PEG-45Mは、酸化エチレン(EO)が平均約45,000個つながったポリエチレングリコール(PEG)で、INCI名もPEG-45M、化粧品表示名称の配合目的は結合剤・乳化安定剤・親水性増粘剤にあたる(出典: Cosmetic-Info.jp)。名前の「M」は1000倍を表し、計算上の分子量は約200万(出典: CIR 2010)。自社の商品マスターでは、ヘアトリートメントと石けん系の洗顔料の2製品に、どちらも成分表の後半で入っていた(出典: DappNotes 商品マスター集計)。
この記事の中心は2点ある。1つは、「45M」という数字の読み方。同じPEGでも、化粧品表示名の数字はEOの個数、医薬部外品の表示名の数字は分子量で、さらに「M」が付くと桁が3つ増える。もう1つは、兄弟成分のPEG-90Mとの違い。どちらも「とろみ・糸を引く粘り・泡の質・すべり」を整える超高分子PEGで、働きの種類は同じだが、鎖の長さが半分のぶん、同じ粘度を出すのにほぼ倍の濃度が要る(出典: IFF POLYOX 技術資料)。肌や髪を変える主役ではなく、使い心地を整える部品として読む成分にあたる。
1. PEG-45Mの基本
1.1 何の成分か
PEG-45Mは、酸化エチレンを重合させてつくる直鎖のポリマーで、化学式は H(OCH2CH2)nOH、nの平均が約45,000にあたる。化粧品表示名称の定義は「酸化エチレンの重合体」の一文だけで、この定義はPEG-2MからPEG-180Mまでの超高分子PEGすべてで同じになっている(出典: Cosmetic-Info.jp)。違うのは鎖の長さだけ、という成分群の1つと考えてよい。
数字の読み方は、PEGを理解するうえで最もつまずきやすい点にあたる。3つのルールがある。
- 化粧品表示名(INCI)の数字は、EOの平均個数。PEG-8ならEOが平均8個で、分子量は約400になる(出典: CIR 2010)
- 医薬部外品の表示名の数字は、平均分子量。PEG-8の部外品名が「ポリエチレングリコール400」になるのはこのため
- INCIの末尾の「M」は1000倍。CIRの成分表はPEG-45Mを「average value of 45000」、つまりEO平均45,000個と定義し、計算分子量を1,980,018としている(出典: CIR 2010 Table 1・Table 2)
「M」を「万」や「百万」と読むと、数字がずれる。45Mは4万5000のEOで、分子量は約200万。PEG-90MはEO約90,000・分子量約400万で、ちょうど倍の鎖長になる。
医薬部外品の側では、分子量ごとに1本ずつ名前が立つのはポリエチレングリコール200から20000まで(連番1932〜1943)で、それより大きいものは「高重合ポリエチレングリコール」(簡略名 高重合PEG・平均分子量20000以上)という1つの名前に束ねられている(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト 平成20年版 連番792)。PEG-45Mの代表的な原料(平均分子量200万のポリエチレンオキシド)も、原料データベースで部外品申請成分名をこの名前で登録しており、PEG-90Mの原料も同じ名前になっている(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。部外品の成分表で「高重合ポリエチレングリコール」と書かれていたら、PEG-45MかPEG-90Mか、あるいは別の超高分子PEGかは、表示からは区別できない。
原料としての呼び名にも触れておく。この分子量帯のポリエチレンオキシドは、工業・医薬の分野で長く POLYOX(ポリオックス) の商品名で知られ、分子量200万の等級は「WSR N-60K」と呼ばれてきた(出典: IFF POLYOX 技術資料)。化粧品向けの国内の原料データベースでは、同じ分子量のPEG-45Mがダウの「FOAMYSENSE N60K Polymer」として登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。商品名はメーカーや事業の移り変わりで変わるため、成分表で見るべき名前は表示名称の「PEG-45M」の方にあたる。
規制上の位置づけは添加成分で、医薬部外品の有効成分ではない。薬用化粧品にも部外品名「高重合ポリエチレングリコール」で配合できるが、それは増粘・感触調整の添加物として入るという意味で、承認された効能を持つわけではない。
1.2 どんな製品に配合されるか
CIRの2010年報告書に載る使用実態では、PEG-45Mは米FDAの自主登録制度(VCRP・2008年)に14件の届出があり、内訳はコンディショナー・シャンプー・ヘアトニックなどの髪用、石けん・洗浄料、シェービングクリームとシェービングソープ、ベビー用品などに散っていた(出典: CIR 2010 Table 5)。同じ表でPEG-90Mは94件で、PEG-45Mは使われる数が少ない側にあたる。国内の表示名称データベースでも、PEG-45Mを含む市販化粧品は247件、PEG-90Mは377件と、同じ傾向が出ている(出典: Cosmetic-Info.jp)。
DappNotes の商品マスター(スキンケア54製品/ヘアケア78製品)では、PEG-45Mは次の2製品に入っていた。
| 製品 | 種類 | 表記 | 位置 | 同じ製品に入るPEG系・ポリマー |
|---|---|---|---|---|
| P057 | ヘアトリートメント(化粧品) | PEG-45M | 47位/54成分 | セテアレス-7・セテアレス-25 |
| P099 | 石けん系洗顔料(化粧品) | PEG-45M | 20位/26成分 | PEG-8・PCAイソステアリン酸PEG-40水添ヒマシ油・ポリクオタニウム-7 |
(出典: DappNotes 商品マスター集計)
比べて面白いのが、同じマスターでのPEG-90Mの入り方にある。PEG-90Mは5製品に入るが、5製品ともヘアトリートメントかヘアマスクだった。PEG-45Mは1製品が洗顔料で、洗い流す泡の製品にも顔を出している。ただし2製品と5製品という小さな数の話で、「PEG-45Mは洗浄料向き、PEG-90Mはトリートメント向き」という使い分けがあると言える材料ではない。CIRの使用実態でも、両者はコンディショナー・シャンプー・洗浄料・シェービング製品と、ほぼ同じ種類の製品に届出がある。
配合量は、どちらの製品でもごく少量と考えるのが自然にあたる。全成分表示は1%以下の成分を順不同で書けるため、順位から配合量は逆算できないが、CIRの業界調査(2009年)でPEG-45Mの使用濃度は0.03〜0.3%にとどまる(出典: CIR 2010 Table 5)。
1.3 メンズ視点での見方
メンズの目線でPEG-45Mに出会うのは、洗顔料とヘアケアの成分表の後半になる。読み方は「泡のきめ・持ちと、手や髪のすべりを整える部品」で十分にあたる。
たとえば石けん系の洗顔料は、泡立ちはよいが泡が粗く消えやすくなりがちで、原料メーカーはPEG-45Mを「洗浄料の泡質改善剤」と位置づけ、泡もちのよいクリーミーな泡に仕上がる、泡の密度が上がると説明している(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB / Dow)。ヒゲ剃り前の洗顔や、泡で洗う習慣のある人が感じる「泡のもっちり感」「手のすべり」には、こうしたポリマーが関わりうる。ただしそれは使い心地の話で、皮脂を減らす・ニキビを防ぐといった肌の変化を起こす成分ではない。
もう1つ知っておきたいのは、成分表の「PEG」という文字だけで身構える必要はないという点にある。PEG-45Mは分子量約200万という桁違いに大きな分子で、皮膚から吸収される大きさではない。「PEG=経皮毒」という言葉がこの成分にどこまで当てはまるかは §3.3 で整理する。
2. 期待される働き・効果
2.1 メカニズム
PEG-45Mの働きは、すべて「とても長い鎖が水に溶けている」ことから説明できる。
とろみ(増粘)。分子量が数百万のポリマーが水に溶けると、長い鎖が水の中で広がり、互いに絡み合って水の流れを妨げる。そのため、ごく少量でも液に粘りが出る。原料の規格値で見ると、分子量200万のポリエチレンオキシド(PEG-45M相当)は2%の水溶液で2,000〜4,000mPa·sの粘度になる(出典: IFF POLYOX 技術資料)。化粧品での使用濃度(0.03〜0.3%)はこの数分の1〜数十分の1なので、PEG-45Mだけで製品の粘度をつくるというより、他の増粘成分に粘りと弾性を上乗せする使い方になる。
糸を引く粘り(曳糸性)。超高分子のポリエチレンオキシドの水溶液は、ただ粘いだけでなく、ゴムのような弾性も併せ持つ(粘弾性)。メーカー資料は、水溶液が糸を引く(pituitous)こと、スプレーしたときの飛び散りやミストを抑えることを挙げている(出典: IFF POLYOX 技術資料)。化粧品で原料メーカーがうたう「伸びの改善」は、この性質と結びつけて理解できる。
すべり(潤滑)。ポリエチレンオキシドは、水に濡れた表面がよくすべる性質で知られ、湿らせたときの潤滑性は他のプラスチックにない水準だとメーカー資料は書いている(出典: Dow POLYOX 技術資料)。化粧品では、肌や髪に塗ったときの「なめらかさ」「指通り」として表れる。
泡の質。洗浄料では、原料メーカーが泡質改善剤としての用途をうたい、泡もち・クリーミーさ・泡の密度の向上を挙げている(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB / Dow)。液の粘りと弾性が泡の膜を支える方向に働くと考えられるが、泡がどう変わるかは洗浄成分の組み合わせで変わるため、成分表からは読み切れない。
PEG-45Mは電荷を持たない非イオン性のポリマーで、pH2〜13の広い範囲で使えるとされる(出典: IFF POLYOX 技術資料)。石けん系の洗顔料のようなアルカリ性の処方に入っていても不思議ではない、という程度に理解しておけばよい。
2.2 一般的な効能範囲
PEG-45Mについて言えることは、製品の「使用感」の範囲にとどまる。
- 液や乳液にとろみをつけ、乳化の状態を保つ(親水性増粘剤・乳化安定剤)
- 洗浄料の泡を、きめ細かく持ちのよい方向に整える(原料メーカーの説明)
- 塗り広げるときの伸び、肌や髪の上でのすべり・なめらかさを出す
- 粉体などの成分をつなぎとめる(結合剤)
化粧品の効能の言い方に当てはめると、PEG-45Mそのものが「肌をうるおす」「髪を補修する」といった効能を担うわけではない。配合製品が持つ保湿や洗浄の効果は、主役の成分と処方全体によるもので、PEG-45Mはその使い心地を支える位置にある。
2.3 限界・誤解されやすい点
誤解されやすい点は3つある。
1つ目は、数字の大きさを分子量と読むこと。「45M」を「分子量45万」「4500万」と読むのは誤りで、45,000はEOの個数、分子量はその約44倍の約200万になる(出典: CIR 2010)。逆に部外品名の「ポリエチレングリコール1000」の1000は分子量で、EOは約20個にあたる。同じ「PEG」でも、どちらの名前の数字を見ているかで桁が変わる。
2つ目は、PEG-45MとPEG-90Mを「似たようなもの」で片付けること。働きの種類は同じで、表示名称の定義も配合目的もまったく同じ文面になっている(出典: Cosmetic-Info.jp)。しかし鎖の長さが2倍違えば、同じ粘度を出すのに必要な濃度が大きく変わる(§2.4)。「どちらが優れている」ではなく、処方がどれだけの粘りと糸引きを求めるかで選ばれる、と考えるのが実態に近い。
3つ目は、シェービング用途をPEG-45Mの特長と考えること。CIRの使用実態にはPEG-45Mのシェービングクリーム(1件・0.2%)とシェービングソープ(1件)が載っており、使われているのは確かにあたる(出典: CIR 2010 Table 5)。ただしカミソリの刃に付く潤滑ストリップについては、ポリエチレンオキシドのメーカー資料が推す等級に、PEG-45Mに当たる分子量200万の等級は入っていない(推奨はPEG-90Mに当たる分子量400万の等級などで、出典: Dow POLYOX 技術資料)。「PEG-45M=カミソリのすべり成分」と結びつけるのは、一次資料からは言えない。
2.4 PEGの鎖長と母体で見る横串整理
PEGと名のつく成分は、鎖の長さ(EOの個数)と、何にくっついているか(母体)で働きが変わる。単体のPEGは、鎖が短いと液状で保湿・溶剤、中くらいで半固形〜ワックス状の基剤・結合に回り、PEG-45Mのような超高分子になると、増粘に加えて糸を引く粘り・すべり・泡の質といった「感触」の側に働きが移る。水添ヒマシ油にEOを付けたものは、EOが増えるほど水になじみ、乳化剤から可溶化剤へ役割が移る。
| 成分 | 母体 | EO数/分子量の目安 | 主な役割 |
|---|---|---|---|
| PEG-6 | 単体 | EO 6/計算分子量 約280 | 保湿・溶剤 |
| PEG-8 | 単体 | EO 8/約370 | 保湿・溶剤 |
| PEG-20 | 単体 | EO 20/約900 | 保湿・基剤 |
| PEG-32 | 単体 | EO 32/約1430 | 保湿・基剤・結合 |
| ポリエチレングリコール1500 | 単体(混合) | PEG-6相当とPEG-32相当の等量混合 | 基剤・保湿 |
| PEG-150 | 単体 | EO 150/約6600 | 結合・保水・溶剤 |
| PEG-45M(本成分) | 単体(超高分子) | EO 約45,000/約198万 | 増粘・泡質・すべり |
| PEG-90M | 単体(超高分子) | EO 約90,000/約396万 | 増粘・すべり |
| PEG-40水添ヒマシ油 | 水添ヒマシ油 | EO 40 | 可溶化 |
| PCAイソステアリン酸PEG-40水添ヒマシ油 | PEG-40水添ヒマシ油のエステル | EO 40 | 可溶化・皮膚コンディショニング |
(出典: CIR 2010 Table 2〔計算分子量=EO数×44+18〕/ 医薬部外品の成分表示名称リスト / Cosmetic-Info.jp)
表で見ると、PEG-45Mは単体PEGの列の中で、PEG-150から一気に300倍の鎖長へ跳んだ位置にある。PEG-150までは「液体か固体か」「保湿か基剤か」という軸で働きが並ぶが、M付きのPEGになると水に溶かしたときの粘りと弾性が主役になり、表示名称の配合目的にも保湿剤・溶剤は挙がっていない(結合剤・乳化安定剤・親水性増粘剤の3つ、出典: Cosmetic-Info.jp)。まぎらわしいのは、M の付かない「PEG-45」という別成分も存在することで、こちらはEO 45個・計算分子量約2000の、ワックス状の中くらいのPEGにあたる(出典: CIR 2010 Table 2)。表示で「M」が付くか付かないかで、分子の大きさは1000倍違う。
PEG-90Mとの差を数字で見る。同じ原料系列のメーカー規格では、PEG-45Mに当たる分子量200万の等級が「2%水溶液で2,000〜4,000mPa·s」、PEG-90Mに当たる分子量400万の等級が「1%水溶液で1,650〜5,500mPa·s」と、測る濃度そのものが違う(出典: IFF POLYOX 技術資料)。鎖が2倍長いPEG-90Mは、半分の濃度で同じくらいの粘度帯に届く、ということになる。粘度を出す力はPEG-90Mが上で、PEG-45Mは同じ粘りを出すのに多めの量を要する一方、少量で入れたときの粘りは控えめになる。処方の側から見ると、「粘りすぎず、泡や液にほどよい弾性とすべりを足したい」ときにPEG-45Mが選ばれうる位置にある。ただし個々の製品がなぜPEG-45Mを選んだかは、成分表からは分からない。
3. 安全性・注意点
3.1 既知の刺激性・アレルギー報告
PEG-45Mの安全性の一次情報は、CIR(米国の化粧品成分安全性評価パネル)の2010年の最終報告書にある。この報告書はトリエチレングリコールと、PEG-4からPEG-180Mまでの40以上のPEG、さらに今後使われる4以上のPEGを一括で評価したもので、結論の対象一覧にPEG-45Mが名指しで入っている(出典: CIR 2010)。結論は「現行の使用実態・使用濃度において安全」。
PEG群全体についての整理は次のとおり(出典: CIR 2010 Abstract・Discussion)。
- 経口での急性毒性は低い
- 眼への刺激はわずか
- 正常な皮膚では刺激・感作(アレルギー)は起こしにくい
- 遺伝毒性・発がん性、生殖・発生への毒性は認められない
注意しておきたいのは、報告書にPEG-45M単体の刺激・感作試験は載っていないという点にある。PEG-45Mについて書かれているのは、定義・分子量と、使用実態(届出14件・使用濃度0.03〜0.3%)だけで、安全という結論はPEG群全体のデータを分子量の違いを踏まえて当てはめたものにあたる。これは「データがない成分」という意味ではなく、同じ骨格で鎖長だけが違う成分群として、群のデータで評価されているということになる。
アレルギーについては、報告書は熱傷の治療で抗菌クリーム(PEG基剤)を使った患者での接触皮膚炎の症例に触れつつ、湿疹のある患者1,500人以上を対象にした臨床研究で陽性反応が3分の1%未満だったことから、損傷皮膚でも感作は大きな懸念ではないと判断している(出典: CIR 2010 Discussion)。これはPEG群の話で、PEG-45Mで起きた症例ではない。
3.2 推奨配合量と過剰配合時のリスク
CIRが集めた業界調査(2009年)で、PEG-45Mの使用濃度は0.03〜0.3%だった(出典: CIR 2010 Table 5)。製品別には、コンディショナー0.03〜0.3%、シャンプー0.05%、ヘアトニック等0.1〜0.3%、石けん・洗浄料0.05〜0.08%、シェービングクリーム0.2%、ボディ・ハンドクリーム0.1%。日本の化粧品基準に配合の上限は定められておらず、CIRの報告書も日本とEUでの規制はないと書いている(出典: CIR 2010)。
過剰に入れたときに問題になるのは、安全性より使用感の側にあたる。超高分子PEGは少量で粘りと糸引きが出るため、量が多すぎれば、液が糸を引きすぎる・粘りが強すぎるといった使用感の側に振れると考えられる。製品として売られているものは、その手前で量が調整されていると考えてよい。
一方で、CIRがPEG群について明記した使用上の線引きが1つある。角層と表皮の両方が失われた皮膚(深い熱傷など)に、PEGを高濃度に含む製品を使うのは不適切、という点だ(出典: CIR 2010 Discussion)。熱傷の患者でPEG基剤の薬を広く使ったときに腎臓への影響が出た例が根拠で、低分子のPEGが皮膚から入ることが問題になった。PEG-45Mは使用濃度が0.3%以下と低く、分子も桁違いに大きいので、この話の当事者になりにくい成分ではあるが、傷や強い炎症のある部位に化粧品を使わないのは、成分に関係なく守りたい原則にあたる。
3.3 「危険性」と言われる根拠と実態の整理
PEG全般には「石油由来で経皮毒」「1,4-ジオキサンが残って発がん」という言説がついて回る。PEG-45Mに当てはめると、要点は3つに絞れる。
① 皮膚から入る大きさではない。CIRは、PEGの体内への取り込みは分子量で大きく変わり、分子量の大きいPEGほど消化管から吸収されるのが遅いか、まったく吸収されないと整理している(出典: CIR 2010 Summary)。皮膚についても、角層を取り除いた皮膚で透過が増えることが示されたのは低分子のPEGの話だった。PEG-45Mは計算分子量が約198万で、分子量が数百の低分子PEGとは5000倍前後の開きがある。「塗ると体に溜まる」というイメージは、この成分の大きさとは合わない。
② 1,4-ジオキサンは不純物の管理の話。PEGは酸化エチレンを重合してつくるため、副生物の1,4-ジオキサンや、原料のエチレンオキシドが微量に残る可能性がある。1,4-ジオキサンは動物で発がん性が知られる物質で、CIRはこの2つの不純物への懸念を明記したうえで、配合前の精製で除く工程を続けるよう業界に求めている(出典: CIR 2010 Discussion)。つまり問題になるのは精製の品質で、PEGという成分そのものが発がん性を持つという話ではない。CIRの結論は、この精製を前提に「安全」としている。
③ 名前の印象と量。「PEG」と一括りにされるが、PEG-45Mは0.03〜0.3%で使われる感触調整剤で、PEG-8のように保湿・溶剤として数%〜数十%で入ることもある低分子PEGとは、量も分子の大きさも別物にあたる(出典: CIR 2010 Table 5)。「PEGが入っているから避ける」という判断は、この違いを飛ばしてしまう。
まとめると、PEG-45Mで気にするべき点は「成分の毒性」ではなく「製品全体が自分の肌に合うか」になる。洗顔料やトリートメントには洗浄成分・香料・防腐剤なども入るため、敏感肌の人は製品単位でパッチテストをするのが無難にあたる。
4. 相性の良い・悪い成分
4.1 併用推奨
PEG-45Mは非イオン性で電荷を持たないため、陰イオン性の洗浄成分(石けん・アミノ酸系など)とも、陽イオン性のコンディショニング成分とも同じ処方に入れやすい。配合2製品でも、組み合わせは次のように分かれていた(出典: DappNotes 商品マスター集計)。
- 石けん系洗顔料(P099): ミリスチン酸・ステアリン酸などを水酸化Kで石けんにした基剤に、保湿・溶剤のPEG-8、乳化・可溶化のPCAイソステアリン酸PEG-40水添ヒマシ油、陽イオン性ポリマーのポリクオタニウム-7と並んで入る。鎖長の違うPEG系が役割を分けて同居している例にあたる
- ヘアトリートメント(P057): ステアリルアルコール・セタノールの高級アルコールと、ベヘントリモニウムクロリドなどの陽イオン界面活性剤でつくる乳化基剤の、後半に入る
どちらの製品でも、PEG-45Mは基剤を形づくる側ではなく、できあがった基剤の感触を仕上げる側に置かれている。
4.2 併用注意
消費者が避けるべき成分の組み合わせとして知られているものはない。
処方の側の注意として、ポリエチレンオキシドのメーカー資料は、粉末を一度に水へ入れるとダマ(表面だけゲル化した塊)になり溶けきらないため、弱いせん断でよく分散させてから溶かす手順が要ると書いている(出典: IFF POLYOX 技術資料)。これは製造工程の管理の話で、製品を使う側が気にする内容ではない。
使う側の注意は、成分同士の相性より製品全体との相性にある。洗顔料なら洗浄成分の強さ、トリートメントなら香料や防腐剤など、PEG-45M以外の成分で合う・合わないが決まることがほとんどにあたる。
4.3 類似成分
- PEG-90M: 鎖長が2倍(EO約90,000・分子量約400万)の兄弟成分。表示名称の定義・配合目的は同じで、同じ粘度を出すのに必要な濃度が約半分。自社マスターでは5製品すべてがヘアトリートメント・ヘアマスク
- PEG-150: 単体PEGのうちM付きでない中では鎖が長い側。固形の結合・保水・溶剤として使われ、PEG-45Mとは鎖長で300倍違う
- PEG-32・PEG-8: 同じPEGでも保湿・基剤・溶剤に回る短〜中鎖。数字の意味(EOの個数)は同じルール
- カルボマー・ヒドロキシエチルセルロース・キサンタンガム: 系統の違う増粘剤。カルボマーは中和でゲルになる陰イオン性の合成ポリマー、ヒドロキシエチルセルロースはセルロース由来、キサンタンガムは発酵でつくる多糖。どれもとろみをつけるが、PEG-45Mは電荷を持たない合成の直鎖ポリマーという点で系統が違う
5. よくある質問
Q1. 「45M」は分子量45万という意味ですか
いいえ。INCI名の数字は酸化エチレン(EO)の平均個数で、「M」は1000倍を表します。PEG-45MはEOが平均約45,000個で、計算上の分子量は約198万(約200万)です(出典: CIR 2010)。Mの付かない「PEG-45」は別成分で、EO 45個・分子量約2000の中くらいのPEGです。
Q2. PEG-90Mとどう違いますか
働きの種類は同じで、表示名称の定義も配合目的も同じ文面です(出典: Cosmetic-Info.jp)。違いは鎖の長さで、PEG-90MはEO約90,000・分子量約400万とPEG-45Mの2倍あります。原料の規格値では、PEG-45M相当は2%水溶液、PEG-90M相当は1%水溶液で、同じくらいの粘度帯になります(出典: IFF POLYOX 技術資料)。どちらが優れているというより、処方がどれだけの粘りを求めるかの違いです。
Q3. 医薬部外品の成分表に「高重合ポリエチレングリコール」とあるのは同じものですか
PEG-45Mの原料は、医薬部外品ではこの名前で申請されています(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。ただし「高重合ポリエチレングリコール」は平均分子量2万以上のPEGをまとめた名前で、PEG-90Mの原料も同じ名前になります(出典: 医薬部外品の成分表示名称リスト)。部外品の表示だけでは、PEG-45Mかどうかまでは分かりません。
Q4. ヒゲ剃りのすべりをよくする成分ですか
シェービングクリームやシェービングソープに使われた届出はあります(出典: CIR 2010 Table 5)。ただし、カミソリの潤滑ストリップ用としてメーカー資料が推す等級に、PEG-45Mに当たる分子量の等級は含まれていません(出典: Dow POLYOX 技術資料)。洗顔料やシェービング剤の泡・すべりを整える一要素にはなりえますが、剃り負けを防ぐといった効能を持つ成分ではありません。
Q5. PEGは経皮毒・発がん性があると聞きました。避けるべきですか
CIRはPEG-45Mを含むPEG群を「現行の使用実態・濃度で安全」と結論しています(出典: CIR 2010)。PEG-45Mは分子量約200万で皮膚から吸収される大きさではなく、使用濃度も0.03〜0.3%です。1,4-ジオキサンは製造時の不純物で、CIRは配合前の精製で除くことを前提に安全と判断しています。成分名だけで避ける理由は乏しく、気になる場合は製品全体で肌に合うかを確かめるのが現実的です。
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本記事に関する注記
- 本記事は特定商品の効果を保証するものではありません。成分の働きには個人差があり、体質・肌質により合わない場合があります。
- 肌に赤み・かゆみ・刺激等の異常が出た場合は使用を中止し、症状が続く・悪化する場合は皮膚科等の医療機関にご相談ください。傷・炎症のある肌への使用は避けてください。
- 本記事が参照するCIRの報告書は2010年6月29日の最終報告書(Final Report)です。使用件数・使用濃度はその時点(VCRP 2008年・業界調査2009年)の数字です。
- 粘度の数値は原料メーカーの規格値(水溶液)で、配合製品の粘度を示すものではありません。原料の商品名は成分の説明のために挙げたもので、配合製品がその原料を使っているかは成分表示からは分かりません。
- 本記事に含まれる製品数の集計は DappNotes 商品マスター(2026年9月時点・スキンケア54製品/ヘアケア78製品)に基づく自社集計であり、市場全体の分布を示すものではありません。
- 本記事は成分の一般的な解説であり、化粧品・医薬部外品の効能効果は配合製品の承認・表示の範囲に従います。
- 外部の安全性指標(CIR等)は出典明記の参考値であり、絶対的な安全性を保証するものではありません。
- 本記事はAIによる下書きを編集部がレビュー・再構成して作成しています。
- 編集部レビュー済み・AI下書き活用