アクリレーツコポリマーは、アクリル酸系のモノマーを2種類以上つないだ合成ポリマーにあたる。名前も定義も、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーとよく似ている。違いは1か所で、あちらが分子どうしを橋でつないだ架橋ポリマーなのに対し、こちらは架橋していない。そして化粧品表示名称に登録された配合目的も、2つの成分で別々になっている。架橋した側は乳化安定剤・増粘剤の3つ、架橋しない本成分は皮膜形成剤・ヘアスタイリング剤を含む8つで、増粘の語が1つも入らない(出典: Cosmetic-Info.jp)。本記事は、定義と登録の並びがどう違うのかと、成分表で紛らわしく並ぶ名前をどう見分けるかを軸に、この成分の正体・働き・安全性を中立に整理する。

1. アクリレーツコポリマーの基本

1.1 何の成分か

化粧品表示名称の定義は、次のとおりになる(出典: Cosmetic-Info.jp)。

アクリレーツコポリマー(成分番号556081・INCI名 Acrylates Copolymer)

本品は、アクリル酸アルキル(C1-C4)、メタクリル酸アルキル(C1-C4)、アクリル酸又はメタクリル酸のうちの2種以上のモノマーで構成される共重合体をいう。

材料として並ぶのは4種類にとどまる。アクリル酸、メタクリル酸、そしてこの2つの短いエステル(炭素数1〜4のアルキル基、つまりメチル・エチル・プロピル・ブチルまで)になる。このうち2種以上を選んでつないだものが本成分にあたる。逆に言えば、この定義には架橋剤が出てこない。長いアルキル鎖も入らない。ここが対比の起点になる。

同じアクリル酸系でも、架橋した近縁の成分は定義の文が1段長くなる。(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーは、アクリル酸系のモノマーと炭素数10〜30のアルキルアクリレートの共重合体を、ショ糖のアリルエーテル又はペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋したもの、と定義される(出典: Cosmetic-Info.jp)。アクリレーツクロスポリマーという別の名称もあり、こちらはジメタクリル酸エチレングリコールで架橋したもの、と定義される。3つを並べると、違いは架橋するかどうかと、架橋するなら何でつなぐかに整理できる。

化粧品表示名称架橋剤長いアルキル鎖登録された配合目的
アクリレーツコポリマー(本成分)無し無し粘着剤/人工爪剤/結合剤/非活性剤系分散剤/皮膜形成剤/ヘアスタイリング剤/皮膚コンディショニング剤(未分類)/エモリエント剤(8つ)
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーショ糖のアリルエーテル又はペンタエリスリトールのアリルエーテル炭素数10〜30のアルキルアクリレート乳化安定剤/親水性増粘剤/非水系増粘剤(3つ)
アクリレーツクロスポリマージメタクリル酸エチレングリコール無し吸着剤(1つ)

(出典: Cosmetic-Info.jp)

この表で見えるのは、定義の違いと登録された配合目的の違いが、どちらも成分ごとに別々に並んでいるという事実になる。架橋剤を持たない本成分には増粘の語が1つも入らず、皮膜・整髪の側の語が並ぶ。アリルエーテルで架橋した側は増粘と乳化安定、ジメタクリル酸エチレングリコールで架橋した側は吸着剤1つになる。ここで注意したいのが、配合目的の登録は構造から機械的に導けるものではない点になる。定義がこうだから配合目的がこうなった、という因果として読むことはできず、書けるのは登録の並びがこうなっている、という事実までにあたる。

構造の側の話は、CIR(米国の化粧品成分レビュー)の報告書に物性の一般論として書かれている。2019年1月23日に公開された最終改訂報告書は、架橋ポリマーについて次のように述べる(出典: CIR 2019)。

Crosslinked polymers are generally less chemically reactive and less soluble (if not totally insoluble) than their respective non-crosslinked counterparts.

(架橋したポリマーは、架橋していない対応物に比べて、一般に化学的な反応性が低く、溶解性も低い。まったく溶けないこともある。)

架橋とは、鎖状の分子どうしを橋で結んで一つの大きな網にすることになる。これは物性の一般論で、個々の成分の配合目的の登録を説明するものではない。本成分について同じ報告書の物性表に書かれているのは、水と混和する(miscible in water)ことと、商業的な形態では液体で乾くと皮膜を形成する(forms a film when dried)ことになる(出典: CIR 2019)。物性の記述は §2.1 で改めて追う。

8つの配合目的は、INCI側に登録された機能とそのまま1対1で対応する。CIRの成分定義表が挙げる本成分の機能は、adhesives(粘着剤)、artificial nail builders(人工爪剤)、binders(結合剤)、dispersing agents - nonsurfactant(非活性剤系分散剤)、film formers(皮膜形成剤)、hair fixatives(ヘアスタイリング剤)、skin-conditioning agents - emollient(エモリエント剤)、skin-conditioning agents - miscellaneous(皮膚コンディショニング剤〈未分類〉)の8つになる(出典: CIR 2019)。日本語側の登録は、この英語の並びを訳し当てたものと見て矛盾がない。

もう1点、この成分を読むうえで外せない留保がある。同じ報告書は、架橋の説明に続けてこう書いている(出典: CIR 2019)。

2 polymers that have the same INCI name can have very different physical consistencies.

(同じINCI名を持つ2つのポリマーが、まったく違う物理的な稠度を持つことがある。)

本成分の定義は、4種類の材料から2種以上を選ぶとしか言っていない。どれとどれを何対何で選ぶかは書かれていないため、同じ表示名称の下に組成の違う多数のポリマーが入りうる。実際CIRの物性表には、重量平均分子量が100,000のもの、600,000のもの、280,000のものが、いずれもアクリレーツコポリマーとして並び、物理形状も白色のビーズと液体の両方が併記されている(出典: CIR 2019)。成分表にこの名前があっても、そこから物性を一意に決めることはできない。

製法も記載がある。メタクリル酸メチルとアクリル酸エチルの共重合体としてのアクリレーツコポリマーは、乳化重合(emulsion polymerization)で作られ、反応後に残留モノマーと余剰の水を水蒸気蒸留で除く、と書かれている(出典: CIR 2019)。有機溶剤ではなく水系の乳化状態で重合する方式にあたり、この点は §3.3 で残留溶媒を整理するときに効いてくる。

規制上の位置づけは、化粧品にも医薬部外品にも使われる添加成分になる。厚生労働省の『いわゆる薬用化粧品中の有効成分リスト』にアクリルの語での掲載はなく、医薬部外品の有効成分として承認された効能を持つ成分ではない(出典: 厚生労働省)。同リストは有効成分の規格及び分量の前例を示す文書で、非掲載は有効成分になれないことの根拠にはならないが、少なくとも本成分に前例は無い。薬用製品に入る場合も、その他成分として皮膜・粘着・分散といった処方上の役割を担う位置づけになる。

1.2 どんな製品に配合されるか

使われている量は多い。CIRが集計した2018年の米国での使用件数は3177件で、報告書が扱う126成分の中ではカルボマーの6434件に次ぐ2番目にあたる(出典: CIR 2019)。1998年の同じ集計では227件だったので、20年で14倍に増えた計算になる。内訳はリーブオン2050件・リンスオフ1106件・入浴時に希釈するもの21件で、洗い流す製品にもまとまった数が入っている点が、ほぼリーブオンに偏る架橋側と違う。

用途別に見ると、この成分の性格がはっきり出る(出典: CIR 2019)。

用途区分使用件数(2018)最大使用濃度
全体31770.00025〜98.6%
爪4360.54〜98.6%
皮膚に接触するもの18840.00025〜25%
目の周り7020.00025〜18.4%
髪(染毛以外)1840.00052〜4.9%
粘膜12970.0003〜4.2%

最大使用濃度98.6%という数字は、人工爪の造形材(nail extenders)での値になる。粉と液を混ぜて爪の上で固める、あの用途にあたる。化粧品表示名称の配合目的にも人工爪剤という項目が立っている。一方で、CIRの考察はこう補足している。人工爪では98.6%まで使われるが、皮膚に触れる製品での使用濃度はそれより低い(出典: CIR 2019)。同じ表示名称の成分でも、爪の上でかたまりを作る使い方と、スキンケアに数%以下で入る使い方では、桁が3つも4つも違う。

DappNotes の商品マスター全132製品を機械集計すると、本成分の配合は3製品になる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。

製品ID配合位置カテゴリ剤型製品
P05910位/14ヘアケアシャンプーパンテーン ミラクルズ ファインフレグランス
P08316位/25スキンケアUVジェルオルビス ミスター ドライタッチ UVジェル
P09113位/18スキンケア洗顔(石けん基剤)ウーノ ホイップウォッシュ(ブラック)f

3製品は剤型がばらばらで、共通するのは本成分が後半に1行入るという点だけになる。CIRの集計でリンスオフが1106件あることと、自社集計の3製品のうち2製品が洗い流すもの(シャンプーと洗顔)であることは、方向としては合っている。ただし3製品は母数として小さく、分布を語れる規模ではない。

とくに見ておきたいのがP083になる。オルビス ミスター ドライタッチ UVジェルの成分表には、アクリル酸系ポリマーの表示名称が4つ並ぶ(出典: DappNotes 商品マスター集計)。

表示位置表示名称
5位メタクリル酸メチルクロスポリマー
16位アクリレーツコポリマー(本成分)
19位(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
21位(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー

本成分と、§1.1 で対比した架橋側の成分が、同じ1本の成分表に別行で載っている。つまりこの2つは代替関係ではなく、同じ処方の中で別の仕事に使い分けられうる。ただし各成分が処方の中で実際にどの役割を担っているかは成分表からは読めないため、ここで言えるのは同居しているという出現の事実までになる。加えてP083には、本クラスタの兄弟成分であるヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルも20位に入っている。

なお全成分表示は原則として配合量の多い順だが、1%以下の成分は順不同で書いてよい決まりになっている。上の順位は表示上の位置であって、配合量そのものではない。

制度側の名前についても触れておきたい。医薬部外品の添加物データベースを引くと、本成分と重なる本質を持つ登録が5つ並ぶ(出典: Cosmetic-Info.jp 部外品添加物DB)。

部外品添加物の名称成分コード本質の要点
アクリル酸アルキル共重合体522003アクリル酸アルキル(C1〜C4,C8)、メタクリル酸アルキル(C1〜C4,C8)、アクリル酸又はメタクリル酸の中の2種以上のモノマーからなる共重合体
アクリル酸アルキル共重合体液(1)522004上記に加え、通常、水・エタノール又はこれらの混液を含む
アクリル酸アルキル共重合体液(2)522005上記に加え、水・エタノール・プロピレングリコール又はこれらの混液、あるいは変性アルコールを含む
アクリル酸アルキル共重合体エマルション(1)522007上記共重合体のエマルション
アクリル酸アルキル共重合体エマルション(2)522008上記共重合体のエマルション

読みどころは2つになる。1つ目は、部外品側の本質がC1〜C4に加えてC8を含むことで、C1-C4で切る化粧品表示名称の定義とは範囲がずれる。2つ目は、部外品側が液かエマルションかという原料の形まで名前を分けていることになる。化粧品側はポリマーそのものに1つの名前を与え、部外品側は供給される状態ごとに名前を立てる。名前の刻み方が制度で違う。

この2点があるため、本記事では本成分の医薬部外品表示名称を特定しない。5つのうちどれが1対1で対応するかは、参照した一次資料からは決まらない。なお架橋側の(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーには「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体」という別の部外品名称が対応するが、これは架橋側の対応であって本成分のものではない。

1.3 メンズ視点での見方

メンズの棚でこの名前に出会う場面は、自社集計の3製品のとおり、シャンプー・UVジェル・洗顔と分かれる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。特定のカテゴリの顔になる成分ではなく、剤型を問わず後半に1行入る、いわば裏方の成分にあたる。男性は皮脂分泌量が女性の約2倍とされ、ベタつきを嫌って軽い使用感を好む傾向があるため、みずみずしいジェルや泡の洗顔が選ばれやすい(出典: メンズスキンケア専門メディア各種)。そうした製品の質感を成り立たせている層に、この種のポリマーが入る。

実用的な読み方としては、次の3点になる。

第一に、この名前を見つけても、製品がどうなるかまでは決まらない。§1.1 のとおり本成分の定義は材料の組み合わせしか指定しておらず、同じ表示名称で分子量も稠度も違うポリマーが存在しうる(出典: CIR 2019)。成分表の1行から使用感を推測することはできない。

第二に、似た名前と取り違えないことになる。P083の例では、1本の成分表に「メタクリル酸メチルクロスポリマー」「アクリレーツコポリマー」「(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー」「(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー」が並んでいた(出典: DappNotes 商品マスター集計)。コポリマーは共重合体、クロスポリマーは架橋した共重合体という一般名詞にすぎず、カッコの中身と語尾まで読まないと成分は特定できない。見分け方は §4.3 に表でまとめる。

第三に、配合目的の登録を目の前の製品での役割と読まないことになる。本成分はヘアスタイリング剤としての登録を持つが、自社集計でこの成分を含むヘアケア製品はシャンプー1本だけだった(出典: DappNotes 商品マスター集計 / Cosmetic-Info.jp)。髪を固める登録があるからシャンプーが髪を固める、とは読めない。

2. 期待される働き・効果

2.1 メカニズム

この成分について一次資料から書けるのは、物性として膜を作ること、そして登録された配合目的に皮膜形成剤を筆頭とする語が並ぶこと、の2つになる。両者を因果でつながずに、順に見ていく。

まず物性の記述から。CIRの物性表は、本成分について水と混和すること、商業的な形態では液体であること、そして「乾くと皮膜を形成する(forms a film when dried)」ことを記している(出典: CIR 2019)。同じ報告書は抄録で、この成分群でもっとも多く報告される化粧品上の機能は皮膜形成剤だとも述べる。液体の状態で塗り広げられ、水や溶剤が飛んだあとに膜として残る、という挙動が一次資料に書かれている範囲になる。

架橋したポリマーについての記述は、これと対になる。架橋ポリマーは架橋していない対応物より一般に反応性も溶解性も低く、まったく溶けないこともある(出典: CIR 2019)。溶けずに水を抱え込んで膨潤する状態が、増粘やゲル化として観察される挙動にあたる。ただしこれはCIRが述べる物性の一般論で、個々の成分の配合目的の登録がその一般論から導かれたことを示すものではない。

登録の側を並べると次のようになる。本成分には皮膜形成剤・粘着剤・人工爪剤・結合剤・非活性剤系分散剤・ヘアスタイリング剤・エモリエント剤・皮膚コンディショニング剤(未分類)の8つ、架橋した(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーには乳化安定剤・親水性増粘剤・非水系増粘剤の3つが登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。物性の記述と登録の並びは方向として整合するが、登録の理由そのものは一次資料に書かれていない。

8つの語の中身も見ておきたい。粘着剤は膜が界面に付く力を指す語、結合剤は粉体どうしをつなぐ役、人工爪剤は膜を厚く重ねて造形する用途、ヘアスタイリング剤は毛髪の上の膜、エモリエント剤は肌表面を覆う役にあたる。非活性剤系分散剤という語も、界面活性剤のように界面張力を下げるのではなく、粒子の表面をポリマーで覆って再凝集を妨げるという別系統の分散を指す。8つが並ぶことをそのまま8種類の独立した働きの証拠と読むより、膜という共通の土台の上に用途別の名前が立っていると読むほうが、語の意味には近い。

なお、架橋した側に必ず伴う中和という工程は、本成分では登録上も一次資料上も要件になっていない。架橋した(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーは、アルカリで中和しないとゲルが立ち上がらないため処方に中和剤が伴う。自社集計でも、本成分を配合するP059にはアルカリ剤の併記そのものが無く、P091の水酸化Kは石けん基剤の脂肪酸と並ぶ配置だった(出典: DappNotes 商品マスター集計)。ただしこれは3製品の観察にすぎず、必要・不要を成分表から証明できるものではない。

最後に、この成分は肌に働きかける成分ではない。分子量が10万から60万の範囲にある高分子で、CIRの考察も、これらのコポリマーは一般に大きな分子であるため皮膚からの有意な吸収は予想されないと述べている(出典: CIR 2019)。製品の側で膜と質感を作る基剤にあたり、承認された効能を持つ有効成分ではない(出典: 厚生労働省)。

2.2 一般的な効能範囲

本成分は基剤側の成分で、承認された効能を持つ有効成分ではない。したがって語れる範囲は、配合された製品の区分で決まる。

化粧品に配合された場合、言えるのは「肌にうるおいを与える」「皮膚の乾燥を防ぐ」「皮膚をすこやかに保つ」といった化粧品の効能の範囲にとどまる(出典: 厚生労働省『化粧品の効能の範囲』)。「シワを治す」「シミが消える」といった医薬品的な表現は化粧品では標榜できない。

ここで注意したいのが、化粧品表示名称の配合目的は効能ではないという点になる。皮膜形成剤という登録は、処方の中でこの成分が膜を作る役を担いうるという分類であって、膜ができると肌にどういう良いことが起きるかを述べたものではない。同様にエモリエント剤という登録も、化粧品の効能としての保湿を保証する語ではない。皮膚コンディショニング剤(未分類)にいたっては、他のどの分類にも当てはまらないものを受ける受け皿の項目にあたる。

医薬部外品に配合された場合も、この成分が効能の担い手になるわけではない。§1.2 のとおり部外品の添加物として使える名前は用意されているが、それは添加物としての登録であって、有効成分としての承認ではない。厚生労働省の『いわゆる薬用化粧品中の有効成分リスト』にもアクリルの語での掲載は無い(出典: 厚生労働省)。薬用製品の効能効果は、承認された有効成分と承認内容の範囲に従う。

まとめると、この成分について語れるのは、膜を作ることとそこから派生する処方上の役割になる。使用感が軽い、塗った後にさらっとする、粉体が沈まない、髪の形が保たれる、といった製品の性質にはこの成分が寄与しうるが、それは肌や髪への効能とは別の層の話にあたる。

2.3 限界・誤解されやすい点

誤解されやすい点は4つある。

第一に、配合目的が8つあることを多機能さの証拠と読む向きになる。§2.1 のとおり、8つの語は膜という共通の土台の上に立つ用途別の名前と読むほうが語の意味に近い。しかも登録は、その用途で使われうるという枠を示すものであって、目の前の製品でその役割を果たしているという意味ではない。人工爪剤の登録があるからスキンケアの中で爪のような膜を作る、とは読めない。

第二に、逆方向の誤解として、増粘剤の登録が無いから処方のとろみに関係しない、と決めつける読み方になる。登録された配合目的は化粧品表示名称の分類であって、物性の全部を記述したものではない。実際CIRは、この成分群の多くが粘度を上げる働きも持ちうると抄録で述べている(出典: CIR 2019)。登録に無いことは、その挙動が存在しないことの証明にはならない。逆に、構造からその成分の配合目的を予測することもできない。

第三に、名前が似ているものを同じ成分と読む向きになる。アクリレーツコポリマーNa・同AMP・同アンモニウムは、いずれも本成分の塩として定義された別の表示名称で、アクリレーツクロスポリマーは架橋剤の違う別成分にあたる(出典: Cosmetic-Info.jp)。塩になるかどうかで水への溶け方もpHの挙動も変わるため、同じものとして扱うことはできない。見分け方は §4.3 の表にまとめる。

第四に、CIRが示す98.6%という最大使用濃度を、スキンケアでの配合量として読む向きになる。§1.2 のとおりこの数字は人工爪の造形材での値にあたる(出典: CIR 2019)。用途区分を外して数字だけを持ち出すと、実態から大きく外れる。

3. 安全性・注意点

3.1 既知の刺激性・アレルギー報告

この成分は、CIRが名指しで評価している。2019年1月23日に公開された最終改訂報告書『Amended Safety Assessment of Acrylates Copolymers as Used in Cosmetics』は、アクリレーツ系コポリマー126成分を対象とし、その結論リストの1行目が本成分になる(出典: CIR 2019)。

The CIR Expert Panel concluded that the following 126 acrylates copolymers are safe in cosmetics in the present practices of use and concentration described in the safety assessment when formulated to be non-irritating.

(CIR専門家パネルは、以下の126のアクリレーツコポリマーについて、この安全性評価に記述された現行の使用実態と使用濃度において、刺激を生じないように処方される限り、化粧品において安全であると結論した。)

「刺激を生じないように処方される限り」という条件が付く点は押さえておきたい。この条件は本成分に固有のものではなく126成分全体に一律にかかり、パネルはその理由を、これらの成分を用いて処方された製品で皮膚刺激が起きる可能性は残るため、と説明している(出典: CIR 2019)。成分そのものの毒性が高いという意味ではなく、濃度と処方の設計に安全性の一部を委ねる書き方にあたる。

実測データは次のように整理される(出典: CIR 2019)。

試験対象・条件結果
ヒト反復パッチテスト(HRIPT)25%水希釈・47名刺激性・感作性ともになし
臨床試験固形分30%刺激性・感作性ともになし
臨床試験固形分100%をアンモニア水15%溶液/アセトン25%溶液として刺激性・感作性ともになし
皮膚刺激(ウサギ)—非刺激から軽度の刺激
感作性(LLNA/モルモット Buehler 法)—感作性なし
眼刺激(ウサギ)2試験1試験で非刺激・別の1試験で軽度の刺激
変異原性(Ames 試験)—変異原性なし

25%という高い希釈率でヒトのパッチテストが陰性である点は、スキンケアでの実配合帯(§3.2)から見ればかなりの余裕になる。一方でウサギの皮膚試験には軽度の刺激と読める記載も残っており、パネルが結論に条件を付けた背景にはこうしたばらつきがある。

体内への吸収については、CIRの考察がこう述べている。これらのコポリマーは一般に大きな分子であるため、皮膚からの有意な吸収は予想されない。したがって外用しても全身毒性が生じるとは考えられない(出典: CIR 2019)。塗った後の皮膜感は肌表面の話であって、肌内部への吸収や蓄積とは別物になる。

なお、これはあらゆる化粧品成分に共通する話だが、体質による個別の相性の問題がゼロになるわけではない。製品には防腐剤・香料・紫外線吸収剤など多くの成分が同居するため、敏感肌や初回使用では本成分に限らず製品全体でパッチテストを行うのが無難になる。

3.2 推奨配合量と過剰配合時のリスク

日本の化粧品基準に、本成分の配合上限は置かれていない(出典: Cosmetic-Info.jp)。化粧品表示名称の規制分類欄も空欄になる。目安になるのはCIRが集計した使用実態で、§1.2 の表のとおり用途区分で桁が変わる。

スキンケアの文脈で参照すべきなのは、人工爪の98.6%ではなく、皮膚に接触する製品の0.00025〜25%という帯になる(出典: CIR 2019)。目の周りの製品は0.00025〜18.4%、髪(染毛以外)は0.00052〜4.9%、粘膜に触れる製品は0.0003〜4.2%で、洗い流す側や髪では上限が5%を下回る。自社集計の3製品はいずれも表示位置が後半だが、表示順は1%以下では順不同のため配合量を断定することはできない(出典: DappNotes 商品マスター集計)。

入れすぎた場合のリスクは、皮膚刺激の側ではなく使用感の側に出る。皮膜を作る成分を増やせば、塗布後に膜が厚くなり、こすったときによれが出たり、つっぱり感が強くなったりする。これは安全性ではなく質感の設計の問題にあたる。ただし本成分に限った実測データとして公表されているものではないため、書けるのは皮膜形成剤一般の設計上の傾向までになる。

CIRが明示的に踏み込んでいるのは、むしろ製造管理の側になる。パネルは、残留モノマーの量が最小限に保たれるよう製造者が良好な製造工程を継続して用いるべきだと強調している(出典: CIR 2019)。これは配合量ではなく原料の品質の話で、次の §3.3 で扱う。

3.3 「危険性」と言われる根拠と実態の整理

この成分が名指しで危険視される場面は多くないが、検討に値する論点が2つと、成分表の読み手が引っかかりやすい点が2つある。順に整理する。

1つ目は残留モノマーになる。アクリル酸やメタクリル酸エステルといった原料のモノマーは、それ自体には刺激性や感作性が知られる物質で、重合しきらずに残った分がポリマーの中に混じりうる。これは実在する論点で、CIRも報告書の中で正面から扱っている。書かれているのは、量が規格で管理されているという文脈になる(出典: CIR 2019)。

記載内容
規格値アクリレーツコポリマー(メタクリル酸メチルとアクリル酸エチルの共重合体として)の規格は、総モノマー量が 100 mg/kg 未満
実測の報告例アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸・アクリル酸の残留量が 20 ppm 以下
製法上の対応乳化重合の後、残留モノマーと余剰の水を水蒸気蒸留で除去
パネルの見解多くの場合、残留モノマー量の少なさを考慮すると、有害な影響につながる懸念は無い。ただし製造者は残留モノマーを最小限に保つ良好な製造工程を継続すべき

100 mg/kg は0.01%、20 ppm は0.002%にあたる。ただし報告書には、アクリレーツコポリマーと定義された2つのポリマーで残留モノマーの内訳が異なっていたという記録もあり、原料ごとのばらつきは存在する(出典: CIR 2019)。ゼロではないが規格で上限が置かれ、パネルが懸念しない水準として扱っている、という位置になる。ゼロでないことを危険の根拠に読み替えるのも、規格があるから考えなくてよいと切り捨てるのも、報告書の書きぶりからは外れる。

2つ目は重合溶媒になる。同じ報告書でパネルは残留溶媒にも触れ、とくにベンゼン中での重合を問題視している。製造・処方・使用のどの段階でどれだけのベンゼンが揮発したり溶け出したりするかを確実には予測できないという理由から、パネルはこれらの成分をベンゼン中で重合すべきではないと規定した(出典: CIR 2019)。

この論点の出どころも押さえておきたい。ベンゼンの懸念が具体的に持ち上がったのは、2017年の架橋アルキルアクリレートの評価で、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーがベンゼン中で重合されうるとされたことによる(出典: CIR 2017)。本成分については、§1.1 のとおり水系の乳化重合という製法が報告書に記載されている。つまりベンゼンの論点は架橋側の成分を起点に持ち上がり、2019年の最終報告で126成分全体への規定として締められた、という経緯にあたる。消費者が成分表から重合溶媒を知る方法は無いため製品選びの基準にはできず、公的な評価機関が製造側に条件を課したという事実として押さえておくのが正確な扱いになる。

3つ目は、合成ポリマーだから肌に悪いという連想になる。皮膜を作る成分の安全性は合成か天然かという由来で決まるものではなく、その成分自体の刺激性・感作性・配合量・分子の大きさで評価される。本成分は分子量10万から60万の高分子で経皮吸収は予想されず、25%水希釈のヒトパッチテストでも刺激性・感作性は示されていない(出典: CIR 2019)。逆に、天然由来でもアレルゲンを含む成分は存在する。

4つ目は、膜が肌に残って蓄積するという言説になる。塗布後の皮膜感やよれをポリマーが残っている証拠と読む向きがあるが、これは肌表面の使用感の話にあたる。高分子は角層を通過しないため、肌の内部に蓄積するという機序は成り立たない。膜の残り方が気になるなら、それは安全性ではなく質感の好みの問題になる。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用推奨

まず押さえておきたいのが、架橋したアクリル系ポリマーとは競合しないことになる。§1.2 のとおり、自社集計のP083では本成分(16位)と(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(19位)が同じ成分表に並んでいた(出典: DappNotes 商品マスター集計)。§2.1 のとおり両者は溶けるか溶けないかで役割が分かれるため、粘度を作る側と膜を作る側で同居しうる。ただし成分表から各成分の役割を確定することはできないため、ここで言えるのは同居の事実までになる。

粘度を作る相手としては、キサンタンガムやヒドロキシエチルセルロースのような水和で増粘する多糖・セルロース誘導体も標準的な組み合わせにあたる。P083にもキサンタンガム(18位)と、本クラスタの兄弟成分であるヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル(20位)が並んでいた(出典: DappNotes 商品マスター集計)。本成分に増粘の登録が無いぶん、粘度の設計は別の成分が担う。

粉体との組み合わせも成立しやすい。§2.1 のとおり本成分には非活性剤系分散剤としての登録があり、粒子の表面を覆って再凝集を妨げる働きが想定される(出典: Cosmetic-Info.jp / CIR 2019)。P083はメタクリル酸メチルクロスポリマーという球状粉体を5位に持つUVジェルにあたる。

グリセリンやBG、ヒアルロン酸Naといった保湿剤とは、土台と中身の関係になる。保湿剤が肌側の仕事をし、本成分はそれらが均一に伸びて塗った後に留まる形を作る。役割が重ならないため、同居して問題になることはない。

4.2 併用注意

肌への安全性の面で避けるべき組み合わせは特に知られていない。注意点はいずれも、処方が成立するかどうかという設計側の話になる。

1つ目は電荷とpHになる。本成分にアクリル酸・メタクリル酸が含まれる場合、そのカルボキシ基はpHによって解離してマイナスの電荷を帯びる。マイナスに帯電したポリマーは、プラスに帯電したカチオン界面活性剤やカチオンポリマーと複合体をつくり、濁りや沈殿の原因になりうる。ただし本成分の定義ではアクリル酸・メタクリル酸を含まない組み合わせも成立するため、電荷の強さは原料によって違う(出典: Cosmetic-Info.jp)。実際、自社集計のP059ではポリクオタニウム-10(7位)と本成分(10位)が同じシャンプーに同居しており、この組み合わせが一律に不可でないことは実例からも分かる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。なお、塩の形はいずれも別の表示名称として登録されており、配合目的も別に付いている。アクリレーツコポリマーNaとアクリレーツコポリマーアンモニウムは結合剤・皮膜形成剤・親水性増粘剤の3つ、アクリレーツコポリマーAMPは皮膜形成剤1つになる(出典: Cosmetic-Info.jp)。塩にすると増粘の語が戻る名前もあれば、皮膜形成剤1つに絞られる名前もある。同じポリマーの塩でも登録は一様ではない。

2つ目は、同じ表示名称でも原料が入れ替われば挙動が変わるという点になる。§1.1 の「同じINCI名を持つ2つのポリマーが、まったく違う物理的な稠度を持つことがある」という記載がそのまま該当する(出典: CIR 2019)。処方を組む側にとって、表示名称の一致は原料の互換性を意味しない。

4.3 類似成分

最も近い成分は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーになる。§1.1 のとおり材料の系統は共通で、違うのは架橋するかどうかと、長いアルキル鎖を持つかどうかにあたる。登録された配合目的も、この2成分では重なる語が1つも無い。

アクリレーツコポリマー(本成分)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
架橋無しショ糖/ペンタエリスリトールのアリルエーテル
長いアルキル鎖無し炭素数10〜30
水との関係混和する溶けずに膨潤する
登録された配合目的皮膜形成剤・粘着剤・人工爪剤・結合剤・非活性剤系分散剤・ヘアスタイリング剤・エモリエント剤・皮膚コンディショニング剤(未分類)乳化安定剤・親水性増粘剤・非水系増粘剤
中和剤不要必要(中和しないとゲルにならない)
米国での使用件数(2018)3177件3135件
最大使用濃度(2018)0.00025〜98.6%(人工爪を含む)0.000045〜3%
医薬部外品表示名称本記事では特定しない(§1.2)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体

(出典: Cosmetic-Info.jp / CIR 2019)

成分表で紛らわしい名前が並んだときの見分け方も整理しておきたい。P083の1本の成分表に4つのアクリル酸系ポリマーが並んでいたように(§1.2)、語尾と括弧の中身が手がかりになる。

表示名称読み分けの手がかり登録された配合目的
アクリレーツコポリマー(本成分)括弧なし・語尾がコポリマー=架橋していない皮膜形成剤ほか8つ
アクリレーツクロスポリマー括弧なし・語尾がクロスポリマー=ジメタクリル酸エチレングリコールで架橋吸着剤
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー括弧の中にC10-30=長いアルキル鎖あり・アリルエーテルで架橋乳化安定剤・増粘剤
アクリレーツコポリマーNa/同アンモニウム本成分の名前の後ろに塩の名前が付く結合剤・皮膜形成剤・親水性増粘剤
アクリレーツコポリマーAMP同上(AMPとの塩)皮膜形成剤
(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー括弧の中にアクリロイルジメチルタウリン=スルホン酸基を持つ別系統増粘・分散

(出典: Cosmetic-Info.jp)

ここから、この記事が属するもう1つの軸に入る。本成分は、すでに記事のある成分から1か所だけ手を入れた成分を6つ並べたクラスタの1本にあたる。並べると、登録上の配合目的が元の成分と別になっているものと、完全に一致しているものに分かれる。

成分元になる成分変えた1か所配合目的の登録(元 → 本成分側)
アセチルヒアルロン酸Naヒアルロン酸Naアセチル基を付ける皮膚コンディショニング剤 → 保水剤(別の語になる)
ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルヒドロキシプロピルメチルセルロースステアリル基(疎水基)を付ける5つ → 親水性増粘剤1つ(狭くなる)
ステアロイルグルタミン酸Naココイルグルタミン酸Na付く脂肪酸を長くする洗浄剤1つ → 3つ(広がる)
トリラウレス-4リン酸ラウレス-4カルボン酸Na頭をリン酸にして3本足にする洗浄剤 → 乳化剤(入れ替わる)
アクリレーツコポリマー(本成分)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー架橋をやめる増粘3つ → 皮膜・整髪ほか8つ(入れ替わる)
ロイシンイソロイシン枝分かれの位置を変える完全に同じ(変わらない側の対照)

(出典: Cosmetic-Info.jp)

6本のうち、元の成分との差がもっとも大きいのが本成分になる。3つから8つへ数が増えるだけでなく、増粘という語が1つも残らず、代わりに皮膜・粘着・整髪・人工爪という別系統の語が入る。対照の端にあるロイシンは、枝分かれの位置という構造の違いがありながら配合目的の登録が完全に一致する。構造をどれだけ変えたかと、登録上の扱いがどれだけ変わるかは、比例しない。

この並びから言えるのは、構造の違いから配合目的を予測することはできない、ということになる。表示名称と配合目的はそれぞれ個別に登録されるもので、構造の一部を変えれば登録もこう変わる、という規則性は無い。本成分の周辺だけを見てもそれは確かめられる。同じポリマーの塩であるアクリレーツコポリマーNaとアクリレーツコポリマーアンモニウムには結合剤・皮膜形成剤・親水性増粘剤の3つが登録され、本成分では消えていた増粘の語が戻ってくる。一方でアクリレーツコポリマーAMPは皮膜形成剤1つだけになる(出典: Cosmetic-Info.jp)。成分表を読むときに使えるのは、名前が違えば別の登録がある、という事実の側になる。

このほか並べられる成分には、カルボマー(アクリル酸を主鎖とし架橋した水溶性高分子)とポリクオタニウム-39(アクリル酸系だがカチオン部位を持ちコンディショニングが本業)がある。いずれも架橋の有無・電荷・側鎖のどこかが本成分と違い、その違いが登録された配合目的に現れている。

5. よくある質問

Q1. アクリレーツコポリマーと「〜クロスポリマー」は同じ成分ですか

別の成分です。コポリマーは共重合体、クロスポリマーは架橋した共重合体を指す語で、化粧品表示名称でも別項として立っています(出典: Cosmetic-Info.jp)。本成分の定義には架橋剤が出てきませんが、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーはショ糖又はペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋したもの、アクリレーツクロスポリマーはジメタクリル酸エチレングリコールで架橋したもの、と定義されます。登録された配合目的も、本成分が皮膜形成剤を含む8つ、前者が乳化安定剤と増粘剤の3つ、後者が吸着剤1つと別々です。名前が似ているだけで、成分表の上では区別して読む必要があります。見分け方は §4.3 の表にまとめています。

Q2. 架橋していない側が皮膜、架橋した側が増粘というのは、どこまで言えることですか

一次資料に書かれているのは、物性の記述と登録の並びの2つで、両者を因果でつなぐ記述はありません。物性については、CIRの報告書が一般論として、架橋したポリマーは架橋していない対応物に比べて化学的な反応性が低く溶解性も低い、まったく溶けないこともある、と述べています(出典: CIR 2019)。本成分については、同じ報告書の物性表が水と混和すること、商業的な形態では液体で乾くと皮膜を形成することを記しています。登録の側では、本成分に皮膜形成剤を含む8つ、架橋した側に増粘剤・乳化安定剤の3つが登録されています(出典: Cosmetic-Info.jp)。方向としては整合しますが、化粧品表示名称の配合目的は構造から機械的に導けるものではないため、書けるのは物性の記述と登録の並びがそれぞれこうなっている、というところまでになります。

Q3. 配合目的が8つもあるのは、それだけ多機能ということですか

そうとは限りません。8つの語は、膜という共通の土台の上に立つ用途別の名前と読むほうが語の意味に近いです。粘着剤は膜が界面に付く力、結合剤は粉体どうしを膜でつなぐ働き、人工爪剤は膜を厚く重ねる造形、ヘアスタイリング剤は毛髪の上の膜という具合に、いずれも皮膜と地続きの語です。CIRの報告書も抄録で、この成分群でもっとも多く報告される化粧品上の機能は皮膜形成剤だと述べています(出典: CIR 2019)。また配合目的の登録は、その用途で使われうるという枠を示すもので、目の前の製品でその役割を果たしている証明ではありません。

Q4. 最大98.6%という配合濃度を見ました。スキンケアにもそんなに入っているのですか

いいえ。98.6%はCIRが集計した人工爪の造形材での値です(出典: CIR 2019)。同じ集計で、皮膚に接触する製品は0.00025〜25%、目の周りは0.00025〜18.4%、髪(染毛以外)は0.00052〜4.9%と、上限側が2桁低くなります。CIRの考察も、人工爪では98.6%まで使われるが皮膚に触れる製品での使用濃度はそれより低い、と補足しています。用途区分を外して数字だけを持ち出すと実態から大きく外れるため、スキンケアの文脈では皮膚接触の帯を見るのが適切です。

Q5. 安全性はどう評価されていますか。残留モノマーは心配ありませんか

CIRは2019年1月23日公開の最終改訂報告書で、本成分を含むアクリレーツ系コポリマー126成分について、報告書に記載された現行の使用実態と使用濃度において、刺激を生じないように処方される限り化粧品において安全と結論しています(出典: CIR 2019)。実測では、25%水希釈のヒト反復パッチテスト(47名)で刺激性・感作性ともになく、固形分30%の臨床試験でも同様でした。Ames試験でも変異原性は示されていません。残留モノマーについては、同報告書が規格として総モノマー量100 mg/kg未満(0.01%未満)という値を挙げ、別の情報源による実測として20 ppm以下という報告も記載しています。パネルの見解は、多くの場合その量の少なさを考慮すれば有害な影響につながる懸念は無い、ただし製造者は残留モノマーを最小限に保つ良好な製造工程を継続すべき、というものです。ゼロではないものの規格で管理されている、という位置づけになります。

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本記事に関する注記

  • 本記事は特定商品の効果を保証するものではありません。成分の働きには個人差があり、体質・肌質により合わない場合があります。
  • 肌に赤み・かゆみ・刺激等の異常が出た場合は使用を中止し、症状が続く・悪化する場合は皮膚科等の医療機関にご相談ください。傷・炎症のある肌への使用は避けてください。
  • 本記事で扱うアクリレーツコポリマーは、化粧品および医薬部外品にその他成分(添加物)として配合される状態を前提としています。この成分自体に承認された効能はなく、医薬部外品の効能効果は承認された有効成分と承認内容の範囲に従います。
  • 化粧品表示名称に登録された配合目的は、処方の中での役割を示す分類であって、効能を示すものではありません。
  • 本記事では本成分の医薬部外品表示名称を特定していません。医薬部外品の添加物データベースには本質の重なる登録が5件ありますが、いずれも本質にC8を含み化粧品表示名称の定義(C1-C4)と範囲が一致せず、液・エマルションで複数に分かれているため、どれが1対1で対応するかを一次資料から確定できませんでした。
  • 本記事が引用するCIRの報告書は、2019年1月23日公開の最終改訂報告書(Final Amended Report)です。同一タイトルで2018年10月5日公開の暫定版(Tentative Amended Report for Public Comment)が別に存在するため、参照時は公開日とステータスの確認が必要です。
  • 本記事に含まれる製品数・配合位置の集計は DappNotes 商品マスター(2026年9月時点・全132製品/スキンケア54製品・ヘアケア78製品)に基づく自社集計であり、市場全体の分布を示すものではありません。全成分表示は原則配合量の多い順ですが、1%以下の成分は順不同のため、表示順位から配合量を断定することはできません。
  • 自社集計における同居の記録(同じ成分表に複数のアクリル酸系ポリマーが並ぶ等)は配合実態の観察であって、各成分が処方の中で果たしている役割を示すものではありません。
  • 外部の安全性指標(CIR等)は出典明記の参考値であり、絶対的な安全性を保証するものではありません。
  • 本記事はAIによる下書きを編集部がレビュー・再構成して作成しています。
  • 編集部レビュー済み・AI下書き活用