マタタビ果実エキスは、マタタビ科のマタタビ(Actinidia polygama)の果実のエキスで、化粧品表示名称の配合目的は皮膚コンディショニング剤(未分類)の1つだけが登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。医薬部外品では「シルバーバイン果実エキス」という別の名前で表示される。有効成分ではなく、化粧品にも医薬部外品にも添加成分として入る。

本記事の軸は2つある。1つは名前の対応で、シルバーバインはマタタビの英名(silver vine)にあたり、原料の製造元が同じ1つの原料に2つの名前を並べている。もう1つは「猫が酔う」話との切り分けで、猫の反応を引き起こす成分の研究は、化粧品成分としての登録や人の肌への働きとは別の話になる。効く・効かないの判定ではなく、成分表の名前から何が読めて、何が読めないかを並べる。

1. マタタビ果実エキスの基本

1.1 何の成分か

マタタビは山地に自生するつる性の木で、キウイフルーツと同じマタタビ属(Actinidia)に分類される植物である(出典: Taguchi et al. 2007)。化粧品表示名称「マタタビ果実エキス」の定義は、マタタビ Actinidia polygama の果実のエキスで、成分番号は561342、国際的な成分名(INCI名)は Actinidia Polygama Fruit Extract である(出典: Cosmetic-Info.jp)。化粧品の成分表示名称リストには、No.22(2009年4月発行)で収載された。

配合目的の登録は「皮膚コンディショニング剤(未分類)」の1つだけである。肌の状態を整える目的の成分をまとめた分類で、「未分類」は保湿剤やエモリエント剤といった細かい区分に当てはめていない、という意味になる。特定の働きを示す言葉ではない。

原料は、果実を溶媒で抽出した液として流通する。製造元の原料一覧では、「マタタビ抽出液BG30」「シルバーバイン抽出液BG30」の2品がいずれもBGと水を含む液で、化粧品での表示は「マタタビ果実エキス、BG、水」になる(出典: 丸善製薬 化粧品原料 製品一覧)。エキスの中にどんな成分がどれだけ含まれるかは、製造元から公開されていない。

規制上は、有効成分ではない添加成分に分類される。厚生労働省の『いわゆる薬用化粧品中の有効成分リスト』を「マタタビ」「シルバーバイン」で検索しても名前は見当たらない。同リストは有効成分の規格と分量の前例を集めた文書で、載っていないことが有効成分になれない根拠になるわけではないが、本成分を有効成分とする前例は確認できない。

1.2 化粧品名と部外品名の対応

本成分は、呼び名が3つの体系にまたがる。一次資料で確認できた対応を並べる。

体系名前番号・コード確認した資料
化粧品表示名称マタタビ果実エキス成分番号561342Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称
医薬部外品の添加物シルバーバイン果実エキス規格コード99・成分コード999999Cosmetic-Info.jp 部外品添加物
INCI名Actinidia Polygama Fruit Extract―Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称 / 丸善製薬

(出典: Cosmetic-Info.jp / 丸善製薬 化粧品原料 製品一覧)

部外品側の登録は、規格コード99(別紙規格)・成分コード999999で、本質(何から、どう作るか)の欄は空になっている(出典: Cosmetic-Info.jp 部外品添加物)。部外品の原料規格の各条として定義が公開されている成分ではないため、「果実のエキス」という中身は、部外品側の登録だけからは確かめられない。

2つの名前が同じ原料を指すと言える根拠は、製造元の並記である。丸善製薬の原料一覧には、マタタビ由来の原料が2品載っている。

  • シルバーバイン抽出液BG30: 化粧品表示名称はマタタビ果実エキス・BG・水、医薬部外品の成分名と表示名称はシルバーバイン果実エキス
  • マタタビ抽出液BG30: 化粧品表示名称は同じくマタタビ果実エキス・BG・水で、医薬部外品の欄は「-」

(出典: 丸善製薬 化粧品原料 製品一覧)

2品はINCI名の並びも同じで、違いは医薬部外品の名前が付いているかどうかにある。同じ1つの原料(シルバーバイン抽出液BG30)に化粧品名と部外品名が並べて書かれている点が、対応の直接の根拠になる。原料データベースの側でも、化粧品名「マタタビ果実エキス」に紐づく原料は、この丸善製薬の2品だけだった(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB、2026年9月確認)。

逆向きの確認もしておく。化粧品表示名称を「シルバーバイン」で検索すると0件で、部外品添加物を「マタタビ」で検索しても0件だった(出典: Cosmetic-Info.jp、2026年9月確認)。部外品名と同じ文字列の化粧品名が別の成分として登録されている、という取り違えは起きない。

1.3 同じ植物・同じ部位でも表示名が割れる例

化粧品と医薬部外品で表示名が違う原料は、マタタビに限らない。名前が違っても同じ原料と言える場合と、名前が同じでも化粧品では別の原料を指す場合がある。同時期に解説した6成分を並べると、次の4通りに分かれる。

成分(化粧品表示名称)医薬部外品での表示名化粧品の成分表で同じ文字列を見たとき
イチョウ葉エキスイチョウエキス化粧品の「イチョウエキス」はイチョウ葉エキスの旧名で、定義も同じ葉のエキス
ゴレンシ葉エキススターフルーツ葉エキス化粧品に同じ名前の登録はない。製造元は2つの名前を1つの原料に並記
マタタビ果実エキス(本成分)シルバーバイン果実エキス化粧品に同じ名前の登録はない。製造元は2つの名前を1つの原料に並記
サボンソウ葉エキスサボンソウエキス(葉)化粧品の「サボンソウエキス」は根及び葉のエキスで、部位の範囲が違う
セイヨウハッカ葉エキスセイヨウハッカエキス(葉)化粧品の「セイヨウハッカエキス」は全草のエキスで、部位の範囲が違う
レモンエキスレモンエキス化粧品の「レモンエキス」も果実又は果汁のエキスで同じ。ただし果実だけの「レモン果実エキス」、果汁の「レモン果汁」が別に登録されている

(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称・部外品添加物 / 丸善製薬 化粧品原料 製品一覧)

マタタビ果実エキスは、ゴレンシ葉エキスと同じ型で、部外品名が化粧品側にない別名になっている。和名(マタタビ)と英名(シルバーバイン)の違いなので、名前の見た目は大きく違っても、同じ植物の同じ部位を指している。

同じ植物の別の名前にも触れておく。化粧品表示名称には「マタタビ葉エキス」(INCI名 Actinidia Polygama Leaf Extract)が別に登録されていて、こちらは葉のエキスで、配合目的も皮膚保護剤・保湿・湿潤剤・閉塞剤と本成分とは違う(出典: Cosmetic-Info.jp)。部位の違う別の成分なので、成分表で「マタタビ葉エキス」を見ても、本成分とは別のものとして読む。部位を指定しない「マタタビエキス」という化粧品表示名称は、検索では見つからなかった。

1.4 どんな製品に配合されるか

Cosmetic-Info.jp の市販品データベースでは、2026年9月の確認時点で、化粧品名「マタタビ果実エキス」が181件の化粧品に、部外品名「シルバーバイン果実エキス」が59件の医薬部外品に紐づいている(出典: Cosmetic-Info.jp)。

DappNotesの商品マスターで本成分を確認できたのは、次の3品である。

商品区分剤形表示名本成分の位置
チャップアップシャンプー化粧品シャンプーマタタビ果実エキス全57成分中53番目
NILE オールインワンローション化粧品オールインワンマタタビ果実エキス全37成分中15番目
&GINO プレミアムフェイスエッセンス アクアモイス医薬部外品美容液シルバーバイン果実エキスその他の成分の中(全73成分中26番目)

(出典: 各社公式の全成分表示、2026年9月確認)

3品とも、製品区分に対応した名前で書かれていて、区分と名前の食い違いはない。成分表で「シルバーバイン果実エキス」を見たら、その商品は医薬部外品の表示だと見当がつく。

&GINO の美容液では、有効成分はナイアシンアミドとグリチルリチン酸2K(部外品での表示はグリチルリチン酸ジカリウム)で、シルバーバイン果実エキスは「その他の成分」の側に書かれている(出典: &GINO 公式)。部外品の成分表で本成分を見ても、それは有効成分ではなく、ほかの添加成分と同じ扱いの1つである。

表示位置の読み方は、化粧品と医薬部外品で違う。化粧品の全成分表示は配合量の多い順に書くのが原則だが、1%以下の成分は順不同で書いてよい(出典: 化粧品の全成分表示の記載方法に関する自主基準)。化粧品の2品で本成分が成分表の中〜後半にあることから言えるのは、配合量は多くない側、というところまでである。医薬部外品の成分表示は日本化粧品工業連合会の自主基準として行われていて、成分を「有効成分」と「その他の成分」に分け、「その他の成分」の記載順は企業の判断とされている(出典: 医薬部外品の成分表示に係る日本化粧品工業連合会の基本方針、平成18年)。部外品の表の何番目かから、配合量を推し量ることはできない。

1.5 メンズ視点での見方

3品はいずれもメンズ向けの商品で、剤形はシャンプー・オールインワン・美容液と分かれる。特定の悩みに向けた成分というより、整肌目的の植物エキスの1つとして処方に入っている。

読み方で押さえたいのは、「マタタビ」という名前の印象や、「猫が夢中になる」という話を、商品の働きに置き換えないことである。シャンプーを選ぶなら洗浄成分、オールインワンや美容液なら保湿の骨格や有効成分が判断の中心で、マタタビ果実エキスの有無が選ぶ基準になることはまずない。

2. 期待される働き・効果

2.1 登録された配合目的から読めること

化粧品表示名称で登録されている配合目的は「皮膚コンディショニング剤(未分類)」の1つである(出典: Cosmetic-Info.jp)。植物由来のエキスの多くがこの分類に入り、肌を整える目的で配合される、という以上の働きをこの登録から読むことはできない。

同じマタタビでも、葉のエキスは配合目的の登録が違う(皮膚保護剤・保湿・湿潤剤・閉塞剤、§1.3)。なぜ部位によって登録が違うのかは、表示名称データベースの記載からは読み取れない。葉のエキスの登録を、果実のエキスである本成分の働きとして借りることはしない。

医薬部外品の側では、本成分は添加物としての登録で、効能をもつ有効成分ではない。部外品の効能は、有効成分とその承認された効能で決まる。

2.2 製造元の説明と、それを支える資料の段階

原料データベースの製造元提供欄には、丸善製薬の2品に共通して、次の説明が載っている(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB、2026年9月確認)。

  • 「マタタビの果実から抽出されたエキスです。」
  • 「期待される作用:透明感向上(ヒト試験あり:1%配合製剤で実施)、カルボニル化抑制、保湿、美白、抗老化、抗酸化」

これは原料メーカーが化粧品メーカー向けに示す説明で、化粧品表示名称の配合目的として登録された内容ではない。とくに「美白」は、化粧品の効能として認められた内容ではなく、本成分は医薬部外品の美白の有効成分として承認されているわけでもない。説明にある「ヒト試験」は、試験の条件や人数、結果の数値を本稿では確認できていない。商品の働きとして読み替えられる材料ではない、と整理しておく。

学術論文では、マタタビの水抽出物を使った培養細胞とマウスの試験で、紫外線による皮膚の変化を抑える方向の結果が報告されている(出典: Lee et al. 2024)。ただし、抄録には抽出に使った部位が書かれておらず、本成分(果実のエキス)と同じものかは確かめられない。試験の段階も培養細胞と動物までで、人の肌で確かめた結果ではない。

2.3 「猫が酔う」話と化粧品の登録は別

マタタビの名前で最もよく知られているのは、猫がマタタビに顔をこすりつけたり、転げ回ったりする反応である。この反応については、岩手大学などの研究グループが仕組みを調べた論文がある(出典: Uenoyama et al. 2021)。

  • 猫の反応を引き起こす主な成分として、イリドイドの一種ネペタラクトールを特定した
  • ネペタラクトールをかいだ猫では、血液中のβ-エンドルフィンが増えた
  • こすりつける行動で、ネペタラクトールが猫の顔や頭の毛に移り、蚊を遠ざける働きをした

同じ論文は、猫とマタタビの反応を日本の本草学者が1704年に記録していたことにも触れている。続く研究では、猫が葉をかじると、葉から放出されるイリドイドの量が増え、種類も多様になることが報告された(出典: Uenoyama et al. 2022)。

ここで押さえたいのは、これらの研究がマタタビの葉から成分を取り出していることである(出典: Uenoyama et al. 2021)。果実のエキスである本成分に、ネペタラクトールなどのイリドイドがどれだけ含まれるかは、本稿で確認した資料には書かれていない。また、研究の主題は猫の行動と蚊よけで、人の肌を整える働きとは結びつかない。「猫が夢中になる成分だから、人の肌にも何か特別な働きがある」という読み方には根拠がない。

もう1つ、生薬の「木天蓼(もくてんりょう)」との関係も整理しておく。生薬を扱う企業の解説では、日本で木天蓼として薬用にされてきたのは、マタタビの果実が虫の刺傷でこぶ状になった「虫えい(虫こぶ)」で、中国では茎(枝葉)を薬用にしてきたとされる(出典: ウチダ和漢薬『生薬の玉手箱』)。化粧品の「マタタビ果実エキス」の定義は「果実のエキス」で、虫こぶの果実に限るものではない。どちらの果実を原料にしているかは表示から分からないため、木天蓼の名前で語られる民間での使われ方を、本成分の働きとして読むことはしない。なお、「マタタビ」「モクテンリョウ」は日本薬局方名称データベースでは見つからなかった(2026年9月確認)。

2.4 一般的な効能範囲

化粧品として言える範囲は、厚生労働省が定める化粧品の効能の範囲の中で、「肌を整える」「肌にうるおいを与える」といった表現に限られる。本成分が入った化粧品でも、効能は商品全体の処方として表示されるもので、成分1つに効能が割り当てられるわけではない。

医薬部外品では、効能は有効成分に基づいて承認される。&GINO の美容液のように部外品の成分表に「シルバーバイン果実エキス」があっても、その商品の効能は有効成分によるもので、本成分の働きとして読むことはできない。

2.5 限界・誤解されやすい点

  • 「猫が酔う成分が入っている」: 猫の反応の研究は葉の成分で、果実のエキス中の含有量は確認できない(§2.3)
  • 「シルバーバイン果実エキスは部外品の有効成分」: 部外品での名前というだけで、有効成分ではない(§1.4)
  • 「名前が違うから別の成分」: マタタビ果実エキスとシルバーバイン果実エキスは、製造元が同じ原料に並べて書く名前である(§1.2)
  • 「美白の素材」: 製造元の説明にある言葉で、化粧品の効能でも部外品の有効成分としての承認でもない(§2.2)

3. 安全性・注意点

3.1 公的な安全性評価の状況

米国の Cosmetic Ingredient Review(CIR)が公開する評価済み成分の一覧(Quick Reference Table、2022年9月版)に、本成分(Actinidia Polygama Fruit Extract)の行はない。同じマタタビ属では、キウイの種子油(Actinidia Chinensis (Kiwi) Seed Oil)が載っているが、これは別の植物の種子の油の評価で、マタタビの果実のエキスには当てはまらない(出典: CIR Quick Reference Table)。

ここで注意したいのは、CIRの個別評価がないことと、安全性に問題があることは別の話だ、という点である。CIRは米国の化粧品成分の評価の枠組みの1つで、世界中のすべての化粧品成分を網羅しているわけではない。評価の枠組みに載っていないことは、危険と判断されたことを意味しない。一方で、本成分を対象にした人での刺激性・感作性の試験データも、本稿の確認範囲では見つからなかった。「評価がない」と「問題が報告されていない」を、それぞれそのまま受け取るのが正確である。

使用実績の面では、化粧品で181件、医薬部外品で59件の商品に紐づいている(§1.4)。使用実績の広さは個別の試験の代わりにはならないが、実際の使用で目立った問題が知られていない、という状況を示す材料の1つにはなる。

3.2 キウイと同じ属の植物であること

マタタビは、キウイフルーツ(Actinidia deliciosa・A. chinensis)と同じマタタビ属の植物である。キウイフルーツは食物アレルギーの原因になる果物として知られ、論文の時点で、日本では食品表示でできるだけ表示することが勧められる品目の1つとされている(出典: Taguchi et al. 2007)。

ただし、キウイの食物アレルギーがある人がマタタビ果実エキスを肌に塗って症状が出るかどうかを示す一次資料は、本稿の確認範囲では見つからなかった。本成分を塗布してアレルギーが起きたという症例報告も、PubMed の検索では見当たらなかった。抽出の工程で、アレルギーの原因になりうるタンパク質がどこまで残るかも公開されていない。

実用上は、キウイなどの果物を食べて口がかゆくなるといった症状が出たことがある人は、本成分を含む商品を使う前に、腕の内側などで少量を試すのが安全側の判断になる。赤み・かゆみ・腫れが出たら使用を中止する。配合例の商品には、ほかの植物エキスや香料なども入るため、合わないと感じたときは処方全体を疑うのが現実的である。

3.3 配合量と、表示から読めないこと

本成分には、法的に一律の配合上限は示されていない。配合量は各メーカーが処方ごとに決める。原料はBGと水を含む抽出液として流通していて、エキスそのものの量は原料の段階でも表示されない(出典: 丸善製薬 化粧品原料 製品一覧)。

成分表示から読めないことを整理すると、次の3つになる。

  • 配合量: 化粧品では1%以下の成分を順不同で書けるため、中〜後半の位置から言えるのは「多くない側」まで。医薬部外品の「その他の成分」は記載順が企業の判断で、位置から量は読めない(§1.4)
  • エキスの中身: どの成分がどれだけ含まれるかは、製造元から公開されていない
  • 原料の銘柄: どの製造元のどの原料を使っているかは、成分表示からは分からない

また、成分表の「BG」「1,3-ブチレングリコール」や「水」の一部は、本成分の原料液に由来している場合がある。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用される成分

マタタビ果実エキスは単独で主役になる成分ではなく、配合例では保湿や洗浄の骨格の上に、ほかの植物エキスと一緒に重ねられている。

保湿の骨格: シャンプーとオールインワンの化粧品2品はいずれもグリセリンとBGを含む。部外品の美容液も濃グリセリンと1,3-ブチレングリコールを含む。製造元の原料はBGと水を含む液なので、成分表のBGの一部は本成分の原料に由来している場合がある(出典: 丸善製薬 化粧品原料 製品一覧)。

ほかの果実・植物エキス: NILE のオールインワンでは、ノイバラ果実エキス、プルーン分解物、ユズ果実エキスなどの果実由来の成分と同じ処方に並ぶ。&GINO の美容液にも多くの植物エキスが並ぶ。いずれも整肌目的の添加成分として入るもので、組み合わせによって特別な働きが生まれる、という根拠は確認していない。丸善製薬の原料一覧と Cosmetic-Info.jp の原料DBで本成分を含む原料は、マタタビ単独の抽出液2品だけで、ほかの果実エキスと組み合わせた原料は見当たらなかった(2026年9月確認)。とはいえ、商品がどの製造元のどの原料を使っているかは、成分表示からは分からない。

4.2 注意したい組み合わせ

マタタビ果実エキスについて、化粧品処方で避けるべき組み合わせは、本稿で確認した資料では報告されていない。

実用上の注意は、成分どうしの相性よりも、期待の置き方と処方全体の見方にある。

  • 植物エキスの数で選ぶこと: 果物や植物のエキスが何種類も並んでいても、それぞれの量や中身は表示から読めない。数が多いほど肌にいい、とは言えない
  • 香料を含む処方: 化粧品の2品はどちらも香料を含む。肌が敏感なときにしみる場合、原因は本成分以外の成分であることも多い
  • 「マタタビ」の名前で成分を束ねること: マタタビ果実エキスとマタタビ葉エキスは部位の違う別の成分で、配合目的の登録も違う(§1.3)

4.3 類似成分

名前の割れ方の型(§1.3)と、植物・部位で並べると、本成分の位置がつかみやすい。

成分植物・部位化粧品名と部外品名の関係化粧品表示名称の配合目的
マタタビ果実エキス(本成分)マタタビの果実部外品名は化粧品にない別名(シルバーバイン果実エキス)皮膚コンディショニング剤
ゴレンシ葉エキススターフルーツの葉部外品名は化粧品にない別名(スターフルーツ葉エキス)保湿・湿潤剤
イチョウ葉エキスイチョウの葉部外品名は化粧品の旧名と同じ文字列(イチョウエキス)皮膚コンディショニング剤
サボンソウ葉エキスサボンソウの葉部外品名と同じ文字列の化粧品名が根及び葉の別成分殺菌剤
セイヨウハッカ葉エキスペパーミントの葉部外品名と同じ文字列の化粧品名が全草の別成分香料・皮膚コンディショニング剤・閉塞剤
レモンエキスレモンの果実又は果汁化粧品名と部外品名が同じ。化粧品には範囲の狭い別名もある登録なし
ナツメ果実エキスナツメの果実―成分の記事を参照

(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称・部外品添加物 / 各成分の DappNotes 成分解説)

同じ型のゴレンシ葉エキスとは、部外品名が「果物・植物の英語名+部位+エキス」になっている点が共通している(スターフルーツ/シルバーバイン)。どちらも化粧品側には英語名の登録がなく、名前を見れば化粧品か部外品かの見当がつく。

ナツメ果実エキスは、生薬(大棗)としても知られる植物の果実のエキスという点で並べた。生薬として知られることと、化粧品成分として登録された配合目的は別、という読み方は、本成分の木天蓼の話(§2.3)と共通している。

5. 使い方

5.1 推奨される使用シーン

マタタビ果実エキスの有無で商品を選ぶ場面は、実際にはあまりない。配合例はシャンプー・オールインワン・美容液で、本成分はどれでも処方の一部として入っている。

オールインワン・美容液(肌に残す製品): 肌を整える植物エキスの1つとして入っている。選ぶときは保湿の骨格(グリセリン・BGなど)、使い心地、香りの有無を見ればよい。

シャンプー(洗い流す製品): 選ぶときに見るのは、主な洗浄成分の種類と、自分の皮脂量や頭皮の乾燥しやすさとの相性である。本成分は洗い流す処方の中の植物エキスの1つで、肌に残る量は限られる。

医薬部外品を選ぶとき: 部外品の効能は、有効成分とその承認された効能で決まる。成分表の「シルバーバイン果実エキス」は添加成分なので、部外品を選ぶときは有効成分の欄と、パッケージに書かれた効能を見る。

使い方は、それぞれの商品の標準的な使い方に従えばよい。本成分のために特別な使い方をする必要はない。

5.2 期待できないこと・避けるべき使い方

  • 猫の反応にかかわる働き: 猫の研究は葉の成分で、人の肌への働きとは別の話(§2.3)
  • シミ・くすみへの作用: 製造元の説明に「美白」の言葉はあるが、化粧品の効能ではなく、部外品でも本成分は有効成分ではない(§2.2)
  • 「植物由来だから低刺激」という保証: 本成分の人での刺激性・感作性のデータは確認できず、肌に合うかは処方全体で決まる(§3.1)

避けたいのは、ペット用に売られている乾燥したマタタビの粉や実、またたび酒などを、化粧品のマタタビ果実エキスと同じものとして肌に使うことである。化粧品原料は、製造元が化粧品に配合する前提で抽出・調整した液で、猫用の製品や食品とは作られる目的が違う。

6. メンズ実用視点まとめ

メンズの成分表示でマタタビ果実エキスを見かけたら、次の3点で読むと整理しやすい。

  1. 名前で製品区分が分かる: 「マタタビ果実エキス」なら化粧品、「シルバーバイン果実エキス」なら医薬部外品の表示。和名と英名の違いで、中身の強さの違いではない
  2. 配合目的は整肌の1つ: 化粧品表示名称の登録は皮膚コンディショニング剤だけ。製造元が挙げる透明感・保湿・抗酸化などの説明は、原料メーカーの訴求の段階にある
  3. 「猫が酔う」話は別物: 猫の反応の研究は葉の成分が対象で、人の肌への働きの根拠にはならない

皮脂が多くベタつきやすい肌、ヒゲ剃り後の肌、汗をかきやすい頭皮では、洗浄力や使い心地に目が向きやすい。その判断は洗浄成分や保湿の骨格で行い、マタタビ果実エキスは名前の面白さに引っ張られずに、植物由来の整肌成分の1つとして読めばよい。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. マタタビ果実エキスはどんな成分ですか?

マタタビ科のマタタビ(Actinidia polygama)の果実のエキスです(出典: Cosmetic-Info.jp)。化粧品の配合目的は皮膚コンディショニング剤(未分類)で登録されています。有効成分ではなく、添加成分として配合されます。

Q2. 「マタタビ果実エキス」と「シルバーバイン果実エキス」は同じものですか?

同じ原料の、化粧品での名前と医薬部外品での名前です。シルバーバインはマタタビの英名にあたります。原料製造元の丸善製薬は、原料「シルバーバイン抽出液BG30」に、化粧品表示名称マタタビ果実エキスと医薬部外品表示名称シルバーバイン果実エキスを並べて書いています(出典: 丸善製薬 化粧品原料 製品一覧)。名前の違いは製品区分の違いで、中身や強さの違いではありません。一方、「マタタビ葉エキス」は葉のエキスで、別の成分です。

Q3. 猫が酔う成分が入っているのですか? 人にも何か効果がありますか?

猫の反応を引き起こす主な成分としてネペタラクトールを特定した研究は、マタタビの葉から成分を取り出しています(出典: Uenoyama et al. 2021)。果実のエキスである本成分にどれだけ含まれるかは、本稿で確認した資料では分かりません。また、研究の主題は猫の行動と蚊よけで、人の肌を整える働きとは別の話です。「猫が夢中になる成分だから人の肌にも特別に効く」と考える根拠はありません。

Q4. マタタビ果実エキスは安全ですか? キウイアレルギーでも使えますか?

米国CIRの個別評価は見当たりませんが、これは評価の枠組みに載っていないという意味で、危険という意味ではありません。本成分を塗ってアレルギーが起きたという症例報告も、本稿の確認範囲では見つかりませんでした。ただし、マタタビはキウイと同じマタタビ属の植物です(出典: Taguchi et al. 2007)。キウイなどの果物で症状が出たことがある人は、腕の内側などで少量を試してから使い、合わないと感じたら使用を中止してください。

8. まとめ

マタタビ果実エキスは、マタタビの果実のエキスで、化粧品では皮膚コンディショニング剤の目的で配合される(出典: Cosmetic-Info.jp)。

名前の面では、同じ原料が化粧品では「マタタビ果実エキス」、医薬部外品では「シルバーバイン果実エキス」と書かれ、INCI名は Actinidia Polygama Fruit Extract になる。原料製造元が同じ原料に両方の名前を並記していて、化粧品側にシルバーバインの名前も、部外品側にマタタビの名前もないため、同じ文字列が別の成分を指す取り違えは起きない。部位の違う「マタタビ葉エキス」は別の成分である。

「猫が酔う」話については、猫の反応を引き起こすネペタラクトールの研究は葉の成分が対象で、果実のエキス中の含有量は確認できず、人の肌への働きとも結びつかない。生薬の木天蓼(虫こぶの果実)や、製造元が挙げる美白・透明感などの説明も、化粧品の効能として認められた内容ではない。安全性では、CIRの個別評価はなく、塗布での症例報告も見当たらない。キウイと同じ属であることは、果物アレルギーのある人が少量で試す理由として押さえておけばよい。

マタタビの名前の面白さや製造元の訴求から効果を期待するより、洗浄や保湿の骨格で商品を選び、その中の整肌目的の植物エキスの1つとして読むのが実用的な理解になる。

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