(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーは、アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムを共重合させた合成の水溶性ポリマーで、水に入れた時点でとろみが立ち上がる増粘剤にあたる(出典: CIR 2017)。カルボマーのようにアルカリで中和する工程を要しない。ところがこの成分は、医薬部外品の成分表示名称リストを引いても名前が見つからない。にもかかわらず、DappNotes の商品マスターには本成分を配合した医薬部外品が2つある。本記事はこの非対称と、同じ原料が製品区分によって1行にも3行にもなる表示のからくりを軸に、成分の正体・働き・安全性を中立に整理する。

1. (アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの基本

1.1 何の成分か

(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーは、アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムという2種類のモノマーを共重合させた合成ポリマーで、INCI名は Sodium Acrylate/Sodium Acryloyldimethyl Taurate Copolymer、CAS登録番号は 77019-71-7 にあたる(出典: CIR 2017)。CIRの2017年最終報告書は本成分をこの2モノマーの共重合体と定義し、機能として分散剤(非界面活性剤型)・乳化安定剤・不透明化剤・水系の増粘剤の4つを挙げている。

名前が長いので身構えやすいが、構造そのものは2つの部品でできている。1つ目のアクリル酸ナトリウムは、カルボマーの主鎖をつくるアクリル酸の、ナトリウム塩にあたる。2つ目のアクリロイルジメチルタウリンナトリウムは、末端にスルホン酸のナトリウム塩を持つモノマーで、業界ではAMPS(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)系と呼ばれる系統に属する。CIRの同報告書も、この系統のポリマーの残存モノマーとしてAMPSを名指ししている(出典: CIR 2017)。つまり本成分は、カルボキシ基とスルホン酸基という2種類のマイナス荷電の基を1本の鎖に併せ持つポリマーになる。

ここが本成分の性格を決めている。カルボマーや(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーは、カルボキシ基が酸の形(-COOH)のまま供給されるため、水酸化Na・水酸化K・TEA等のアルカリを加えてイオン化させないとゲルが立ち上がらない。本成分は、その名のとおり2つのモノマーがどちらもすでにナトリウム塩の形で重合されている(出典: CIR 2017)。中和は原料の製造段階で済んでいて、処方側で改めて中和剤を入れる必要がない。増粘のスイッチが「アルカリを加える」から「水に入れる」へ前倒しされている、と読むと分かりやすい。

規制上の位置づけは、医薬部外品の有効成分ではなく、化粧品にも医薬部外品にも添加成分として配合される側の成分にあたる。ただしここで、本記事の1つ目の軸になる非対称が現れる。日本化粧品工業連合会の医薬部外品の成分表示名称リスト(平成20年3月25日版)を全文検索すると、「アクリロイル」という文字列のヒットが0件になる(出典: 日本化粧品工業連合会『医薬部外品の成分表示名称リスト』)。本成分は単独名でも別名でも、このリストに収載されていない。

検索の都合による見落としではないことは、対照を引けば確認できる。同じ手順で「カルボキシビニルポリマー」(連番586・成分コード101243)、「架橋型ポリアクリル酸ナトリウム」(連番505)、「ポリアクリル酸ナトリウム」(連番1924)、「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体」(連番30)はいずれもヒットする。アクリル酸系のポリマーは何本も載っているのに、アクリロイルジメチルタウリンの系統だけがまるごと存在しない、という状態になる。

にもかかわらず、本成分は医薬部外品で現に使われている。§1.2 で見るとおり、DappNotes の商品マスターには本成分を配合した薬用スキンケアが2製品ある(出典: DappNotes 商品マスター集計)。収載が無いことと、医薬部外品で使えないことは、まったく別の話になる。

この2つを並べると、リストの収載有無が何を表しているのかがはっきりする。それは成分の性質でも安全性の格付けでもなく、その名前が2008年(平成20年)の時点で登録されていたかどうかを表しているにすぎない。本成分が属するアクリロイルジメチルタウリン系ポリマーは、CIRが21成分をまとめて安全性評価の対象にしたのが2017年で(出典: CIR 2017)、化粧品原料として広く出回るようになった時期は名称リストの版よりあとにかかる。名前が無いのは、成分が新しくてリストが古いという時間差の産物になる。この読み方は本クラスタの他の3成分と対照すると立体化するので、§4.3 でまとめて扱う。

1.2 どんな製品に配合されるか

CIRが2017年にFDAのVCRP(任意化粧品登録制度)から受け取ったデータでは、本成分の届出使用件数は197件で、内訳は洗い流さないleave-on製品が190件、洗い流すrinse-off製品が7件になる(出典: CIR 2017)。評価対象21成分の中では4番目に多い。9割以上がleave-onという偏りは、この成分が洗顔料の泡ではなく、肌に置いていく乳液・ジェル・クリームのとろみを担う側の増粘剤であることを示している。

DappNotes の商品マスターを機械集計すると、本成分の配合は5製品で、いずれもスキンケアになる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。そして、ここに本記事の2つ目の軸が現れる。同じ成分が、製品区分によって2通りの書かれ方をしている。

製品ID区分表示のされ方配合位置製品
P088医薬部外品3成分を連結した1行10位/28ルシード 薬用パーフェクトスキンクリームEX
P090医薬部外品3成分を連結した1行14位/35ウーノ バイタルクリームパーフェクション fA
P094化粧品単独名で1行11位/28マニフィーク モイスチュアライジング ジェル
P097化粧品単独名で1行21位/36マニフィーク オールインワン ジェル UV
P107化粧品単独名で1行17位/25VARON オールインワンセラム ORIGINAL

医薬部外品の2品(P088・P090)では、成分表にこう書かれている。

アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80

共重合体・イソヘキサデカン・ポリソルベート80という3つの成分名が、スラッシュでつながって1行に収まっている。一方、化粧品の3品(P094・P097・P107)では、この3つが別々の行に立つ。P094 を例に取ると、11位に(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、13位にイソヘキサデカン、19位にポリソルベート80が並ぶ。P097 では21位・24位・30位、P107 では17位・20位・6位という配置になる。

この対応が偶然でないことは、マスター全体を横に見ると裏が取れる。独立した成分としての「イソヘキサデカン」が現れるのは、132製品のうち P094・P097・P107 のちょうど3品だけになる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。本成分を単独名で書いている化粧品と、完全に一致している。ポリソルベート80のほうは、乳化・可溶化の汎用ノニオン界面活性剤なので他の製品にも独立して現れるが(P077・P118・P124・P127を含む7品)、この3品はいずれもその中に入っている。

3成分がセットで動いているのは、この成分の供給形態が理由になる。CIRの報告書は、アクリロイルジメチルタウリン系ポリマーが単離された粉としてではなく、水溶液や商品名付きの混合物として供給される例を複数挙げている(同系統の別成分について、水溶液で24〜27%、商品名混合物で60%未満・45%未満といった記載がある)(出典: CIR 2017)。本成分の場合、ポリマーを炭化水素油(イソヘキサデカン)の中に分散させ、ノニオン界面活性剤(ポリソルベート80)で安定化した液体、いわゆる逆相エマルション型のプレミックスとして扱われる。粉を水に振り込むとダマになりやすいポリマーを、あらかじめ流動性のある液体にしておいて、処方の水相に注ぐだけで転相して増粘させる、という設計になる。マスターで観察された3成分の同居は、この供給形態と正確に符合する。

そこから出てくるのが、成分表を読む側にとって実用的な結論になる。全成分表示の行数は、処方の複雑さを表すとは限らない。 P088 の1行と P094 の3行は、処方に入っているものとしてはほぼ同じことを意味している。行が3つに割れているのは、化粧品と医薬部外品で成分名の付け方の作法が違うからで、処方設計者が3種類の原料をわざわざ別に選んで足したからではない。成分数の多さ・少なさを製品の良し悪しの物差しにすると、この種の表示差でそのまま順位が入れ替わる。

なお全成分表示は原則として配合量の多い順だが、1%以下の成分は順不同で書いてよい決まりになっている。上の順位は表示上の位置で、順位が低いことがそのまま配合量の少なさを意味するとは限らない。増粘ポリマーは0.1〜1%程度の低い配合帯で使われるのが通例なので、5品の順位はいずれもこの順不同の帯に入っている可能性が高い。

1.3 メンズ視点での見方

メンズの棚でこの成分に出会う場面は、自社集計のとおりオールインワンジェルと保湿クリームが中心になる。5製品のうち3製品(P094・P097・P107)がジェル系のオールインワンで、残る2製品(P088・P090)も顔用のクリームにあたる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。男性向けスキンケアは「これ1本」で完結する剤型に集約されやすく、そこで求められるのは、ベタつかずに伸びて、置いたあとに流れ落ちないという相反する感触になる。本成分のような増粘ポリマーは、この折り合いをつける側の部品として入る。

男性の肌は皮脂分泌量が女性の約2倍とされる一方、肌内部の水分量は女性の約半分とされ、表面は脂っぽいのに内側は乾くという状態に傾きやすい(出典: メンズスキンケア専門メディア各種)。べたつきを嫌って軽い使用感を選びたいが、軽くすると保湿が足りない、という悩みはここから来る。増粘ポリマーは水相に構造を与えて、水っぽいのに垂れない、油を多く入れなくてもとどまる、という設計を可能にする。本成分が担っているのはこの部分で、肌に何かを与える成分ではない。

もう1つ、成分表を比べるときに効く視点がある。§1.2 で見たとおり、この成分は薬用(医薬部外品)の製品では1行、化粧品では3行として現れる。棚で「薬用クリームは成分がすっきりしていて、化粧品のジェルは色々入っている」と見えたとしても、それは表示の作法の差でしかない場合がある。本成分は、成分数を数えて製品を比べる読み方が外れる典型例にあたる。

そして本成分は、単独で使われることがほとんどない点も押さえておきたい。自社集計では5製品が5製品とも、中和を必要とする側のアクリル酸系ポリマーと同居している(出典: DappNotes 商品マスター集計)。P088 は「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体」、P090 は「カルボキシビニルポリマー」、P094・P097・P107 は「(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー」を、それぞれ本成分と一緒に配合している。しかも化粧品3品では、この2つが表示上で隣り合っている。増粘剤は1本で決めるものではなく、性格の違う複数を重ねて感触を作るものだ、という処方の実際が、成分表から直接読み取れる例になる。

2. 期待される働き・効果

2.1 メカニズム

増粘ポリマーの働きを理解する鍵は、「何をきっかけに分子鎖が広がるか」にある。本成分の場合、そのきっかけが他の増粘剤よりも1段階前倒しされている。

まず、アニオン性ポリマーが増粘する共通の仕組みを整理する。マイナスに荷電した基が鎖の上に並ぶと、同じ符号どうしが電気的に反発する。丸まっていた鎖はその反発で一気にほどけて広がり、水を抱え込んで系全体が高粘度になる。これは化学反応で何かを作る働きではなく、高分子が水を抱えて構造化する物理的な増粘にあたる。

カルボマーや(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーでは、この荷電を作る作業が処方側に残っている。カルボキシ基は酸の形(-COOH)のままでは電離せず、水に分散させただけではほとんど増粘しない。水酸化Na・水酸化K・TEA等のアルカリを加えてpHを上げ、-COO⁻ にして初めてゲルが立ち上がる。だから成分表には必ずアルカリ剤が並ぶ。

本成分では、その中和が原料の製造段階で終わっている。名前が示すとおり、アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムという、どちらもすでにナトリウム塩の形のモノマーを重合させたポリマーだからになる(出典: CIR 2017)。カルボキシ基もスルホン酸基も最初から塩になっていて、水に入れれば解離してマイナス荷電が並ぶ。処方側で中和剤を足す必要がない。増粘のスイッチが「アルカリを加える」ではなく「水に触れる」になっている、というのが本成分の第一の特徴にあたる。

第二の特徴が、塩に対する強さになる。アニオン性ポリマーの弱点は、系に電解質(塩類)が増えると、そのイオンがマイナス荷電を遮蔽して反発を弱め、鎖が縮こまって粘度が落ちることにある。カルボマー系が耐塩性に乏しいのはこのためになる。本成分はカルボキシ基に加えてスルホン酸基(-SO₃⁻)を持つ。スルホン酸は強酸の基で、カルボン酸のようにpHが下がって非電離に戻ることがなく、広いpH域でイオン化したままになる。塩や酸で荷電が消えないぶん、電解質を含む処方や低pHの処方でも増粘を保ちやすい。AMPS系のポリマーが処方設計で重宝されてきた理由の中心はここにある。

第三が、増粘以外の役割になる。CIRは本成分の機能として、水系の増粘剤に加えて、分散剤(非界面活性剤型)・乳化安定剤・不透明化剤を挙げている(出典: CIR 2017)。分散剤が非界面活性剤型と但し書きされているのが要点で、界面活性剤のように界面に吸着して表面張力を下げるのではなく、水相そのものに構造を与えて粒子や油滴が動きにくくすることで分散・乳化を保つ。この機序の違いは、乳化安定の担い方が界面活性剤的だとされるクロスポリマーとの対比で効いてくる(§4.3)。

第四に、§1.2 で見た供給形態がそのまま使用感に効いている。逆相エマルション型のプレミックスは、油の中にポリマーが分散した液体で、処方の水相に加えると転相してポリマーが水に放出され、その場で増粘する。粉から作るゲルのように分散・膨潤・中和の工程を踏まないため、立ち上がりが速く、ダマになりにくい。仕上がりの感触も、カルボマー系の透明で弾力のあるゲルに比べると、伸びが軽くさらりと切れる方向になりやすい。自社集計で本成分が中和型のポリマーと必ず同居していたのは(出典: DappNotes 商品マスター集計)、この感触の違いを足し合わせて使っていると読むのが自然な理解にあたる。

最後に前提として、本成分は肌に働きかける成分ではない。分子は非常に大きく、CIRはこの系統について 2000μm・>1000〜>1,000,000 g/mol の大きな分子であり、皮膚から吸収されるとは考えられない(should not be absorbed through the skin)と記している(出典: CIR 2017)。肌の表面で処方の形を保つ基剤であって、角層に入って何かをする成分ではない、というのが正確な理解になる。

2.2 一般的な効能範囲

本成分は処方を成立させる側の成分で、承認された効能を持つ有効成分ではない。したがって語れる範囲は、配合された製品の区分で決まる。

化粧品に配合された場合、言えるのは「肌にうるおいを与える」「皮膚の乾燥を防ぐ」「肌を整える」といった化粧品の効能の範囲にとどまる(出典: 厚生労働省『化粧品の効能の範囲』)。しかもその効能を担っているのは、処方に入っている保湿剤や油分であって、本成分ではない。本成分の仕事は、それらが分離せず、垂れず、狙った感触で肌にとどまるようにすることになる。

医薬部外品に配合された場合も同じになる。§1.2 の P088・P090 はどちらも薬用スキンケアだが、承認の対象になっているのは別に配合された有効成分の側で、本成分はその他成分(添加物)として組み込まれている。薬用製品の効能効果は、承認された有効成分と承認内容の範囲に従う(出典: 厚生労働省『化粧品の効能の範囲』)。

ここで §1.1 の非対称に戻ると、整理がつく。本成分は医薬部外品の成分表示名称リストに収載が無いが、それは有効成分になれないという意味でも、添加成分として使えないという意味でもない。実際に薬用製品で使われている以上、その他成分として配合されうる位置にある。収載の有無は、効能を語れるかどうかとは別の軸の話になる。

まとめると、本成分の効能表現は化粧品の標準効能の範囲に収まり、配合目的としては増粘・分散・乳化安定・不透明化という処方上の役割で説明するのが正確な扱いになる(出典: CIR 2017)。「(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー配合だから保湿力が高い」という読み方は、成分の実態と合わない。

2.3 限界・誤解されやすい点

誤解されやすい点は4つある。

第一に、成分表に一緒に並ぶアルカリ剤を、本成分の中和剤だと読んでしまうことになる。§1.2 のとおり、本成分を配合する5製品はいずれも水酸化Na・水酸化K・TEA等を併記している(出典: DappNotes 商品マスター集計)。しかし同じ5製品は、いずれも中和を必要とする側のアクリル酸系ポリマー(P088 はアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、P090 はカルボキシビニルポリマー、P094・P097・P107 はクロスポリマー)を併せて配合している。アルカリ剤はそちらのために入っていて、本成分のために入っているのではない。本成分は塩の形で供給されるため、処方側の中和を要しない。同じ表に並んでいる成分どうしが、必ずしも互いのために置かれているわけではない、という読み方の注意点にあたる。

第二に、行数と処方の複雑さを結び付ける読み方になる。§1.2 で見たとおり、同じ原料が医薬部外品では1行、化粧品では3行になる。行が少ないほうがシンプルな処方、多いほうが色々入っている処方、という直感はここで裏切られる。全成分表示は成分の名前を並べたものであって、原料の数を並べたものではない。

第三に、「耐塩性がある=万能の増粘剤」という読み方になる。スルホン酸基のおかげで電解質や低pHに強いのは事実だが、それが仕上がりの質まで保証するわけではない。カルボマー系がつくる透明で弾力のあるゲルの質感は本成分では出しにくく、逆に本成分の軽くさらりと切れる感触はカルボマー系では出しにくい。だから両方を入れる。強い弱いの一次元の比較にはならない。

第四に、この成分に肌への効果を期待する読み方になる。本成分は経皮吸収されない大きな分子で(出典: CIR 2017)、肌の表面で処方の形を保つ役割にとどまる。塗ったあとにしっとり感じたとしても、それは処方に入っている保湿剤と、ポリマーが作る薄い層が水の蒸発を鈍らせている結果で、本成分自体が保湿しているわけではない。

3. 安全性・注意点

3.1 既知の刺激性・アレルギー報告

本成分には、名指しで対象に含めた公的な安全性評価がある。CIR(米国の化粧品成分レビュー)が2017年5月24日に公開した最終報告書『Safety Assessment of Acryloyldimethyltaurate Polymers as Used in Cosmetics』は、アクリロイルジメチルタウリン系のポリマー21成分をまとめて評価し、いずれも本評価に記述された現行の使用実態と使用濃度において安全(safe in cosmetics in the present practices of use and concentration described in this safety assessment)と結論している(出典: CIR 2017)。結論の成分リストに Sodium Acrylate/Sodium Acryloyldimethyl Taurate Copolymer が明記されている。母体や近縁からの類推ではなく、この名前で評価されている点は、成分の安全性を読むうえで押さえておきたい。

Panel が検討したのは、経皮・経口の急性毒性、遺伝毒性、皮膚および眼の刺激性、感作性で、報告書は懸念を生じる結果は無かった(There were no studies that elicited concern)と記している(出典: CIR 2017)。系統内の試験としては、ウサギ皮膚でわずかに刺激するか刺激しない、ヒトの試験で刺激性なし、モルモットのBuehler試験で感作性なし、ヒト累積刺激性・感作性試験(HRIPT)で感作性なし、細菌を用いた復帰突然変異試験で変異原性なし、といった結果が並ぶ。

安全性の根拠として大きいのが分子の大きさになる。報告書は、この系統が 2000μm・>1000〜>1,000,000 g/mol という大きな分子であり、皮膚から吸収されるとは考えられないと述べ、これが経皮・経口毒性試験の良好なプロファイルと整合すると整理している(出典: CIR 2017)。角層を越えない以上、体内に入って何かを起こすという経路が成り立たない。

一方で、Panel が明示的に懸念を示した点もある。残存モノマーと不純物になる。報告書は、感作その他の有害な作用を起こしうるとして、アクリルアミド・ビニルホルムアミド・メタクリルアミドラウリン酸といった残存モノマーへの懸念を記し、ポリアクリルアミドの安全性評価で課した残存アクリルアミド5ppmという上限を、本評価の成分を含む最終製品にも適用するのが適切だと合意している(出典: CIR 2017)。あわせて、化粧品業界がcGMP(現行の適正製造規範)を使って不純物を抑え続けるべきだと強調している。

ただしこの懸念は系統全体に向けたもので、名指しされた3つのモノマーは、いずれも本成分の構成モノマーではない。アクリルアミドは Sodium Acryloyldimethyl Taurate/Acrylamide/VP Copolymer、ビニルホルムアミドは Ammonium Acryloyldimethyltaurate/Vinyl Formamide Copolymer、メタクリルアミドラウリン酸は Sodium Acryloyldimethyltaurate/Methacrylamidolauric Acid Copolymer に対応する成分として挙げられている(出典: CIR 2017)。本成分はアクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムの2元共重合体で、アクリルアミドを構成モノマーに含まない。参考として、同系統の Sodium Polyacryloyldimethyl Taurate では残存AMPSが2000ppm未満、アクリルアミドが10ppm未満(検出限界)と報告されている。

なお、これはあらゆる化粧品成分に共通する話だが、体質による個別の相性の問題がゼロになるわけではない。加えて §1.2 のとおり、本成分が入っている行(あるいは近くの行)には、イソヘキサデカンとポリソルベート80が同時に存在する。刺激やかゆみが出た場合、原因が本成分だと決めつける根拠はなく、製品全体で判断する必要がある。敏感肌や初回使用では、この成分に限らず製品単位でパッチテストを行うのが無難になる。

3.2 推奨配合量と過剰配合時のリスク

本成分について、日本の化粧品基準に配合上限は置かれていない。処方目的に応じて幅を持って使われる成分になる。

手がかりになる数値はCIRの報告書にある。2015年に業界団体(Personal Care Products Council)が実施した使用濃度調査を踏まえ、報告書は本成分の最高使用濃度として、その他の身体清浄用製品の分類での2.4%を挙げている(出典: CIR 2017)。あわせて、パウダー製品でも使われており、系統全体でエアゾール化しうる製品では最大3%、粉体が舞いうるルースパウダー製品では最大0.7%という水準が記されている。増粘目的の一般的な配合帯は、これらの上限よりさらに低い0.1〜1%程度の範囲に収まるのが通例になる。

配合量を考えるうえで外せないのが、§1.2 で見た供給形態になる。本成分は逆相エマルション型のプレミックス、つまりポリマー・油・乳化剤が混ざった液体として供給される。したがって「原料としての配合量」と「ポリマーそのものの量」は一致しない。CIRの報告書も、同系統の別成分について商品名混合物中60%未満・45%未満といった供給濃度を記している(出典: CIR 2017)。何%配合という数字を見るときは、原料としての量か固形分としての量かで意味が変わる。

過剰配合のリスクについては、皮膚刺激の側で問題になる成分ではない。実務上意識されるのは使用感の側になる。増粘ポリマーを入れすぎると、伸びが重くなる、塗布中に肌の上でよれて白いカスが出る(いわゆるモロモロ)、乾いたあとにぴたっとしたつっぱり感が残る、といった不具合が出る。これは安全性の問題ではなく、配合量と他の増粘剤とのバランスで調整される設計上の論点になる。

もう1つ、この成分に固有の処方上の注意として、カチオン性成分との組み合わせがある。本成分はカルボキシ基とスルホン酸基を持つ強いアニオン性のポリマーで、カチオン界面活性剤やカチオンポリマーと共存すると、プラスとマイナスが引き合って複合体をつくり、粘度が落ちたり濁ったり沈殿したりすることがある。これも肌への害ではなく処方が組めるかどうかの話で、詳しくは §4.2 で扱う。

3.3 「危険性」と言われる根拠と実態の整理

この成分が名指しで危険視される場面は多くないが、成分表の読み手が引っかかりやすい点はいくつかある。中立に整理しておく。

1つ目は名前の長さと難解さになる。「アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80」は、成分表の中でひときわ長い。しかし §1.2 のとおり、この長さは3成分からなるプレミックスを正確に書いた結果で、成分としての危険度とは関係がない。むしろ、同じ原料を短く書いている製品より情報量が多い表示にあたる。名前の長さで警戒度を決めると、正直に書いている製品ほど不利になる。

2つ目は「合成ポリマーだから肌に悪い」という連想になる。増粘剤の安全性は合成か天然かという由来ではなく、その成分自体の刺激性・感作性・分子の大きさで評価される。本成分は §3.1 のとおりCIRが名指しで対象に含めて安全と結論しており(出典: CIR 2017)、経皮吸収されない大きな分子で、皮膚刺激性・感作性の試験でも懸念となる結果は報告されていない。合成であることを危険の根拠に読み替える理由は無い。逆に、天然由来でも植物アレルゲンを含む成分はアレルギーのリスクを持つ。由来の二分法は成分の実態と合わない。

3つ目が「アクリル」という語感になる。アクリルアミドは神経毒性・発がん性が議論される物質で、名前が似ているために不安を持たれることがある。この点についてはCIRの報告書自身が扱っていて、系統全体で残存モノマーへの懸念を示し、残存アクリルアミド5ppmという上限を最終製品にも適用するのが適切だと合意している(出典: CIR 2017)。ただし §3.1 のとおり、アクリルアミドが名指しされたのは別の成分(Sodium Acryloyldimethyl Taurate/Acrylamide/VP Copolymer)で、本成分の構成モノマーはアクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムの2つになる。ポリマーとその原料モノマーは別の物質で、重合したポリマーの性質を、名前の一部が似ているモノマーの性質で語ることはできない。

4つ目が、部外品の成分表示名称リストに載っていないことをどう読むかになる。§1.1 のとおり、このリストを検索しても本成分は見つからない。ここから「認められていない成分」「審査を通っていない成分」と読むのは誤りになる。実際に医薬部外品の製品で使われている以上、その他成分として配合されうる位置にある。リストの版は平成20年3月25日で止まっていて、収載の有無が表しているのは、その名前が2008年時点で登録されていたかどうかにすぎない。成分の性質でも、安全性の格付けでもない。この点はクラスタの他の3成分と対照すると分かりやすいので、§4.3 でまとめて扱う。

5つ目は逆方向の話で、「CIRが安全と結論したから無条件に安心」という受け取り方になる。CIRの結論は、本評価に記述された現行の使用実態と使用濃度において安全、という条件付きの表現になっている(出典: CIR 2017)。使用濃度や製品カテゴリが評価の前提を超えれば、結論はそのままでは適用されない。加えて残存モノマーの管理はcGMPに委ねられている。外部の安全性評価は絶対的な保証ではなく、条件と前提を含めて読むのが正確な扱いになる。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用推奨

最も密接な相手は、原料として最初から同居している2成分になる。イソヘキサデカンは軽い感触の炭化水素油で、ポリマーを分散させる油相を担う。ポリソルベート80はノニオン界面活性剤で、その分散を安定させ、水相に加えたときの転相を助ける。§1.2 のとおり、化粧品の3製品ではこの2つが別行で立っていた(出典: DappNotes 商品マスター集計)。併用というより、原料の構成要素として不可分の関係にある。

次に重要なのが、中和を要する側のアクリル酸系ポリマーとの併用になる。自社集計では、本成分を配合する5製品が5製品ともこの組み合わせを取っていた(出典: DappNotes 商品マスター集計)。P088 はアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、P090 はカルボマー(部外品表示名はカルボキシビニルポリマー)、P094・P097・P107 は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを併せて配合している。しかも化粧品3品では、この2つが表示上で隣接している(P094 は11位と12位、P097 は21位と22位、P107 は17位と18位)。

この組み合わせが理にかなうのは、2つのポリマーの得意分野が違うからになる。カルボマー系は中和後の透明で弾力のあるゲルをつくり、粘度の立ち上がりと形状の保持に強い。本成分は塩や低pHに強く、立ち上がりが速く、軽くさらりと切れる感触を出す。片方の弱点をもう片方が補う形になっていて、オールインワンジェルのように水も油も有効成分も同居する処方では、どちらか1本では感触と安定を両立しにくい。

保湿剤・油分との組み合わせは標準的になる。グリセリンBGヒアルロン酸Naといった水溶性の保湿剤は、それ自体では処方に形を与えない。本成分が水相に構造を与えることで、これらが垂れずに肌にとどまる。油分側では、スクワラン等のエモリエントを乳化して分散させた状態を、水相の粘度で保つ働きが効く。

電解質を含む処方との相性は、本成分の持ち味が最も出る場面になる。塩類やナイアシンアミドのようなイオン性・水溶性の成分を多く含む処方、あるいは酸性側に寄せた処方では、カルボマー系だけでは粘度を保ちにくい。スルホン酸基を持つ本成分は、こうした条件でも増粘を維持しやすいため、単独でも併用でも選ばれる。キサンタンガムのような耐塩性のある天然多糖と同じ役回りにあたるが、透明度と感触の軽さでは本成分のほうが扱いやすい。

4.2 併用注意

肌への安全性の面で避けるべき組み合わせとして知られているものは特にない。以下はいずれも処方設計上の話になる。

1つ目が、カチオン性(プラス荷電)成分との組み合わせになる。本成分はカルボキシ基とスルホン酸基を併せ持つ強いアニオン性のポリマーで、カチオン界面活性剤やカチオンポリマーと共存すると、プラスとマイナスが引き合って複合体をつくる。粘度が落ちる、濁る、沈殿するといった形で現れることがある。コンディショニング目的でカチオンポリマーを使う洗い流す製品と、この成分の相性が良くないのはこのためになる。CIRの届出データで本成分の使用の9割以上がleave-on製品だったこと(出典: CIR 2017)は、この事情とも整合する。

2つ目が、極端に高い電解質濃度になる。スルホン酸基のおかげで一般的なアニオン性ポリマーより塩に強いのは事実だが、無制限ではない。多価イオン(カルシウム・マグネシウム・アルミニウム塩等)が高濃度で共存すると、荷電を橋かけして鎖を縮ませ、粘度が落ちることがある。強いのは相対的な話であって、電解質を選ばないという意味ではない。

3つ目が、成分表の読み方としての二重計上になる。本成分・イソヘキサデカン・ポリソルベート80が3行に分かれて書かれていると、油分と乳化剤が別途足されているように見える。しかし §1.2 のとおり、これらは1つのプレミックスに由来する3行という可能性がある。「乳化剤が入っているから刺激が強そう」「油が入っているから重そう」という読み方は、この場合は外れやすい。

4つ目は使用感の重なりになる。増粘ポリマーを複数重ねると、量の設計を誤ったときによれ(モロモロ)が出やすくなる。これは製品側の設計の問題だが、使う側でも、ポリマーを含むジェルやクリームを何層も重ね塗りすると同じことが起きる。合わないと感じたら、成分の禁忌ではなく重ねる数と量の問題として調整するほうが早い。

4.3 類似成分

本成分を単体で見ると「とろみをつけるポリマーの1つ」で終わるが、本クラスタでは、読者が一括りにしがちな4つの成分を増粘のスイッチが何かで割って並べている。そして、そのスイッチの違いが、増粘以外に何ができるかとも、医薬部外品としての名前の残り方とも連動している、というのがこのクラスタの軸になる。

成分増粘のスイッチ主鎖・電荷増粘以外の役割部外品リストでの名前の残り方
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーアルカリで中和してカルボキシ基をイオン化し、静電反発で膨潤。中和しないとゲル化しない合成カルボキシビニル系・アニオン乳化安定(C10-30の疎水基が界面に吸着し界面活性剤的に働く)別名で収載(連番30「アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体」)=同一成分が製品区分で名前を変える
(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー(本成分)中和不要。Na塩として予め中和済みで、水に入れた時点で立ち上がる。スルホン酸基由来の耐塩性を持つ合成・アニオン(カルボキシ+スルホン酸)分散・乳化安定(逆相エマルション型のプレミックスとして供給される)2008年版リストに非収載。なのに医薬部外品の製品で現に使われている
ヒドロキシプロピルメチルセルロース水和のみ(非イオンでpHにも塩にも左右されにくい)。ただし加熱するとゲル化する逆転挙動を持つセルロース誘導体・非イオン皮膜・保護コロイド・泡質改善同名で収載(連番1730)=名前が動かない
ポリクオタニウム-39電荷。カチオン部位が毛髪・皮膚に吸着する。増粘は主目的ではない合成3元共重合体・カチオン+アニオン(両性的)コンディショニング・帯電防止(むしろこちらが本業)混合物の液体名で収載(連番3「アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体液」)

(出典: 日本化粧品工業連合会『医薬部外品の成分表示名称リスト』 / CIR 2017)

上から順に、増粘のスイッチが段階的に外れていく並びになっている。1段目のクロスポリマーは、アルカリを加えるという操作をしないとゲルにならない。2段目の本成分は、その操作が原料の製造段階で済んでいて、水に触れれば立ち上がる。3段目のヒドロキシプロピルメチルセルロースは、そもそもイオンで増粘していないので中和もpH調整も要らず、代わりに加熱でゲル化するという逆の挙動を持つ。4段目のポリクオタニウム-39に至っては、増粘が主目的ですらなく、毛髪や皮膚への吸着によるコンディショニングが本業になる。「とろみをつける成分」という括りが、4つの別々の設計を覆い隠していることが分かる。

そして、右端の列がこのクラスタでいちばん示唆的になる。4成分は同じくアクリル酸系・セルロース系の増粘ポリマーで、いずれも医薬部外品の有効成分ではない添加成分という点で位置づけが揃っている。にもかかわらず、部外品の成分表示名称リストでの名前の残り方は4通りに割れる。クロスポリマーは別名で収載され、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは同じ名前のまま収載され、ポリクオタニウム-39は混合物の液体名で収載され、本成分は収載自体が無い。

この差が何を表しているかは、本成分が反例として示している。本成分はリストに載っていないのに、医薬部外品の製品(P088・P090)で現に使われている(出典: DappNotes 商品マスター集計)。もし収載の有無が「医薬部外品で使えるかどうか」を表しているなら、この2製品は存在しえない。つまり収載の有無は、成分の性質でも規制上の格付けでもなく、その名前が2008年時点で登録されていたかどうかを表しているにすぎない。リストの版は平成20年3月25日で止まっていて、その後に普及した原料は載りようがない。

同じ構図は本クラスタの外にも広がっている。カルボマーは連番586「カルボキシビニルポリマー」として収載され、化粧品と医薬部外品で名前が入れ替わる。キサンタンガムのような天然多糖は同名で残る。名前の残り方の一貫性を、成分の系統や性質から予測することはできない。成分表を読むときは、名前の有無や形ではなく、その成分が何をしているかで判断するのが正確な姿勢にあたる。

増粘剤としての近縁を最後に整理しておく。同じアクリロイルジメチルタウリン系では、CIRの2017年報告書が21成分を対象にしていて、届出使用件数が最も多いのは Ammonium Acryloyldimethyltaurate/VP Copolymer の584件になる(出典: CIR 2017)。DappNotes の商品マスターにも、この成分を配合したヘアケアが1製品ある(P080 レタッチ ケアミルク)(出典: DappNotes 商品マスター集計)。アニオン性でない増粘剤としては、非イオンで塩にもpHにも強いヒドロキシエチルセルロースPEG-90M、天然多糖のキサンタンガムタマリンドガムがある。カチオン側で増粘とコンディショニングを兼ねるポリクオタニウム-7ポリクオタニウム-10は、本成分と電荷が逆で、同じ処方に入れると相互作用する側にあたる(§4.2)。

5. よくある質問

Q1. カルボマーとは何が違いますか

増粘が立ち上がるきっかけと、塩・pHへの強さが違います。カルボマーや(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーは、カルボキシ基が酸の形で供給されるため、水酸化Na・水酸化K・TEA等のアルカリで中和してイオン化させないとゲルになりません。だから成分表には必ずアルカリ剤が並びます。本成分は名前のとおり2つのモノマーがどちらもナトリウム塩の形で重合されていて、中和が原料の製造段階で済んでいます(出典: CIR 2017)。水に入れれば立ち上がるので、処方側で中和剤を要しません。もう1つの違いが耐塩性で、本成分はカルボキシ基に加えてスルホン酸基を持ちます。スルホン酸は強酸の基で広いpH域でイオン化したままのため、塩や酸性成分で荷電が消えにくく、電解質を含む処方でも増粘を保ちやすくなります。ただし仕上がりの質感は別で、カルボマー系の透明で弾力のあるゲルと、本成分の軽くさらりと切れる感触は別物です。DappNotes の商品マスターでも、本成分を配合する5製品はすべて中和が要る側のポリマーを併用していました(出典: DappNotes 商品マスター集計)。

Q2. 成分表に水酸化Naや水酸化Kが一緒に書いてあります。この成分を中和するためですか

いいえ、別のポリマーのために入っています。本成分はナトリウム塩として供給されるため、処方側での中和を必要としません。DappNotes の商品マスターで本成分を配合する5製品は、いずれもアルカリ剤を併記していますが、同じ5製品はいずれも中和を要する側のアクリル酸系ポリマーを併せて配合しています(出典: DappNotes 商品マスター集計)。P088 はアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、P090 はカルボキシビニルポリマー、P094・P097・P107 は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーで、アルカリ剤はそちらをゲル化させるために置かれています。成分表で近くに並んでいる成分どうしが、必ずしも互いのために置かれているとは限らない、という読み方の注意点になります。

Q3. 薬用クリームでは「アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80」と1行、化粧品ジェルでは3行に分かれています。中身は違うのですか

同じ原料を別の書き方で表示している可能性が高いです。この成分は、ポリマーを炭化水素油(イソヘキサデカン)に分散させ、ノニオン界面活性剤(ポリソルベート80)で安定化した液体、いわゆる逆相エマルション型のプレミックスとして供給されます。医薬部外品では3成分を連結した1つの名前で書かれ、化粧品では3つを個別に列記する、という違いになります。DappNotes の商品マスターでも裏が取れていて、独立成分としての「イソヘキサデカン」が現れるのは、本成分を単独名で書いている化粧品3品(P094・P097・P107)とちょうど一致します(出典: DappNotes 商品マスター集計)。つまり全成分表示の行数は、処方の複雑さや原料の数をそのまま表すものではありません。行が少ないほうがシンプルな処方、という読み方はこの場合外れます。

Q4. 医薬部外品の成分表示名称リストに載っていないと聞きました。使って大丈夫な成分ですか

リストに載っていないことは、使えないことも、審査で問題があったことも意味しません。日本化粧品工業連合会の医薬部外品の成分表示名称リストを検索すると、この成分は単独名でも別名でも見つかりません(「アクリロイル」の全文検索でヒット0件)。一方で、DappNotes の商品マスターには本成分を配合した医薬部外品が2製品あります(出典: DappNotes 商品マスター集計)。この2つを並べると、収載の有無が何を表しているかが分かります。参照できるリストの版は平成20年3月25日で止まっていて、収載されているかどうかは、その名前が2008年時点で登録されていたかどうかを表しているにすぎません。成分の性質でも安全性の格付けでもありません。安全性については別途、CIRが2017年5月24日公開の最終報告書で本成分を名指しで対象に含め、現行の使用実態と使用濃度において安全と結論しています(出典: CIR 2017)。

Q5. 「アクリル」とつく合成ポリマーですが、肌への安全性はどう評価されていますか

CIRが名指しで評価しています。2017年5月24日に公開された最終報告書『Safety Assessment of Acryloyldimethyltaurate Polymers as Used in Cosmetics』は、アクリロイルジメチルタウリン系ポリマー21成分を評価し、本評価に記述された現行の使用実態と使用濃度において安全と結論していて、結論の成分リストに Sodium Acrylate/Sodium Acryloyldimethyl Taurate Copolymer が明記されています(出典: CIR 2017)。経皮・経口の急性毒性、遺伝毒性、皮膚および眼の刺激性、感作性の各試験で懸念を生じる結果は無かったと記され、この系統が非常に大きな分子で皮膚から吸収されるとは考えられないことも安全性の根拠に挙げられています。一方でPanelは残存モノマーと不純物への懸念を示し、残存アクリルアミド5ppmという上限を最終製品にも適用するのが適切だと合意していますが、そこで名指しされたモノマーはいずれも本成分の構成モノマーではありません。本成分はアクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムの2元共重合体で、アクリルアミドを含みません。ポリマーとその原料モノマーは別の物質で、名前の一部が似ていることを危険の根拠に読み替えることはできません。ただしCIRの結論は現行の使用実態と濃度という条件付きの表現であり、絶対的な保証ではない点は押さえておく必要があります。

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本記事に関する注記

  • 本記事は特定商品の効果を保証するものではありません。成分の働きには個人差があり、体質・肌質により合わない場合があります。
  • 肌に赤み・かゆみ・刺激等の異常が出た場合は使用を中止し、症状が続く・悪化する場合は皮膚科等の医療機関にご相談ください。傷・炎症のある肌への使用は避けてください。
  • 本記事で扱う(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーは、化粧品および医薬部外品にその他成分(添加物)として配合される状態を前提としています。この成分自体に承認された効能はなく、医薬部外品の効能効果は承認された有効成分と承認内容の範囲に従います。
  • 本記事が参照する医薬部外品の成分表示名称リストは平成20年3月25日版です。本成分の収載が無いことは、この版の時点で名称が登録されていなかったことを示すもので、医薬部外品への配合可否や安全性の評価を示すものではありません。最新版で収載状況が変わっている可能性もあります。
  • 本成分が逆相エマルション型のプレミックスとして供給されるという整理は、CIRの報告書が同系統のポリマーについて記す供給形態(水溶液や商品名混合物としての供給)と、DappNotes 商品マスターで観察された3成分の同居パターンから導いたものです。個別の原料の組成を確認したものではありません。
  • 本記事に含まれる製品数・配合位置の集計は DappNotes 商品マスター(2026年9月時点・スキンケア54製品/ヘアケア78製品)に基づく自社集計であり、市場全体の分布を示すものではありません。全成分表示は原則配合量の多い順ですが、1%以下の成分は順不同のため、表示順位から配合量を断定することはできません。
  • 外部の安全性指標(CIR等)は出典明記の参考値であり、絶対的な安全性を保証するものではありません。CIRの結論は、当該報告書に記述された使用実態と使用濃度を前提とした条件付きのものです。
  • 本記事はAIによる下書きを編集部がレビュー・再構成して作成しています。
  • 編集部レビュー済み・AI下書き活用