シスツスモンスペリエンシス花/葉/茎エキスは、地中海沿岸に生えるハンニチバナ科の低木 Cistus monspeliensis の花・葉・茎から得られる植物エキスで、INCI名はCistus Monspeliensis Flower/Leaf/Stem Extract。化粧品表示名称の定義は「本品は、Cistus monspeliensis の花、葉及び茎のエキスである。」、配合目的は皮膚コンディショニング剤(未分類)である(出典: Cosmetic-Info.jp)。有効成分ではなく、化粧品の中で肌を整える目的の成分として扱われる。
名前が長く、読み方でつまずきやすい成分だが、成分表で取り違えやすい点が2つある。1つは、部位語のない「シスツスモンスペリエンシスエキス」が、配合目的が香料の別の表示名称として存在すること。もう1つは、同じ花/葉/茎の構成をもつ「ムラサキゴジアオイ花/葉/茎エキス」が、同じ属の別の種(Cistus incanus)であることだ。
DappNotesの商品マスター(132製品)で本成分が入るのは、BULK HOMME(バルクオム)の洗顔料と乳液の2品だけである。ブランドは本成分を「ロックローズ」と呼び、山火事の跡でも再生する「フェニックス」の植物として紹介している。本記事では、この物語が表示名称のどこまでに現れるか、そしてブランドが「共通美容成分」としてセットで配合する成分の出方を、表示から読めることと読めないことに分けて整理する。
1. シスツスモンスペリエンシス花/葉/茎エキスの基本
1.1 何の成分か
Cistus monspeliensis はハンニチバナ科ゴジアオイ属(Cistus)の常緑低木で、英語では rockrose(ロックローズ)系の名で呼ばれる。スペイン・イタリア・モロッコ・チュニジアなど地中海沿岸の試料を使った研究が多い(出典: 各論文)。種の和名は本稿の調査では確認できなかった。「ゴジアオイ」は別の種に当てられることがあり、「ロックローズ」もゴジアオイ属全体に使われる通称なので、種を特定するときは学名で確かめる必要がある。
化粧品表示名称では、成分番号566766、「化粧品の成分表示名称リスト」No.37(2020年3月31日発行)で収載された比較的新しい名前である(出典: Cosmetic-Info.jp)。CAS番号には93165-05-0が示されている。
抽出物の成分は、学術論文で次のように報告されている。
- Mac Sweeney ら(2024): 地上部と根の抽出物を比べ、地上部ではラブダン型の化合物とメトキシ化フラボノイドが特徴的だった(出典: Antioxidants 2024)
- Al-Naqeb ら(2024): 葉エキスで多かった代謝物は、プニカラギン(加水分解型タンニン)、ミリセチン、ガロカテキン、ラブダン型ジテルペンだった(出典: Int J Mol Sci 2024)
- Haida ら(2021): モロッコ産の抽出物に、フラボノイド、加水分解型タンニン、縮合型タンニンが多く含まれていた(出典: Biochem Res Int 2021)
系統名でまとめると、フラボノイド・タンニン類(ポリフェノール)と、ラブダン型ジテルペンが中心になる。ゴジアオイ属のジテルペンは、葉の表面のべたつく芳香樹脂「ラブダナム」の主成分として香料で知られ、C. monspeliensis でも確認されている(出典: Nat Prod Res 2015)。ただし組成は産地・部位・抽出溶媒で変わり、化粧品原料の中身は原料ごとに違う。
1.2 名称ファミリー:香料の同名エキスと、同属別種
Cosmetic-Info.jpの化粧品表示名称で、シスツスモンスペリエンシスの名前を含むものは2つある。取り違えやすい同属別種と並べる。
| 表示名称 | INCI名 | 定義の部位 | 配合目的 | 収載 |
|---|---|---|---|---|
| シスツスモンスペリエンシス花/葉/茎エキス(本成分) | Cistus Monspeliensis Flower/Leaf/Stem Extract | 花、葉及び茎 | 皮膚コンディショニング剤(未分類) | No.37(2020年) |
| シスツスモンスペリエンシスエキス | Cistus Monspeliensis Extract | 部位の記載なし | 香料 | No.13(2003年) |
| ムラサキゴジアオイ花/葉/茎エキス(別種) | Cistus Incanus Flower/Leaf/Stem Extract | 花、葉及び茎 | 皮膚コンディショニング剤(未分類) | No.22(2009年) |
(出典: Cosmetic-Info.jp)
同じ植物でも、部位語のない「シスツスモンスペリエンシスエキス」は配合目的が香料で、本成分とは別の表示名称である。注意したいのは、両者のCAS番号がどちらも93165-05-0で同じことだ(出典: Cosmetic-Info.jp)。CAS番号では2つを区別できず、成分表では部位語の有無で見分けることになる。
ムラサキゴジアオイ花/葉/茎エキスは、部位の構成も配合目的も本成分と同じだが、植物は Cistus incanus で種が違う(CAS番号も93165-04-9で別)。どちらも「ロックローズ」「シスタス」と紹介されることがあるため、通称だけで同じ成分と判断しないようにしたい。
1.3 どんな製品に配合されるか
Cosmetic-Info.jpには、本成分を含む原料が1件、市販化粧品が7件登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。原料の例としては、BASFの「Ciste’M(システム)」があり、製造元の表示するINCIは「Maltodextrin, Cistus Monspeliensis Flower/Leaf/Stem Extract」、形状は粉末である(出典: BASF Care 360 / BASF カタログ)。この原料については§3.3で扱う。
DappNotesの商品マスター(132製品)で本成分を確認できたのは次の2品で、どちらも化粧品である。
| 商品 | 区分 | 剤形 | 表示位置/全成分数 |
|---|---|---|---|
| バルクオム THE FACE WASH | 化粧品 | 洗顔料 | 21/35 |
| バルクオム THE EMULSION | 化粧品 | 乳液 | 16/35 |
(出典: BULK HOMME 公式サイトの全成分表示)
同じブランドの医薬部外品THE REPAIR LOTIONには入っていない。2品の並びと、同じブランドの部外品との違いは§3.4で扱う。
1.4 メンズ視点での見方
配合2品はメンズスキンケアブランドの洗顔料と乳液である。本成分は、ブランドが「植物由来成分」を厳選した「共通美容成分」と呼ぶセット(キノコのイノノツスオブリクウスエキスも含む)の1つとして入っていて、商品頁での機能表示は「保湿成分」になっている。
読み方の要点は2つある。1つは、「フェニックス」「山火事から再生」という物語は植物の説明で、成分表の名前にも、商品に配合された量のエキスの働きにも現れないこと。もう1つは、洗顔料は洗い流す剤形なので、肌に残るのは主に乳液の側だということである。商品を選ぶときに見るのは、洗浄成分や保湿の骨格、剤形のほうになる。
2. 期待される働き・効果
2.1 原料の機能性として報告されていること
化粧品の配合目的として登録されているのは、皮膚コンディショニング剤(未分類)である(出典: Cosmetic-Info.jp)。化粧品の中での役割は、この「肌の状態を整える」範囲で読むのが基本になる。配合2品の商品頁では、ブランドが「保湿成分」と注記している(出典: BULK HOMME 公式)。
そのうえで、抽出物や原料の機能性として次のような報告・主張がある。いずれも試験管内・細胞の試験か原料メーカーの説明で、配合商品の効果を示すものではない。
- 抽出物の抗酸化性: 地上部や植物全体の抽出物が、DPPH・FRAPなどの抗酸化試験で活性を示したという報告がある(出典: Biochem Res Int 2021 / Nat Prod Res 2015)。フラボノイドやタンニン類の性質として説明される
- 細胞での試験: Mac Sweeney ら(2024)は、地上部の抽出物がマクロファージ細胞系でLPS刺激に対する保護的な作用を示したと報告した(出典: Antioxidants 2024)。同じ研究で、炎症性サイトカインの遺伝子発現を有意に下げたのは根の抽出物だけで、化粧品原料が使う部位とは異なる
- 抗菌試験: モロッコ産の葉エキスの抗菌試験では、同属の C. villosus のほうが活性が高く、C. monspeliensis の活性は相対的に弱かった(出典: J Ethnopharmacol 2006)
- 原料メーカーの訴求: BASFは「Ciste’M」について、紫外線(UVA・UVB)・ブルーライト・大気汚染による肌ダメージからの防御、表皮の回復の促進、シワの低減をうたい、日本語カタログでは「シワ改善および肌を滑らかにする効果が,臨床的に証明されています」と説明している(出典: BASF Care 360 / BASF カタログ)
最後の項目は原料メーカーの主張で、試験の条件や規模は公開頁からは確認できない。また配合商品がこの原料を使っているかは公表されていない(§3.3)。抽出物の濃度や溶媒は試験ごとに違い、商品に配合された量のエキスを肌に塗って同じことが起きるかは、別に確かめない限り分からない。
2.2 一般的な効能範囲
本成分を配合した化粧品で表現できるのは、化粧品の効能範囲のうち「肌を整える」「肌のキメを整える」「皮膚をすこやかに保つ」「皮膚にうるおいを与える」「肌を保護する」といった範囲である。
逆に、次のような表現を本成分の効能として書くことはできない。
- ブルーライト・紫外線・大気汚染によるダメージを防ぐ、修復する
- シワを改善する(化粧品の効能範囲にある「乾燥による小ジワを目立たなくする」は、所定の試験で効果を確認した商品に限られる)
- 抗酸化で老化を防ぐ、炎症を抑える
- 表皮の再生を加速する
原料メーカーの訴求と化粧品の効能範囲には、このように大きな差がある。原料メーカーの資料は化粧品メーカー向けの技術情報で、そこに書かれた機能を、配合された商品の効能として読み替えることはできない。
2.3 限界・誤解されやすい点
誤解されやすい点は3つある。
1. 植物の物語をエキスの働きに持ち込む誤解。 ブランドは本成分を、山火事の跡でも不死鳥のように再生する「フェニックス」の植物のエキスと紹介している(出典: BULK HOMME 公式)。植物の生態としては、C. monspeliensis の種子が煙にさらされると発芽しやすくなるという研究がある(出典: J Chem Ecol 2003)。しかしこれは種子の発芽の話で、花・葉・茎のエキスを肌に塗ったときの働きとは別である(§3.3)。
2. 香料の同名エキスと混同する誤解。 成分表で「シスツスモンスペリエンシスエキス」とだけ書かれていれば、それは配合目的が香料の別の表示名称である(§1.2)。部位語の有無で別の成分になる。
3. 表示位置で量や働きの強さを比べる誤解。 洗顔料では21位、乳液では16位と位置が違うが、どちらも全成分数は35で、この順位を配合量や働きの強さの比較には使えない(§3.4)。原料の例に挙がる粉末原料は推奨量が0.1%前後と少なく、仮に量が分かっても、エキス分の量は表示から読めない。
3. 安全性・注意点
3.1 既知の刺激性・アレルギー報告
本成分の安全性について、公開されている情報は多くない。本稿の調査で確認できたことを並べる。
- ヒトの皮膚試験: 本成分そのものの皮膚刺激性・感作性(アレルギー性)について、公開された試験データは確認できなかった
- CIR: 米国のCosmetic Ingredient Review(CIR)の報告書一覧に、ゴジアオイ属(Cistus)の成分は見当たらなかった(出典: CIR Portal)。CIRで評価済みの成分として扱うことはできない
- 細胞での遺伝毒性試験: Al-Naqeb ら(2024)は、葉エキスが培養細胞(CHO-K1)の小核試験で、50〜200μg/mLの範囲で遺伝毒性を示さなかったと報告した(出典: Int J Mol Sci 2024)。これは試験管内の結果で、肌に塗ったときの刺激やアレルギーを評価したものではない
以上から言えるのは、「刺激や感作についての公開データが乏しい」というところまでである。データが乏しいことは、危険の根拠にも安全の根拠にもならない。天然の植物エキスは産地や抽出条件で組成が変わるため、体質による反応の可能性は残る。
「植物由来だから肌にやさしい」とも、「植物エキスはアレルギーのもと」とも一律には言えない。配合2品には香料やフェノキシエタノールなども入っていて、洗顔料は石けん系の洗浄成分が主体である。肌に合わないと感じたときは本成分だけでなく処方全体を疑うのが現実的で、赤み・かゆみが出たら使用を中止する。
3.2 配合量の目安と表示から読めないこと
Cosmetic-Info.jpの化粧品表示名称ページでは、本成分の規制分類欄に記載はない(出典: Cosmetic-Info.jp)。配合量は各メーカーが処方ごとに決める。
原料の例として、BASFは「Ciste’M」の推奨使用量をCare 360で0.05〜0.10%、日本語カタログで0.1%と案内している(出典: BASF Care 360 / BASF カタログ)。ただしこれはマルトデキストリンを含む粉末原料としての量で、花・葉・茎のエキス分の濃度ではない。
成分表示から読めないことを整理すると、次の3つになる。
- 配合量: 表示位置から量の多い少ないは読めない(§3.4)
- エキスの中身: 抽出溶媒・固形分・ポリフェノールやジテルペンの量は表示されない
- 原料の銘柄: 同じ表示名称でも、どのメーカーのどの原料かは表示から分からない(§3.3)
3.3 ブランドが語る「由来の物語」と、表示名称が示す範囲
BULK HOMMEは、洗顔料・乳液などに共通して配合する植物由来成分を「共通美容成分」として、成分ごとに由来の物語をつけて紹介している。本成分の紹介は、見出しが「ロックローズ」、説明が「山火事で焼失した土地でも不死鳥のように再生する力強い生命力を持つことから、「フェニックス」と呼ばれる植物が持つ防御システムを利用したエキス。」である(出典: BULK HOMME 公式)。一方、商品頁での機能の注記は「保湿成分」になっている。
物語の要素が成分表示の名前にどこまで現れるかを、同じセットの成分と並べる。
| 成分 | ブランドの物語(要旨) | 表示名称が示す範囲 | 物語の要素は名前に出るか | 由来の形 |
|---|---|---|---|---|
| シスツスモンスペリエンシス花/葉/茎エキス(本成分) | 山火事の跡でも再生する「フェニックス」 | Cistus monspeliensis の花・葉・茎 | 「山火事から再生」は出ない。部位は出る | 植物体から抽出 |
| エーデルワイス花/葉エキス | アルプス標高1000m・地上部のみに抗酸化成分を生成 | 花と葉 | 産地・野生か栽培かは出ない。部位は出る | 植物体から抽出 |
| シロツメクサエキス | 四葉以上を付ける特別な株・福祉事業で生産された四葉を一部使用 | 部位語なし | 「四つ葉」「多葉性株」は出ない | 植物体から抽出 |
| クリスマムマリチマムカルス培養液 | 海から陸へ移住した最初の植物のひとつ・植物の幹細胞をフリーズドライ | カルスの培養液 | 「幹細胞」は出ない。出るのは「カルス培養液」 | 植物細胞の培養 |
| イノノツスオブリクウスエキス | 白樺に寄生する希少なキノコ・チャーガ・「森のダイヤ」 | 学名のみ | 「キノコ」「白樺」「希少」は出ない | 菌類から抽出 |
| リンゴ果実培養細胞エキス(参考) | ウトビラー・スパトラウバーの幹細胞・「奇跡のリンゴ」 | 果実の培養細胞のエキス | 品種名・「幹細胞」は出ない | 植物細胞の培養 |
| グリセリルグルコシド(参考) | サハラ砂漠のミロタムヌスから抽出・「復活の木」 | 化合物名 | 植物名そのものが出ない | 化合物 |
(出典: BULK HOMME 公式「共通美容成分」頁 / 各成分の化粧品表示名称の定義)
本成分の場合、表示名称からわかるのは種(Cistus monspeliensis)と部位(花・葉・茎)までで、「フェニックス」「山火事から再生」は名前に現れない。では物語に根拠がないかというと、そうではない。地中海沿岸の低木林は山火事の起きやすい環境で、スペイン中西部の林地の研究では、C. monspeliensis を含むゴジアオイ属3種の種子が、20分の煙暴露で発芽しやすくなった(出典: J Chem Ecol 2003)。火事にともなう煙が種子の発芽を促すという点で、物語には植物の生態として対応する研究がある。
ただし、ここで読み違えたくない点が2つある。1つは、この「再生」は焼けた株そのものが生き返る話ではなく、種子の発芽の話であること。もう1つは、化粧品原料が使うのは花・葉・茎で、種子の発芽の性質がエキスに移るわけではないことである。物語は植物を紹介する由来の説明として読み、そこから肌への働きを導かないのが正確な読み方になる。
「フェニックス」の呼び名は、原料メーカーの資料にも現れる。BASFは原料「Ciste’M」を、持続可能な方法で調達した地中海のロックローズの抽出物で「Vegetal Phoenix」とも呼ばれる、と説明している(出典: BASF Care 360)。同じ植物・同じ表示名称・同じ呼び名で流通する原料の例ではあるが、BULK HOMMEの頁に原料名や原料メーカー名の記載はなく、配合商品がこの原料を使っているかは確認できない。
この原料の製造元INCIは「Maltodextrin, Cistus Monspeliensis Flower/Leaf/Stem Extract」で、マルトデキストリンとの組になっている(出典: BASF Care 360)。配合2品の成分表にもマルトデキストリンが並ぶが、原料が公表されていない以上、それがどの原料から来たものかは成分表から判断できない。
3.4 「セット」として配合される成分の出方
BULK HOMMEは、化粧品に使う「8種の化粧品共通美容成分」と、医薬部外品に使う「6種の医薬部外品共通成分」を別々に示している(出典: BULK HOMME 公式)。
| セット | 構成 | 本成分 |
|---|---|---|
| 8種の化粧品共通美容成分 | リンゴ果実培養細胞エキス・イノノツスオブリクウスエキス・グリセリルグルコシド・クリスマムマリチマムカルス培養液・シロツメクサエキス・エーデルワイス花/葉エキス・シスツスモンスペリエンシス花/葉/茎エキス・イノシトール | 含まれる |
| 6種の医薬部外品共通成分 | グリセリルグルコシド・アシタバエキス・ヒキオコシエキス・海藻エキス・エーデルワイスエキス・イノシット | 含まれない |
(出典: BULK HOMME 公式「共通美容成分」頁)
どちらのセットにもマルトデキストリンは入っていない。
商品マスターでは、化粧品の洗顔料(THE FACE WASH)と乳液(THE EMULSION)に、次の並びが同じ順序で入っている。
クリスマムマリチマムカルス培養液 → グリセリルグルコシド → シスツスモンスペリエンシス花/葉/茎エキス → リンゴ果実培養細胞エキス → エーデルワイス花/葉エキス → イノノツスオブリクウスエキス → シロツメクサエキス → マルトデキストリン
(出典: BULK HOMME 公式サイトの全成分表示)
洗い流す洗顔料と肌に残す乳液で剤形は正反対だが、この並びは2品で一致する。一方、同じブランドの医薬部外品の化粧水(THE REPAIR LOTION)には本成分は入っておらず、部外品の表示名称で書かれた「6種」の側の構成になっている。
読めるのは「出現の一致」まで。 本成分が132製品の中でこの2品にだけ、同じセットの成分と一緒に現れることは事実として言える。ブランド自身もセットとして示している。しかし、化粧品の全成分表示は配合量1%以下の成分を順不同で書けるため、並び順が同じことや位置が近いことは、これらが1つの原料にまとめて入っている根拠にならない。ブランドも原料メーカーも、複数の成分をまとめた原料であるとは示していない。
表示位置から量は読まない。 洗顔料の21位、乳液の16位という違いは、それぞれの商品で本成分より前に並ぶ成分の数の違いで、本成分の量の違いを示すものではない。どこからが1%以下かも表示されないため、この位置から配合量は判断できない。
4. 相性の良い・悪い成分
4.1 併用される成分
本成分は単独で主役になる成分ではなく、配合2品では同じセットの植物由来成分や糖系の保湿成分と一緒に入っている。
同じセットの成分: グリセリルグルコシド・リンゴ果実培養細胞エキス・イノシトールと、兄弟記事のエーデルワイス花/葉エキス・シロツメクサエキス・クリスマムマリチマムカルス培養液・イノノツスオブリクウスエキス(§3.3)。
糖系の保湿成分: トレハロース・グリコシルトレハロース・異性化糖が2品に共通して入り、脂質としてマカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルも共通する。
保湿の骨格: グリセリンとBGが上位に置かれ、植物由来成分はその上に重ねられている。
4.2 注意したい組合せ
本成分について、化粧品処方で避けるべき組み合わせは、本稿で確認した資料では報告されていない。実用上の注意は、成分どうしの相性よりも処方全体にある。
- 石けん系の洗顔料: THE FACE WASHは脂肪酸と水酸化Kによる石けん系の洗浄が主体である。洗い上がりのつっぱりや刺激を感じる場合、原因は植物エキスより洗浄の骨格にあることが多い
- 成分の数で選ぶこと: 植物由来成分が何種類も並んでいても、それぞれの量や中身は表示から読めない。種類の多さは働きの大きさの目安にならない
5. 使い方
5.1 推奨される使用シーン
本成分の有無で商品を選ぶ場面は、実際にはあまりない。配合例は洗顔料と乳液で、どちらも処方の一部として入っている。
洗顔料: 洗い流す剤形なので、肌に残る量は限られる。選ぶときは、洗浄成分の種類、泡立ち、洗い上がりの感触を見る。
乳液: 肌に残る剤形で、本成分は保湿の骨格(BG・グリセリン・スクワランなど)の上に重ねられた植物由来成分の1つとして入る。選ぶときは、油分の量やテクスチャーを見る。
使い方は、それぞれの商品の標準的な使い方に従えばよい。本成分のために特別な使い方をする必要はない。
5.2 期待できないこと・避けるべき使い方
- ブルーライト・紫外線・大気汚染から肌を守る効果: 原料メーカーの訴求で、本成分の効能ではない。紫外線対策は日焼け止めで行う
- シワの改善・肌の再生: 化粧品の効能範囲を超え、本成分の働きとして期待することはできない
- 物語からの連想: 「山火事から再生する植物」の性質が、エキスを塗った肌に移るわけではない
6. メンズ実用視点まとめ
メンズの成分表示でシスツスモンスペリエンシス花/葉/茎エキスを見かけたら、次の3点で読むと整理しやすい。
- 部位語まで見る: 「花/葉/茎エキス」は皮膚コンディショニング剤、部位語のない「シスツスモンスペリエンシスエキス」は香料の別成分。「ムラサキゴジアオイ」は別種
- 物語は由来の説明: 「フェニックス」は山火事の跡でも再生する植物というブランドの紹介で、煙で種子の発芽が促されるという研究はあるが、エキスの働きを示すものではない
- セットの1つとして読む: 自社マスターではメンズブランドの洗顔料と乳液に、共通美容成分のセットとして入る。並び順から原料の共通性や量は読めない
商品を選ぶときに効いてくるのは、洗浄成分や保湿の骨格、剤形と使い心地のほうである。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. シスツスモンスペリエンシス花/葉/茎エキスはどんな成分ですか?
地中海沿岸に生えるハンニチバナ科の低木 Cistus monspeliensis(通称ロックローズ)の、花・葉・茎から得られる植物エキスです。化粧品の配合目的は皮膚コンディショニング剤です(出典: Cosmetic-Info.jp)。抽出物にはフラボノイド・タンニン類やラブダン型ジテルペンが報告されています(出典: Int J Mol Sci 2024 / Antioxidants 2024)。有効成分ではありません。
Q2. 「シスツスモンスペリエンシスエキス」とは同じ成分ですか?
別の表示名称です。部位語のない「シスツスモンスペリエンシスエキス」は配合目的が香料で、「花/葉/茎エキス」は皮膚コンディショニング剤です(出典: Cosmetic-Info.jp)。CAS番号は同じなので、成分表では部位語の有無で見分けます。同じ構成の「ムラサキゴジアオイ花/葉/茎エキス」は別種の植物です。
Q3. 「フェニックス」と呼ばれるのはなぜですか? 肌も再生しますか?
ブランドは、山火事の跡でも再生する植物として紹介しています(出典: BULK HOMME 公式)。研究では、この植物の種子が煙にさらされると発芽しやすくなることが報告されています(出典: J Chem Ecol 2003)。ただしこれは種子の発芽の話で、花・葉・茎のエキスを塗った肌が再生することを意味しません。
Q4. ブルーライトや紫外線から肌を守ってくれますか?
原料メーカーが原料について訴求している内容で、化粧品の効能範囲を超えます(出典: BASF Care 360)。配合商品がその原料を使っているかも公表されていません。紫外線対策は日焼け止めで行ってください。
Q5. 肌に安全ですか?
本成分そのもののヒト皮膚試験データは確認できず、米国CIRの評価もありません。細胞の試験で遺伝毒性が見られなかったという報告はありますが、肌への刺激を調べたものではありません(出典: Int J Mol Sci 2024)。データが乏しいことは危険の根拠にも安全の根拠にもなりません。合わないと感じたら使用を中止してください。
8. まとめ
シスツスモンスペリエンシス花/葉/茎エキスは、地中海沿岸の低木 Cistus monspeliensis の花・葉・茎から得られる植物エキスで、化粧品では肌を整える目的で配合される。部位語のない同名エキスは香料の別成分で、CAS番号も同じなので、成分表では部位語で見分ける。
自社マスターではBULK HOMMEの洗顔料と乳液の2品にだけ、ブランドが「共通美容成分」として示すセットの1つとして入る。ブランドの「フェニックス」の物語は、煙で種子の発芽が促されるという植物の研究と対応するが、表示名称には現れず、エキスの働きも示さない。同じ呼び名の原料が市販されているものの、採用は確認できず、並び順から原料の共通性や配合量も読めない。物語や原料メーカーの訴求から効果を期待するより、洗浄成分・保湿の骨格・剤形で商品を選ぶのが実用的な理解になる。