馬油(ばーゆ)は、馬の皮下脂肪・たてがみの脂肪を精製して得られる動物由来の油脂で、INCI名はHorse Fat、化粧品表示名・医薬部外品表示名ともに「馬油」として流通する、エモリエント・基剤にあたる成分(出典: 化粧品成分オンライン)。日本では古くから乾燥・かさつき・ヤケドのケア等の民間のスキンケア・スカルプケアに使われてきた伝統があり、化粧品では皮膚・毛髪をやわらかく保つエモリエント、皮膚を保護する油性基剤として配合される。脂肪酸組成はオレイン酸を主成分に、パルミチン酸・リノール酸を含み、加えてヒト皮脂に多いパルミトレイン酸(C16:1)を比較的多く含む点が、植物油脂が大半を占める化粧品油脂のなかで数少ない「動物由来油脂」としての特徴にあたる(出典: 化粧品成分オンライン / Lee et al. 2019)。このオレイン酸・パルミチン酸・パルミトレイン酸という構成がヒト皮脂の脂肪酸組成に近いとされ、肌・頭皮になじみやすく「なじみ・浸透が良い」ことが伝統的な訴求の根拠になる。本記事ではC-10天然油脂エモリエントクラスタ(植物バター・種子油・動物油脂)第4弾の中で唯一の動物由来油脂として、馬油の正体(馬の皮下脂肪由来の動物油脂)、毛髪・頭皮でのエモリエント作用(植物油脂との脂肪酸組成・性状の対比)、そして本成分で最も誤解されやすい「馬油で髪が生える・薄毛が改善する・馬油は万能」という伝承的な言説を、過剰評価も過剰否定もせず中立に整理する。

1. 馬油の基本

1.1 何の成分か

馬油は、馬(特にたてがみ・皮下)の脂肪を加熱・精製して得られる動物由来の油脂で、INCI名はHorse Fat、化粧品表示名・医薬部外品表示名ともに「馬油」にあたる(出典: 化粧品成分オンライン)。化粧品成分としての配合目的は、エモリエント(皮膚や毛髪をやわらかく保つ油性成分)・基剤・皮膚保護で、ヒト皮脂に近い脂肪酸組成でなじみが良い動物油脂として整理される。医薬部外品原料規格(医薬部外品原料規格2021)に収載され、20年以上の使用実績の中で重大な皮膚刺激や感作の報告は乏しく、通常使用下では一般に穏やかな安全性プロファイルの成分とされる。

本成分の理解で重要なのは、馬油が「植物油」ではなく「動物由来の油脂」である点にある(出典: 化粧品成分オンライン)。化粧品に使われる油脂の大半はオリーブ油・ホホバ油・シア脂といった植物由来だが、馬油は数少ない動物由来油脂にあたる。化学的には脂肪酸とグリセリンが結合したトリグリセリド(中性脂肪)が主体という点では植物油脂と同じだが、由来が動物である分、ヴィーガン・ベジタリアン対応製品には使えないこと、原料の精製度によって品質・匂いの差が出やすいことが特徴になる。

馬油の脂肪酸組成は、オレイン酸を主成分(報告例で約37%)に、パルミチン酸(約25%)・リノール酸(約17%)を含み、加えてヒト皮脂に多いパルミトレイン酸(C16:1)を比較的多く含む(報告例で約9%・たてがみ由来で多い)点が動物油脂としての特徴にあたる(出典: 化粧品成分オンライン / Lee et al. 2019)。パルミトレイン酸はヒトの皮脂にも含まれる一価不飽和脂肪酸で、若い肌に多く加齢とともに減少するとされる成分で、馬油がこれを比較的多く含むことが「ヒト皮脂に近い」と言われる根拠の1つになる。なお馬油は不飽和脂肪酸が全体の約6割を占めるとされ、たてがみ由来のものはパルミトレイン酸を多く含み常温でバター状を呈する性質がある。

そして本成分の特徴は、このオレイン酸・パルミチン酸・パルミトレイン酸という脂肪酸組成がヒト皮脂の組成に近く、肌の角質層や頭皮になじみやすい点にある(出典: Lee et al. 2019 / 馬油原料メーカー各種)。皮脂に近い組成であることが、本成分が肌・毛髪・頭皮になじんで「浸透が良い」と伝統的に訴求され、保湿・保護のエモリエントとして使われてきた根拠にあたる。ただし「皮脂に近いから万能・髪が生える」という伝承的な言説は科学的根拠が乏しいため、§3.4で別途中立に整理する。

規制上の位置づけは化粧品成分(cosmetic-only)で、医薬部外品では「その他成分(基剤・エモリエント)」として配合される(出典: 化粧品成分オンライン)。本成分そのものは「育毛する」「薄毛を改善する」といった効能を標榜できる医薬部外品の有効成分ではなく、化粧品・薬用化粧品の処方の中で基剤・エモリエントとして配合される成分の位置づけにあたる。配合製品の効能訴求は「毛髪・頭皮をすこやかに保つ」「保湿」「保護」といった化粧品の標準効能の範囲にとどまる。

1.2 どんな製品に配合されるか

馬油の配合製品は、馬油100%の単体オイル・クリームから、ヘアケア・スキンケアの配合成分まで幅広い(出典: 化粧品成分オンライン / 馬油原料メーカー各種)。最も知られているのは馬油をほぼ100%精製した単体の馬油クリーム・馬油オイルで、乾燥肌の保湿・全身の保護・スカルプケア・髭剃り後の肌の保護などに古くから使われてきた。配合成分としては、シャンプー・コンディショナー・トリートメント・ヘアマスク・洗い流さないトリートメント(アウトバス)・スカルプエッセンス・頭皮用オイルに、スキンケアでは保湿クリーム・乳液・リップケア・ハンドクリームに、エモリエント・基剤として用いられる。「馬油配合」を訴求する和漢・自然派系のヘアケア・スキンケア製品も多い。

ヘアケア領域では、本成分は毛髪・頭皮になじむエモリエントとして、保湿・感触改善・頭皮の保護を担う(出典: 馬油原料メーカー各種 / メンズヘアケア専門メディア各種)。シャンプー・トリートメントでは保湿・感触改善の補助油分として、スカルプケアでは頭皮になじむ油分として配合される。皮脂に近い脂肪酸組成が頭皮になじむ性質を活かして、乾燥した頭皮の保湿・頭皮マッサージに馬油を使う民間的な用法もある。

原料としての馬油には精製度の差がある(出典: 馬油原料メーカー各種)。精製度の高い馬油は無色〜淡黄色で匂いが少なく安定性・処方適性が高い一方、精製度の低いものは独特の獣臭が残りやすく、動物油脂ゆえ酸化による酸化臭も出やすい。製品では精製度を上げ、酸化を抑える抗酸化剤(トコフェロール等)を添加したものが使われることが多い。なお馬油は動物油脂のため、植物バターや一部の植物油のように完全な固形ではなく、種類・温度により半固形〜バター状〜液状と性状に幅がある。

配合濃度は製品によって幅があり、馬油100%の単体製品では主成分として高濃度(ほぼ100%)、シャンプー・トリートメントでは保湿・感触改善の補助油分として数%以下の配合が一般的にあたる。成分表示順では、単体オイル・クリームでは上位、シャンプー・トリートメントでは中〜下位に位置することが多い。

1.3 メンズ視点での見方

メンズヘアケアの観点では、馬油は「ヒト皮脂に近い脂肪酸組成でなじみが良く、乾燥した頭皮の保湿・髭剃り後の肌の保護に伝統的に使われてきた、動物由来のエモリエント油分」という読み方ができる成分にあたる(出典: メンズヘアケア専門メディア各種 / 化粧品成分オンライン)。

メンズの頭皮・毛髪には、女性に比べて皮脂分泌が多く、整髪料を使い、洗浄力の強いシャンプーで洗いがちで、頭皮の乾燥と過剰な皮脂が同居しやすいという事情がある。本成分はオレイン酸・パルミチン酸・パルミトレイン酸というヒト皮脂に近い脂肪酸組成から、頭皮・毛髪・肌になじみやすく、保湿・保護のエモリエントとして働く点が、乾燥した頭皮や髭剃り後の肌のケアに使われてきた理由にあたる(出典: Lee et al. 2019 / メンズヘアケア専門メディア各種)。乾燥した頭皮の保湿、髭剃り後の肌の保護、ダメージ毛のコーティングとして、メンズのヘアケア・スカルプケア・シェービングケアに組み込まれる。

ここでメンズが押さえておきたいのは、本成分が「馬油は万能・塗れば髪が生える・薄毛が改善する」という伝承的な言説どおりの成分ではない、という点にある(出典: メンズヘアケア専門メディア各種)。馬油は古くから民間で重宝されてきた油脂で「万能」「育毛に良い」といった訴求が広く流通しているが、育毛・発毛の科学的根拠は乏しく、馬油の実際の価値は保湿・保護のエモリエントであって毛を生やす作用ではない。また本成分は化粧品の基剤・エモリエントであって、「育毛」「薄毛改善」「皮脂コントロール」といった効果を持つ医薬部外品有効成分・医薬品ではない。本成分は「頭皮・毛髪・肌をすこやかに保つ保湿・保護の油分」であって、薄毛・抜け毛の治療をする成分ではないという切り分けが、メンズが本成分を理解する上での前提にあたる(詳細は §3.4・関連: メンズ頭皮ケアガイド)。なお動物由来油脂のため、ヴィーガン・ベジタリアン志向で動物性原料を避けたいメンズには不向きという点も整理しておきたい。

2. 期待される働き・効果

2.1 メカニズム

馬油の作用機序を理解する鍵は、本成分が「ヒト皮脂に近い脂肪酸組成の油脂」であることと、「動物由来でやや酸化しやすい油脂」であることの2点にある(出典: Lee et al. 2019 / 化粧品成分オンライン)。

1つ目のエモリエント・保湿の機序は、本成分が肌・毛髪・頭皮の表面に油膜を作り、水分の蒸発を抑えて柔らかく整える点に基づく(出典: Lee et al. 2019 / 馬油原料メーカー各種)。馬油の主成分であるオレイン酸・パルミチン酸・パルミトレイン酸は、ヒトの皮脂を構成する脂肪酸に近いため、肌・頭皮になじみやすく、表面に薄い油膜を作って水分の蒸発を防ぐバリアとして働く。これにより乾燥を防いで柔らかく滑らかな状態を保つ、エモリエント(皮膚軟化)・保湿の働きが生じる。とりわけパルミトレイン酸はヒト皮脂に含まれる成分で、馬油がヒト皮脂に近く「なじみ・浸透が良い」と伝統的に語られる根拠の1つにあたる。

2つ目の毛髪コーティング・皮膚保護の機序は、本成分の油分が毛髪・皮膚の表面に薄い被膜を作り、手触り・ツヤや保護を担う点に基づく(出典: 馬油原料メーカー各種)。毛髪はダメージを受けるとキューティクルが荒れて手触りが悪くなりパサつくが、本成分のような油性エモリエントが表面をコーティングすると、手触りの滑らかさ・ツヤが整う。肌では髭剃り後など外的刺激を受けた皮膚の表面を油膜で覆い、保護する用途に使われてきた。これは毛髪・皮膚の表面を物理的に整える方向の働きで、毛髪内部のタンパク質を補修する成分(加水分解ケラチン等)や、皮膚の炎症を抑える有効成分とは作用層が異なる。

なお、馬油について「炎症を抑える」「傷の治りを助ける」といった伝承的な説明もあるが(出典: Lee et al. 2019)、一部の研究で馬油やパルミトレイン酸の抗炎症・皮膚バリア関連の作用が報告される例はあるものの、これらは限定的な知見で、化粧品成分としての馬油が「炎症を治す」「傷を治す」効能を承認された医薬部外品有効成分・医薬品であるわけではない。本成分は化粧品の基剤・エモリエントで、皮脂分泌の調整・育毛・薄毛改善といった効能を承認された成分ではない、という点は前提として押さえておきたい(出典: 化粧品成分オンライン)。

2.2 一般的な効能範囲

馬油の効能範囲は、化粧品成分(cosmetic-only)・エモリエント/基剤の枠組みのなかで「毛髪・頭皮をすこやかに保つ」「保湿する」「皮膚・毛髪を保護する」「乾燥を防ぐ」「皮膚をやわらかくする」といった化粧品の標準効能の範囲にとどまる(出典: 化粧品成分オンライン / 厚生労働省『化粧品の効能の範囲』)。

化粧品成分として配合された本成分について、製品パッケージや広告で「育毛する」「発毛する」「抜け毛を防ぐ」「薄毛が改善する」「皮脂分泌を抑える・コントロールする」「炎症を治す」「傷を治す」といった効能効果を明確に標榜することはできない。育毛・発毛・抜け毛予防は医薬部外品の育毛有効成分や医薬品(ミノキシジル等)の領域であり、本成分のような化粧品の基剤・エモリエントの枠ではない。本成分配合のヘアケア・スカルプケア・スキンケア製品は、あくまで「頭皮・毛髪・肌をすこやかに保つ」「保湿」「保護」といった化粧品の標準効能・成分特性の表現範囲で訴求されている(出典: 化粧品成分オンライン / 厚生労働省『化粧品の効能の範囲』)。

「ヒト皮脂に近い脂肪酸組成で肌・頭皮になじむ」「乾燥した肌・頭皮を保湿する」「髭剃り後の肌を保護する」といった訴求は、本成分の物理化学的な特性(エモリエント・油膜形成・皮脂類似組成)に基づく成分訴求の範囲として整理できるが、化粧品の効能効果の範囲を超えて「馬油で髪が生える」「薄毛が治る」「皮脂が正常化する」といった具体的な効果主張に置き換えることはできない(出典: 化粧品成分オンライン)。本成分にまつわる「馬油は万能・髪が生える」という伝承的な言説は §3.4 で別途中立に整理する。

2.3 限界・誤解されやすい点

馬油はヒト皮脂に近いエモリエントとして伝統的に使われてきた成分だが、化粧品の枠組みで期待できるレベルと、伝承で誤解されやすい主張を区別して整理しておく必要がある。代表的な誤解は3点ある。

1点目は、「馬油は万能で、塗れば髪が生える・薄毛が改善する」という誤解。馬油が頭皮になじみやすく保湿・保護のエモリエントとして働くのは事実だが、本成分は化粧品の基剤・エモリエントで、頭皮の毛根に働きかけて発毛を促す成分ではない(出典: メンズヘアケア専門メディア各種 / 化粧品成分オンライン)。育毛・発毛の科学的根拠は乏しく、馬油の実際の価値は保湿・保護であって毛を生やす作用ではない。詳細は §3.4 で別途中立に整理する。

2点目は、「馬油は天然・動物由来だから無条件で良い・酸化しない」という誤解。馬油は動物油脂で、多価不飽和脂肪酸(リノール酸・α-リノレン酸)を比較的多く含み抗酸化成分が少ないため、植物油の中でも酸化しやすい部類にあたる(出典: purecera.com 等 / 馬油原料メーカー各種)。精製度の低いものは獣臭・酸化臭が出やすく、「天然だから安心・劣化しない」わけではない。適切な精製・抗酸化剤の添加・保管が前提にあたる。

3点目は、「馬油は皮脂に近いから皮脂バランスを整える」という誤解。馬油の脂肪酸組成がヒト皮脂に近く頭皮になじみやすいのは事実だが、本成分は化粧品の油性エモリエントで、頭皮の皮脂分泌そのものをコントロール・正常化する成分ではない(出典: メンズヘアケア専門メディア各種)。「皮脂に近い」=「皮脂をコントロールできる」ではなく、皮脂分泌の量は体質・ホルモン・生活習慣に左右され、塗布したオイルが皮脂腺の働きを調整するわけではない。皮脂の多い頭皮につけすぎれば、かえってべたつき・毛穴詰まりの原因になりうる。

3. 安全性・注意点

3.1 既知の刺激性・アレルギー報告

馬油の皮膚安全性は穏やかで、医薬部外品原料規格(医薬部外品原料規格2021)に収載され、20年以上の使用実績の中で重大な皮膚刺激や感作の報告は乏しく、通常使用下では一般に安全と考えられている成分にあたる(出典: 化粧品成分オンライン)。馬油100%の単体オイル・クリームとして古くから直接肌に塗る使い方が広く行われてきた実績があり、シャンプー・トリートメント・スカルプケア・スキンケア・シェービングケアの幅広い剤形で使われる。

本成分はヒト皮脂に近い脂肪酸組成で肌・頭皮になじみやすく、刺激性の低いエモリエントとして、敏感肌・乾燥肌の人にも比較的使いやすい成分として扱われる(出典: 馬油原料メーカー各種)。ただし、動物由来であることはアレルギーが起きないことを意味しない。馬油への個別のアレルギー・接触皮膚炎の可能性は、頻度は高くないものの完全にゼロとは言い切れず、新規の製品を使う際の一般的な留意点として、敏感肌・アトピー素因のあるメンズは初回使用前にパッチテストで個別の相性を確認するのが無難にあたる。

もう1点の留意点として、馬油は動物油脂で酸化しやすい部類のため、酸化した馬油は酸化臭・刺激の原因になりうる(出典: purecera.com 等)。また精製度の低いものは特有の獣臭が残り、香りに敏感な人には不快に感じられることがある。製品では精製度を上げ抗酸化剤を添加して安定化が図られているが、開封後は適切に保管し、酸化臭・変色が出たら使用を避けるのが無難にあたる。なお本成分配合製品全体の処方で他の成分(防腐剤・香料・他の油分・界面活性剤等)に対する個別のアレルギー反応が出る可能性は、他の化粧品と同様にゼロではなく、これは本成分の問題ではなく配合製品全体の処方設計の問題にあたる。

3.2 推奨配合量と過剰使用時のリスク

馬油の配合濃度は、製品のタイプによって大きく幅がある(出典: 化粧品成分オンライン / 馬油原料メーカー各種)。馬油100%の単体オイル・クリームでは主成分として高濃度(ほぼ100%)に、シャンプー・トリートメント・スカルプケアでは保湿・感触改善の補助油分として数%以下の配合が一般的にあたる。

過剰使用時のリスクについては、化粧品配合濃度の範囲では本成分単独の皮膚刺激の過剰使用リスクは限定的にあたる(出典: 化粧品成分オンライン)。本成分は穏やかな安全性プロファイルの油性エモリエントで、皮膚刺激の累積はほぼ起こらないと考えられる。むしろ過剰使用で実用上問題になるのは、皮膚刺激よりも「つけすぎによるべたつき・重さ・毛穴詰まり」と「酸化」にあたる。馬油は動物油脂で比較的こっくりした油分のため、頭皮・毛髪・肌に油分を過剰に塗布すれば、べたつき・ボリュームダウン・毛穴の詰まり・洗い落としにくさの原因になりうる。とりわけ皮脂分泌の多いメンズの頭皮に、保湿目的で大量に塗布するのは逆効果になりやすく、適量を守るのが現実的にあたる。

コメドジェニック(毛穴を詰まらせてニキビを誘発する性質)については、馬油はオレイン酸を主成分とする油脂で、肌質・使用量・部位によっては毛穴詰まりが起こりうるため、「絶対に毛穴を詰まらせない」と断定はできない(出典: メンズヘアケア専門メディア各種)。脂性肌・ニキビができやすい人、皮脂の多い頭皮の人は、つけすぎを避け、自分の肌・頭皮との相性を見ながら使うのが無難にあたる。また酸化の観点では、馬油は植物油の中でも酸化しやすい部類のため、開封後は早めに使い切り、変色・酸化臭が出たら使用を避けるのが現実的にあたる。本成分配合製品は「保湿・保護・感触改善」の目的で標準的な使用量で使うのが、過剰使用のリスクを避ける現実的な使い方にあたる。

3.3 天然油脂の脂肪酸組成と毛髪・頭皮エモリエント作用整理

馬油を単体で見ると「ヒト皮脂に近い万能オイル」で終わってしまうが、本成分の立ち位置は、シャンプー・トリートメント・スカルプケアに配合される天然由来の油脂・エモリエント群(植物バター・種子油・動物油脂)の中に置いて初めて立体化する。天然油脂エモリエントは、それぞれ主要な脂肪酸組成が異なり、それによって性状(軽い/重い/固形)・浸透性・毛髪/頭皮での役割(軽い保湿/濃厚保湿/被膜)が変わる。本成分の解説における横串軸の核は、これら天然油脂エモリエントを脂肪酸組成で並列に整理し、本成分が「クラスタ唯一の動物由来油脂(ヒト皮脂類似・パルミトレイン酸を含む・なじみ良)」という植物油脂とは一線を画す独自の立ち位置を示すことにある(出典: 化粧品成分オンライン / Lee et al. 2019)。

下表は、C-10天然油脂エモリエントクラスタ第4弾の各成分を「主要脂肪酸組成」「性状・浸透性」「毛髪・頭皮での主な役割」の観点で一覧化した横串表にあたる。本成分(馬油)だけが植物由来でなく動物由来油脂であり、ヒト皮脂に多いパルミトレイン酸(C16:1)を含む点に注目すると、本成分の位置づけがはっきりする。

成分主要脂肪酸組成性状・浸透性毛髪・頭皮での主な役割
クプアスバターオレイン酸・ステアリン酸・アラキジン酸+フィトステロール半固形バター・高い吸水/保水性・被膜濃厚保湿・皮膚軟化・コンディショニング
ゴマ油リノール酸約40%・オレイン酸約40%+セサモリン/セサモール中程度・伝統的マッサージ油・抗酸化成分含有保湿・抗酸化サポート・エモリエント
アンズ核油オレイン酸約60%・リノール酸約30%軽〜中・浸透良・さらっと軽い保湿・なじみ良・エモリエント
ムルムルバターラウリン酸約40〜50%・ミリスチン酸・オレイン酸固形・融点高め・サラッとした被膜被膜・ツヤ・毛髪コンディショニング
コーン油リノール酸約50%・オレイン酸約30%軽め・多価不飽和が多くやや酸化しやすい軽い保湿・バリアサポート
馬油(本成分)オレイン酸・パルミチン酸・パルミトレイン酸(C16:1)動物油脂・皮脂類似・浸透良保湿・なじみ良・伝統的スカルプケア
アンディロバ油オレイン酸約50%・パルミチン酸・リノール酸+リモノイド中程度・苦味成分(リモノイド)含有保湿・エモリエント・整肌伝承

(出典: CIR / 化粧品成分オンライン 等)

この整理表の意味を、天然油脂エモリエントの実用視点から整理しておく。表の馬油以外の成分は、いずれも植物由来で、植物バター(クプアスバター・ムルムルバター)は半固形〜固形で被膜性・濃厚保湿に向き、種子油(ゴマ油・アンズ核油・コーン油・アンディロバ油)は主要脂肪酸の種類で性質が分かれる。オレイン酸が多い油(アンズ核油等)は軽くなじみが良く、リノール酸など多価不飽和が多い油(コーン油・ゴマ油等)は軽いがやや酸化しやすい。ラウリン酸が多いムルムルバターは融点が高くサラッとした被膜を作る。

本成分(馬油)がこれらと決定的に異なるのは、そもそも植物由来でなく動物由来油脂である点にある(出典: 化粧品成分オンライン)。本成分はヒト皮脂に近いオレイン酸・パルミチン酸の構成に加え、植物油脂にはほとんど含まれないパルミトレイン酸(C16:1)をヒト皮脂同様に比較的多く含み、これが「ヒト皮脂に最も近くなじみが良い」と伝統的に語られる根拠にあたる。一方で多価不飽和脂肪酸を比較的多く含み抗酸化成分が少ないため、植物油の中でも酸化しやすい部類で、動物由来ゆえヴィーガン非対応という制約もある。つまり本成分は、表の植物油脂が「植物バターの濃厚保湿か種子油の軽い保湿か」の軸に並ぶのに対し、「動物由来でヒト皮脂に最も近く、なじみが良く伝統的にスカルプケアに使われてきた、やや酸化しやすいエモリエント」という独自の位置にあたる。組合せ運用では、本成分(皮脂類似・なじみ良)を、濃厚保湿の植物バター(クプアスバター)、抗酸化サポートの種子油(ゴマ油)等と組み合わせると、なじみと濃厚保湿・安定性を補い合う処方が組める。本成分は「ヒト皮脂に最も近い動物由来のエモリエント」として、植物油脂と役割分担して働くピースという理解が実用的にあたる。

3.4 「馬油で髪が生える・馬油は万能」言説の中立整理

馬油を語るときに最も誤解されやすいのが、「馬油は万能」「塗れば髪が生える・薄毛が改善する」という伝承的な言説にある。馬油は日本で古くから民間で重宝されてきた油脂で、保湿・スカルプケア・ヤケドのケアなど幅広い用途で「万能オイル」として語られ、ヘアケア文脈では「育毛に良い」「薄毛が改善する」といった訴求も広く流通している。本成分の解説における独自軸はこの「万能・育毛」言説の中立解像度整理で、馬油にできること・できないことを切り分けると、本成分の実用的な価値がクリアになる(出典: メンズヘアケア専門メディア各種 / 化粧品成分オンライン)。

まず「馬油がヒト皮脂に近くなじみが良い」という事実について整理する(出典: Lee et al. 2019 / 化粧品成分オンライン)。馬油の脂肪酸組成はオレイン酸・パルミチン酸に加え、ヒト皮脂に多いパルミトレイン酸(C16:1)を比較的多く含み、ヒト皮脂の組成に近いとされる。これは事実で、だからこそ本成分は肌・頭皮になじみやすく「浸透が良い」と語られ、保湿・保護のエモリエントとして使いやすい。「ヒト皮脂に近い」ことのメリットは、この「なじみの良さ・親和性の高さ」にあたる。

問題は、この事実から「だから馬油は万能・髪が生える・薄毛が改善する」という主張に飛躍する点にある(出典: メンズヘアケア専門メディア各種)。第一に、馬油が育毛・発毛を促すという科学的根拠は乏しい。馬油は頭皮・毛髪の表面で保湿・保護のエモリエントとして働く油分であって、頭皮の毛根に働きかけて発毛を促す成分ではない。育毛・発毛・抜け毛予防は、それを承認効能とする医薬部外品の育毛有効成分や医薬品(ミノキシジル等)の領域にあたり、馬油が頭皮ケアに使われてきたことから「育毛に効く」と連想されやすいが、馬油自体に発毛・育毛の効果があるわけではない。第二に、「皮脂に近い」=「皮脂分泌をコントロールできる・皮脂バランスを整える」ではない。皮脂の分泌量は皮脂腺が体質・ホルモン・生活習慣に応じて決めるもので、外から塗った皮脂類似の油脂が皮脂腺の働きを調整して「皮脂を正常化する」わけではない。

「馬油は万能」という言い方についても整理しておく(出典: メンズヘアケア専門メディア各種)。馬油が乾燥のケア・肌や頭皮の保護・髭剃り後のケアなど幅広い保湿・保護の用途に使えるのは事実で、その意味で汎用性の高いエモリエントではある。しかしこれは「保湿・保護のエモリエントとして幅広く使える」という意味であって、「育毛・薄毛改善・皮脂コントロール・治療効果まで含めて何でも効く万能薬」という意味ではない。「万能」という言葉が効能の範囲を超えた期待につながりやすい点に注意が必要にあたる。

整理すると、馬油が「ヒト皮脂に近い」ことの実際の価値は、頭皮・毛髪・肌へのなじみの良さ・保湿・保護という「使い心地とエモリエント作用」にあって、「育毛・発毛」「皮脂分泌のコントロール」「治療効果のある万能薬」ではない(出典: 化粧品成分オンライン / メンズヘアケア専門メディア各種)。本成分は皮脂になじむ保湿・保護のエモリエントと正しく理解し、皮脂分泌が多い頭皮には適量で使い、皮脂・抜け毛・薄毛の根本対策とは切り分けるのが、本成分を活かす前提にあたる。薄毛・抜け毛が主訴の場合は、馬油に育毛を期待するのではなく、育毛剤・発毛剤・専門クリニックの領域を検討するのが正確にあたる。

4. 相性の良い・悪い成分

4.1 併用される成分

馬油はヒト皮脂に近いなじみの良いエモリエントのため、他の油性成分・保湿成分と組み合わせて、なじみと濃厚保湿・安定性を補い合うのが標準的にあたる(出典: 馬油原料メーカー各種 / 化粧品成分オンライン)。

油性基剤の文脈では、本成分は同じC-10天然油脂エモリエントクラスタのホホバ種子油ゴマ油シア脂等の他の油脂と組み合わせて配合される。本成分(皮脂類似・なじみ良)をベースに、濃厚保湿・被膜が欲しければシア脂・植物バターを、酸化安定性・抗酸化サポートが欲しければホホバ種子油・ゴマ油等を足すと、なじみと濃厚さ・安定性を両立した油性基剤が組める。馬油は酸化しやすい部類のため、酸化安定性の高いホホバ種子油や抗酸化成分を含むゴマ油・トコフェロール等と組み合わせて処方の安定性を補うのが定石にあたる。

ヘアケアの文脈では、本成分はシリコーン(ジメチコン等)と組み合わせて、本成分が皮脂類似のなじみ・保湿を、シリコーンが表面のツヤ・滑り・コーティングを担う役割分担で配合される。シャンプー・トリートメント・アウトバスでは、本成分・他の油脂・シリコーンを組み合わせて、なじみ・ツヤ・まとまりを立体的に組むのが定石にあたる。また保湿成分(グリセリン等の水溶性保湿剤)と組み合わせると、水分(保湿剤)と油分(本成分)で内外から乾燥を防ぐ設計になる。

スカルプケア・スキンケアの文脈では、本成分は頭皮・肌になじむ動物油脂として、スカルプエッセンス・頭皮用オイル・保湿クリームのベースに用いられ、植物エキス・保湿成分・抗酸化成分と組み合わせて頭皮・肌の保湿・保護を担う。

4.2 注意したい組合せ

馬油はエモリエント・基剤で、化粧品処方で特定の成分と相性が悪くて避けるべき、という強い禁忌の組合せは基本的にない(出典: 化粧品成分オンライン)。シャンプー・トリートメント・スカルプケア・スキンケア・シェービングケアの幅広い処方に組み込め、他の油性成分・保湿成分と協働する。

実用的な留意点としては、本成分は動物油脂で酸化しやすい部類のため、抗酸化剤(トコフェロール等)を併用せず、酸化しやすい他の油分とだけ組み合わせると、処方全体の酸化・酸化臭が出やすくなる(出典: purecera.com 等)。これは成分同士の相性というより、酸化安定性の設計の問題にあたり、抗酸化成分・適切な保管で補うのが現実的にあたる。また本成分は比較的こっくりした油分のため、油分(本成分・他の油脂・シリコーン)の総量が多い処方や、それを過剰に重ね塗りする使い方では、べたつき・重さ・毛穴詰まりが出やすくなる(出典: メンズヘアケア専門メディア各種)。皮脂分泌の多いメンズの頭皮では、油分の多い製品を大量に使うとべたつき・不快感の原因になりやすく、適量・軽めの処方を選ぶのが無難にあたる。

もう1つの実用的な注意点として、本成分は保湿・保護・コーティングのエモリエントで、本成分単独で毛髪・頭皮の全てのケアを賄えるわけではない(出典: 馬油原料メーカー各種)。毛髪内部のタンパク質補修は加水分解ケラチン等のタンパク質補修成分が、頭皮の皮脂・汚れの洗浄は洗浄成分が担う。本成分はこれらと組み合わせて使うのが前提で、本成分配合というだけで他の補修・洗浄・保湿が不要になるわけではない。

また前述のとおり、本成分(頭皮・毛髪・肌の保湿・保護のエモリエント)を、皮脂分泌のコントロール・育毛・薄毛改善の成分と混同しないことが重要(詳細は §3.4)。本成分は保湿・保護・感触改善の油分で、皮脂分泌の根本調整・薄毛対策は別の領域(生活習慣・医薬部外品育毛有効成分・医薬品)として整理する必要がある。なお動物由来油脂のため、ヴィーガン・ベジタリアン対応を訴求する製品には組み込めないという制約もある。

5. 使い方

5.1 推奨される使用シーン

馬油配合製品は、毛髪・頭皮・肌の状態と目的に応じて使い分けると現実的にあたる(出典: 馬油原料メーカー各種 / メンズヘアケア専門メディア各種)。

毛髪のケアでは、本成分配合のヘアオイル・洗い流さないトリートメント(アウトバス)・トリートメントが、乾燥・パサつき・まとまりにくさが気になる毛髪のコーティング・ツヤ出しに向く。タオルドライ後の濡れた髪や乾いた髪の毛先中心に少量なじませると、手触り・ツヤ・まとまりが整う。本成分は比較的こっくりした油分のため、つけすぎるとべたつきやすく、毛先中心に少量から使うのが無難にあたる。シャンプー・トリートメントに配合された本成分は、洗浄・コンディショニングのなかで保湿・感触改善の補助として働く。

頭皮・肌のケアでは、馬油100%の単体オイル・クリームや本成分配合のスカルプオイルが、乾燥した頭皮の保湿・頭皮マッサージ、髭剃り後の肌の保護に用いられる。ヒト皮脂に近い脂肪酸組成が頭皮・肌になじむ性質を活かし、乾燥した頭皮に少量なじませる、髭剃り後のかさつく肌に薄く塗って保護するといった使い方がある。ただし皮脂分泌の多い頭皮では、つけすぎるとべたつくため、適量を守るのが前提にあたる。

使い方の基本は、ヘアオイル・アウトバスは毛先中心に少量から、頭皮・肌用は適量を薄くなじませる、シャンプー・トリートメントは標準的な使用量で使うのが標準にあたる。馬油は酸化しやすい部類のため、開封後は早めに使い切り、適切に保管するのも実用上のポイントにあたる。本成分は1回で劇的な変化を求めるより、日常のケアで継続して使い、毛髪・頭皮・肌の保湿・保護・感触を整えるのが活かし方にあたる。べたつきが気になる場合は使用量を減らす、毛先中心にするといった調整をするとよい。

5.2 期待できないこと・避けるべき使い方

馬油に期待できないことを整理しておくと、まず本成分は化粧品のエモリエント・基剤で、頭皮の毛根に働きかける成分ではないため、「育毛する」「発毛する」「抜け毛を防ぐ」「薄毛が改善する」といった効果は期待できない(出典: 化粧品成分オンライン / メンズヘアケア専門メディア各種)。「馬油で髪が生える」という伝承的な言説は科学的根拠が乏しく、育毛・発毛を求める場合は育毛有効成分配合の医薬部外品・医薬品(発毛剤)・専門クリニックを検討する必要がある。本成分は頭皮・毛髪・肌の保湿・保護の油分で、頭皮環境を整える補助にはなっても、毛を生やす・抜け毛を止める成分ではない。

次に、本成分は皮脂分泌そのものをコントロール・正常化する成分ではないため、「馬油を塗れば皮脂バランスが整う・皮脂が減る」効果は期待できない(出典: メンズヘアケア専門メディア各種)。皮脂分泌は体質・ホルモン・生活習慣に左右されるもので、塗布した油脂が皮脂腺の働きを調整するわけではない。馬油がヒト皮脂に近いことの価値は、頭皮・毛髪・肌へのなじみの良さ・保湿であって、皮脂分泌の調整ではない(詳細は §3.4)。

避けるべき使い方としては、皮脂分泌の多い頭皮・脂性肌の人が、保湿目的で馬油を大量に塗布・重ね塗りすると、べたつき・重さ・毛穴詰まりの原因になりうる(出典: メンズヘアケア専門メディア各種)。本成分は比較的こっくりした油分のため、つけすぎは逆効果で、適量・毛先中心・薄く塗るのが現実的にあたる。また馬油は酸化しやすい部類のため、「天然・動物由来だから劣化しない」と古いものを使い続けると、酸化した油脂による酸化臭・刺激を招きうるため、開封後は早めに使い切り適切に保管するのが前提にあたる。本成分(保湿・保護のエモリエント)を皮脂コントロール・育毛成分と混同して「馬油だけで頭皮の皮脂も薄毛も解決する」と期待するのは誤りにあたり、皮脂・薄毛対策は別の領域として整理する必要がある。なお動物由来油脂のため、ヴィーガン・ベジタリアン志向で動物性原料を避けたい人には不向きにあたる。

6. メンズ実用視点まとめ

馬油をメンズヘアケアの観点で整理すると、本成分は「ヒト皮脂に近い脂肪酸組成でなじみが良く、乾燥した頭皮の保湿・髭剃り後の肌の保護に伝統的に使われてきた、動物由来のエモリエント油分」という読み方ができる成分にあたる。

メンズの頭皮・毛髪は、皮脂分泌が多く、整髪料を使い、洗浄力の強いシャンプーで洗いがちで、乾燥と過剰な皮脂が同居しやすい。本成分はオレイン酸・パルミチン酸・パルミトレイン酸というヒト皮脂に近い脂肪酸組成ゆえに頭皮・毛髪・肌になじみやすく、保湿・保護のエモリエントとして働く点で、乾燥した頭皮や髭剃り後の肌のケアに使われてきた成分にあたる(出典: Lee et al. 2019 / メンズヘアケア専門メディア各種)。乾燥した頭皮の保湿、髭剃り後の肌の保護、ダメージ毛のコーティングとして実用的にあたる。

C-10天然油脂エモリエントクラスタ第4弾で共有する「天然油脂の脂肪酸組成と毛髪・頭皮エモリエント作用整理表」の中で、本成分はクラスタ唯一の動物由来油脂で、植物バター(クプアスバター・ムルムルバター)・種子油(ゴマ油・アンズ核油・コーン油・アンディロバ油)と異なり、ヒト皮脂に多いパルミトレイン酸(C16:1)を含みヒト皮脂に最も近いとされる点で独自の枠に位置する。なじみが良く伝統的にスカルプケアに使われてきた一方、多価不飽和脂肪酸を比較的多く含み酸化しやすい部類で、動物由来ゆえヴィーガン非対応という制約もある立ち位置にあたる。濃厚保湿が欲しければ植物バター、酸化安定性・抗酸化サポートが欲しければホホバ種子油・ゴマ油と役割分担して組むのが、本成分を活かす前提になる。

本成分で最も注意すべきは、「馬油は万能・塗れば髪が生える・薄毛が改善する」という伝承的な言説にあたる。本成分がヒト皮脂に近いことの実際の価値はなじみの良さ・保湿・保護であって、育毛・発毛・皮脂コントロールではなく、育毛・発毛の科学的根拠は乏しい。また動物油脂ゆえ酸化しやすく、つけすぎればべたつき・毛穴詰まりの原因になりうる。本成分は皮脂になじむ保湿・保護のエモリエントであって、皮脂コントロール・育毛・薄毛改善の成分ではないという切り分けが、メンズが本成分を理解する上での前提にあたる(出典: 化粧品成分オンライン / Lee et al. 2019 / メンズヘアケア専門メディア各種)。

メンズヘアケアにおける本成分の位置づけは、「髪が生える万能オイル」ではなく、ヒト皮脂に近くなじみが良い、扱いやすい保湿・保護のエモリエントとして整理するのが正確。適量を守り、皮脂分泌の多い頭皮にはつけすぎず、酸化(獣臭・酸化臭)に注意し、皮脂・薄毛の根本対策とは切り分けて、自分の毛髪・頭皮・肌の状態に合わせて使うのが、本成分との上手な付き合い方になる(出典: 化粧品成分オンライン / Lee et al. 2019 / メンズヘアケア専門メディア各種)。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 馬油(バーユ)とはどんな成分ですか?

馬の皮下脂肪・たてがみの脂肪を精製して得られる動物由来の油脂で、頭皮・毛髪・肌の保湿・保護に使われるエモリエント(基剤)です(出典: 化粧品成分オンライン)。INCI名はHorse Fat、化粧品表示名・医薬部外品表示名ともに「馬油」です。脂肪酸組成がオレイン酸・パルミチン酸に加えヒト皮脂に多いパルミトレイン酸を比較的多く含み、ヒト皮脂に近いとされるため、肌・頭皮になじみやすいのが特徴です。日本では古くから乾燥のケア・スカルプケアに使われてきた伝統があり、馬油100%の単体オイル・クリームのほか、シャンプー・トリートメント・スキンケアに配合されます。

Q2. 馬油は植物オイルと何が違うのですか?

馬油は植物由来でなく動物由来の油脂である点が決定的に違います(出典: 化粧品成分オンライン / Lee et al. 2019)。化粧品に使われる油脂の大半はオリーブ油・ホホバ油・シア脂などの植物由来ですが、馬油は数少ない動物由来油脂です。化学的にはトリグリセリド(中性脂肪)が主体という点は植物油脂と同じですが、ヒト皮脂に多いパルミトレイン酸(C16:1)を植物油脂より多く含み、ヒト皮脂に近いとされる点が特徴です。一方で動物由来ゆえヴィーガン対応製品には使えず、多価不飽和脂肪酸を比較的多く含み抗酸化成分が少ないため、植物油の中でも酸化しやすい部類です。

Q3. 馬油で薄毛は改善しますか? 髪が生えますか?

育毛・発毛・薄毛改善の効果は期待できません(出典: 化粧品成分オンライン / メンズヘアケア専門メディア各種)。馬油は化粧品のエモリエント・基剤で、頭皮・毛髪・肌の保湿・保護を担う成分です。頭皮の毛根に働きかけて発毛を促す成分ではなく、「馬油で髪が生える・薄毛が改善する」という伝承的な言説は科学的根拠が乏しいのが実態です。育毛・発毛・抜け毛予防は、それを承認効能とする医薬部外品の育毛有効成分や医薬品(ミノキシジル等)の領域です。馬油が古くから頭皮ケアに使われてきたことから育毛を連想されやすいですが、頭皮環境を整える保湿・保護の補助であって、毛を生やす成分ではありません。薄毛・抜け毛が主訴の場合は育毛剤・発毛剤・専門クリニックの領域を検討するのが正確です。

Q4. 馬油はヒト皮脂に近いと聞きますが、皮脂バランスを整えますか?

なじみやすいのは事実ですが、皮脂分泌そのものをコントロール・正常化する成分ではありません(出典: メンズヘアケア専門メディア各種)。馬油の脂肪酸組成がヒト皮脂に多いパルミトレイン酸を含みヒト皮脂に近く、頭皮になじみやすいのは事実で、これがなじみの良さ・使い心地につながります。ただし「皮脂に近い」=「皮脂分泌を調整できる」ではなく、皮脂の量は体質・ホルモン・生活習慣に左右されるもので、塗った油脂が皮脂腺の働きを整えるわけではありません。皮脂の多い頭皮につけすぎれば、かえってべたつき・毛穴詰まりの原因になりうるため、適量で使うのが前提です。

Q5. 馬油はべたつきますか? 毛穴は詰まりませんか?

ヒト皮脂に近くなじみは良いですが、比較的こっくりした油分で、つけすぎればべたつき・毛穴詰まりは起こりえます(出典: メンズヘアケア専門メディア各種)。馬油はヒト皮脂に近い脂肪酸組成でなじみが良い一方、動物油脂で比較的こっくりした性状のため、油分の重さは精製度・使用量によります。オレイン酸を主成分とする油脂で、肌質・使用量・部位によっては毛穴詰まりが起こりえ、「絶対に毛穴を詰まらせない」とは断定できません。皮脂の多い頭皮・脂性肌の人は、つけすぎを避け、毛先中心・薄く塗るなど少量から使うのが無難です。

Q6. 馬油は酸化しやすいですか? 保管で気をつけることは?

馬油は植物油の中でも酸化しやすい部類で、適切な保管が必要です(出典: purecera.com 等 / 馬油原料メーカー各種)。馬油は多価不飽和脂肪酸(リノール酸・α-リノレン酸)を比較的多く含み、抗酸化成分が少ないため、自動酸化に対する安定性は低めとされます。精製度の低いものは特有の獣臭が残りやすく、酸化すると酸化臭も出ます。製品では精製度を上げ抗酸化剤(トコフェロール等)を添加して安定化が図られていますが、開封後は早めに使い切り、高温・直射日光を避けて保管し、変色・酸化臭が出たら使用を避けるのが無難です。「動物由来・天然だから劣化しない」わけではありません。

Q7. 馬油はヴィーガン・ベジタリアン対応の製品に使えますか?

動物由来の油脂のため、ヴィーガン・ベジタリアン対応を訴求する製品には不向きです(出典: 化粧品成分オンライン / メンズヘアケア専門メディア各種)。馬油は馬の皮下脂肪・たてがみの脂肪を精製した動物性原料で、植物由来油脂(ホホバ油・シア脂・各種種子油等)とは由来が異なります。動物性原料を避けたいヴィーガン・ベジタリアン志向の人は、同様のエモリエント効果を持つ植物由来油脂(ヒト皮脂に近いとされるホホバ種子油など)を選ぶとよいでしょう。なお、馬油の安全性そのものは穏やかで、動物由来であること自体が刺激・危険を意味するわけではなく、あくまで原料の由来の選択の問題です。

8. まとめ

馬油は、馬の皮下脂肪・たてがみの脂肪を精製して得られる動物由来の油脂で、INCI名Horse Fat・化粧品表示名/医薬部外品表示名ともに「馬油」として流通するエモリエント・基剤にあたる(出典: 化粧品成分オンライン)。本成分の特徴は、オレイン酸・パルミチン酸に加えヒト皮脂に多いパルミトレイン酸(C16:1)を比較的多く含むヒト皮脂に近い脂肪酸組成で、この構成が肌・頭皮へのなじみの良さ・「浸透が良い」という伝統的な訴求の根拠にあたる(出典: Lee et al. 2019 / 化粧品成分オンライン)。日本で古くから民間のスキンケア・スカルプケアに使われてきた実績がある。

C-10天然油脂エモリエントクラスタ第4弾で共有する「天然油脂の脂肪酸組成と毛髪・頭皮エモリエント作用整理表」の中で、本成分はクラスタ唯一の動物由来油脂で、植物バター・種子油と異なりヒト皮脂に最も近いとされる点で独自の枠に位置する。なじみが良く伝統的にスカルプケアに使われてきた一方、多価不飽和脂肪酸を比較的多く含み酸化しやすい部類で、動物由来ゆえヴィーガン非対応という立ち位置で、濃厚保湿の植物バター、酸化安定性の高いホホバ種子油・抗酸化のゴマ油と役割分担して組まれる成分にあたる。

本成分で最も注意すべきは、「馬油は万能・塗れば髪が生える・薄毛が改善する」という伝承的な言説にあたる。本成分がヒト皮脂に近いことの実際の価値はなじみの良さ・保湿・保護であって、育毛・発毛・皮脂コントロールではなく、育毛・発毛の科学的根拠は乏しい。また動物油脂ゆえ酸化しやすく、つけすぎればべたつき・毛穴詰まりの原因になりうる。本成分は皮脂になじむ保湿・保護のエモリエントであって、皮脂コントロール・育毛・薄毛改善の成分ではないという切り分けが、本成分を正しく理解する前提にあたる(出典: 化粧品成分オンライン / メンズヘアケア専門メディア各種)。

メンズヘアケアの観点では、本成分はヒト皮脂に近くなじみが良い、扱いやすい保湿・保護のエモリエントとして、乾燥した頭皮の保湿・髭剃り後の肌の保護・ダメージ毛のコーティングに実用的にあたる。適量を守り、皮脂分泌の多い頭皮にはつけすぎず、酸化(獣臭・酸化臭)に注意し、皮脂・薄毛の根本対策とは切り分けて、他の天然油脂・保湿成分と組み合わせて使うこと、そして「馬油は万能・髪が生える」という伝承的な言説に流されず本成分を正しく理解することが、本成分を活かす前提にあたる(出典: 化粧品成分オンライン / Lee et al. 2019 / 馬油原料メーカー各種 / メンズヘアケア専門メディア各種)。

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