シソ葉エキスは、シソ科のシソの葉から得られる植物エキスで、INCI名はPerilla Ocymoides Leaf Extract。化粧品表示名称の配合目的は皮膚コンディショニング剤だけが登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。有効成分ではなく、化粧水・オールインワン・洗顔料などに「その他の成分」として入る。

この成分の特徴は、名前の出方にある。化粧品では「シソ葉エキス」の1つに決まるが、医薬部外品では原料ごとに「シソエキス(1)」「シソエキス(2)」「シソ葉エキス」の3通りに分かれる。部位の書き方も、化粧品名は「葉」、部外品名の1つと生薬ソヨウは「葉及び枝先」でそろわない。本記事では、この割れ方と、配合商品3品の成分表から読めること・読めないことを分けて整理する。

1. シソ葉エキスの基本

1.1 何の成分か

シソは、刺し身のつまや梅干しの色付けで身近なシソ科の一年草である。シソ葉エキスは、その葉を水・エタノール・BGなどで抽出したエキスで、化粧品表示名称では成分番号553236、定義は「本品は、シソPerilla ocymoidesの葉のエキスである。」とされている(出典: Cosmetic-Info.jp)。旧INCI名はPERILLA EXTRACT・PERILLA OCYMOIDES EXTRACTで、現在は葉(Leaf)を明記した名前になっている。

シソという植物名で登録された化粧品表示名称は、葉のエキスだけではない。部位や形態ごとに別の名前が立っている(出典: Cosmetic-Info.jp)。

化粧品表示名称部位・形態登録された配合目的
シソ葉エキス(本成分)葉のエキス皮膚コンディショニング剤
シソエキス葉のエキス(「又はその他近縁植物」を含む)記載なし
シソ葉葉そのもの皮膚コンディショニング剤
シソ葉/茎油葉及び茎から得る精油香料
シソ種子エキス種子のエキス酸化防止剤
シソ種子油種子から得る油皮膚コンディショニング剤
シソ葉小胞葉から単離した小胞皮膚コンディショニング剤

(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称。シソ葉小胞は2025年のリストNo.48で収載)

このうち「シソエキス」(成分番号551383)は、定義が「シソ Perilla ocymoides 又はその他近縁植物の葉のエキス」で、近縁植物まで含む点が本成分と違う。日本化粧品表示名称事典の第2版まではINCI名として「Soyou Ekisu(JPN)」が設定されていたが、第3版で削除されたと注記されている(出典: Cosmetic-Info.jp)。成分表で「シソエキス」と「シソ葉エキス」を見かけたら、定義上は別の登録として読む。

同じPerilla frutescensの仲間であるエゴマにも、「エゴマ葉エキス」(Perilla frutescensの葉)や「エゴマエキス」(全草)という別の化粧品表示名称がある(出典: Cosmetic-Info.jp)。CAS番号90082-61-4は、シソ葉エキスのほか、シソ種子エキス・エゴマ葉エキス・エゴマエキスにも示されている。部位や植物名が違う名称で共有されている番号なので、CAS番号でシソ葉エキスを特定することはできない。

葉に含まれる成分は、シソ全体を扱った総説で整理されている。Ahmed(2019)は、シソの葉・種子・茎などから271の天然化合物が報告されているとし、系統としてフェノール酸・フラボノイド・精油・トリテルペンなどを挙げた。研究の関心を集める個別成分として、ロスマリン酸・ペリルアルデヒド・ルテオリン・アピゲニンなどが挙がっている(出典: Molecules 2019)。ペリルアルデヒドはシソ特有の香りに関わる精油成分として知られ、日本薬局方の生薬ソヨウは、このペリルアルデヒドの含量で規格が定められている(§3.4)。

組成は品種(赤ジソ・青ジソなど)・産地・抽出溶媒で変わり、化粧品原料の実際の組成は原料ごとに異なる。規制上は有効成分ではない添加成分で、本成分それ自体に承認効能はない。

1.2 どんな製品に配合されるか

化粧品原料としては、国内の複数の原料メーカーが扱っている。Cosmetic-Info.jpの原料データベースには、表示名称に「シソ葉エキス」を含む原料が12件登録されており、製造元は一丸ファルコス・丸善製薬・香栄興業・ヤマダ薬研・三省製薬・アミノアップ化学・テクノーブルの7社にわたる(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。溶媒はBG・水・エタノールの組み合わせで、たとえば一丸ファルコスは、水とエタノールで抽出した「ファルコレックス シソ」と、BGと水の「ファルコレックス シソ HB」を出している(出典: 一丸ファルコス 原料情報)。

Cosmetic-Info.jpの化粧品表示名称ページには、本成分を含む市販化粧品が736件登録されている(2026年9月閲覧時点)。DappNotesの商品マスター(132製品)で本成分を確認できたのは次の3品で、いずれも化粧品である。

商品区分剤形表示位置/全成分数
SHISEIDO メン ハイドレーティング ローション C化粧品化粧水12/23
チャップアップ フェイスウォッシュ化粧品洗顔料25/59
ファンケル メン オールインワン ウォーター化粧品オールインワン化粧水16/27

(出典: 各社公式サイトの全成分表示)

表示はどれも「シソ葉エキス」。表示位置は12位〜25位だが、この数字から配合量の多い少ないは読めない。その理由と、3品の並びから読めることは§3.5で扱う。

1.3 メンズ視点での見方

配合3品はいずれもメンズ向けブランドの商品で、化粧水・オールインワン・洗顔料と剤形はばらばらである。どの商品でも、シソ葉エキスは保湿の骨格(グリセリン・BGなど)や、洗顔料なら石けん系の洗浄成分の後ろに、植物エキスの1つとして並んでいる。

読み方の要点は2つある。1つは、「シソ=生薬・和漢」の連想があっても、化粧品のシソ葉エキスに登録された配合目的は皮膚コンディショニング剤だけで、生薬ソヨウの漢方での使い方は持ち込めないこと。もう1つは、成分表の名前だけでは、原料の部位や溶媒、医薬部外品での扱いまでは分からないことである。商品を選ぶときに見るのは、保湿の骨格・洗浄成分・アルコールや香料の有無のほうになる。

2. 期待される働き・効果

2.1 原料の機能性として報告されていること

化粧品の配合目的として公式に登録されているのは、皮膚コンディショニング剤(未分類)だけである(出典: Cosmetic-Info.jp)。化粧品の中での役割は、「肌の状態を整える」範囲で読むのが基本になる。

そのうえで、シソの葉の抽出物については次のような研究がある。どれも研究の段階と主語が限られており、配合商品の効果を示すものではない。

  • 細胞での試験(in vitro): Yang ら(2018)は、シソの葉のエタノール抽出物をヒト角化細胞株(HaCaT)に加え、炎症性のサイトカインで刺激したときのケモカインの産生が抑えられたと報告した(出典: J Ethnopharmacol 2018)。培養細胞に抽出物を直接加えた試験である
  • 動物への経口投与: Ueda と Yamazaki(2001)は、シソの葉の抽出物をマウスに飲ませ、耳のむくみを起こすいくつかのモデルで抑制がみられたと報告した(出典: Biosci Biotechnol Biochem 2001)。口から与えた試験で、肌に塗った試験ではない
  • 総説のまとめ: Ahmed(2019)は、シソについて抗酸化・抗菌などの活性が報告されているとしたうえで、前臨床研究(試験管内・動物)の結果は有望だが臨床研究は不十分で、効果と安全性を確かめるにはさらに研究が要ると結論している(出典: Molecules 2019)

これらは「シソの葉の抽出物にこういう性質が報告されている」という情報である。抽出物の濃度・溶媒・投与経路は試験ごとに違い、化粧品に配合された量のエキスを肌に塗って同じことが起きるかは、別に確かめない限り分からない。

2.2 一般的な効能範囲

シソ葉エキスを配合した化粧品で表現できるのは、化粧品の効能範囲のうち「肌を整える」「肌のキメを整える」「皮膚をすこやかに保つ」「皮膚にうるおいを与える」といった範囲である。

逆に、次のような表現を本成分の効能として書くことはできない。

  • 炎症を抑える・肌荒れを治す
  • アレルギーを抑える・かゆみを止める
  • 血行を促進する
  • 美白する・しみを防ぐ

原料データベースには、原料メーカーの紹介文として効能を思わせる言葉が並ぶものもある。たとえばテクノーブルの「ペリーラン・F-QS」は「美白原料」と紹介され、ヤマダ薬研の原料には「消炎、抗アレルギー」などの語が並ぶ(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。これらは原料メーカーが自社原料を説明した文言で、化粧品の効能として認められた内容ではない。本稿で確認した範囲では、医薬部外品の「主剤」や「有効成分」としての記載は見当たらず、どの原料も医薬部外品では添加物としての申請名が示されている。

2.3 限界・誤解されやすい点

誤解されやすい点は3つある。

1. 生薬ソヨウの使い方を化粧品に持ち込む誤解。シソの葉は、日本薬局方に生薬「ソヨウ(蘇葉)」として収載されている(出典: 日本薬局方名称データベース)。日本薬局方は医薬品の規格を定めた公定書で、ソヨウとしての使われ方は医薬品の文脈の話である。原料メーカーの一丸ファルコスも、原料の説明で葉の薬用としての使われ方に触れているが(出典: 一丸ファルコス 原料情報)、化粧品に配合されたシソ葉エキスの効能にはならない。部位の範囲も、ソヨウは「葉及び枝先」で、化粧品名の「葉」とは一致しない(§3.4)。

2. 「シソ」の名前がそろえば同じ原料、という誤解。化粧品では「シソ葉エキス」と「シソエキス」が別の定義で登録され、医薬部外品では同じ化粧品名の原料が3つの名前に分かれる(§3.3)。成分表の名前だけで、原料の部位・溶媒・製造元が同じかは判断できない。

3. 表示位置で量や働きの強さを比べる誤解。配合3品での位置は12位〜25位と幅があるが、この順位を配合量や働きの強さの比較には使えない(§3.5)。植物エキスは原料の固形分濃度や溶媒が違うため、仮に量が分かっても、エキスの中身の量は表示から読めない。

3. 安全性・注意点

3.1 既知の刺激性・アレルギー報告

シソ葉エキスの安全性について、公開されている情報は多くない。化粧品成分オンラインは、30年以上の使用実績があるとしたうえで、次のように整理している(出典: 化粧品成分オンライン・二次)。

  • 皮膚刺激性: ほとんどなし。原料メーカー(一丸ファルコス)の安全性試験データとして、固形分1.0%に調整したシソ葉エキス(40%エタノール抽出・30%BG抽出)の水溶液を、ウサギ3匹の背部に塗布した試験と、モルモット3匹の側腹部に2週間くり返し塗布した試験で、いずれも皮膚刺激がみられなかったことが挙げられている
  • 眼刺激性: 試験データが見当たらず、詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性): 使用実績の中で重大な報告は見当たらず「ほとんどなし」とされるが、詳細な試験データは見当たらないとされている

植物としてのシソについては、Kanzaki と Kimura(1992)による「シソ(Perilla frutescens)による職業性のアレルギー性接触皮膚炎」の症例報告がある(出典: Contact Dermatitis 1992)。これはシソを扱う仕事の中で起きた症例の報告で、化粧品に配合されたエキスについての報告ではない。一方で、シソという植物に触れて皮膚炎が起きうることを示す記録でもあり、「食べ慣れた野菜だから肌に何も起きない」とは言えない。

以上から言えるのは、「原料メーカーの動物試験では刺激がみられなかったが、眼刺激性や感作性は試験データが乏しい」というところまでである。刺激の報告が少ないことと、安全性が十分に検証されていることは同じではない。本稿では米国CIR(Cosmetic Ingredient Review)によるシソ葉エキスの個別の評価を確認できなかったが、評価の枠組みに載っていないことと、個別のデータの量は別の話として扱う。

配合商品には変性アルコール・精油・香料なども入る。肌に合わないと感じたときは本成分だけでなく処方全体を疑うのが現実的で、赤み・かゆみが出たら使用を中止する。敏感肌の人は腕の内側などで試してから使うと安心できる。

3.2 配合量の目安と表示から読めないこと

Cosmetic-Info.jpの化粧品表示名称ページでは、本成分の規制分類欄に記載はない(出典: Cosmetic-Info.jp)。配合量は各メーカーが処方ごとに決める。原料メーカー一丸ファルコスの現行の原料頁も、推奨配合濃度の欄は空欄になっている(出典: 一丸ファルコス 原料情報)。

成分表示から読めないことを整理すると、次の3つになる。

  • 配合量: 表示位置から量の多い少ないは読めない(§3.5)
  • エキスの中身: 抽出溶媒・固形分濃度・品種が原料ごとに違い、ロスマリン酸やペリルアルデヒドがどれだけ含まれるかは表示されない
  • 原料の銘柄と部位の範囲: 同じ「シソ葉エキス」でも、どのメーカーのどの原料か、葉だけか枝先まで含む原料かは表示から分からない(§3.3・§3.4)

3.3 化粧品名と部外品名がそろうか、割れるか

化粧品と医薬部外品では、成分表示に使う名前の体系が異なる。化粧品は化粧品表示名称、医薬部外品は医薬部外品の表示名称で書く。植物エキスでは、この2つがそろう成分と割れる成分がある。

シソ葉エキスは、割れる側に入る。しかも「化粧品名1つ=部外品名1つ」の対応にならない。まず、部外品の添加物として登録されている名前を並べる。

部外品の名前規格コード本質(部位・抽出)
シソエキス(1)(別名 ソヨウエキス(1))51シソ Perilla frutescens var. crispa 又はその他近縁植物の葉及び枝先から、1,3-ブチレングリコール・エタノール溶液又は1,3-ブチレングリコール溶液で抽出
シソエキス(2)(別名 ソヨウエキス(2))51同じ植物の葉から水で抽出(通常エタノールを含む)
シソ葉エキス99本質欄は空欄

(出典: Cosmetic-Info.jp 部外品添加物)

次に、化粧品表示名称に「シソ葉エキス」を含む原料12件が、医薬部外品ではどの名前で申請されるかを数えると、次のように分かれる。

部外品申請名原料数原料の例(製造元)
シソエキス(1)9ファルコレックス シソ(一丸ファルコス)、シソ抽出液BG(丸善製薬)、シソ抽出液(香栄興業) など
シソエキス(2)2シソエキス W(香栄興業)、Shiso Extract BG(アミノアップ化学)
シソ葉エキス(規格99)1ペリーラン・F-QS(テクノーブル)

(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB。製造元の現行頁で化粧品名と部外品名の並記を確認できたのは一丸ファルコスの2原料で、どちらも「シソエキス(1)」)

つまり、成分表で同じ「シソ葉エキス」と書かれた化粧品でも、原料が医薬部外品に使われるときの名前は、原料によって3通りある。部外品の「シソ葉エキス」(規格99)は本質欄が空欄で、化粧品のシソ葉エキスと定義を突き合わせることができない。Cosmetic-Info.jpには、部外品の成分表示に「シソ葉エキス」と書かれた市販の医薬部外品が17件登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp 部外品添加物・2026年9月閲覧時点)。

部位の書き方にもずれがある。一丸ファルコスの「ファルコレックス シソ」は、化粧品表示名称が「水、エタノール、シソ葉エキス」、部外品表示名称が「精製水、無水エタノール、シソエキス(1)」と並記されている(出典: 一丸ファルコス 原料情報)。同じ原料が、化粧品名では「葉」のエキス、部外品名では「葉及び枝先」を本質とするシソエキス(1)として表示される。原料データベースの香栄興業や丸善製薬の原料も、紹介文で「葉及び枝先から抽出」としたうえで化粧品表示名称をシソ葉エキスにしている(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。化粧品名の「葉」は、枝先を含む原料を排除する線引きとしては働いていない。

同じクラスタの成分と並べると、名前の出方は次のように分かれる。

成分化粧品名と部外品名割れ方
シソ葉エキス(本成分)化粧品名1つ/部外品名は原料ごとに3通り番号付き2名称(部位と溶媒が違う)と、同じ文字列の規格99登録。学名の書き方も違う
ムクロジ果皮エキス部外品名「ムクロジエキス」そろう。部位は果皮で一致し、化粧品側の同じ文字列は同定義の旧名
シャクヤク根エキス部外品名「シャクヤクエキス」部位(根)はそろうが、同じ文字列の化粧品名が2件ある
ツバキ種子エキス部外品名「ツバキエキス」割れる。同じ文字列の化粧品名は全草
ハトムギ種子エキス部外品名「ヨクイニンエキス」ほか割れる。部外品名と同じ文字列の化粧品名が別の定義で存在する
マグワ根皮エキス(対照)部外品名「クワエキス」割れる。部外品名は「その他同属植物の根皮」で基原が広い

(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称・部外品添加物)

シソ葉エキスの割れ方は、同じ文字列の別成分と衝突する型(シャクヤク根・ツバキ種子・ハトムギ種子)とも、植物名だけの部外品名に置き換わる型(ムクロジ果皮・マグワ根皮)とも違う。部外品側が原料の抽出方法と部位で名前を分けているため、化粧品名から部外品名を1つに決められない。DappNotesが基本情報表に部外品表示名称を載せていないのはこのためで、「シソエキス」を別名として扱うこともしていない。化粧品側の「シソエキス」(551383)が、近縁植物を含む別の定義の名前として存在するからである(§1.1)。

3.4 学名と部位のずれ(生薬ソヨウとの関係)

名前の割れ方は、学名の書き方にも出ている。

資料学名の書き方部位
化粧品表示名称「シソ葉エキス」Perilla ocymoides(定義の後に[Perilla frutenscens acuta]と併記)葉
部外品「シソエキス(1)」Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Benth.) W.Deane 又はその他近縁植物葉及び枝先
部外品「シソエキス(2)」同上葉
日本薬局方 生薬「ソヨウ」Perilla frutescens Britton var. crispa W.Deane葉及び枝先
化粧品表示名称「エゴマ葉エキス」Perilla frutescens葉

(出典: Cosmetic-Info.jp 化粧品表示名称・部外品添加物 / 日本薬局方名称データベース。併記の綴りは原文どおり)

化粧品表示名称ではシソをPerilla ocymoides、エゴマをPerilla frutescensと別の学名で書き分けているのに対し、部外品と日本薬局方はシソをPerilla frutescensの変種(var. crispa)として書いている。Ahmed(2019)の総説も、シソ属の分類は混乱しており種の数もはっきりしないと述べている(出典: Molecules 2019)。本稿では、どの学名が正しいかは扱わない。読者にとっての実用は、「学名の書き方が資料ごとに違うので、学名の文字列だけで同じ植物・同じ原料かを突き合わせることはできない」という点にある。

部位の範囲は、生薬として知られるものと化粧品名とでそろわない。日本薬局方のソヨウは「葉及び枝先」で、ペリルアルデヒドの含量(乾燥物換算で0.07%以上)で規格が定められている(出典: 日本薬局方名称データベース)。部外品のシソエキス(1)は、このソヨウと同じ「葉及び枝先」を本質とし、別名もソヨウエキスである。これに対し化粧品表示名称のシソ葉エキスは「葉」で、生薬の部位より狭く書かれている。

ただし、部位の範囲がそろっていることも、別名が生薬名であることも、効能の根拠にはならない。日本薬局方のソヨウは医薬品の規格で、部外品のシソエキス(1)はその他の成分(添加物)としての規格である。化粧品のシソ葉エキスは皮膚コンディショニング剤として登録されている。同じ植物の別の登録があっても、それぞれの制度の中での扱いは別で、生薬としての使われ方を化粧品の効能として借りることはできない。

3.5 配合商品の並び

商品マスター(132製品)の公式全成分表示で、シソ葉エキスと、同じ商品に現れる本クラスタの兄弟成分を並べる。

商品区分シソ葉エキスの位置同じ商品に現れる兄弟成分(位置)
SHISEIDO メン ハイドレーティング ローション C化粧品12/23ツバキ種子エキス(11)
チャップアップ フェイスウォッシュ化粧品25/59シャクヤク根エキス(22)
ファンケル メン オールインワン ウォーター化粧品16/27ムクロジ果皮エキス(11)

(出典: 各社公式サイトの全成分表示)

表示位置から量は読まない。化粧品の全成分表示は、配合量1%を超える成分を多い順に書き、1%以下は順不同で書ける。どこからが1%以下かは表示されないため、12位・16位・25位という数字から、配合量の多い少ないは判断できない。3品とも化粧品で、医薬部外品の配合例は商品マスターにない。

読めるのは「出現の一致」まで。3品すべてに、本クラスタの兄弟成分が1つずつ現れる。ただし組み合わせは商品ごとに違い、化粧水ではツバキ種子エキス、洗顔料ではシャクヤク根エキス、オールインワンではムクロジ果皮エキスである。表示位置が近いことも、同じ原料にまとめて入っている根拠にはならない。

チャップアップ フェイスウォッシュには、シャクヤク根エキス(22位)・シソ葉エキス(25位)に加えてモモ種子エキス(27位)も入っている。原料データベースには、この3つのエキスを水・BGと組み合わせた混合原料「芍桃蘇-CX」(テクノーブル)が登録されている(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。商品マスターで3つがそろうのはこの洗顔料だけだが、商品がこの混合原料を使っているかは、成分表からは判断できない。書けるのは「同じ3成分を組み合わせた原料が存在し、この商品には3つとも現れる」という出現の一致までである。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用される成分

シソ葉エキスは単独で主役になる成分ではなく、配合例ではほかの植物エキスや保湿成分と一緒に入っている。

保湿の骨格: 化粧水とオールインワンでは、グリセリンやBGが上位に置かれ、オールインワンではさらにペンチレングリコールも並ぶ。植物エキスは、この骨格の上に重ねられる形になっている。

肌あれ防止目的で知られる成分: 配合3品すべてに、グリチルリチン酸2Kも入っている。3品とも化粧品で、グリチルリチン酸2Kは有効成分としてではなく全成分の1つとして記載されている。オールインワンにはツボクサ葉/茎エキス(表示はツボクサエキス)も並ぶ。

ほかの植物エキス: 化粧水ではゴレンシ葉エキス・ツバキ種子エキス・カシア樹皮エキス、オールインワンではムクロジ果皮エキス・ユズ果実エキス・スイートピー花エキス、洗顔料ではシャクヤク根エキス・モモ種子エキス・ツボクサエキスなどと同じ処方に並ぶ。

ビタミンC誘導体など: 洗顔料とオールインワンにはアスコルビルグルコシドが、洗顔料にはヒアルロン酸Naも入っている。

これらは「同じ商品に一緒に入っている」という事実で、シソ葉エキスと組み合わせると働きが高まるという根拠ではない。

4.2 注意したい組合せ

シソ葉エキスについて、化粧品処方で避けるべき組み合わせは、本稿で確認した資料では報告されていない。

実用上の注意は、成分どうしの相性よりも処方全体と期待の置き方にある。

  • アルコールや精油・香料を含む処方: 配合例の化粧水は変性アルコールを4位に含み、香料も入っている。洗顔料にはローズマリー葉油・ベルガモット果実油などの精油が並ぶ。ひげ剃り直後など肌が敏感な状態でしみる場合、原因はシソ葉エキス以外の成分であることも多い
  • シソ系の原料が重なる商品: 本稿で扱った配合例にはないが、「シソ葉エキス」と「シソ種子油」や「シソ葉/茎油」(香料)が同じ商品に入ることはありうる。部位や形態が違えば別の成分で、シソの植物に反応した経験がある人は、表示のシソ系の名前をまとめて確認しておくとよい
  • 植物エキスの数で選ぶこと: 植物エキスが何種類も並んでいても、それぞれの量や中身は表示から読めない。種類の多さは、働きの大きさの目安にならない

5. 使い方

5.1 推奨される使用シーン

シソ葉エキスの有無で商品を選ぶ場面は、実際にはあまりない。配合例は化粧水・オールインワン・洗顔料と剤形が違い、本成分はそのどれでも処方の一部として入っている。

化粧水・オールインワン: 選ぶときに見るのは、保湿の骨格(グリセリン・BG・ペンチレングリコールなど)、アルコールの有無、テクスチャーである。シソ葉エキスは、その上に重ねられた植物エキスの1つとして見ればよい。美顔器を使う人が化粧水やジェルを選ぶときも、見るべき点は同じである。

洗顔料: 配合例の洗顔料は、ミリスチン酸などの脂肪酸と水酸化Kによる石けん系の処方で、シソ葉エキスは洗い流す処方の中の1成分として入っている。肌に残る量は限られ、洗顔料の使用感を決めるのは洗浄成分の組み方のほうである。

使い方は、それぞれの商品の標準的な使い方に従えばよい。本成分のために特別な使い方をする必要はない。

5.2 期待できないこと・避けるべき使い方

シソ葉エキスに期待できないことは、次のとおり。

  • 生薬ソヨウや食品としてのシソのイメージによる効果: 漢方の生薬としての使われ方や、食べる野菜としての話は、化粧品に配合された葉のエキスには当てはまらない
  • 炎症やかゆみを抑える効果: 細胞試験や動物への経口投与の報告はあるが、化粧品に配合された本成分の効能として期待することはできない
  • 原料メーカーの紹介文にある効果: 「美白原料」などの紹介は原料メーカーの説明で、化粧品の効能ではない

避けたいのは、「和漢の生薬由来だから肌にやさしい」「シソが入っているから荒れた肌が落ち着く」というイメージだけで商品を選ぶことである。肌に合うかどうかは処方全体で決まるため、合わないと感じたら使用を中止する。

6. メンズ実用視点まとめ

メンズの成分表示でシソ葉エキスを見かけたら、次の3点で読むと整理しやすい。

  1. 植物エキス層の1つ: 化粧水・オールインワン・洗顔料に、保湿の骨格や洗浄成分の後ろの植物エキスとして入る。登録された配合目的は皮膚コンディショニング剤だけで、生薬ソヨウのイメージは持ち込まない
  2. 名前から原料は特定できない: 化粧品の「シソ葉エキス」は1つの名前だが、医薬部外品では原料ごとにシソエキス(1)・シソエキス(2)・シソ葉エキスの3通りに分かれる。部位も「葉」と「葉及び枝先」でそろわない
  3. 表示位置は量の目安にならない: 12位でも25位でも、配合量や働きの強さは読めない

商品を選ぶときに効いてくるのは、保湿の骨格、洗浄成分の組み方、アルコールや香料の有無と使い心地のほうである。皮脂が多くさっぱりした化粧水を好む人も、乾燥しやすくしっとり感を求める人も、シソ葉エキスの有無より処方全体で選ぶのが現実的になる。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. シソ葉エキスはどんな成分ですか?

シソ科のシソの葉から得られる植物エキスで、化粧品表示名称の定義は「シソPerilla ocymoidesの葉のエキス」です(出典: Cosmetic-Info.jp)。化粧品の配合目的には、皮膚コンディショニング剤が登録されています。シソにはロスマリン酸などのフェノール酸や、ペリルアルデヒドなどの精油成分が含まれると報告されています(出典: Molecules 2019)。有効成分ではありません。

Q2. 生薬の「ソヨウ(蘇葉)」と同じものですか?

同じシソの葉に由来しますが、別の制度の中の別の登録です。日本薬局方のソヨウは「シソの葉及び枝先」で、医薬品の規格として定められています(出典: 日本薬局方名称データベース)。化粧品のシソ葉エキスは「葉のエキス」として登録され、配合目的は皮膚コンディショニング剤です。生薬としての使われ方を、化粧品に配合された本成分の効能として期待することはできません。

Q3. 医薬部外品の成分表では、何と書かれますか?

原料によって違います。化粧品表示名称に「シソ葉エキス」を含む原料12件を見ると、医薬部外品での申請名は「シソエキス(1)」が9件、「シソエキス(2)」が2件、「シソ葉エキス」が1件でした(出典: Cosmetic-Info.jp 原料DB)。シソエキス(1)は葉及び枝先をBGやエタノール溶液で、シソエキス(2)は葉を水で抽出したエキスと定義されています(出典: Cosmetic-Info.jp 部外品添加物)。成分表の名前だけで、化粧品と医薬部外品で同じ原料かどうかは判断できません。

Q4. シソ葉エキスは肌に安全ですか?

原料メーカーの動物試験では皮膚刺激はみられなかったと整理されていますが、眼刺激性や感作性は試験データが乏しいとされています(出典: 化粧品成分オンライン・二次)。植物のシソについては職業性の接触皮膚炎の症例報告もあります(出典: Contact Dermatitis 1992)。刺激の報告が少ないことと、安全性が十分に検証されていることは同じではありません。商品にはほかの成分も入るため、合わないと感じたら使用を中止してください。

8. まとめ

シソ葉エキスは、シソ科シソの葉から得られる植物エキスで、化粧品では皮膚コンディショニング剤として配合される。シソにはロスマリン酸などのフェノール酸やペリルアルデヒドなどの精油成分が報告されているが、細胞試験や動物への経口投与の研究は、化粧品に配合された本成分の効能を示すものではない(出典: Molecules 2019)。

名前の出方では、化粧品の「シソ葉エキス」1つに対し、医薬部外品では原料ごとにシソエキス(1)・シソエキス(2)・シソ葉エキス(規格99)の3通りに分かれる。部位も化粧品名は「葉」、シソエキス(1)と生薬ソヨウは「葉及び枝先」で、学名の書き方も資料ごとに違う。成分表の名前や学名の文字列だけで、原料が同じかは判断できない。

配合3品はいずれもメンズ向けの化粧品で、兄弟成分が1つずつ同じ商品に現れるが、表示位置から量は読めず、原料の共通性も言えない。生薬のイメージや原料メーカーの紹介文から効果を期待するより、保湿の骨格や洗浄成分など処方全体で商品を選び、その中の植物エキスの1つとして読むのが実用的な理解になる。

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