ポリソルベート80は、オレイン酸ソルビタン(ソルビタンにオレイン酸が付いた親油性の乳化剤)に、酸化エチレン(EO)を平均約20モル付加した非イオン界面活性剤で、INCI名はPolysorbate 80、化粧品表示名称は「ポリソルベート80」。医薬部外品の成分表示名称リストには「ポリソルベート80」の名前で載っている(出典: CIR 2015 / 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版)。水と油をなじませるO/W型の乳化と、水に溶けにくい成分を水系に溶かし込む可溶化を担う裏方の成分で、日本薬局方にも医薬品各条として収載されている(出典: PMDA 日本薬局方医薬品各条)。

本記事では、ソルビタン系乳化剤と油剤のクラスタの1本として3点を整理する。1点目は、同じソルビタン骨格の上で、EOを付けるかどうか・どの脂肪酸が何本付くかによって親油側から親水側まで並ぶ「HLBのはしご」の中での位置。2点目は、成分表での出方で、処方者が単独で足す場合と、増粘ポリマー原料の一部として同梱される場合の2つの顔がある。3点目は、化粧品・医薬部外品・日本薬局方での名前の並び方と、PEG系成分につきまとう1,4-ジオキサンの論点。

1. ポリソルベート80の基本

1.1 何の成分か

ポリソルベート80は、1分子の中に水になじむ部分と油になじむ部分を併せ持つ非イオン(ノニオン)界面活性剤。構造は3つの部品に分けて読める。

  1. 骨格: 糖アルコールのソルビトールと、それが脱水して環になった無水ソルビトール(ソルビタン)
  2. 油になじむ部分: そこにエステル結合したオレイン酸(炭素数18で二重結合を1つ持つ脂肪酸)
  3. 水になじむ部分: 付加重合した酸化エチレン(EO)の鎖。平均の付加モル数は約20

CIRの定義は「ソルビトール及びソルビトール無水物のオレイン酸エステルの混合物で、主にモノエステルからなり、酸化エチレン約20モルを縮合したもの」で、CAS番号は9005-65-6(総称)とされる(出典: CIR 2015)。日本薬局方の定義も同じ内容で、主としてオレイン酸からなる脂肪酸で部分エステル化した混合物にエチレンオキシドを付加重合したもの、1モル当たりの平均付加モル数は約20と書かれている(出典: PMDA 日本薬局方医薬品各条)。同じ各条は脂肪酸の組成比も規定していて、オレイン酸は58.0%以上、残りにパルミチン酸やステアリン酸などが上限つきで認められている。名前は「オレイン酸型」だが、単一の分子ではなく、脂肪酸・エステル化の度合い・EO鎖の長さに分布を持つ混合物という理解が正確になる。

名前の数字にも注意が要る。ポリソルベートに続く番号は親油基、つまり結合した脂肪酸の種類を表す(出典: Wikipedia『Polysorbate 80』)。80はオレイン酸、20はラウリン酸を指す。EOの数はこの番号とは別で、厚生労働省の報告書に並ぶ英名はポリソルベート20・60・80がいずれも「Polyoxyethylene (20) Sorbitan ○○」、つまりEO約20モルで共通している(出典: 厚生労働省 添加物部会報告書 2007)。「80」は配合量でも、ポリソルベート20より4倍強いという意味でもない。

EOを付けない側から見ると、本成分はオレイン酸ソルビタンにEOを足したものになる。2008年版の医薬部外品表示名称リストでも、連番2386「モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」の本質は、主として「モノオレイン酸ソルビタン」に酸化エチレンを付加重合し、平均付加モル数が20のものと書かれている(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版)。EOの鎖が長く水になじむ部分が大きいため、親油性のオレイン酸ソルビタンとは逆に、水側に寄った性質を持つ。

性状は無色から帯褐黄色の油状の液で、水やエタノールと混ざり合い、脂肪油や流動パラフィンにはほとんど溶けない(出典: PMDA 日本薬局方医薬品各条)。油状の見た目でも、水に溶ける側の成分として振る舞う。

CIRが挙げる化粧品での機能は、界面活性剤(乳化剤)・界面活性剤(可溶化剤)・変性剤・香料成分の4つ(出典: CIR 2015)。規制上は有効成分ではない添加成分で、医薬部外品に入る場合も「その他の成分」としての配合になる。日本薬局方への収載は医薬品に使う原料としての品質規格で、本成分に薬効が認められているという意味ではない。食品の分野でも、2007年の厚生労働省の添加物部会が乳化剤等の用途で食品添加物に指定して差し支えないと結論している(出典: 厚生労働省 添加物部会報告書 2007)。

1.2 どんな製品に配合されるか

CIRが2015年にFDAの任意届出制度(VCRP)から得たデータでは、本成分の届出使用件数は932件で、洗い流さない製品が759件、洗い流す製品が166件だった(出典: CIR 2015)。ヘアケア(非染毛)118件、目の周り114件と、用途は顔にも髪にも広がる。

DappNotesの商品マスター(132製品)で本成分を確認できたのは9製品。単独の名前で書かれた7製品と、医薬部外品で3成分の連結名の中に現れる2製品に分かれる(出典: DappNotes 商品マスター集計)。

商品区分剤形表示配合順位/全成分数
SILK THE RICH モイスト&リペア シャンプー化粧品シャンプーポリソルベート8050/69
マニフィーク モイスチュアライジング ジェル化粧品オールインワンジェルポリソルベート8019/28
マニフィーク オールインワン ジェル UV化粧品オールインワンジェルポリソルベート8030/36
VARON オールインワンセラム ORIGINAL化粧品オールインワン美容液ポリソルベート806/25
DHC MEN オールインワン モイスチュアジェル化粧品オールインワンジェルポリソルベート8016/22
無印良品 敏感肌用化粧水 高保湿化粧品化粧水ポリソルベート8022/24
ONE BY KOSE ポアクリア スクラブ ウォッシュ化粧品スクラブ洗顔料ポリソルベート8028/34
ルシード 薬用パーフェクトスキンクリームEX医薬部外品クリーム3成分の連結名の一部10/28
ウーノ バイタルクリームパーフェクション fA医薬部外品クリーム3成分の連結名の一部14/35

(出典: 各社公式サイトの全成分表示をもとにした DappNotes 商品マスター集計。医薬部外品の順位は連結名1行の位置)

シャンプー・洗顔料・化粧水・ジェル・クリームと、剤形をまたいで出てくる点が本成分の特徴になる。乳化(水と油を混ぜる)と可溶化(少量の油溶性成分を水に溶かし込む)のどちらにも使えるため、処方の種類を選ばない。

配合順位は、1%を超える成分は多い順・1%以下は順不同という表示ルールに従う目安にとどまる。9製品の多くで後半に並ぶが、順位から配合量%を推定することはできない。VARONだけ6位と上位にある点は §3.4 で扱う。

1.3 メンズ視点での見方

9製品のうち4製品がオールインワンのジェル・美容液、2製品が男性向けの薬用クリームで、メンズの棚では「1本で済ませる」剤形で出会うことが多い。化粧水・乳液・クリームの役割を1本にまとめると、水と油と油溶性の成分を同じ容器に同居させる必要が出てくる。本成分はそのまとめ役の1つとして入る。

読み方の要点は2つ。1つは、本成分を「肌に効かせる成分」ではなく「処方を成立させる部品」として見ること。もう1つは、同じ成分が単独の1行、原料の一部としての別行、医薬部外品での連結名の中、と3通りの姿で成分表に出ることを知っておくこと。表示の位置や行数の違いで、配合量や処方の良し悪しを判断しないほうがよい。

2. 期待される働き・効果

2.1 メカニズム

本成分の働きは、水と油の境界(界面)に並んで両者の間の張力を下げるという、界面活性剤に共通の物理化学的な仕組みに基づく。オレイン酸の鎖が油の側に、EOの鎖が水の側に向いて並ぶ。

乳化剤が水側と油側のどちらに寄っているかを表す目安がHLB(親水性と親油性のバランス)で、値が大きいほど水になじみやすい。原料メーカーCrodaの技術資料では、本成分のHLBは15.0と記載されている(出典: Croda Pharma)。厚生労働省の報告書も、ポリソルベート類をHLB 10〜17のO/W型の乳化剤と整理している(出典: 厚生労働省 添加物部会報告書 2007)。ただしHLBはメーカーや資料によって値が割れ、化粧品成分オンラインは本成分のHLBを出典によって13.0〜15.7と幅を持たせて紹介している(出典: 化粧品成分オンライン)。混合物である以上、成分に固有の一意の値ではなく、本記事で使う15.0もCrodaの資料での値として読んでほしい。

親水側に寄っていることから、本成分の役割は大きく2つになる。

1つ目はO/W型の乳化。水を外側(連続相)にして油滴を分散させ、分離しにくい状態を保つ。乳液・クリーム・オールインワンジェルで、エモリエントの油を水系になじませる場面で使われる。

2つ目は可溶化。界面活性剤は一定濃度を超えると集まってミセルという微小な集合体をつくり、その内側に油溶性の成分を取り込む。香料や油溶性の成分を少量だけ化粧水に入れたいとき、濁らせずに溶かし込む役を担う。

実際の処方では、乳化剤を1種類だけで使うことは少ない。HLBの低い乳化剤と高い乳化剤を組み合わせ、配合比で全体のHLBを油に合わせて調整するのが古くからの手法で、Crodaの資料もSpan系(ソルビタンエステル)とTween系(ポリソルベート)の混合比から目的のHLBを求める計算図を載せている(出典: Croda Pharma)。HLB 4.3のオレイン酸ソルビタンとHLB 15.0の本成分は、同じオレイン酸を持つ親油側・親水側の組み合わせになる。

もう1つ、本成分には原料の中での役割がある。増粘ポリマーの原料には、ポリマーを油の中に水滴として分散させた「逆相(W/O)エマルション」の液体として供給されるものがある。SEPPICのSIMULGEL EGは、逆相乳化重合で製造した液状のポリマーで、Knowde掲載のSEPPIC情報ではINCIがイソヘキサデカン・ポリソルベート80・(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの3成分とされている(出典: SEPPIC SIMULGEL EG)。一方、配合データベースのCM Studio+(二次)は、同じ原料を水とオレイン酸ソルビタンを加えた5成分で掲載しており、資料によって表示の粒度が異なる(出典: CM Studio+)。この種の原料は水に加えると相が反転(転相)して、ポリマーが水側に放出され増粘する。逆相エマルションポリマーを扱う米国特許文献は、転相が「breaker surfactants」と呼ばれる界面活性剤の添加で助けられると説明し、その典型例の1つにエトキシ化ソルビタン類を挙げている(出典: US20050143506A1)。

2.2 一般的な効能範囲

本成分は乳化・可溶化を担う添加成分で、それ自体に肌への効能は認められていない。本成分を配合した化粧品で表現できるのは、製品全体として「皮膚にうるおいを与える」「肌を整える」「皮膚を清浄にする」といった化粧品の効能の範囲にとどまり、その効能を担うのは保湿剤・油剤・洗浄成分など処方の他の成分になる。

医薬部外品のクリーム2製品(ルシード・ウーノ)でも同じで、承認された効能は別に配合された有効成分に紐づく。本成分は連結名の1行の中に「その他の成分」として並んでいる。

本成分について語れるのは、「水と油をなじませる」「油溶性の成分を水系に溶かし込む」「増粘ポリマー原料を水に分散させる」といった処方上の機能まで。日本薬局方に収載されていることも、食品添加物として使われることも、肌への効能の根拠にはならない。

2.3 限界・誤解されやすい点

誤解されやすい点は4つある。

1. 「80」は濃度や強さを表す、という誤解。 番号は結合した脂肪酸の種類(オレイン酸)を示し、EOの数(約20)とも配合量とも関係がない(出典: Wikipedia『Polysorbate 80』 / CIR 2015)。ポリソルベート20より数字が大きいから刺激が強い、ということもない。HLBで比べると、ラウリン酸型のポリソルベート20(16.7)のほうが本成分(15.0)よりわずかに水側に寄る(出典: Croda Pharma)。

2. 成分表で上位にあるほど多く入っている、という誤解。 VARONでは6位にあるが、1%以下の成分は順不同で書けるため、位置から配合量を断定できない。同じ成分が単独でも原料の一部としても入りうるため(§3.4)、1行の位置だけで読むと読み違えやすい。

3. 日本薬局方に載っている=薬効がある、という誤解。 日本薬局方の各条は、医薬品に使う原料としての品質(組成・不純物の上限など)を定めたもの(出典: PMDA 日本薬局方医薬品各条)。本成分の役割は注射剤などでも添加剤としてのもので(出典: Wikipedia『Polysorbate 80』)、有効成分としての収載ではない。

4. 食品にも使われるから肌にも安心、あるいは界面活性剤だから危険、という二択。 食品添加物としての評価は口から摂った場合の話で、肌に塗る化粧品の評価とは軸が違う。一方で「界面活性剤」という括りだけで危険視するのも、種類・用途・配合量を見ない読み方になる。安全性の実際は §3.1、PEG系成分の論点は §3.5 で整理する。

3. 安全性・注意点

3.1 既知の刺激性・アレルギー報告

米国のCosmetic Ingredient Review(CIR)は、1984年・2000年・2001年の3つの評価をまとめてポリソルベート類を再評価し、「非刺激性となるよう処方される限り化粧品で安全」と結論している(出典: CIR 2015)。本成分も結論の成分リストに明記されている。報告書が整理した主な内容は次のとおり。

  • 全体の評価: Panelは、経皮・眼への曝露を扱った複数の試験で刺激や感作がほとんど、または全く見られなかったこと、化粧品で使われる濃度の経皮試験で刺激はわずかで感作性がなかったことを確認している
  • 皮膚刺激性: ヒトの刺激性試験で、本成分の原液100%を用いても皮膚刺激は見られなかった
  • 遺伝毒性: 細菌を用いた復帰突然変異試験(Ames試験)で、本成分に遺伝毒性は認められなかった

(出典: CIR 2015 Final Amended Report。全体の評価はポリソルベート類としてまとめた記載)

CIRの結論が「非刺激性となるよう処方される限り」という条件つきなのは、化粧品で使われる濃度でわずかな刺激を示した試験がいくつかあったためと説明されている(出典: CIR 2015)。成分そのものに強い刺激性があるという意味ではないが、「界面活性剤だから何も気にしなくてよい」とも言い切れない、という読み方になる。

CIRはもう1点、本成分を含むポリソルベート20・65・80が、マウス皮膚の試験で薬物(硫酸アルブテロール)の経皮透過を高めたことを挙げている。そのうえで、経皮吸収されないことを安全性の前提にした成分と組み合わせる処方では注意するよう付記している(出典: CIR 2015)。これは処方設計者に向けた注意で、市販品の通常使用を否定するものではない。

赤み・かゆみなどが出た場合は使用を中止する。原因を本成分と決めつける根拠はなく、香料・防腐剤・洗浄成分などを含めた製品全体で考えるのが現実的になる。

3.2 推奨配合量と過剰使用時のリスク

本成分には、化粧品での配合量について法的な一律上限は置かれていない。配合量は、乳化する油の量や可溶化したい成分の量に合わせて処方ごとに決まる。

目安になる数値はCIRの報告書にある。2014年の業界調査で報告された最高使用濃度は、洗い流すパック類で18.1%、洗い流さない製品では香水の11.9%だった(出典: CIR 2015)。いずれも調査で報告された上限側の値で、一般的なスキンケアの配合量を示すものではない。

量を読むときに外せないのが、§3.4 で扱う供給形態になる。本成分が増粘ポリマー原料の一部として入っている場合、原料としての配合量と本成分そのものの量は一致しない。成分表示の順位からも配合量%は読み取れないため、本記事では個別製品の配合量を推定しない。

過剰に入れた場合に一般に考えられるのは、刺激の側よりも使用感の側の変化になる。界面活性剤が多い処方は、塗ったあとのぬめり感や、乾いたあとの残り感として現れることがある。ただし実際の感触は、油の量・増粘剤・他の乳化剤との組み合わせで決まり、本成分の量だけで説明できるものではない。

3.3 ソルビタン骨格のHLBのはしご

商品マスターでは、本成分の役割は「乳化・可溶化(ノニオン)」、オレイン酸ソルビタンなどは「乳化(ソルビタン系ノニオン)」と、役割語が付くだけで並んでいる。しかし骨格で見ると、同じソルビタンの上で3つの違いによって、親油側から親水側まで順に並ぶ。

  • EOを付けるかどうか: 付けなければ親油側、長いEO鎖を付けると親水側に寄る
  • 脂肪酸が何本付くか: モノエステル(1本)かジエステル(2本)か、トリエステル(3本)か
  • どの脂肪酸か: オレイン酸(C18・二重結合1つ)、イソステアリン酸(C18・分岐飽和)、ラウリン酸(C12)など

そして、これらの乳化剤に「つながれる側」の油も、同じ商品に並んでいる。

成分骨格・系統脂肪酸EO付加親油・親水の側成分表での出方(自社集計)
セスキオレイン酸ソルビタンソルビタン(及びソルバイド)のモノ・ジエステル混合オレイン酸なし親油側(HLB 3.7)単独配合1品
オレイン酸ソルビタンソルビタンのモノエステルオレイン酸なし親油側(HLB 4.3)3品。本成分・イソヘキサデカンと同じ3品に並ぶ
イソステアリン酸ソルビタンソルビタンのモノエステルイソステアリン酸なし親油側単独配合1品
オレイン酸PEG-6ソルビタンソルビタンのモノエステルオレイン酸平均6モル中間本クラスタの集計対象外
ポリソルベート80(本成分)ソルビタンの主にモノエステルオレイン酸主体約20モル親水側(HLB 15.0)単独配合7品+部外品の連結名2品
ポリソルベート20ソルビタンの主にモノエステルラウリン酸約20モル親水側(HLB 16.7)本クラスタの集計対象外
トリイソステアリン酸PEG-160ソルビタンソルビタンのトリエステルイソステアリン酸160モル親水側本クラスタの集計対象外
イソヘキサデカン(油)分岐炭化水素――界面活性剤ではない(つながれる油)3品+部外品の連結名2品
トリエチルヘキサノイン(油)グリセリンのトリエステル2-エチルヘキサン酸―界面活性剤ではない(つながれる油)化粧品名5品+部外品名3品

(出典: HLBの数値はすべて Croda Pharma 技術資料での値。HLBはメーカーや資料によって値が割れるため、成分に固有の一意の値ではない。セスキオレイン酸ソルビタンの組成は 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版 連番1268。その他の構造は各成分の一次情報。数値を確認できなかった成分は定性で記載)

この表から見える本成分の位置は、「EOを付けないオレイン酸ソルビタンと同じ脂肪酸を持ち、EO約20モルで親水側に移ったもの」になる。オレイン酸ソルビタンとの差はEOの有無で、Crodaの資料の値ではHLBが4.3から15.0へ大きく動く。ポリソルベート20との差は脂肪酸で、EOの数はほぼ同じ。ラウリン酸(C12)はオレイン酸(C18)より鎖が短く油になじむ部分が小さく、同じ資料でポリソルベート20のHLBは16.7とさらに水側に寄る。

オレイン酸PEG-6ソルビタンは、本成分と同じオレイン酸型でEOが6モルと少ない、中間の位置になる。医薬部外品の成分表示名称リストでも、「モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン」は(6E.O.)の連番2385と(20E.O.)の連番2386が並んで収載されている(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版)。EOの数が名前の括弧の中で区別されている。

ここで注意したいのは、HLBの位置から「どれが良い乳化剤か」を推測しないこと。HLBは乳化剤を選ぶときの目安の1つで、乳化の安定性や使用感は、油の種類と量、他の乳化剤や増粘剤との組み合わせ、製法を含めた処方全体で決まる。表は優劣表ではなく、成分表示を読むときの地図として使うのが適切になる。

3.4 成分表での出方: 単独配合かプレミックス同梱か

同じポリソルベート80でも、処方者が乳化剤・可溶化剤として単独で足す場合と、別の原料の構成成分として一緒に入ってくる場合がある。9製品を並べると、この2つの顔が分かれて見える。

プレミックス同梱の可能性がある並び

商品区分コポリマーイソヘキサデカンオレイン酸ソルビタンポリソルベート80総成分数
マニフィーク モイスチュアライジング ジェル化粧品11位13位14位19位28
マニフィーク オールインワン ジェル UV化粧品21位24位25位30位36
VARON オールインワンセラム ORIGINAL化粧品17位20位21位6位25
ルシード 薬用パーフェクトスキンクリームEX医薬部外品10位(3成分の1行連結名)←―←28
ウーノ バイタルクリームパーフェクション fA医薬部外品14位(同上)←―←35

(出典: DappNotes 商品マスター集計。コポリマーは化粧品表示「(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー」)

医薬部外品の2製品では、成分表に「アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80」と1行で書かれている(ウーノは末尾が半角の「80」)。化粧品の3製品では、同じ3つの名前が別々の行に立つ。§2.1 のSIMULGEL EGは、SEPPIC側の掲載INCIがちょうどこの3成分で(出典: SEPPIC SIMULGEL EG)、商品マスター全体でも、独立した成分としてのイソヘキサデカンはこの化粧品3製品にしか現れない(出典: DappNotes 商品マスター集計)。3品の並びと出現の一致は、逆相エマルション型の増粘ポリマー原料という供給形態と整合する。この3品と2品で、本成分の一部はこの種の原料に由来する可能性が高い。ただし、各商品がどの原料銘柄を使っているかは公開情報からは特定していない。詳しい分析は(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの記事にある。

化粧品3製品には、SEPPIC側の掲載INCIに含まれないオレイン酸ソルビタンも、イソヘキサデカンのすぐ後ろに並ぶ。オレイン酸ソルビタンも132製品中この3品にしか現れない。配合データベースのCM Studio+(二次)は同じ原料を水とオレイン酸ソルビタンを含む5成分で掲載しており(出典: CM Studio+)、3品の並びはこの表示とも整合する。ただし資料によって表示の粒度が異なり、オレイン酸ソルビタンが同じ原料に由来するのか、別に足されたのかを一次資料で確かめることはできていない。医薬部外品の2製品の連結名にはオレイン酸ソルビタンが含まれていない。

読むときの注意は2つある。1つは、表示順から配合量の大小を読まないこと。3品とも該当成分は後半にあり、1%以下の順不同の範囲に入っている可能性がある。もう1つはVARONの6位で、原料の一部として入る分だけでなく、乳化剤として別途足している可能性がある。同じ処方にはスクワラン(3位)・エチルヘキサン酸セチル(4位)という油が上位にあり、それらを乳化する役と読むと並びとは矛盾しないが、断定はできない。

単独配合の並び

残る4製品では、本成分は増粘ポリマー原料と一緒ではなく、単独で入っている。

  • SILK THE RICH シャンプー(50/69): ラウリン酸PEG-80ソルビタン(23位)・ラウレス-100(24位)など、他のノニオン界面活性剤と並ぶ
  • DHC MEN オールインワン モイスチュアジェル(16/22): 直後の17位にPEG-40水添ヒマシ油が並ぶ。どちらも可溶化に使われる親水性の界面活性剤で、同じ処方にはユビキノンや香料が入っている
  • 無印良品 敏感肌用化粧水(22/24): 油分をほとんど含まない化粧水の終盤に置かれる。何を可溶化しているのかは表示からは特定できない
  • ONE BY KOSE スクラブ ウォッシュ(28/34): 石けん系の洗顔料で、ラウレス-7やステアリン酸グリセリルなど他の乳化剤と並ぶ

(出典: DappNotes 商品マスター集計)

同じ成分表示名でも、ジェルの中の1行とシャンプーの中の1行では、入っている理由が違いうる。成分名だけでなく、前後に何が並んでいるかまで見ると、処方の中での役割が読みやすくなる。

3.5 「PEG・界面活性剤=危険」と1,4-ジオキサンの整理

本成分は酸化エチレンを付加して作るPEG系の成分なので、「PEGは危険」「界面活性剤は経皮毒」といった言説の対象になりやすい。論点を分けて整理する。

1. 成分そのものの安全性。 §3.1 のとおり、CIRは本成分を含むポリソルベート類を非刺激性となるよう処方される限り安全と結論し、変異原性試験でも本成分に変異原性は認められていない(出典: CIR 2015)。「経皮毒」は、成分が皮膚から入って体内に溜まり害をなすという主張で広まった言葉だが、CIRのような安全性評価の枠組みで使われる概念ではない。

2. 製造副生物の1,4-ジオキサン。 1,4-ジオキサンは、エトキシ化(酸化エチレンを付加する反応)に伴って生じうる副生物で、化粧品の成分として加えられるものではない(出典: FDA『1,4-Dioxane in Cosmetics』)。動物では発がん性が知られる物質なので、論点として無視してよいものではない。ただし、これは成分そのものの毒性ではなく、製造時にどこまで除去・管理できているかの問題になる。CIRは、ポリソルベートは製造時に水蒸気ストリッピングで1,4-ジオキサンなどを除去していると記し、業界がこれらの不純物を抑える手順を続けるよう強調している(出典: CIR 2015)。FDAは1980年代から減圧ストリッピングによる低減を推奨し、国際的な専門家が化粧品中10ppm以下の微量なら消費者に安全と判断したことを紹介している(出典: FDA『1,4-Dioxane in Cosmetics』)。

医薬品用の品質規格には、この管理が数値で書かれている。日本薬局方の各条は、純度試験としてエチレンオキシド1ppm以下、1,4-ジオキサン10ppm以下を定めている(出典: PMDA 日本薬局方医薬品各条)。

3. 正当な注意点。 危険視する言説とは別に、CIRが実際に付けている注意は「非刺激性となるよう処方すること」と「経皮透過を高めうる点に配慮すること」の2つ(出典: CIR 2015)。どちらも処方設計の側で扱われる論点で、成分表に本成分があるかどうかで消費者が製品を振り分ける根拠にはなりにくい。

まとめると、「PEG系だから避ける」は成分の実態より広すぎる括りで、「CIRが安全と言ったから何の条件もない」も結論の読み違えになる。条件と管理の問題として位置づけるのが中立な理解になる。

3.6 化粧品・医薬部外品・日本薬局方での名前

本成分は、分野によって名前と規格の置き場所が変わる。

分野名前根拠・記載
化粧品ポリソルベート80化粧品表示名称。INCIはPolysorbate 80
医薬部外品ポリソルベート80成分表示名称リスト 連番2210。本質「本品は無水ソルビトールの水酸基の一部をオレイン酸でエステル化したもののポリオキシエチレンエーテルである。」
医薬部外品モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)同リスト 連番2386。簡略名「オレイン酸POE(20)ソルビタン」。本質は主として「モノオレイン酸ソルビタン」にEOを平均20モル付加重合したもの
医薬品ポリソルベート80日本薬局方の医薬品各条。三薬局方(日・米・欧)の調和合意に基づく
食品ポリソルベート802007年の添加物部会が食品添加物に指定して差し支えないと結論

(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版 / PMDA 日本薬局方医薬品各条 / 厚生労働省 添加物部会報告書 2007)

医薬部外品のリストには、同じ物質系に2つの名前が別の行で載っている。連番2210は化粧品表示名称と同じ「ポリソルベート」の名前で、本質の書き方も日本薬局方の定義に近い。連番2386は、オレイン酸ソルビタンにEOを付けたという作り方を名前に書いた組成名で、(6E.O.)の連番2385と並ぶ。どちらの名前を使うかは表示する側が選べる形で、商品マスターの医薬部外品2製品は、どちらも連結名の中で「ポリソルベート80」を使っていた(出典: DappNotes 商品マスター集計)。化粧品成分オンラインは部外品表示名として連番2386側の名前を紹介している(出典: 化粧品成分オンライン)。2つの名前の使い分けの基準を定めた一次資料は、本稿では確認できていない。

全角と半角の揺れもある。DHC MENのジェルは化粧品でも「ポリソルベート80」と全角で書き、ウーノの連結名は末尾が半角「80」だった。どれも同じ成分を指す表記の違いで、中身の違いではない。

なお、手元で確認した医薬部外品の成分表示名称リストは平成20年(2008年)版のため、現行版での収載状況は別に確認が必要になる。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用される成分

本成分は乳化・可溶化の部品なので、「何をなじませるか」と「誰と組んで乳化するか」の2方向で相手が決まる。

同じソルビタン骨格の乳化剤: オレイン酸ソルビタンは、同じオレイン酸を持ちEOを付けない親油側の乳化剤。§2.1 のとおり、HLBの低い乳化剤と高い乳化剤を組み合わせて全体のHLBを調整するのが古くからの手法で、Crodaの資料もSpan系とTween系の混合比を求める計算図を載せている(出典: Croda Pharma)。商品マスターでは化粧品3製品で本成分と同じ処方に並ぶ。

増粘ポリマーと炭化水素油: (アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーとイソヘキサデカンは、§3.4 のとおり原料の段階から一緒に入っている可能性がある組み合わせ。併用というより、原料の構成要素として並ぶ関係になる。

他の乳化剤・可溶化剤: DHC MENのジェルでは可溶化に使われるPEG-40水添ヒマシ油と同じ処方に入り、マニフィークのUVジェルやONE BY KOSEの洗顔料ではステアリン酸グリセリルと、マニフィークの保湿ジェルやSILK THE RICHのシャンプーでは水添レシチンと同じ処方に入っている(出典: DappNotes 商品マスター集計)。乳化剤は性格の違う複数を重ねて使うのが一般的で、本成分はその中の親水側を受け持つ。

つながれる油: スクワランやエチルヘキサン酸セチル(VARON)、トリエチルヘキサノインのようなエモリエントの油が、乳化される側の相手になる。

4.2 注意したい組合せ

肌への安全性の面で、本成分と一緒に使うと危険と確認された組み合わせは、本稿で確認した一次資料には見当たらない。以下はいずれも処方設計の側の話になる。

  • 経皮吸収を前提にしない成分との組み合わせ: CIRは、ポリソルベート20・65・80が薬物の経皮透過を高めた報告を踏まえ、経皮吸収されないことを安全性の根拠にした成分や、経皮吸収が懸念される成分と組み合わせる処方には注意するよう求め、乳幼児向けの処方では特に注意するとしている(出典: CIR 2015)。消費者が製品単位で判断できる性質の注意ではなく、処方者が扱う論点
  • 界面活性剤の総量: シャンプーや洗顔料では、本成分は主洗浄成分と同じ処方に入る。肌や頭皮への負担を左右するのは本成分単独というより、洗浄成分を含む界面活性剤全体の構成と量になる
  • 表示の二重計上: 成分表でコポリマー・イソヘキサデカン・オレイン酸ソルビタン・本成分が別々の行に並んでいても、1つの原料に由来する行が含まれている可能性がある(§3.4)。「乳化剤が何種類も入っているから刺激が強そう」と行数で判断すると外れやすい

5. 使い方

5.1 推奨される使用シーン

本成分は処方者が乳化・可溶化のために配合する成分で、消費者が単体で使う成分ではない。使い方は、配合された製品をその製品の用途どおりに使う、という整理になる。

オールインワンジェル・美容液・クリーム: 水と油を1本にまとめた剤形で、本成分は油分を分離させずに保つ側で働く。洗顔後に適量を顔全体になじませる、という各製品の標準的な使い方でよい。

化粧水: 少量の油溶性の成分を濁らせずに水系に溶かし込む役で入ることが多い。成分表の終盤にあっても、処方の見た目や均一さを支えている場合がある。

シャンプー・洗顔料: 洗浄成分と同じ処方に入る。泡立てて使い、すすぎ残しがないように十分に洗い流す。

製品選びでは、本成分の有無を良し悪しの基準にしないほうがよい。見るべきなのは、剤形が自分の使い方に合っているか、保湿剤や油分の構成が肌の状態に合っているか、使ってみて刺激やべたつきがないか、になる。

5.2 期待できないこと・避けるべき使い方

本成分に期待できないことは次のとおり。

  • 肌への効能: 保湿・肌荒れ防止・エイジングケアなどの効能を、本成分の働きとして期待することはできない。本成分は処方を成立させる部品
  • 表示位置からの配合量の推定: 1%以下の成分は順不同で書けるうえ、原料の一部として入る場合もあるため、位置から量は読めない
  • 日本薬局方・食品添加物への収載を効能の根拠にすること: どちらも品質規格や食品での使用に関する位置づけで、肌への効果とは別の話

避けたいのは、「PEG系だから避ける」「医薬品にも使われるから安心」のような、名前や分類だけで製品を振り分ける使い方になる。刺激やかゆみが出たら使用を中止し、原因の特定は製品全体の成分で考える。

6. メンズ実用視点まとめ

メンズの成分表示でポリソルベート80を見かけたら、次の3点で読むと整理しやすい。

  1. 親水側の乳化・可溶化剤: オレイン酸ソルビタンにEO約20モルを付けて水側に寄せた非イオン界面活性剤。水と油を1本にまとめる部品で、肌に効かせる成分ではない
  2. 出方は2通り: シャンプー・洗顔料・化粧水では単独の乳化剤・可溶化剤として、オールインワンジェルや薬用クリームでは増粘ポリマー原料の一部として並ぶことがある。行数や位置で配合量や処方の複雑さを判断しない
  3. 名前は分野で変わる: 化粧品は「ポリソルベート80」、医薬部外品は「ポリソルベート80」や組成名、医薬品では日本薬局方の各条。数字の80は脂肪酸の種類で、濃度や強さではない

オールインワンで手入れを済ませたい人ほど、水と油を同居させる処方の製品を使うことになり、本成分のような乳化剤に出会う機会は増える。気にするべきなのは本成分の有無より、製品全体の保湿と油分のバランスが自分の肌に合うかどうかになる。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. ポリソルベート80はどんな働きをする成分ですか?

水と油をなじませる乳化と、水に溶けにくい成分を水系に溶かし込む可溶化を担う非イオン界面活性剤です(出典: CIR 2015)。オレイン酸ソルビタンに酸化エチレンを平均約20モル付加した構造で、水になじみやすい側に寄っています。化粧品の中で処方を均一に保つ部品として働き、それ自体に肌への効能はありません。

Q2. ポリソルベート20とは何が違いますか?

結合している脂肪酸が違います。ポリソルベート20はラウリン酸(炭素数12)、ポリソルベート80はオレイン酸(炭素数18・二重結合1つ)で、EOの付加モル数はどちらも約20です(出典: Wikipedia『Polysorbate 80』 / 厚生労働省 添加物部会報告書 2007)。Croda Pharmaの技術資料ではHLBがポリソルベート20で16.7、80で15.0とされ、ラウリン酸型のほうがやや水寄りです(出典: Croda Pharma)。HLBの値はメーカーや資料で割れるため目安として読み、どちらが優れた乳化剤かは処方全体で決まります。

Q3. オレイン酸ソルビタンとはどういう関係ですか?

オレイン酸ソルビタンに酸化エチレン(EO)を付けたものがポリソルベート80です。2008年版の医薬部外品表示名称リストでも、組成名の「モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)」の本質は、主として「モノオレイン酸ソルビタン」に酸化エチレンを平均20モル付加重合したものと書かれています(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版)。EOの有無で性質は大きく変わり、Crodaの資料の値ではオレイン酸ソルビタンのHLBが4.3の親油側、本成分が15.0の親水側です(出典: Croda Pharma)。

Q4. 医薬部外品のクリームで「アクリル酸ナトリウム・アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80」と書かれていました。これは何ですか?

増粘ポリマーを油に分散させた液体原料を、医薬部外品の表示で1行にまとめた名前と読めます。同種の原料SIMULGEL EGは、SEPPIC側の掲載INCIがこの3成分です(出典: SEPPIC SIMULGEL EG)。化粧品ではこの3つが別々の行に書かれ、DappNotesの商品マスターでも、イソヘキサデカンが独立して現れる化粧品3製品にはコポリマーと本成分がそろって並んでいました(出典: DappNotes 商品マスター集計)。ただし個別の商品がどの原料銘柄を使っているかは特定していません。

Q5. PEG系の成分なので1,4-ジオキサンが心配です。

1,4-ジオキサンは酸化エチレンを付加する製造工程で生じうる副生物で、成分として加えられるものではありません(出典: FDA『1,4-Dioxane in Cosmetics』)。論点は成分そのものの毒性ではなく製造管理で、CIRは製造時に水蒸気ストリッピングで除去していると記し、業界に不純物を抑える手順の継続を求めています(出典: CIR 2015)。医薬品用の日本薬局方の規格では、1,4-ジオキサン10ppm以下、エチレンオキシド1ppm以下と数値で定められています(出典: PMDA 日本薬局方医薬品各条)。

Q6. 肌への安全性はどう評価されていますか?

CIRはポリソルベート類を統合して再評価し、非刺激性となるよう処方される限り化粧品で安全と結論しています(出典: CIR 2015)。ヒトの刺激性試験で本成分の原液でも皮膚刺激がなかったとする報告があり、Ames試験でも遺伝毒性は認められていません。条件つきの結論なのは、化粧品で使われる濃度でわずかな刺激を示した試験があったためです。合わないと感じたら使用を中止し、原因は製品全体の成分で考えてください。

Q7. 日本薬局方に載っているのは、薬の成分だからですか?

有効成分としてではなく、医薬品に使う原料としての品質規格です。日本薬局方の各条は、組成(オレイン酸58.0%以上など)や不純物の上限を定めていて、三薬局方の調和合意に基づいています(出典: PMDA 日本薬局方医薬品各条)。医薬品では注射剤などの添加剤として使われます(出典: Wikipedia『Polysorbate 80』)。化粧品に入っている本成分に薬効があるという意味にはなりません。

8. まとめ

ポリソルベート80は、オレイン酸ソルビタンに酸化エチレンを平均約20モル付加した非イオン界面活性剤で、INCI名はPolysorbate 80。水と油をなじませるO/W型の乳化と、油溶性の成分を水系に溶かし込む可溶化を担う(出典: CIR 2015 / PMDA 日本薬局方医薬品各条)。名前の80は結合した脂肪酸(オレイン酸)を表し、配合量や強さではない。

ソルビタン骨格のはしごで見ると、本成分はEOを付けないオレイン酸ソルビタン(Crodaの資料でHLB 4.3)と同じ脂肪酸を持ち、EOの鎖で親水側(同15.0)に移った位置にある。ラウリン酸型のポリソルベート20は同じ資料で16.7とさらに水寄りになる。HLBは資料で値が割れる目安で、乳化剤の優劣を示すものではない。

成分表での出方は2通りある。シャンプー・洗顔料・化粧水では単独の乳化剤・可溶化剤として入り、オールインワンジェルや薬用クリームでは、増粘ポリマーとイソヘキサデカンを組み合わせた原料の一部として並ぶことがある。医薬部外品ではこれが3成分の連結名の1行になる。

安全性はCIRが非刺激性となるよう処方される限り安全と結論し、PEG系成分の1,4-ジオキサンは製造管理の論点として日本薬局方の規格にも上限が定められている。成分名や表示位置で製品を振り分けるより、処方全体と自分の肌との相性で選ぶのが実用的な読み方になる。

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