シルク末は、カイコ(カイコガ科カイコガ Bombyx mori)の繭(絹)を構成するタンパク質フィブロインを、精製・粉砕して得る不溶性の微粉末。化粧品の表示名称では「シルク」、医薬部外品では「シルク末」と表示され、INCI名はSilk(Silk Powder)にあたる(出典:化粧品成分オンライン)。皮膚や毛髪と同じ動物性タンパクで組成・構造が似ているため肌当たりがなめらかで、分散性・展延性に優れた感触改良の粉体として、おしろい・ファンデーション等のメイクアップやスキンケアに広く使われる。メンズ向けではスカルプD(アンファー)のスカルプシャンプーに皮脂吸着成分(その他の成分)として配合されるなど、頭皮ケア処方にも登場する。

ただし、この成分には最初に解いておきたい混同が二つある。一つは、同じ絹フィブロイン由来でも水溶性に加水分解した加水分解シルク(Hydrolyzed Silk)との違い。シルク末は不溶性の粉末で感触改良・つや・皮脂吸着が役割なのに対し、加水分解シルクは水溶性ペプチドでコンディショニング・保湿が主用途と、形状も働きも別物だ。もう一つは、「絹=高機能」というイメージから生まれる「シルクで髪が補修される・育毛に良い」という期待。シルク末は化粧品成分(cosmetic-only)であり、補修・育毛の薬理的効能を化粧品として訴求できるものではない。本記事では、シルク末の正体・働き・加水分解シルクとの違い・タンパク質由来ゆえの注意・メンズ頭皮ケアでの位置づけを中立に整理する。

1. シルク末の基本

1.1 何の成分か

シルク末は、カイコ(学名:Bombyx mori、カイコガ科カイコガ)が繭をつくるときに吐き出す絹繊維を出発原料に、その主成分であるタンパク質フィブロインを精製・粉砕して得る不溶性の白色微粉末。化粧品の成分表示では「シルク」、医薬部外品の成分表示では「シルク末」が使われ、INCI名はSilk(Silk Powder)にあたる(出典:化粧品成分オンライン)。本記事の表題・表示名は、製品やメディアで粉体形態として広く使われる「シルク末」を採用している。

理解の出発点として、原料である絹がどんな構造かを押さえておきたい。絹繊維は、中心部のフィブロイン(繊維の約7割)と、その周囲を取り囲むセリシン(約3割)という二種類のタンパク質で構成される。このうちセリシンを溶解・除去して残ったフィブロイン繊維を、裁断・粉砕して微粉末にしたものがシルク末にあたる。フィブロインはグリシン・アラニン・セリンを主体とするアミノ酸からなり、ヒトの皮膚・毛髪と同じ動物性タンパクで組成・構造が似ているため、肌当たりがなめらかで皮膚親和性が高いのが特徴になる(出典:化粧品成分オンライン / Cosmetic-Info.jp・堀留化学 原料情報)。

ここで重要なのが、シルク末が「不溶性の粉末」である点だ。フィブロインそのものは水に溶けないため、シルク末は水に溶けずに粉体として基剤に分散して使われる。分散性・展延性に優れ、基剤の潤滑性を上げてなめらかさ・滑りを与える感触改良剤として働くのが、粉体形態であるシルク末の役割になる。後述する加水分解シルク(水溶性のシルクペプチド)とは、この「溶けるか・溶けないか」「働きが感触改良か・コンディショニングか」で明確に区別される(詳細は §3.3)。

成分としての規制上の位置づけは、化粧品成分(cosmetic-only)にあたる。医薬部外品では「シルク末」が表示名称として用いられるが、それは原料として規格・収載されているという意味であり、シルク末自体が補修や育毛の効能を承認された有効成分であることとは別だ。化粧品・薬用化粧品の処方の中では、感触改良剤・つや付与・皮膚/毛髪コンディショニング剤として配合される一般成分で、「毛髪を補修する」「育毛・発毛する」といった効能を化粧品として訴求できる成分ではない(出典:化粧品成分オンライン / 厚労省『化粧品の効能の範囲』告示)。

1.2 どんな製品に配合されるか

シルク末の配合製品の中心は、おしろい・フェイスパウダー・ファンデーション等のメイクアップにある。なめらかな肌当たりと優れた展延性、つや(光沢)を付与する粉体として、肌の上を均一に伸び広がり、サラッとした使用感とつやを与える目的で配合される。スキンケア・ボディケア製品にも、感触改良・つや付与の粉体として広く使われる(出典:化粧品成分オンライン / 堀留化学 原料情報)。

メンズ向けでは、ヘアケア・スカルプケアにも配合される。具体例として、メンズスカルプケアで広く流通するアンファー「スカルプD」のスカルプシャンプーでは、リニューアル後にシルク末が皮脂吸着成分として配合されている。ここでのシルク末は、毛穴詰まりの原因となる頭皮の余分な皮脂(悪性油分)を吸着して頭皮環境を整える「その他の成分」として働き、フケ・かゆみ等への効能を担う有効成分ではない点が、成分構成を読むうえで重要になる(出典:アンファー スカルプD 製品情報・全成分)。

なお、同じ絹フィブロイン由来でも、製品の成分表示で「シルク」「シルク末」(粉体)と書かれているものと、「加水分解シルク」(水溶性ペプチド)と書かれているものは別の成分にあたる。「シルク配合」「絹配合」という表示だけで形状や働きを判断はできず、粉体(感触改良)なのか加水分解物(コンディショニング)なのかを区別する視点が役立つ。この点は §3.3 で整理する。

1.3 メンズ視点での見方

メンズの頭皮ケアにおいてシルク末は、皮脂吸着・感触改良を補う絹タンパク粉体として位置づけられる。皮脂分泌量が女性の約2倍とされるメンズ頭皮は、毛穴の皮脂詰まり・テカリ・べたつきが課題になりやすい。スカルプDのようなスカルプシャンプーにシルク末が皮脂吸着成分として配合されるのは、こうした余分な皮脂を吸着して頭皮環境を整えるねらいだ(出典:アンファー スカルプD 製品情報)。

ここで押さえたいのは、化粧品のシルク末で期待できる働きは「肌・毛髪をなめらかにする・整える」「つやを与える」「皮脂を吸着する」という感触・整肌の範囲であって、「毛髪を補修する」「育毛・発毛する」とは区別されるという点だ。「絹=高級・高機能」というイメージから、シルク末配合製品に補修や育毛の効果を期待されやすいが、化粧品成分のシルク末にその薬理的効能はなく、化粧品として訴求もできない(出典:化粧品成分オンライン / 厚労省『化粧品の効能の範囲』告示)。

さらにメンズ特有の連想として、「シルクは髪と同じタンパク質だから、傷んだ髪がシルクのようになめらかに補修される・髪が育つ」という期待が起きやすい。しかし、加水分解ケラチンや加水分解コラーゲンのようなタンパク(PPT)系の毛髪補修成分とも、不溶性粉末であるシルク末は役割が異なる。シルク末は「皮脂吸着・感触改良・つやを補う絹タンパク粉体」として捉えるのが正確な位置づけになる。育毛・発毛は医薬部外品の育毛剤や医薬品(ミノキシジル等)、本格的な毛髪補修は加水分解シルク等の水溶性ペプチドが担う、別軸の領域だ(詳細は §2.3・§3.3)。

2. 期待される働き・効能

2.1 主要成分と機序

シルク末の化粧品としての働きは、「不溶性の絹タンパク粉体」という形状から整理すると理解しやすい。

感触改良(なめらかさ・滑り)が、シルク末の中心的な役割。フィブロインの微粉末は分散性・展延性に優れ、基剤の中で均一に広がって潤滑性を高める。これにより、肌や粉体製品の上での伸びがよくなり、サラッとなめらかな肌当たりを与える。皮膚と同じ動物性タンパクで親和性が高いことも、肌なじみのよさにつながるとされる(出典:化粧品成分オンライン / 堀留化学 原料情報)。

つや(光沢)の付与も、シルク末の特徴。絹由来の粉体は微細な構造を持ち、光を柔らかく反射してつやを与えるとされる。メイクアップ製品でシルク末が好まれるのは、なめらかな感触とこのつや感の両立による(出典:化粧品成分オンライン)。

皮脂吸着は、スカルプ製品でのシルク末の役割として位置づけられる。微粉末である粉体は表面積が大きく、頭皮や肌の余分な皮脂(油分)を吸着する働きを持つ。スカルプDのスカルプシャンプーでシルク末が皮脂吸着成分として配合されるのは、この粉体としての吸着特性に対応している(出典:アンファー スカルプD 製品情報)。

保湿は、フィブロインがアミノ酸由来のタンパクであることから補助的に語られるが、シルク末(不溶性粉末)の主役はあくまで感触改良・つや・皮脂吸着であり、水溶性で保湿・コンディショニングを担うのは加水分解シルクの側だという点を区別しておきたい(出典:化粧品成分オンライン)。

2.2 化粧品としての効能範囲

シルク末がcosmetic-only(化粧品成分のみ)である以上、化粧品として標榜できる効能効果は厚生労働省告示の56効能の範囲内に限定される。言えると言えないを対比すると以下になる。

化粧品として訴求できる範囲(56効能内)

  • 肌・毛髪をなめらかにする・整える(感触改良・コンディショニング)
  • 肌・毛髪につやを与える(光沢付与)
  • (シャンプー基剤・粉体として)皮脂・汚れを吸着して頭皮や肌を清潔にする
  • うるおいを与える(補助的な保湿)

化粧品として訴求できない範囲

  • 毛髪を補修する・修復する(医薬部外品・原料訴求の領域)
  • 育毛する・発毛する・髪を太くする(医薬部外品・医薬品の領域)
  • 皮脂分泌そのものを抑制する・薄毛を防ぐ(医薬部外品有効成分・医薬品の領域)

(出典:厚労省『化粧品の効能の範囲』告示)

この区別が実務上重要なのは、シルク末(絹)が「高級・高機能」のイメージで語られやすく、訴求が薬機法の規制対象に踏み込みやすいためだ。「シルク配合で髪が補修される」「絹タンパクで育毛」といった表現は、cosmetic-only成分の配合を根拠にすると薬機法上の問題のある表現になる。読者としては、製品が補修や育毛を強く謳う場合、その根拠が医薬部外品の有効成分なのか、それとも絹のイメージ訴求なのかを確認する視点が役立つ(出典:厚労省『化粧品の効能の範囲』告示 / 化粧品成分オンライン)。

2.3 誤解されやすい点・限界

「絹=高機能」の引き算。「シルク(絹)」という言葉は上質さ・機能性のイメージを強く帯びるため、シルク末配合製品は「絹だから髪・肌に効く」と受け取られやすい。しかしシルク末の化粧品としての働きは、感触改良・つや・皮脂吸着という使用感・整肌の価値であって、薬理的な補修・育毛効果を保証するものではない。「絹のような」という形容は感触の比喩であり、効能の根拠ではない点を区別したい(出典:化粧品成分オンライン)。

「髪と同じタンパク質だから補修される」という飛躍。シルク末はフィブロインという動物性タンパクで、毛髪のケラチンと同じくタンパク質である。ここから「同じタンパク質だからダメージを補修する」と期待されやすい。しかし不溶性の粉末であるシルク末は、毛髪内部に浸透して補修する加水分解ペプチド(加水分解シルク・加水分解ケラチン等)とは役割が異なり、感触改良・つや付与が主な働きにあたる。タンパク質であることと、毛髪補修の効能を訴求できることは別問題だ(出典:化粧品成分オンライン)。

「シルク=薄毛・育毛に効く」という飛躍。スカルプシャンプーに皮脂吸着成分として配合されることから、「シルク末が薄毛・育毛に効く」と連想されやすい。しかし化粧品成分のシルク末に育毛・発毛の効能はなく、皮脂吸着も「頭皮を清潔にする・整える」という化粧品の範囲にとどまる。皮脂対策と育毛・発毛は別の話で、育毛・発毛は医薬部外品の育毛剤や医薬品(ミノキシジル等)が対応する領域になる(出典:厚労省『化粧品の効能の範囲』告示)。

3. 安全性・注意点

3.1 既知の刺激性と絹タンパクアレルギー

化粧品に配合されるシルク末は、化粧品成分オンラインの整理で、皮膚刺激性はほとんどなく、眼刺激性も非刺激〜わずか、皮膚感作反応もみられなかったとされる、低刺激の成分にあたる。20年以上の使用実績があり、通常使用下において一般に安全性に問題のない成分として整理されている(出典:化粧品成分オンライン)。

ただし、シルク末は動物性タンパク(絹タンパク)由来であるため、ごくまれに絹タンパクへのアレルギー反応の可能性は完全には否定できない。一般にシルクアレルギーは比較的まれとされるが、製糸(絹を扱う)従事者などで、吸入したセリシンによるI型アレルギーや、絹製品の着用時の蕁麻疹等の報告がある(出典:絹アレルギー関連解説)。シルク末はフィブロインが主体でセリシンを除いた粉体ではあるが、タンパク質由来である以上、敏感肌の人・絹アレルギーが疑われる人・初めて使用する人は、目立たない部位でパッチテストを行うか、医師に相談することが安全側の判断になる。

「天然・絹だから刺激ゼロで安心」という短絡は正確ではなく、合う・合わないには個人差がある点を前提に評価したい。使用後に赤み・かゆみ等が出た場合は使用を中止すること(出典:化粧品成分オンライン)。

3.2 配合・品質の注意

表示名称と形状の違いに注意したい。同じ絹フィブロイン由来でも、成分表示に使われる名称は粉体形態が「シルク」(化粧品表示名称)・「シルク末」(医薬部外品表示名称)、水溶性ペプチドが「加水分解シルク」と分かれる。INCIでは粉体がSilk(Silk Powder)、加水分解物がHydrolyzed Silkで対応する(出典:化粧品成分オンライン)。成分表示でどちらの形状かを見分けることが、製品の働きを読むうえで役立つ。

配合濃度・粒子径についても、シルク末は不溶性の粉体であり、粒子径・精製度・配合量によって肌当たりや展延性・つや感が変わるため、「シルク(末)配合」という表示だけで使用感や品質を一律に比較することはできない。同じ表示でも原料グレードが異なれば実際の感触は変わりうる(出典:化粧品成分オンライン / Cosmetic-Info.jp)。

加えて、スカルプシャンプー等ではシルク末は「その他の成分」の一つとして配合されることが多く、製品の皮脂吸着・洗浄・コンディショニングは他の成分との合わせ技で成り立っている。「シルク末配合だから皮脂対策に優れる」とは限らず、処方全体で評価する視点が役立つ。

3.3 シルク末と加水分解シルクの違い

シルク末を正しく評価するうえで最も重要なのが、同じ絹フィブロイン由来の「加水分解シルク」との違いを分けて見ることだ。両者は出発原料こそ同じフィブロインだが、形状も働きも別の成分にあたる。

シルク末 と 加水分解シルクの違い

観点シルク末(シルク)加水分解シルク
INCI名Silk(Silk Powder)Hydrolyzed Silk
形状不溶性の微粉末水溶性のシルクペプチド(液・末)
主な働き感触改良(なめらかさ・滑り)・つや・皮脂吸着コンディショニング(うるおい・なめらかさ・ツヤ)・保湿
主な配合先おしろい・ファンデーション等のメイクアップ、スカルプ製品シャンプー・トリートメント等のヘアケア、スキンケア
毛髪・肌への作用表面で感触を整える・皮脂を吸着する浸透・吸着してコンディショニングする

(出典:化粧品成分オンライン)

ここで重要なのは、成分表示で「シルク」「シルク末」とあれば不溶性粉体(感触改良・皮脂吸着)、「加水分解シルク」とあれば水溶性ペプチド(コンディショニング・保湿)と読み分けられる点だ。どちらも化粧品成分(cosmetic-only)で、補修・育毛の薬理的効能を化粧品として訴求できないのは共通する。「絹(シルク)配合」とだけ謳う製品では、どちらの形状なのか、どんな役割で入っているのかを成分表示で確認するのが、過度な期待を避ける視点になる。

なお、毛髪補修の文脈では、加水分解ケラチン・加水分解コラーゲン等のタンパク(PPT)系成分が、ダメージ部分への吸着・コンディショニングを担う。これらも化粧品としては「毛髪を整える・なめらかにする」止まりで、毛髪補修・育毛を化粧品の効能として訴求できない点はシルク末と共通する(出典:厚労省『化粧品の効能の範囲』告示 / 化粧品成分オンライン)。

3.4 メンズ実用判断

メンズの頭皮ケアでのシルク末の実用的な判断軸は、以下が中心になる。

皮脂吸着・感触改良目的での位置づけ。皮脂分泌量が女性の約2倍とされ、毛穴の皮脂詰まり・テカリが気になるメンズ頭皮には、余分な皮脂を吸着して頭皮環境を整える「その他の成分」として、シルク末配合のスカルプ製品が選択肢になる。「皮脂・べたつき対策と使用感を補う」価値として評価するのが正確な位置づけだ(出典:アンファー スカルプD 製品情報 / 化粧品成分オンライン)。

補修・育毛には成分の棲み分けが必要。毛髪のダメージ補修や薄毛・育毛を本気で対策したい場合は、cosmetic-only成分のシルク末に過度な期待をするより、目的に応じたカテゴリを選ぶことが優先される。毛髪補修なら加水分解シルク・加水分解ケラチン等のコンディショニング成分、育毛・発毛なら医薬部外品の育毛剤(有効成分配合)や医薬品(ミノキシジル等)が、目的を担う正確な選択肢になる(出典:厚労省『化粧品の効能の範囲』告示)。

絹アレルギーがある場合は慎重に。絹アレルギーがある・疑われる場合は、シルク末は低刺激の評価とはいえタンパク質由来である以上、使用前にパッチテストを行うか医師に相談するのが安全側の判断になる。頭皮や肌に異常が出た場合は使用を中止し、症状が続く場合は皮膚科受診が優先される(出典:化粧品成分オンライン / 絹アレルギー関連解説)。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 組み合わせられる成分

シルク末は単独で使われることは少なく、メイクアップ・スキンケアやスカルプ製品の中で他の成分と組み合わせて配合されるのが一般的。

  • グリセリン: 保湿の定番成分。皮脂吸着・感触改良が役割のシルク末に、ベースとなる吸湿保湿を重ねる組み合わせ。皮脂対策で乾きやすい頭皮の保湿を補う(関連:グリセリン
  • パンテノール(プロビタミンB5): 保湿・頭皮コンディショニングで頭皮ケア処方の定番。皮脂吸着のシルク末と組み合わせ、洗浄・吸着で乾きやすい頭皮のうるおいを補う(関連:パンテノール
  • 加水分解シルク(Hydrolyzed Silk): 同じ絹フィブロイン由来の水溶性ペプチド。不溶性のシルク末(感触改良・皮脂吸着)と、水溶性の加水分解シルク(コンディショニング・保湿)は役割が補完的で、シルク訴求の処方で併用されることもある(関連:加水分解シルク
  • 医薬部外品有効成分(グリチルリチン酸2K・ピロクトンオラミン等): フケ・かゆみ・頭皮の肌あれを防ぐ効能を担う有効成分。シルク末は規制区分が異なり、これら有効成分が効能の根拠になる。スカルプDの薬用シャンプーがこのパターン

4.2 注意が必要な点

特定成分との配合禁忌というより、原料属性と期待値の誤認が実用上の注意点になる。

  • 絹アレルギーがある場合: 絹アレルギーがある・疑われる人は、シルク末をはじめ絹由来成分の配合品を使う前にパッチテストや医師相談を。低刺激の評価でもタンパク質由来である以上、感作の可能性を完全には否定できない
  • 「絹・シルク」への過剰期待: シルク末配合品で髪が補修される、絹タンパクで育毛・薄毛対策に効く、という期待での使用は、化粧品の働きの範囲を超えた期待になる。補修は加水分解シルク等のコンディショニング成分、育毛・発毛は医薬部外品・医薬品のカテゴリで対応するのが正確
  • 皮脂吸着の出所の取り違え: スカルプ製品ではシルク末は「その他の成分」であることが多く、製品の皮脂対策・洗浄は他の成分との合わせ技で成り立つ。「シルク末配合だから皮脂対策に優れる」とは限らず、処方全体で見る視点が必要
  • 頭皮トラブルが続く場合: フケ・かゆみ・頭皮の炎症が続く・悪化する場合は、化粧品成分での対応に固執せず、医薬部外品有効成分配合品の使用や皮膚科受診が優先される

4.3 類似成分・代替候補

シルク末と同じ「タンパク由来の感触改良/コンディショニング成分」の文脈で比較・代替になりうる成分を整理する。

  • 加水分解シルク(Hydrolyzed Silk): 同じ絹フィブロイン由来だが、水溶性ペプチドでコンディショニング・保湿が主用途。不溶性粉末のシルク末(感触改良・皮脂吸着)の対になる、最も直接の比較対象(関連:加水分解シルク
  • 加水分解ケラチン(Hydrolyzed Keratin): 髪と同じケラチン由来の水溶性ポリペプチド。毛髪のダメージ部分に吸着してハリ・コシ・指通りを与える毛髪補修・コンディショニング成分で、タンパク(PPT)系という共通点を持つ(関連:加水分解ケラチン
  • 加水分解コラーゲン(Hydrolyzed Collagen): 動物・魚由来の低分子ペプチド。保湿・感触改良・ヘアコンディショニングを担う水溶性のタンパク系成分。研究知見と化粧品効能の区別という、シルク末と同じ論点を持つcosmetic-only成分(関連:加水分解コラーゲン

5. よくある質問

Q. シルク末は髪の補修や育毛に効くのか

化粧品成分(cosmetic-only)のシルク末には、「毛髪を補修する」「育毛する」「発毛する」という効能訴求は薬機法上できない。化粧品として言える範囲は「肌・毛髪をなめらかにする・整える」「つやを与える」「皮脂を吸着して頭皮や肌を清潔にする」までだ。「絹=高機能」のイメージから補修・育毛を期待されやすいが、不溶性粉末であるシルク末の働きは感触改良・つや・皮脂吸着が中心で、毛髪補修・育毛の薬理的効果を保証するものではない。本格的な毛髪補修なら加水分解シルク等の水溶性コンディショニング成分、育毛・発毛なら医薬部外品(育毛剤)や医薬品(ミノキシジル等)のカテゴリを選ぶのが正確なアプローチになる(出典:厚労省『化粧品の効能の範囲』告示 / 化粧品成分オンライン)。

Q. 「シルク末」と「加水分解シルク」は同じものか

同じ絹フィブロイン由来だが、形状と働きで区別するのが正確だ。シルク末(化粧品表示名称:シルク、INCI:Silk)は、フィブロインを精製・粉砕した不溶性の微粉末で、感触改良(なめらかさ・滑り)・つや・皮脂吸着が主な役割。おしろい・ファンデーション等のメイクアップやスカルプ製品に使われる。一方、加水分解シルク(INCI:Hydrolyzed Silk)は、フィブロインを加水分解して平均分子量を下げた水溶性のシルクペプチドで、毛髪・皮膚のコンディショニング・保湿が主用途。シャンプー・トリートメント等のヘアケアやスキンケアに使われる。成分表示で「シルク/シルク末」(粉)か「加水分解シルク」(液・水溶性)かを確認すると区別しやすい(出典:化粧品成分オンライン)。

Q. 絹アレルギーがあるとシルク末は使えないのか

原料が絹タンパクのため、絹アレルギーがある人は注意が必要な成分だ。一般にシルクアレルギーは比較的まれとされ、シルク末は皮膚刺激・感作反応もみられないと整理される低刺激の成分でもある。一方で、製糸従事者などでセリシンによるI型アレルギーや絹着用時の蕁麻疹等の報告があり、タンパク質由来である以上、感作の可能性を完全に否定はできない。絹アレルギーがある・疑われる場合は、いきなり顔や頭皮の広範囲に使わず、目立たない部位でパッチテストを行う、または医師に相談してから使うのが安全側の判断になる。使用後に赤み・かゆみ等が出た場合は使用を中止すること(出典:化粧品成分オンライン / 絹アレルギー関連解説)。

Q. スカルプシャンプーのシルク末にはどんな意味があるのか

スカルプD等のスカルプシャンプーでは、シルク末は皮脂吸着成分(その他の成分)として配合される。微粉末であるシルク末は表面積が大きく、毛穴詰まりの原因となる頭皮の余分な皮脂(悪性油分)を吸着して、頭皮環境を整える役割を担う。ただしこれは「頭皮を清潔にする・整える」という化粧品の範囲の働きであり、皮脂分泌そのものを抑える、薄毛を防ぐ、育毛するといった効能ではない。スカルプ製品の皮脂対策・洗浄・コンディショニングは複数成分の合わせ技で成り立つため、「シルク末配合だから皮脂対策に優れる」と単純に判断せず、処方全体と有効成分(医薬部外品の場合)で評価するのが正確だ(出典:アンファー スカルプD 製品情報 / 厚労省『化粧品の効能の範囲』告示)。

関連深掘り記事