない対象外制限なし外原規収載
合成フルオロフロゴパイト2012年最終報告で安全対象外制限なし外原規「合成金雲母」
ヒドロキシアパタイト評価一覧に載っていない対象外ナノ形態のみ口腔用品で制限外原規収載

(出典: CIR Quick Reference Table 2022 / CosIng / 医薬部外品原料規格2021 ほか。タルクとヒドロキシアパタイトの詳細は各記事を参照)

「評価がない」ことと「危ない」ことは別で、「評価がある」ことと「評価の結論が安全」であることも、成分ごとに中身が違う。4本を並べると、評価の有無と結論は成分ごとにばらばらで、有無だけで安全性の序列は付けられない。

② 「天然の鉱物だから、タルクと同じ石綿の問題がある」という読み方

同じ層状ケイ酸塩の天然鉱物でも、石綿(アスベスト)混入の管理が行政通知や国際機関の評価で論点になっているのはタルクの側にあたる(詳細はタルクの記事)。マイカについて同種の行政通知や国際機関の発がん性評価は、本記事の調査範囲では確認していない。天然鉱物である以上、不純物の管理が品質の前提になるのはマイカも同じで、外原規は鉛・ヒ素・酸可溶物の上限を定めている(出典: 医薬部外品原料規格2021)。タルクの論点をマイカにそのまま当てはめない、というのが正確な扱いになる。

③ 「合成マイカのほうが安全で、天然マイカは劣る」という読み方

合成フルオロフロゴパイトは、天然の雲母を工場で作り直した合成品で、CIRの報告書は、天然のフルオロフロゴパイトと違い合成品はほぼ鉄を含まない(virtually iron free)と書いている(出典: CIR 2012)。合成マイカのメーカーも、厳選した原料で合成するため不純物由来のくすみがなく透明、と自社の製品を説明する(出典: トピー工業 合成マイカ製品頁)。ただしこれは、色味や透明感という品質特性の違いで、天然マイカが危険という根拠にはならない。天然か合成かは、成分表の名前(「マイカ」か「合成フルオロフロゴパイト」か)で区別できる事実として押さえておけば足りる。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用推奨

マイカには、特定の成分と組み合わせないと働かない、という性質はない。そのうえで自社集計から見える組み合わせが1つある。

マイカ・ヒドロキシアパタイト・酸化亜鉛の3つは、自社マスターでは同じ3商品にだけそろって現れる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。マイカを含む3製品(洗顔料2・化粧水1)は、3つともヒドロキシアパタイトと酸化亜鉛も配合しており、逆にこの3成分がそろう製品はほかにない。

原料メーカーからは、合成マイカ(合成フルオロフロゴパイト)・酸化亜鉛・ヒドロキシアパタイトを組み合わせ、製造元が皮脂の吸着をうたう複合粉体が出ている。三好化成の「MiyoSTAY SM」は表示名称が「合成フルオロフロゴパイト、酸化亜鉛、ヒドロキシアパタイト」で、製造元は「皮脂・特に遊離脂肪酸の選択的吸着性が高い」と説明している(出典: 三好化成 MiyoSTAY SM 製品頁)。同社の基礎特許は、芯の粉体にヒドロキシアパタイトを直接被覆し、その上に亜鉛を重ねる構成で、芯の例にセリサイト・白雲母(white mica)・合成マイカ等を挙げており、天然マイカを芯にする構成も特許の射程にはある(出典: US 6,730,309 B2)。ただし、天然マイカ版の同種原料が現在市販されているかは確認できていない。

そして最も大事な点として、各商品がどの原料を使っているかは成分表示からは分からない。MiyoSTAY SM の芯は合成マイカで、表示は「合成フルオロフロゴパイト」になるため、成分表に「マイカ」と書く3製品の表示とは名前が合わない。また全成分表示は1%以下を順不同で書けるため、3成分が成分表のどこに並んでいるかも、同じ原料から来ている根拠にはならない。ここから言えるのは「こういう組み合わせの原料が市場にある」までで、3製品に「皮脂吸着パウダーが入っている」と読むことはできない。

4.2 併用注意

マイカは処方のなかで粉体として形を保って働く成分で、成分どうしの組み合わせで注意が要るという公的な記述は、本記事の調査範囲では見当たらない。実用上の注意は組み合わせより剤型の側にあり、パウダー状の製品を重ねづけする場面では、粉じんを吸い込まないという粉体製品全般の注意が当てはまる。

4.3 類似成分

マイカに近い成分は、本クラスタの「地中から掘り出す粉体か、工場で作る粉体か」という軸で並べると位置関係が分かりやすい。

成分由来組成モース硬度立ち位置
タルク天然(掘る)含水ケイ酸マグネシウム1最も軟らかい鉱物の標準。天然ゆえ石綿混入の管理が論点
マイカ(本成分)天然(掘る)ケイ酸系鉱物(外原規は含水ケイ酸アルミニウムカリウム)2.5〜4(白雲母)薄くはがれる板状で、光沢・すべりを担う
合成フルオロフロゴパイト合成(作る)金雲母型でOHをフッ素に置換2〜3天然マイカを鉄なしで作り直した「合成マイカ」
ヒドロキシアパタイト天然由来と合成の両方リン酸カルシウム5歯や骨の無機成分と同じ物質。4本で唯一ケイ酸塩でない

(出典: Handbook of Mineralogy / CIR 2012 / 医薬部外品原料規格2021 / Cosmetic-Info.jp jcln)

最も近いのは合成フルオロフロゴパイトで、CIRの報告書は、これを雲母型でフッ素置換された鉱物の合成模倣品と定義し、合成品は天然のフルオロフロゴパイトと違ってほぼ鉄を含まないと書く(出典: CIR 2012)。USGSも、熱的・電気的性質が求められる用途では粉砕した合成フルオロフロゴパイトが天然の粉砕マイカを代替しうる、としている(出典: USGS Mineral Commodity Summaries 2026)。成分表では「マイカ」=天然、「合成フルオロフロゴパイト」=合成と、名前で由来が分かれる。

タルクは同じ層状ケイ酸塩の天然鉱物で、すべりを担う点でマイカと役割が重なる。違いは組成(マグネシウムのケイ酸塩)と硬さ(モース硬度1)、そして石綿混入の管理という論点の有無にある。粘土鉱物のカオリンも板状の層状ケイ酸塩だが、配合目的に吸着が入る点でマイカとは役割の軸が違う。非晶質の二酸化ケイ素であるシリカは結晶構造をもたない粉体で、板状のへき開というマイカの特徴とは系統が別になる。

5. よくある質問

Q1. 成分表の「マイカ」と「合成フルオロフロゴパイト」は何が違いますか

どちらも雲母型の板状粉体ですが、由来が違います。「マイカ」は地中から掘り出す天然の鉱物で、表示名称の定義は「種々の化学組成のケイ酸系鉱物」です(出典: Cosmetic-Info.jp jcln)。「合成フルオロフロゴパイト」は工場で原料を溶融・結晶化させて作る合成品で、金雲母型の構造の水酸基をフッ素に置き換えたものです。CIRの報告書は、合成品は天然のフルオロフロゴパイトと違ってほぼ鉄を含まないと書いており(出典: CIR 2012)、合成マイカのメーカーは不純物由来のくすみがなく透明だと説明しています(出典: トピー工業 合成マイカ製品頁)。ただしこれは色味や透明感という品質特性の違いで、天然が危険・合成が安全という序列ではありません。成分表では、名前の頭に「合成」が付くかどうかで由来を見分けられます。詳しくは合成フルオロフロゴパイトの記事をご覧ください。

Q2. マイカにはCIRの評価がないと聞きました。危ない成分ですか

危ないという意味ではありません。CIRが公開する評価一覧(2022年9月版)にマイカの行がないのは事実ですが(出典: CIR Quick Reference Table 2022)、CIRは優先順位を付けて成分を選んで評価する仕組みで、評価がないことは問題が見つかったことも、データが乏しいことも意味しません。ほかの公的な枠組みを見ると、EUの化粧品規則にマイカの制限はなく(出典: CosIng)、日本の化粧品基準にも配合禁止・制限の定めはありません(出典: 化粧品基準)。医薬部外品原料規格2021は、鉛30ppm以下・ヒ素5ppm以下などの純度規格を定めています(出典: 医薬部外品原料規格2021)。「CIRの評価一覧にこの名前では載っていない」という事実は、そのまま受け取れば足ります。

Q3. 薬用化粧品の成分表に「金雲母」「セリサイト」とありました。マイカとは別物ですか

医薬部外品(薬用化粧品)の表示名称では、「マイカ」「金雲母」「セリサイト」はそれぞれ別の品目です(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版)。医薬部外品原料規格2021でも、マイカは含水ケイ酸アルミニウムカリウム、金雲母は含水ケイ酸マグネシウムカリウム、セリサイトは微結晶の含水ケイ酸アルミニウム・カリウムと、定義が分けられています(出典: 医薬部外品原料規格2021)。一方、化粧品の表示名称では「金雲母」は旧名で改正表示名称は「マイカ」になり、セリサイトも独立した表示名称がありません(出典: Cosmetic-Info.jp jcln)。つまり、同じ雲母の仲間が、化粧品では「マイカ」1語で書かれ、医薬部外品では鉱物ごとに書き分けられる、という違いです。どちらの書き方でも、板状の雲母系鉱物の粉体という点は共通しています。

Q4. 洗顔料や化粧水のマイカは、皮脂を吸うために入っているのですか

表示名称の配合目的から言えば、そうではありません。マイカの配合目的は抗ケーキング剤・増量剤・着色剤・不透明化剤・滑沢剤で、吸着剤は含まれていません(出典: Cosmetic-Info.jp jcln)。自社集計ではマイカを含む3製品すべてにヒドロキシアパタイトと酸化亜鉛も入っており、原料メーカーからは合成マイカ・酸化亜鉛・ヒドロキシアパタイトの複合粉体で製造元が皮脂の吸着をうたうものも出ています(出典: DappNotes 商品マスター集計 / 三好化成 MiyoSTAY SM 製品頁)。ただし、各商品がどの原料を使っているかは成分表示からは分かりません。成分表の「マイカ」は感触と見た目を整える成分として読み、皮脂対策の根拠にはしないのが正確な読み方です。

関連深掘り記事

本記事に関する注記

  • 本記事は特定商品の効果を保証するものではありません。成分の働きには個人差があり、体質・肌質により合わない場合があります。
  • 肌に赤み・かゆみ・刺激等の異常が出た場合は使用を中止し、症状が続く・悪化する場合は皮膚科等の医療機関にご相談ください。傷・炎症のある肌への使用は避けてください。
  • 本記事で扱うマイカは、日本の化粧品表示名称「マイカ」(INCI Mica)として配合される天然の雲母系鉱物の粉体を前提としています。合成品の合成フルオロフロゴパイトは別成分として別記事で扱います。
  • 「CIRの評価がない」は、CIRの評価一覧(Quick Reference Table 2022年9月版)にこの名前では載っていないという意味で、安全性データが乏しいことを意味するものではありません。
  • 本記事に含まれる製品数の集計は DappNotes 商品マスター(2026年9月時点・スキンケア54製品/ヘアケア78製品)に基づく自社集計であり、市場全体の分布を示すものではありません。
  • 原料メーカーの製品説明は製造元の記述として紹介したもので、特定の商品にその原料が使われていることを示すものではありません。
  • 本記事は成分の一般的な解説であり、化粧品・医薬部外品の効能効果は配合製品の承認・表示の範囲に従います。
  • 外部の安全性指標(CIR等)は出典明記の参考値であり、絶対的な安全性を保証するものではありません。
  • 本記事はAIによる下書きを編集部がレビュー・再構成して作成しています。
  • 編集部レビュー済み・AI下書き活用