ステアロイルグルタミン酸Naは、アミノ酸のグルタミン酸に脂肪酸を結合させてナトリウム塩にした、アシルグルタミン酸塩と呼ばれる系統の成分である。化粧品表示名称の配合目的は「ヘアコンディショニング剤」「皮膚コンディショニング剤(未分類)」「洗浄剤」の3つが登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。有効成分ではなく、化粧品にも医薬部外品にも添加成分として入る。

本記事の軸は「付く脂肪酸の長さだけが違う」ことである。アミノ酸系洗浄剤の代表格であるココイルグルタミン酸Naと骨格はまったく同じで、グルタミン酸に付く脂肪酸がヤシ油脂肪酸(炭素数12が中心)からステアリン酸(炭素数18)に伸びただけの関係にある。ところが公式に登録された配合目的は、親が「洗浄剤」1つなのに対し、本成分は3つある。名前の1か所の違いが、登録の上でどこまで表れて、どこからは表れないのかを一次資料で整理する。

1. ステアロイルグルタミン酸Naの基本

1.1 何の成分か

化粧品表示名称の定義は「本品は、ステアロイルグルタミン酸(*)のナトリウム塩であり、次の化学式で表される。」で、参照表示名称として「ステアロイルグルタミン酸」が示されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。成分番号は551606、国際的な成分名(INCI名)は Sodium Stearoyl Glutamate である。

定義の読み方は2段構えになる。まず「ステアロイルグルタミン酸」という酸の形の成分があり、本成分はそのナトリウム塩である、という書き方になっている。参照先の「ステアロイルグルタミン酸」(成分番号551601)も別の化粧品表示名称として登録されていて、酸の形と塩の形は日本の成分表示のうえでは別々の名前として立っている(出典: Cosmetic-Info.jp)。

CAS番号は 38517-23-6 と、L体を指す 79811-24-8 が併記されている。規制分類の欄に記載はなく、日本の化粧品で一律の配合上限が示された成分ではない。Cosmetic-Info.jp の市販化粧品データベースでは、2026年9月の確認時点で1609件の商品に紐づいている(出典: Cosmetic-Info.jp)。

規制上は、有効成分ではない添加成分に分類される。厚生労働省の『いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて』(薬食審査発第1225001号)に本成分は見当たらないが、同リストは有効成分の規格と分量の前例を集めた文書で、載っていないことは有効成分になれない根拠ではない。

米国の Cosmetic Ingredient Review(CIR)は、本成分を「アミノ酸アルキルアミド」というグループの1つとして評価している。そこでの定義は「ステアロイルクロリドとグルタミン酸の反応で生じるアミドのナトリウム塩」で、機能の記載は日本の配合目的3つと対応している(§3.1)。

1.2 変えた1か所=付く脂肪酸の長さ

アミノ酸系の洗浄剤として知られるココイルグルタミン酸Na(成分番号551202)の定義は「本品は、ココイルグルタミン酸(*)のナトリウム塩であり、次の化学式で表される。RCO:ヤシ油脂肪酸アシル基」である(出典: Cosmetic-Info.jp)。本成分の定義と並べると、文の形はまったく同じで、頭に付く脂肪酸の名前だけが「ココイル」から「ステアロイル」に入れ替わっている。

ココイル(ヤシ油脂肪酸アシル)はヤシ油に由来する脂肪酸の混合物で、炭素数12のラウリン酸が中心になる。ステアロイルはステアリン酸に由来し、炭素数は18で一定である。変えた1か所は、グルタミン酸に結合する脂肪酸の種類と長さだけで、アミノ酸の側もナトリウム塩という形も動いていない。

この「尾だけが違う」ことは、データベースに載る数値にも表れる。Cosmetic-Info.jp は表示名称ごとに有機性値と無機性値を載せている。これは有機概念図と呼ばれる古典的な整理法の値で、炭素骨格の大きさを有機性値、極性のある基の強さを無機性値で表す。

表示名称成分番号変えた箇所有機性値無機性値
ココイルグルタミン酸Na551202脂肪酸がヤシ油脂肪酸(C12中心)3401000
ステアロイルグルタミン酸Na(本成分)551606—4601000
ステアロイルグルタミン酸2Na551602頭が二ナトリウム塩4601500
ステアロイルグルタミン酸551601頭が酸の形460500

(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称)

読み方はそのまま表のとおりになる。ココイル体から本成分への変化では、無機性値は1000のまま動かず、有機性値だけが340から460へ動く。逆に本成分から2Naや酸の形への変化では、有機性値は460のまま動かず、無機性値だけが動く。脂肪酸の側を変えれば有機性値、頭の塩の側を変えれば無機性値、という形できれいに分かれている。

原料の側にも同じはしごがある。味の素ヘルシーサプライの「アミソフト®」シリーズには、ラウロイルグルタミン酸Na(LS-11)、ミリストイルグルタミン酸Na(MS-11)、ココイルグルタミン酸Na(CS-11)、ステアロイルグルタミン酸Na(HS-11P)が同じ表に並んでいる(出典: 味の素ヘルシーサプライ 化粧品素材 製品一覧)。同じ骨格のまま、付ける脂肪酸を変えたグレードが作り分けられている、ということである。

このクラスタでは、6つの成分がいずれも「すでに名前のある成分から1か所だけ変えた」関係にある。何を変えたかと、その結果として登録された配合目的がどう動いたかを並べる。

成分元になる成分変えた1か所配合目的の動き
ステアロイルグルタミン酸Na(本成分)ココイルグルタミン酸Na付く脂肪酸をC18のステアリン酸にする1つ→3つに増える
アセチルヒアルロン酸Naヒアルロン酸Naアセチル基を付ける別の語になる(保水剤)
ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルヒドロキシプロピルメチルセルロースステアリル基(疎水基)を付ける5つ→1つに狭くなる
トリラウレス-4リン酸ラウレス-4カルボン酸Na頭をリン酸にして3本足にする洗浄→乳化に入れ替わる
アクリレーツコポリマー(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー架橋をやめる増粘→皮膜・整髪ほかに入れ替わる
ロイシンイソロイシン枝分かれの位置を変える完全に同じ

(出典: 各成分の Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称)

本成分は、この表の中では「登録上の配合目的が元の成分より多い側」にあたる。いちばん端にあるロイシンのように、1か所違っても配合目的の登録がまったく同じ成分もある。動き方は成分ごとにばらばらで、変えた箇所の種類から先読みできるものではない。

1.3 同じ骨格から立つ、塩と酸で分かれる名前

「ステアロイルグルタミン酸」で化粧品表示名称を検索すると6件が並ぶ。酸の形、ナトリウム塩、二ナトリウム塩、カリウム塩、アルミニウム塩、そしてエステルにしたものである。

表示名称成分番号定義配合目的市販化粧品
ステアロイルグルタミン酸551601化学式で表されるアミノ酸誘導体ヘアコンディショニング剤、皮膚コンディショニング剤(未分類)、洗浄剤233件
ステアロイルグルタミン酸Na(本成分)551606ステアロイルグルタミン酸のナトリウム塩ヘアコンディショニング剤、皮膚コンディショニング剤(未分類)、洗浄剤1609件
ステアロイルグルタミン酸2Na551602同 二ナトリウム塩ヘアコンディショニング剤、皮膚コンディショニング剤(未分類)、洗浄剤3526件
ステアロイルグルタミン酸K551605同 カリウム塩ヘアコンディショニング剤、皮膚コンディショニング剤(未分類)3件
ステアロイルグルタミン酸Al551603同 アルミニウム塩(記載なし)711件
ステアロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル551607同 とオクチルドデカノールのジエステル皮膚コンディショニング剤(未分類)2件

(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称・市販化粧品件数は2026年9月確認)

ここで目につくのは、カリウム塩には「洗浄剤」の登録が無いこと、アルミニウム塩は配合目的の欄そのものが空であること、エステルにしたジオクチルドデシル体は「皮膚コンディショニング剤(未分類)」だけになっていることである。脂肪酸の長さが同じでも、頭が塩かエステルか、どの塩かによって、登録されている配合目的は一致しない。名前の末尾の「Na」「2Na」「K」「Al」は表記ゆれではなく、それぞれ別の化粧品表示名称だということになる。

グルタミン酸に脂肪酸を付けた系統をもう少し広げると、配合目的の並びは次のようになる。

グルタミン酸に脂肪酸を付けた系統をもう少し広げると、ココイルグルタミン酸2Na・ココイルグルタミン酸Kのように脂肪酸も塩も違うもの、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)のように塩ではなくエステルにしたもの、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaのようにアミノ酸が2つ連なるもの、そして脂肪酸を付ける前のグルタミン酸そのものが並ぶ。脂肪酸を付けるか付けないか、どの脂肪酸を付けるか、頭を塩にするかエステルにするか、という3か所がそれぞれ独立に動いて別々の名前を作っている。本成分は「脂肪酸をC18にした・Na塩のまま」の位置にある。

1.4 どんな製品に配合されるか

原料としては、味の素ヘルシーサプライが「アミソフト®」シリーズのグレード HS-11P/HS-11P(F) を、表示名称「ステアロイルグルタミン酸 Na」として公開している。同じ一覧で、このシリーズは「洗浄剤」の区分に置かれている(出典: 味の素ヘルシーサプライ 化粧品素材 製品一覧)。Cosmetic-Info.jp の原料データベースでは、本成分を含む原料が8件、本成分そのものの単一成分原料が1件登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。

DappNotesの商品マスターで本成分を確認できたのは、次の3品である。

商品区分剤形表示位置/全成分数
レタッチ ケアミルク化粧品ヘアミルク(洗い流さないトリートメント)23/37
クワトロボタニコ ボタニカル オイルコントロール & フェイスクレンザー化粧品洗顔料25/30
バルクオム THE EMULSION化粧品乳液25/35

(出典: 各社公式サイト・公式通販の全成分表示)

3品とも化粧品で、医薬部外品の商品はない。剤形はヘアミルク・洗顔料・乳液と分かれ、洗い流す製品が1品、肌や髪に残す製品が2品である。表示はレタッチのケアミルクが半角の「ステアロイルグルタミン酸Na」、残り2品が全角の「ステアロイルグルタミン酸Na」で、同じ表示名称の字種違いにあたる。

剤形の広がりは、原料側の案内とも向きがそろう。アミソフト®の一覧で、ココイル体(CS-11)の用途欄は「洗顔、クレンジング、ボディソープ、ヘアシャンプー」、ラウロイル体(LS-11)とミリストイル体(MS-11)はこれに「マウスケア」が加わる範囲にとどまる。これに対してステアロイル体(HS-11P)の用途欄には、さらに「化粧水、クリーム、サンケア、液状ファンデーション」が並ぶ(出典: 味の素ヘルシーサプライ 化粧品素材 製品一覧)。これは製造元が示す用途の案内であって効果の説明ではないが、洗い流さない製品まで用途に挙がる点は、DappNotesの配合例の並びと矛盾しない。

2. 期待される働き・効果

2.1 登録された配合目的から読めること

化粧品表示名称で公式に登録されている配合目的は、次の3つである(出典: Cosmetic-Info.jp)。

洗浄剤: 汚れを落とす目的の成分の分類である。本成分は分子の中に、水になじむグルタミン酸のナトリウム塩の部分と、油になじむ炭素数18の脂肪酸の部分を併せ持つ。CIRの機能表記でも「surfactants-cleansing agents」(洗浄剤としての界面活性剤)が挙げられている(出典: CIR Final Report 2014)。

ヘアコンディショニング剤: 毛髪の状態を整える目的の成分の分類である。

皮膚コンディショニング剤(未分類): 肌の状態を整える目的の成分をまとめた分類で、保湿剤やエモリエント剤といった細かい区分に当てはめていない、という意味になる。特定の働きを示す言葉ではない。

ここで注意したいのは、登録された配合目的に「乳化剤」は無いことである。本成分は界面活性剤の一種なので、成分表の解説で乳化剤と説明されている場面を見かけることがあるが、化粧品表示名称の配合目的にも、CIRの機能表記にもその語は入っていない。

この点は、日本とアメリカの2つの制度で同じように書き分けられている。比べる相手はステアロイルロイシン(成分番号551610)である。定義は「ステアリン酸とロイシンとのアミド」で、本成分と同じステアリン酸が付いていて、違うのは相手のアミノ酸がグルタミン酸かロイシンかだけになる。

成分付く脂肪酸相手のアミノ酸化粧品表示名称の配合目的CIRの Function
ステアロイルグルタミン酸Na(本成分)ステアリン酸グルタミン酸ヘア・皮膚コンディショニング剤、洗浄剤surfactants-cleansing agents
ステアロイルロイシンステアリン酸ロイシンヘア・皮膚コンディショニング剤、乳化剤surfactants-emulsifying agents

(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称 / CIR Final Report 2014, Table 1)

前の2つ(ヘア・皮膚コンディショニング剤)は同じで、3つ目だけが洗浄剤と乳化剤に分かれる。CIRの Function 欄でも、本成分が cleansing agents、ステアロイルロイシンが emulsifying agents と書き分けられている。同じステアリン酸を付けても行き先は同じにならず、その分かれ方が日米の登録でそろっている、ということになる。

配合目的は、その成分を何のために処方に入れるかという登録上の分類であって、肌や髪への効果の登録ではない。「洗浄剤」は汚れを落とす目的であり、「コンディショニング剤」は状態を整える目的である。ここから「皮脂を落とす力が強い」「髪が補修される」といった中身を読み取ることはできない。

2.2 1つから3つへ:親と配合目的の登録が違う

本記事の軸がいちばんはっきり出るのがここである。1か所しか違わない2つの名前で、公式に登録された配合目的の数が違う。

表示名称配合目的(登録されているもの)数
ココイルグルタミン酸Na(元の成分)洗浄剤1つ
ステアロイルグルタミン酸Na(本成分)ヘアコンディショニング剤、皮膚コンディショニング剤(未分類)、洗浄剤3つ

(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称)

米国のCIRの機能表記でも、本成分は「hair conditioning agents; skin-conditioning agents-misc.; surfactants-cleansing agents」の3つが並ぶ(出典: CIR Final Report 2014, Table 1)。日本の登録と英語の記載が同じ方向を向いている、という点は確認材料になる。

この差の読み方には、線を引いておきたい点が4つある。

1. 脂肪酸の長さから配合目的は導けない。ここで並べているのは登録の事実であって、「脂肪酸を長くしたから目的が増えた」という因果ではない。相手のアミノ酸がロイシンなら3つ目は乳化剤になり(§2.1)、塩がカリウムなら洗浄剤の登録が落ちる(§1.3)。配合目的は名称ごとの登録で、構造から機械的に計算できる値ではない。

2. 「増えた=高機能」ではない。配合目的は、その名称でどういう目的の配合が想定されるかの登録であって、性能の順位ではない。同じクラスタには、1か所違うことで登録が5つから1つに狭くなっている成分もある(§1.2)。

3. 「洗浄剤」は両方に残っている。洗浄という目的から別の目的に移っているのではなく、登録が重なったまま数が増えている。

4. 配合目的から効き方の差は出てこない。「コンディショニング剤が付いた分、髪や肌に良い」という読み方は、目的の分類を効果に読み替えてしまっている。

いっぽうで、原料製造元の用途案内にも同じ向きの広がりがある(§1.4)。ココイル体・ラウロイル体・ミリストイル体の用途欄が洗浄系とマウスケアにとどまるのに対し、ステアロイル体だけは化粧水・クリーム・サンケア・液状ファンデーションが加わる(出典: 味の素ヘルシーサプライ 化粧品素材 製品一覧)。登録の側と原料カタログの側で向きがそろう、というところまでが本稿で確認できた事実になる。

2.3 一般的な効能範囲

本成分を配合した化粧品で表現できるのは、化粧品の効能範囲の中の話になる。洗顔料の「皮膚を清浄にする」、シャンプーの「頭皮、毛髪を清浄にする」、乳液の「肌をひきしめる」「皮膚にうるおいを与える」などは、いずれも商品全体の効能であって、本成分1つに紐づく効能ではない。

逆に、次のような表現を本成分の効能として書くことはできない。

  • シミ・くすみを防ぐ、肌を白くする
  • シワを改善する、ハリを取り戻す
  • 毛穴を引き締める、角栓を溶かす
  • 傷んだ髪を修復する、髪の内部に浸透して補修する
  • 頭皮環境を改善する、フケ・かゆみを防ぐ

本成分は医薬部外品の有効成分ではなく、添加成分として配合される(§1.1)。有効成分の承認効能にあたるものは無いので、引用できる効能の文言も存在しない。

2.4 限界・誤解されやすい点

誤解されやすい点は4つある。

1. 「乳化剤」と読む誤解。界面活性剤の一種であることと、配合目的に乳化剤が登録されていることは別である(§2.1)。

2. 「アミノ酸系だから低刺激」という一般化。アミノ酸系という呼び方は、洗浄成分を系統でまとめた業界の言い方で、化粧品表示名称の分類ではない。CIRはこの系統を含むアミノ酸アルキルアミド115成分について、「非刺激になるように処方すれば」という条件を付けて安全と結論している(§3.1)。条件が付いている以上、成分名だけで低刺激と判断することはできない。

3. 「ステアリン酸」と混同する誤解。ステアリン酸は脂肪酸そのもので、石けん系の洗浄成分やエモリエントとして別に配合される、別の表示名称の成分である。配合例のクワトロボタニコの洗顔料には、ステアリン酸(5位)と本成分(25位)の両方が入っているが、成分表では別々の成分として書かれている。本成分の「ステアロイル」は、グルタミン酸に結合した状態を指す語である。

4. 名前の末尾を表記ゆれと読む誤解。ステアロイルグルタミン酸Na・2Na・K・Alは、それぞれ別の化粧品表示名称で、配合目的の登録も同じではない(§1.3)。成分表で「2Na」を見かけたら、本成分とは別の名前として読むことになる。

3. 安全性・注意点

3.1 CIR(米国)の評価:アミノ酸アルキルアミド115成分をまとめて評価

米国の Cosmetic Ingredient Review(CIR)は、本成分を「アミノ酸アルキルアミド」というグループの1つとして評価している。最終報告(Status: Final Report/Release Date: January 9, 2014)の結論は次のとおりである(出典: CIR Final Report 2014)。

The CIR Expert Panel concluded that the 115 amino acid alkyl amides listed below are safe in the present practices of use and concentration in cosmetics, when formulated to be non-irritating.

日本語にすると、「以下に挙げる115のアミノ酸アルキルアミドは、非刺激になるように処方されるという条件のもとで、現在の使用実態と濃度において化粧品に使用して安全である」となる。結論に並ぶ115成分の一覧に sodium stearoyl glutamate が収載されていて、印のない名前として載っている。この報告では、当時の使用報告が無い成分には名前の後ろに「*」が付く。本成分に印は無く、使用されている側に置かれている。

同じ一覧にある近い成分を見ると、印の付き方が分かれている。

CIRの一覧での表記対応する化粧品表示名称当時の使用報告
sodium stearoyl glutamate(本成分)ステアロイルグルタミン酸Naあり
disodium stearoyl glutamateステアロイルグルタミン酸2Naあり
potassium stearoyl glutamate*ステアロイルグルタミン酸Kなし
stearoyl glutamic acid*ステアロイルグルタミン酸(酸の形)なし
potassium cocoyl glutamateココイルグルタミン酸Kあり
stearoyl leucine*ステアロイルロイシンなし

(出典: CIR Final Report 2014・「*」は当時の使用報告が無いことを示す注記)

使用実態の調査結果(Table 5a・2012-2013年)では、本成分の数値は次のようになっている(出典: CIR Final Report 2014)。

区分使用報告数最大配合濃度
合計120件0.03-2%
肌や髪に残す製品(Leave-On)106件0.2-2%
洗い流す製品(Rinse Off)14件0.03-1.1%
目の周り5件1%
髪(染毛以外)6件0.03-0.2%
粘膜3件1%

同じ報告の中で使用報告数がいちばん多いのはラウロイルリシンの649件、次いでココイルグルタミン酸Naの178件で、本成分の120件はその次の層にあたる(出典: CIR Final Report 2014)。なお、この数字は2012-2013年の米国の調査で、日本の配合実態とは別のものである。日本側のCosmetic-Info.jp では本成分1609件に対しステアロイルグルタミン酸2Naが3526件で(§1.3)、こちらでは2Naのほうが多い。国と時点と集計方法が違うので、2つの数字を直接比べることはできない。

3.2 「非刺激になるように処方すれば」という条件の読み方

CIRの結論に付いた「when formulated to be non-irritating」という条件は、成分そのものの評価というより、処方する側への条件になっている。報告の考察には、この条件を付けた理由が次のように書かれている(出典: CIR Final Report 2014)。

The Panel noted that most surfactants exhibit some irritancy, as was the case with sodium lauroyl glutamate at 5% in a guinea pig study. Products using these ingredients should be formulated to be non-irritating.

「ほとんどの界面活性剤は何らかの刺激性を示すことをパネルは指摘した」という一文である。つまり、界面活性剤という系統全体に共通する前提として条件が付いたのであって、本成分に固有の刺激性の報告が根拠になっているわけではない。

刺激性・感作性の試験データについては、報告の要旨に「使用濃度がもっとも高い成分であるラウロイルリシンとラウロイルグルタミン酸Naの、皮膚刺激と感作に関する安全性試験データが、これらの成分の化粧品への使用の安全性を十分に裏づけた」と書かれている(出典: CIR Final Report 2014)。115成分の中で試験データがそろっている成分を代表として評価する進め方になっていて、本成分そのものを対象にしたヒト試験のデータが報告に並んでいるわけではない。これは評価の進め方によるもので、本成分の安全性データが乏しいという意味ではない。

パネルはこのほかに、アミノ酸アルキルアミドの製造で残留ペプチドを最小限にすべきこと、動物由来・植物由来の原料を使う成分については感染性物質や残留農薬・重金属への配慮が必要なことにも触れている(出典: CIR Final Report 2014)。

実用上の読み方はこうなる。成分名だけを見て低刺激と決めることはできないが、逆に「刺激性がある成分」と決めることもできない。刺激が出るかどうかは、配合濃度と処方全体と、使う人の肌の状態で決まる。

3.3 配合量の目安と表示から読めないこと

Cosmetic-Info.jp の化粧品表示名称のページでは、本成分の規制分類の欄に記載はない(出典: Cosmetic-Info.jp)。日本の化粧品で一律の配合上限が示された成分ではなく、配合量は各メーカーが処方ごとに決める。

配合濃度の目安として一次資料で確認できるのは、CIRの使用実態調査の数値になる。2012-2013年の米国の調査で、肌や髪に残す製品で0.2-2%、洗い流す製品で0.03-1.1%である(§3.1)。洗い流す製品のほうが濃度の上限が低いのが、この成分の特徴的なところで、シャンプーや洗顔料の主洗浄成分として数%から10%程度まで入るココイルグルタミン酸Naとは使われ方の帯が違う。

成分表示から読めないことを整理すると、次の3つになる。

  • 配合量: 全成分表示は配合量1%を超える成分を多い順に書き、1%以下は順不同で書ける。どこからが1%以下かは表示されないため、配合例の23位・25位から量の多い少ないは判断できない
  • 何を担っているか: 洗浄なのか、コンディショニングなのか、処方の中でどの役割で入っているかは表示されない。登録された配合目的が3つあるということは、表示だけでは役割を1つに絞れないということでもある
  • 原料の銘柄: 単一成分の原料か、他の成分と組み合わせた原料の一部として入っているかは、表示から分からない

3品での表示位置は23位・25位・25位で、いずれも成分表の後半にあたる。

3.4 化粧品名と部外品名:同じ命名系統でそろう

化粧品と医薬部外品では、成分表示に使う名前の体系が異なる。化粧品は化粧品表示名称、医薬部外品は医薬部外品の表示名称で書く。本成分は、両方の名前が確認できて、かつ親のココイル体と同じ作り方でそろっている例である。

資料名前内容
化粧品表示名称ステアロイルグルタミン酸Na(成分番号551606)ステアロイルグルタミン酸のナトリウム塩
部外品添加物(Cosmetic-Info.jp)N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム(規格コード51・成分コード500248)本質「本品は,主としてN-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウムからなる.本品を乾燥したものは,定量するとき,窒素(N:14.01)2.8~3.2%を含む.」
医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム(連番1230)規格51・成分コード500248

(出典: Cosmetic-Info.jp / 日本化粧品工業連合会『医薬部外品の成分表示名称リスト』平成20年版)

部外品側の名前は、化粧品側の名前に情報を3つ足した形になっている。脂肪酸が結合している位置を示す「N-」、アミノ酸の立体をL体に限る「L-」、そして「Na」を日本語で書いた「ナトリウム」である(英名も Sodium N-Stearoyl-L-Glutamate)。本質の欄には窒素の含量という規格の数値まで書かれていて、化粧品側の定義文よりも成分の範囲が細かく絞られている。

親のココイル体と並べると、名前の作り方の違いがはっきりする。

成分化粧品表示名称医薬部外品の表示名称名前の作り方
ステアロイルグルタミン酸Na(本成分)ステアロイルグルタミン酸NaN-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム脂肪酸を名指しできる(ステアリン酸1種)
ココイルグルタミン酸Naココイルグルタミン酸NaN-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム脂肪酸が混合物なので原料名で書く

(出典: Cosmetic-Info.jp / 日本化粧品工業連合会『医薬部外品の成分表示名称リスト』平成20年版)

2つとも「N-(脂肪酸)-L-グルタミン酸ナトリウム」という同じ命名系統に乗っていて、違うのは脂肪酸を書く場所の中身だけである。ステアリン酸は単一の脂肪酸なので「ステアロイル」と名指しできるのに対し、ヤシ油脂肪酸は混合物なので「ヤシ油脂肪酸アシル」と原料の側から書くことになる。

塩や形の違いが別々の名前になる点も、部外品側で同じである。部外品添加物データベースを「ステアロイル」で検索すると、N-ステアロイル-L-グルタミン酸(酸の形)、同 カリウム、同 ナトリウム、同 二ナトリウム、同 アルミニウム被覆セリサイト、同 アルミニウム被覆タルクが並ぶ(出典: Cosmetic-Info.jp)。

なお、部外品表示名称「N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム」と同じ文字列の化粧品表示名称は存在しない(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称の検索結果0件)。同じ文字列が両方の体系にあって別の成分を指す、という取り違えの心配は無い。この表示名称の医薬部外品は、同データベースで64件が確認できる(2026年9月確認)。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用される成分

本成分は単独で主役になる成分ではなく、配合例では洗浄や乳化の骨格ができたうえに重ねられている。3品それぞれの並びを見る。

商品本成分の前後に並ぶ成分(表示位置)
レタッチ ケアミルクラウレス-9(20)→ステアリン酸グリセリル(21)→セテス-2(22)→本成分(23)→コレステロール(24)
クワトロボタニコ 洗顔料マンダリンオレンジ果皮油(24)→本成分(25)→スルホコハク酸(C12-14)パレス-2Na(26)→ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10(27)→PEG-8(28)
バルクオム THE EMULSIONイソステアリン酸ポリグリセリル-10(22)→パルミチン酸セチル(23)→イソステアリン酸ポリグリセリル-2(24)→本成分(25)

(出典: 各社公式サイト・公式通販の全成分表示)

3品に共通するのは、本成分が、界面活性剤や高級アルコール・脂肪酸エステルがまとまって現れる区画に出てくることである。ただし、この並びの近さを根拠に役割を判断することはできない。全成分表示は配合量1%以下の成分を順不同で書けるため、隣り合っていることが同じ役割や同じ原料に由来することを示すわけではない(§3.3)。書けるのは出現の事実までである。

処方の骨格になっている成分は、商品ごとに系統が分かれる。クワトロボタニコの洗顔料はミリスチン酸(2位)・ステアリン酸(5位)・パルミチン酸(7位)を水酸化K(4位)で中和する石けん系、バルクオムの乳液は水・BG・グリセリン・スクワランを上位に置いた乳化系、レタッチのケアミルクはシクロペンタシロキサン(2位)・ジメチコン(4位)にセラミドNGなどを重ねた構成である。本成分はいずれの骨格にも属さず、その後ろに置かれている。

4.2 注意したい組合せ

本成分について、化粧品の処方で避けるべき組み合わせは、本稿で確認した資料では報告されていない。CIRの報告でも、他成分との併用に関する注意は挙げられていない(出典: CIR Final Report 2014)。

実用上の注意は、成分どうしの相性よりも、期待の置き方と処方全体の見方にある。

  • 本成分の有無で洗浄力を判断しないこと: 洗い上がりを決めるのは主洗浄成分である。石けん系の洗顔料であれば脂肪酸と中和のアルカリ剤を先に見る
  • 香料・精油を含む処方: 配合例のクワトロボタニコの洗顔料はベルガモット果実油・ローズマリー油・マンダリンオレンジ果皮油を、レタッチとバルクオムは香料を含む。しみる・赤くなると感じたとき、原因が本成分とは限らない
  • 「アミノ酸」の語で成分を束ねないこと: アミノ酸そのものと、脂肪酸を結合させた本成分のような誘導体は別の話になる

4.3 類似成分

成分表で本成分と取り違えやすい、あるいは並べて読むと位置づけがはっきりする成分を挙げる。

脂肪酸の長さが違う側

同じステアロイル基を持つ側

  • ステアロイルロイシン: 相手のアミノ酸がロイシン。日米とも3つ目の登録が乳化剤になる(§2.1)
  • ステアロイルラクチレートNa: 結合しているのがアミノ酸ではなく乳酸で、別の系統にあたる
  • ステアリン酸: 脂肪酸そのもの。石けん系洗浄やエモリエントとして別に配合される

グルタミン酸まわり

同じクラスタ(1か所だけ変えた成分)

このうちロイシンは、ステアロイルロイシンという形で本成分と直接つながる(§2.1)。

5. 使い方

5.1 推奨される使用シーン

本成分の有無で商品を選ぶ場面は、実際にはあまりない。配合例はヘアミルク・洗顔料・乳液で、いずれも処方の一部として入っている。

洗顔料(洗い流す製品): 選ぶときに見るのは主な洗浄成分の系統である。配合例の洗顔料は脂肪酸をアルカリで中和する石けん系で、洗い上がりの傾向はそちらで決まる。

乳液・ヘアミルク(肌や髪に残す製品): CIRの使用実態でも、本成分の使用報告は肌や髪に残す製品が106件と多数を占める(§3.1)。選ぶときは保湿の骨格(水・BG・グリセリン・油分)と、テクスチャや香りの有無を見ればよい。

使い方は、それぞれの商品の標準的な使い方に従えばよい。本成分のために特別な使い方をする必要はない。

5.2 期待できないこと・避けるべき使い方

本成分に期待できないことは、次のとおりである。

  • 美白・シワ・毛穴への作用: 配合目的は洗浄剤とコンディショニング剤で、美白・シワ改善・毛穴の引き締めを本成分に期待することはできない
  • 髪の内部補修: ヘアコンディショニング剤は毛髪の状態を整える目的の分類で、傷んだ髪を修復するという登録ではない
  • 「アミノ酸系だから低刺激」という保証: CIRの結論には「非刺激になるように処方すれば」という条件が付いている(§3.2)
  • 成分名からの洗浄力の判断: 配合濃度の実態は肌や髪に残す製品で0.2-2%、洗い流す製品で0.03-1.1%(§3.1)で、主洗浄成分として使われるココイルグルタミン酸Naとは帯が違う

避けたいのは、名前が似た成分を同じものとして読むことである。ステアロイルグルタミン酸2Na・K・Al、そして酸の形のステアロイルグルタミン酸は、それぞれ別の化粧品表示名称で、登録された配合目的も同じではない(§1.3)。

6. メンズ実用視点まとめ

メンズの成分表示でステアロイルグルタミン酸Naを見かけたら、次の3点で読むと整理しやすい。

  1. ココイル体との違いは脂肪酸の長さだけ: 骨格は同じアシルグルタミン酸塩で、付く脂肪酸がC12中心からC18に伸びている。名前の「ステアロイル」の部分だけが違う
  2. 登録された配合目的は3つ: 洗浄剤とヘア・皮膚コンディショニング剤。親の1つより多いが、これは登録の話で、優劣ではない。乳化剤の登録は無い
  3. 配合量の帯が主洗浄成分とは違う: 米国の使用実態調査では上限2%で、肌や髪に残す製品での報告が多数を占める。洗浄力を左右する位置には置かれていない

皮脂が多くベタつきが気になる肌や、汗をかきやすい頭皮では、洗浄力や洗い上がりに目が向きやすい。その判断は主洗浄成分の系統で行い、本成分は「アミノ酸系」という響きに引っ張られずに、処方の後半に置かれた補助成分の1つとして読めばよい。ヒゲ剃り後のように肌が敏感になっている場面で合わないと感じたときも、原因を本成分に限定せず処方全体で考えるほうが現実的である。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. ステアロイルグルタミン酸Naはどんな成分ですか?

アミノ酸のグルタミン酸に、炭素数18のステアリン酸を結合させてナトリウム塩にした成分です。化粧品表示名称の定義は「ステアロイルグルタミン酸のナトリウム塩」で、配合目的はヘアコンディショニング剤・皮膚コンディショニング剤(未分類)・洗浄剤の3つが登録されています(出典: Cosmetic-Info.jp)。有効成分ではなく、添加成分として配合されます。

Q2. ココイルグルタミン酸Naと何が違うのですか?

骨格は同じで、グルタミン酸に付く脂肪酸が違います。ココイルグルタミン酸Naはヤシ油脂肪酸(炭素数12が中心)、本成分はステアリン酸(炭素数18)です(出典: Cosmetic-Info.jp)。登録された配合目的は、ココイル体が洗浄剤の1つ、本成分が3つで、こちらも違います。ただし、目的の数の違いを性能の優劣として読むことはできません。使われ方の帯も違い、ココイル体はシャンプーや洗顔料の主洗浄成分として数%の帯で使われるのに対し、本成分は米国の使用実態調査で上限2%です(出典: CIR Final Report 2014)。

Q3. 乳化剤ですか?

化粧品表示名称の配合目的にも、CIRの機能表記にも「乳化剤」は入っていません(出典: Cosmetic-Info.jp / CIR Final Report 2014)。界面活性剤の一種ではあるので、乳液やクリームの処方に入ることはありますが、本成分が乳化を担っているかどうかは成分表示からは分かりません。同じステアリン酸を付けた成分でも、相手のアミノ酸がロイシンのステアロイルロイシンは、日本の配合目的が「乳化剤」、CIRの Function も surfactants-emulsifying agents で、本成分とは行き先が分かれています(出典: Cosmetic-Info.jp / CIR Final Report 2014)。「ステアロイルだから乳化剤」とは読めません。

Q4. 安全な成分ですか? 刺激はありますか?

米国のCIRは、本成分を含むアミノ酸アルキルアミド115成分について、「非刺激になるように処方されるという条件のもとで、現在の使用実態と濃度において安全」と結論しています(出典: CIR Final Report 2014)。この条件は、ほとんどの界面活性剤が何らかの刺激性を示すという一般的な前提から付いたもので、本成分に固有の刺激性の報告が根拠ではありません。成分名だけで低刺激とも刺激性ありとも判断できず、実際に刺激が出るかは配合濃度・処方全体・肌の状態で決まります。赤み・かゆみが出たら使用を中止してください。

Q5. 「ステアロイルグルタミン酸2Na」と書いてあったら同じ成分ですか?

別の化粧品表示名称です。二ナトリウム塩で、定義も成分番号も別に登録されています(出典: Cosmetic-Info.jp)。同様にK塩・Al塩、そして酸の形の「ステアロイルグルタミン酸」もそれぞれ別の名前で、配合目的の登録も同じではありません。末尾の違いは表記ゆれではなく、別の成分を指しています。

Q6. 医薬部外品では何という名前で書かれますか?

「N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム」です(出典: Cosmetic-Info.jp 部外品添加物 / 日本化粧品工業連合会『医薬部外品の成分表示名称リスト』平成20年版)。化粧品表示名称に、結合位置を示す「N-」、立体をL体に限る「L-」、そして「Na」を日本語にした「ナトリウム」を足した形です。親のココイル体が「N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム」と書かれるのと同じ命名系統になります。

8. まとめ

ステアロイルグルタミン酸Naは、グルタミン酸に炭素数18のステアリン酸を結合させてナトリウム塩にした成分で、化粧品ではヘアコンディショニング剤・皮膚コンディショニング剤(未分類)・洗浄剤の3つの目的で登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。乳化剤の登録は無い。

アミノ酸系洗浄剤の代表格であるココイルグルタミン酸Naとは、骨格がまったく同じで、付く脂肪酸の種類と長さだけが違う。データベースの有機性値・無機性値も、脂肪酸を変えれば有機性値だけが動き、頭の塩を変えれば無機性値だけが動く、という形で分かれている。ところが公式に登録された配合目的は、親の1つに対して本成分は3つある。これは登録の並びの事実であって、脂肪酸を長くしたから目的が増えた、という因果ではない。同じステアリン酸を付けても相手のアミノ酸がロイシンなら3つ目は乳化剤になり、塩がカリウムなら洗浄剤の登録が落ちる。配合目的は名称ごとの登録で、構造から機械的には導けない。

安全性では、CIRがアミノ酸アルキルアミド115成分をまとめて評価し、「非刺激になるように処方すれば」という条件のもとで安全と結論している。この条件は界面活性剤全般に共通する前提から付いたもので、本成分に固有の刺激性の報告が根拠ではない。医薬部外品では「N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム」の名前で登録されていて、親のココイル体と同じ命名系統に乗っている。配合例は化粧品のヘアミルク・洗顔料・乳液の3品で、いずれも成分表の後半に置かれている。

「アミノ酸系」という響きから洗浄力や低刺激を読み取るのではなく、名前のどこが違うのかを見て、その違いが登録の上でどこまで表れているのかを確認する。それが成分表を読むうえでの実用的な順番になる。

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